業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較・分析の記載はしておりません。

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績の状況

当連結会計年度の経済環境は、新型コロナウイルス感染症の変異株の拡大による蔓延防止措置の発令により経済活動が再度制限される時期があったものの、ワクチンの接種は進んでおり、感染の沈静化及び経済活動の再開に向けて前進しつつあります。一方で、ウクライナ情勢の深刻化や原油をはじめとする資源価格の高騰、各国の金融政策の動向などに対する懸念が広がっており、引き続き先行き不透明な状態が続きました。

このような市場環境の中、当社グループは2020年7月の上場以降を第3創業期と捉え、2022年6月にコーポレートブランドを刷新しました。パーパスを「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」、提供価値を「デザインとエンジニアリングの力で、挑戦を支える」と定義したうえで、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに掲げ、挑戦的な文化を醸成し、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指してまいります。

当連結会計年度においては、引き続き、今後の継続的な事業成長に向けて人員体制の強化を図るべく、開発部門、営業部門、カスタマーサクセス部門を中心とした人材採用活動を積極的に行ってまいりました。コーポレートブランドの刷新に合わせて、福岡地区を対象としたバス停、駅構内への広告掲載及びメディアでのデジタル動画広告の配信を行うなど、人材獲得に向けた採用広告の展開にも注力しております。

また当社は、Great Place to Work® Institute Japanが世界共通の基準で従業員の意識調査を行う、2022年版「働きがいのある会社」ランキングにおいて、2年連続で働きがいのある会社として認定されており、働く環境の整備に積極的に取り組んでおります。さらに、2022年4月の新卒新入社員の2割は外国籍であり、多様性のある組織づくりが進んでおります。

当社グループの持続的な成長の実現に向けた取り組みとしては、新製品、新サービス、M&A、CVCを通じた新たな収益源の創出に積極的に取り組んでおり、当連結会計年度において、投資分野に特化した新部門を設置し、投資活動を開始いたしました。主な投資対象はモバイル、SaaS、セキュリティ等、当社グループの事業領域と親和性の高い企業としております。さらに、社会課題解決型企業や、当社グループが本社を置く九州の地場で活動している企業についても投資対象とする予定です。この投資活動により、協業先やクロスセル商材の発掘によるCLOMO事業の拡大、また事業多角化に向けた新規事業の創出など、当社グループのさらなる発展を加速化させると同時に、起業家の新たな価値創造への挑戦を支えることを目指してまいります。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高2,454,410千円、営業利益826,704千円、経常利益817,879千円、親会社株主に帰属する当期純利益539,529千円となりました。

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントを従来の単一セグメントから「CLOMO事業」「投資事業」の2区分に変更しております。

 

① CLOMO事業

CLOMO事業においては、2010年から提供を開始したモバイル端末管理サービス「CLOMO MDM」及びモバイル端末向けアプリサービス「CLOMO SECURED APPs」を事業の主軸に、クラウドを利用したB to BのSaaS事業をサブスクリプションの形で提供しており、2021年12月に公表されたMDM市場(自社ブランド)シェアにおいて、2011年度から11年連続でシェアNo.1を達成しました(注1)。

当連結会計年度においては、広島県に新たな営業拠点を開設しました。加えて、愛知県及び北海道への営業拠点の開設準備も進めており、引き続き、Web会議システムを用いたリモート営業と並行活用しながら、販売パートナーとの協業加速及び販売エリアの拡大を図るべく取り組んでおります。GIGAスクール構想(注2)によってデジタル学習が進む小中高等学校や、新型コロナウイルスへの対応を含め加速的に業務効率化やデジタル化を進めている医療機関におけるモバイル端末管理、リモートワークでのIT資産管理、製造業や運送業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に伴う業務専用端末管理など、社会変化に伴う新たなMDMの需要に対しては、導入事例記事を積極的に公開し、CLOMOサービスの活用方法や品質について、理解促進を図るほか、当該分野に強みを持つ新たな販売代理店の開拓を進めております。さらに、モバイル活用をテーマとしたオウンドメディアの公開に向けたコンテンツ制作に取り組むなど、ブランド認知度向上に向けた広告宣伝活動も積極的に行っております。

また、MDMの導入から運用まで幅広くサポートする新サービスとして「CLOMO運用代行サービス」、「CLOMOキッティングサービス」を開始しました。近年はDXの重要性が叫ばれており、企業等のMDM運用担当者は、デジタル技術を用いた事業や業務、働き方等の変革を担っている一方で、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、その業務量は増大し、本来取り組みたい変革にリソースを投入しづらい傾向にあります。これらの新サービスを通じて、モバイル端末を導入する際のキッティング作業や、MDMによる端末管理業務の一部を代行することで、MDM運用担当者の負担を軽減し、事業や業務、働き方等の変革に貢献してまいります。

カスタマーサクセス活動においては、顧客との関係強化に向けた定期的な面談の実施に加え、CLOMO MDMの基本的な利用方法から、より効果的な活用方法までを学べる「CLOMO ステップアップセミナー」を月数回開催しており、2022年1月から6月までの半年間で延べ700名以上のMDM運用担当者にご参加いただいております。このように、多くの顧客と定期的に接点を持ち、CLOMOサービスの活用を促進することで、高い継続率の維持に取り組んでおります。

開発においては、CLOMOサービスのPC管理市場でのシェア獲得に必要となるWindowsの機能強化のほか、顧客のニーズに応えるための機能改善に引き続き注力しており、Azure Kubernetes Service (AKS)(注3)やXamarin(注4)といった新たな技術の継続活用による生産性の向上を図っております。また、社内の開発リソースをより付加価値の高い開発業務に集中させるため、外部委託先の開拓も進めており、今後も引き続き、製品開発やサービス運用の効率化による製品価値の向上及び原価の低減を目指してまいります。

また、CLOMO事業においても、CLOMOサービスとシナジーのある事業を展開する企業を対象としたM&A、資本提携を積極的に進めていく方針であり、販路拡大やクロスセル商材の発掘、オープンイノベーションによる新機能開発などを通じた成長戦略の加速を図ってまいります。

これらの取り組みにより、導入社数は3,915社(前事業年度末に比べ524社、15.5%増加)に達しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による当連結会計年度の経営成績や、当社グループが目標とする経営指標(CLOMOの導入社数の増加、ライセンス継続率)への影響は極めて軽微でありました。一方で、当連結会計年度においては、半導体不足に伴うモバイル端末の調達不調により、一部顧客において、CLOMOサービスの契約開始時期に遅れが生じております。

この結果、売上高は 2,454,410千円 、営業利益は835,417千円となりました。

なお、サービス別の内訳は次のとおりであります。

CLOMO MDM

売上高

2,249,349

千円

SECURED APPs

売上高

175,300

千円

その他

売上高

29,760

千円

 

 

② 投資事業

投資事業は当連結会計年度より開始した新規事業であり、2021年11月にベンチャーキャピタル子会社として株式会社アイキューブドベンチャーズを設立いたしました。また、2022年1月には当該子会社を通じてアイキューブド1号投資事業有限責任組合を設立し、投資活動を実施しております。

主な投資対象はモバイル、SaaS、セキュリティ等、当社グループの事業領域と親和性の高い企業、社会課題解決型企業及び当社グループが本社を置く九州の地場で活動している企業としております。

この結果、営業損失は8,712千円となりました。

 

(注)1.出典 デロイト トーマツ ミック経済研究所「コラボレーション/コンテンツ・モバイル管理パッケージソフトの市場展望」2011~2019年度、「ミックITリポート2021年12月号」2020年度出荷金額実績及び2021年度出荷金額予想。

2.2019年12月に文部科学省が打ち出した、児童生徒向けに1人1台の端末や、高速通信環境を一体的に整備することで、学習活動の一層の充実や主体的・対話的で深い学びの視点から授業改善の実現を目指す構想。

3.マイクロソフト社が提供するコンテナ化技術。CLOMOシステムをコンテナベースとすることで、信頼性の向上や運用負担の軽減、運用コストの削減を進めている。

4.マイクロソフト社が提供するアプリケーション開発用のプラットフォーム。iOS、Android、Windowsという異なる環境で動作するCLOMOアプリケーションのソースコードを共有化することで、開発速度の向上や省力化を進めている。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末における財政状態については次のとおりであります。

① 資産

総資産は3,202,755千円となりました。その主な内訳は、現金及び預金2,337,409千円、売掛金234,349千円、営業投資有価証券149,992千円、ソフトウエア仮勘定169,222千円、繰延税金資産122,886千円であります。

 

② 負債

負債は978,826千円となりました。その主な内訳は、未払法人税等185,677千円、契約負債496,925千円、その他流動負債187,166千円であります。

 

③ 純資産

純資産は2,223,929千円となりました。その主な内訳は、資本金404,412千円、資本剰余金304,412千円、利益剰余金1,511,877千円であります。この結果、自己資本比率は69.3%となりました。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は2,337,409千円となりました。当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

① 営業活動によるキャッシュ・フロー

営業活動の結果得られた資金は275,503千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益817,879千円、契約負債の増加額496,925千円、前受収益の減少額547,718千円、長期前受収益の減少額100,056千円、営業投資有価証券の増加額149,992千円、法人税等の支払額360,357千円によるものです。

 

② 投資活動によるキャッシュ・フロー

投資活動の結果使用した資金は208,178千円となりました。これは主に、有価証券の取得による支出1,000,000千円、有価証券の償還による収入1,000,000千円、無形固定資産の取得による支出202,500千円によるものです。

 

③ 財務活動によるキャッシュ・フロー

財務活動の結果使用した資金は36,400千円となりました。これは主に、配当金の支払額52,315千円によるものです。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。

 

② 受注実績

当社グループで行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短く、受注状況には重要性がないため記載を省略しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

CLOMO事業

2,454,410

投資事業

合 計

2,454,410

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

 

相手先

当連結会計年度

販売高(千円)

割合(%)

株式会社NTTドコモ

1,098,899

44.8

株式会社ティーガイア

291,251

11.9

 

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 

経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

①  重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②  経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1) 経営成績の状況」、「(2) 財政状態の状況」、「(3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

③  資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。事業運営上必要な運転資金の需要のうち主なものは、当社グループサービスを安定的に運営し、また拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、研究開発に係る費用であります。

 

④  目標とする経営指標の状況

a CLOMOの導入社数

当連結会計年度末のCLOMOの導入社数は3,915社(前事業年度末に比べ524社、15.5%増加)となりました。

前事業年度においては、GIGAスクール構想によって、小中学校の生徒が持つ学習用端末へのMDMの導入需要が高まっており、CLOMOの導入社数の増加に寄与しておりましたが、当連結会計年度においては、生徒への端末配布が完了し、その需要がひと段落しております。また、半導体不足に伴うモバイル端末の調達不調によって一部顧客の契約開始が遅延した影響もあり、導入社数の増加ペースは前事業年度に比べてやや緩やかとなりました。一方で、このような状況下においても、オンラインと対面型を並行活用した営業活動による、全国各地の販売代理店の営業スタッフへのCLOMOサービスの案内や、導入事例記事の発信による啓蒙活動を通じて、導入社数は着実に増加しております。

b ライセンス継続率

当連結会計年度のライセンス継続率は96.7%となりました。(注)

カスタマーサクセス部門による、ユーザーミーティングの開催や、定期面談、製品活用のためのステップアップセミナーの実施など、エンドユーザーの成功体験を目的とした様々な取り組みの成果が、製品に対する心理的ロイヤルティ向上を後押ししたことと、Android Enterprise Recommended取得によりAndroid搭載モバイル端末を使用している顧客に対してCLOMOがAndroid搭載モバイル端末の管理に最適なモバイル端末管理サービスのひとつであるという認知が広まったことで、ライセンス継続率は引き続き高い水準を維持しております。

 

(注)継続率は、当連結会計年度に発生した各月の解約数を前年同月末のライセンス数から控除したライセンス数

  について、前年同月末ライセンス数で除して算出しております。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得