文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「知見と、挑戦をつなぐ」をミッションに掲げ、グローバルなナレッジ・シェア・プラットフォーム「知見プラットフォーム事業」を展開しております。具体的には、1時間単位でピンポイントに知見提供を受けることができるスポットコンサルの設営等の多様なサービスを通じて、各業界のアドバイザーの知見を、新規事業やイノベーション、業務改善といったビジネス課題の解決のヒントを求める企業や個人へつなぐ、ビジネス知見に特化した知見プラットフォーム事業を運営しております。
当社は、2021年11月に、米国で同業を営むColeman Research Group, Inc.を買収し、完全子会社化いたしました。同社は、主に米国におけるコンサルティング・ファームや金融機関を対象にスポットコンサル設営サービスやサーベイを提供しており、当社と類似した事業を展開しております。本買収により、両社がそれぞれ持つアドバイザー登録者基盤、顧客基盤及びプロダクトを相互に活用することができ、これにより様々な事業シナジーを獲得することが可能であると考えており、本買収は、グローバル展開を加速させ、ナレッジプラットフォームの拡大と強化を目指す当社グループの戦略に沿うものであり、同社との事業の統合を通じて、短中期のシナジーの発揮を目指します。
また、グループ全体として、当社グループのミッションを実現していくため、知見データベースと顧客基盤の双方を拡充し、テクノロジーの力を活用して効率性やUI/UX(注)を改善しつつ、様々な形態の知見提供取引を利用者が安心して活用できるプラットフォームを構築することを目指し、優秀な人材の確保・育成や組織体制の整備・拡充に注力して参ります。
(注)UI(ユーザーインターフェース)とは、ユーザーとサービスの接点であり、両者の間で情報をやり取りするための仕組みのことです。UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがサービスを通じて受け取る体験やそれに伴う感情のことです。
(2)目標とする経営指標
当社グループは中長期的な企業価値の向上を達成するために、先ずは強固なプラットフォームを構築すべく、知見プラットフォームの規模を示す指標である取扱高の成長を重視しており、将来的(3年から5年後)には、200億円以上の取扱高を目指してまいります。
(3)経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
当社は、2012年3月の設立以来、一貫して知見プラットフォーム事業を展開してまいりました。この事業の中核となる「ビザスクinterview」は、当社が日本において有力な地位を築いており、このサービスの開発・発展を通じて、当社事業の市場を形成してまいりました。また、2021年11月には、米国で同業を営むColeman Research Group, Inc.を買収いたしました。これにより、日本と米国を中心とする顧客及びアドバイザーのデータベースを活用することが可能となります。
これまでの事業展開の結果、当社グループは以下の3つの強みを有しております。
①46万人超のアドバイザーデータベースに裏付けられた知見プラットフォーム
②ナレッジプラットフォームとしての多様なサービス展開
③日・米をマザーマーケットとしたグローバル拠点網(東京、ニューヨーク、シンガポール、香港、ノースカロライナ、ロサンゼルス、ロンドン)
これらの強みを生かし、また、さらにこの強みを発展・成長させていくことで、顧客層に応じて幅広いニーズに対応し、事業を成長させることができると考えております。
また、当社グループでは、知見プラットフォーム事業のサービスを活用する事業領域を、「グローバルENS」と「国内事業会社向けプラットフォーム」に大別しており、それぞれの顧客特性に応じた事業戦略を展開してまいります。
①「グローバルENS」における事業戦略
グローバルENSの主要な顧客層は、コンサルティング・ファーム、機関投資家及びプライベートエクイティであり、これらの顧客は、当社グループのコア・サービスである「ビザスクinterview」及び「Coleman 1-on-1 Consultations」等を既に活用しております。
グローバルENSの事業環境は、ビジネスコンサルティング市場の力強い成長のもと堅調に成長しております。これに関連する市場であるグローバルなマーケットリサーチ市場の規模は、2021年に764億米ドルに到達しており、こうした背景のもと、グローバルENSも拡大を継続しております(The Business Research Company社「Market Research Services Global Market Report 2022」)。グローバルENSの市場では、グローバルなENSプレイヤーが複数あり、最も大きなプレイヤーの売上高規模は、600万米ドル超であります。
このような事業環境のもと、当社グループは、日・米をマザーマーケットとするアドバイザー網、グローバルなリクエストに対応することのできる拠点網、並びに高度なオペレーションに基づくスピーディな対応を強みとしており、他の欧米のプレイヤーが欧米市場を中心としたアドバイザー網であることや日本に拠点が無い或いは小さいことと比較して、当社グループはユニークなポジションを築いております。このような強みを活かし、当社グループはグローバルな競合他社と比較して高い成長性を実現しております。
こうした状況のもと、グローバルENSの業績推移は以下の通りであります。
このように、既に一定の事業規模を有していることから、今後は、主要な顧客層であるコンサルティング・ファームとの取引関係の強化を通じた取扱高の拡大を目指し、そのために、サービスの提供に従事する人員の拡大と組織体制の強化を図り、また、それと同時に、人員一人当たりの生産性の向上を図ることで収益性を向上させてまいります。直近では地政学リスクの高まり、金融市場のボラティリティの高まりや雇用環境の変化など、特に米国において事業環境が急激に変化する一方で、中長期的な事業基盤の維持・強化のために採用を積極的に行うことから、一時的に収益性が低下する見込みでありますが、中長期的な競走優位性を確保することを通じて、収益性を向上させてまいります。
②「国内事業会社向けプラットフォーム」の事業戦略
国内事業会社向けプラットフォームの主要な顧客層は、国内の製造業、SIer、ベンチャー企業等であり、特に、研究開発や事業開発を行っている大手製造業が中心であります。これらの顧客は、当社グループのコア・サービスである「ビザスクinterview」のほか、「ビザスクexpert survey」、「ビザスクreport」、「ビザスクlite」、「ビザスクpartner」など、多くのサービスを活用しております。
国内事業会社向けプラットフォームの事業環境は、当社事業の関連市場である、マーケティング・リサーチ市場の市場規模が約2,200億円(一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会 第46回経営実務実態調査 (2021年4月1日~6月1日))、国内企業における社外支出研究開発費が約2兆円/年(総務省「2021年科学技術研究調査 結果の概要」より、企業における研究活動のうち、社外支出研究費を参照)であり、大きな潜在市場が存在しております。なお、当社事業の市場規模については、当社グループが自ら市場を発展・形成してきている過程にあり、当社が有力な地位を築いているものと考えておりますが、投資者の投資判断に資する情報として、関連市場あるいは潜在市場を記載することとしております。
このような事業環境のもと、当社グループは、日本における圧倒的なアドバイザー網、多様なサービスラインナップ、海外調査ニーズに対応するグローバルな拠点網を強みとしており、他の国内プレイヤーのアドバイザー網が限定的であることや小規模なプレイヤーが多く、また、海外プレイヤーにおいては、国内事業会社へのリーチが限定的であること、国内アドバイザー網も限定的であること、インタビュー以外の主要サービスが十分発展していない状況であり、こうした他のプレイヤーと比較して、当社グループは競争優位性を発揮して事業を展開しております。
こうした状況のもと、国内事業会社向けプラットフォームの業績推移は以下の通りであります。
このように、近年において強い勢いで事業が成長しており、その要因として、当社グループが組織的に国内事業会社に対して営業活動を展開し、多様なニーズに応えるサービスを適時に開発・提供してきたことが挙げられます。その結果、クライアント口座数並びに1口座当たり取扱高がいずれも成長しております。今後も多様なプロダクトを展開し顧客のニーズに応えることで、クライアント口座数の拡大基調を維持するとともに、クライアント内の利用度を高めることで1口座当たり取扱高を成長させてまいります。
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取扱高 |
クライアント 口座数 (注)1、2 |
1口座あたり取扱高 |
2020年2月期 |
297百万円 |
328 |
0.9百万円 |
2021年2月期 |
566百万円 |
566 |
1.0百万円 |
2022年2月期 |
1,266百万円 |
995 |
1.3百万円 |
(注)1.「クライアント」とは、法人契約を締結し、フルサポート形式「ビザスク」を活用する法人顧客をいい、「ビザスクlite」のみを活用する法人顧客は含まれません。
(注)2.「クライアント口座数」とは、法人クライアントの中で、法人契約に基づき各集計時点から起算した過去1年間において「ビザスクlite」を除くサービスのチケットを消費もしくは請求をしたクライアントの合計であり、同一法人において複数の部署が別途契約を締結した場合には、複数カウントとなっております。
③ グローバル展開
当社グループは2022年2月末現在、約46万人の登録者をデータベース上に有しております。
国内法人クライアントからの海外アドバイザーの知見を求めるニーズは益々高まっており、これに対応するため、当社は2019年12月にシンガポールに駐在員事務所を設立し、2020年4月に現地法人を設立し、また、2021年11月にColeman Research Group, Inc.を買収しております。
今後、日・米のマザーマーケットにおける事業展開に加えて、中長期的には、欧州や東南アジアを中心に海外アドバイザー並びに海外法人クライアントを獲得し、国内の知見を提供することで事業拡大を進めて参ります。そのために、他の地域への拠点の展開を積極的に検討してまいります。
④ 事業成長と事業効率改善
継続的な自社開発システムの改善およびオペレーションの効率化によりマッチングの効率改善が進む一方、知見に関する需給の一致を進めることにより、アドバイザー数と法人クライアント基盤双方の順調な拡大により、当社グループの取扱高は堅調に成長しております。それに伴い、当社グループの事業効率も改善しておりますが、当社グループでは、今後も「ビザスクinterview」「Coleman 1-on-1 Consultations」における更なるマッチング効率の向上を進めると共に、「ビザスクinterview」以外の知見提供取引についての事業成長投資を進め、先行投資と事業効率改善のバランスに注視しつつ、中期的な事業成長と事業効率改善を達成して参ります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
① 人材獲得及び人材育成
人材の確保は当社グループの成長の基礎であり、優秀な経営陣及び従業員の獲得や、在籍しているメンバーのスキル向上は、高い事業成長を維持していくために必要かつ、重要な課題の一つであります。スタートアップにおける採用市場や、米国における雇用環境は、近年逼迫しておりますが、知人紹介や人材紹介会社等の多様な採用チャネルを活用し、従業員の獲得を推進して参ります。また、人員の拡大とともに組織化を進め、リーダー人材を育成すると共に、教育制度等を拡充し、メンバーの成長をサポートして参ります。
② 業務プロセスの改善と、これによる収益性の向上
当社グループの各業務は、プロセス・ルールの標準化やシステム開発を進めることにより、効率化できる余地があると考えております。今後、開発エンジニアの採用、情報システムへの投資による各業務システムの機能向上と共に、内部統制を具備した業務の標準化を推進することで、各業務の効率化を進め、当社事業の収益性の向上を図って参ります。
③ 個人情報保護の対応
大規模プラットフォーム事業者の個人情報の取り扱いと保護に対し、近年世界中で高い関心が寄せられています。当社は、情報そのものの保護の観点から情報セキュリティ・システムを強化するとともに、欧州GDPR(注)に代表される各国の個人情報保護に対する法体制の整備に留意し、個人情報保護の社内体制整備を進めて参ります。
(注)「欧州GDPR」とは、EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)のことであり、これは欧州連合(EU)における新しい個人情報保護の枠組みであり、個人データ(personal data)の処理と移転に関するルールを定めた規則です。
④ 海外展開の対応
当社グループは、「知見と、挑戦をつなぐ」というミッションの実現に向け、今後、投資効率を意識しつつ、積極的に海外展開を図っていく方針であります。海外展開にあたっては、当社グループが国内で培ったオペレーションやシステム等のノウハウと、Coleman Research Group, Inc.の買収の経験を活かしつつ、各地域の文化や法規制等を踏まえてサービスをカスタマイズし、事業の拡大を図って参ります。
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