課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは当社及び連結子会社2社(株式会社アイキューブドベンチャーズ、アイキューブド1号投資事業有限責任組合)の計3社で構成されております。パーパスを「笑顔につながる、まだ見ぬアイデア実現の母体となる」、提供価値を「デザインとエンジニアリングの力で、挑戦を支える」と定義したうえで、「挑戦を、楽しもう。」をブランドスローガンに、ITを軸とした様々な挑戦を積極的に進めていく企業を目指しております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループの主軸事業である、CLOMO事業の導入社数(CLOMOを導入している企業や、学校や官公庁などの公的機関の組織数)、ライセンス継続率を指標としております。

 

(3) 経営環境と経営戦略

当社グループの主軸事業であるCLOMO事業は、モバイル端末管理市場に属しており、B to BのSaaS事業をサブスクリプションの形で提供しております。今後のマーケット動向としては、法人のスマートフォン導入加速と、フィーチャーフォン(従来型携帯電話)からのスマートフォンへの変更、PHSのサービス終了に伴う医療機関でのスマートフォンの導入により、モバイル端末の出荷数の増加が見込まれております。このようなビジネスシーンにおけるモバイル端末の増加に応じて、モバイル端末管理のニーズもさらなる増加が期待されています。また、昨今の働き方改革に伴い、業務のデジタル化やテレワーク環境が整備され、多くの企業ではDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進していることを背景に、セキュリティ機能をクラウドから提供するCLOMOサービスに対する問い合わせは引き続き増加しております。

このような状況から、モバイル端末管理市場は、スマートフォンやタブレットなどの既存市場の継続的な成長に加え、IoTの普及に伴うセキュリティ対策の強化やPC管理市場への進出により、今後さらに拡大する可能性があります。

 


 

今後の当社グループの成長に向けては、引き続きCLOMO事業の拡大に経営資源を集中することが重要な経営戦略のひとつと判断し、以下の3点の特徴及び強みを活かし企業価値の向上を図ってまいります。

 

① 統合的な一貫体制(競争力の源泉)

当社グループは、ソフトウェア開発・ライセンス販売・サービスの運用・プラットフォームの管理・カスタマーサポートの全ての業務を自社でコントロールし、統合的な一貫体制が構築されております。 したがって、サービスの運用やカスタマーサポートで得た知見や顧客の要望を、新たなソフトウェアの開発や既存のソフトウェアの改善に速やかに生かすことが可能であり、それが当社グループの競争力の源泉となっております。

現在の主軸サービスであるCLOMO事業はもちろん、IoTなどの新たな技術対応や新サービスの提供も、この確立された体制により、効率的に収益性の高いサービスを提供することが可能であると考えております。

 


 

※1 ライセンス数の増加、高付加価値商品への転換による売上増

※2 機能追加による売上増

 

 

② 低コストの収益構造

当社グループのCLOMOサービスは、クラウドを利用したSaaS事業であるため、クラウド上のソフトウェア管理だけで多くの顧客の対応が可能であり、ビジネス規模の拡大によるスケールメリットを享受することができます。

 

③ サブスクリプションビジネスによる収益の安定性

当社グループのCLOMOサービスは、継続的な売上が見込めるサブスクリプションビジネスであり、かつ半数以上の契約は年間契約であるため、当連結会計年度に獲得した新規注文のうち、当連結会計年度中に収益認識されるものは一部であり、残りは契約期間によって月次で按分され、翌連結会計年度以降の収益となります。また、CLOMO MDM継続率は96.7%(注)となります。

 

(注)継続率は、当連結会計年度に発生した各月の解約数を前年同月末のライセンス数から控除したライセンス数について、前年同月末ライセンス数で除して算出しております。


 

CLOMO事業は、毎月の新たな受注による積み上げ式のストックビジネスであるため、受注が解約を超過していれば、上記の図のとおりライセンス数が増加していきます。

(一般的なサブスクリプションビジネスのイメージ図)

 

 

(4) 当社グループの対処すべき課題

① MDM市場におけるシェアの拡大

CLOMO事業が属するEMM(MDM)の市場は、スマートフォンのビジネス利用の増加に加えて、モバイルPCや業務専用端末など、新たなMDMの活用シーンの拡大によって成長を遂げており、当社グループも導入社数・ライセンス数の増加により収益基盤が拡大しております。一方で海外からの参入も含め、国内市場においては競合他社も増えてきております。

このような中で、CLOMO事業のMDM市場におけるシェアを拡大させるためには、当社グループの技術開発力をベースにした高機能化・周辺機能の追加・複数種類の端末の管理機能拡充などにより、アップセルとクロスセルを高め、顧客単位の売上増加・コスト減少に取り組んでいく必要があると考えております。加えて顧客の信頼を厚くするためのサポート体制の充実(顧客定着・リピートオーダー・解約率の減少)にも取り組んでまいります。

また、B to Bのクラウドを利用したSaaS事業でもあるため、顧客の予期せぬ急増や、一度に多量のライセンスを受注した場合においても、当社グループは新規で物理的なサーバー機器を調達、構築する必要がないことから円滑に対応でき、当社グループに大きな負担はありません。導入までのサポートを大きな負荷無く短期間で済ませることで、成長の一層の加速に取り組んでまいります。

 

② 組織人員(開発)体制の増強

顧客の増加、特に大企業の増加に比例して、その要望や品質に対する要求レベルは年々高くなっており、質・量ともに開発体制を改善していくことは、顧客のニーズに応えていくうえで必要不可欠な課題と考えております。近年のITエンジニアの採用環境については、売り手市場が継続しており厳しい状況となっております。このような状況への対応として、エンジニアが成長し充実した仕事・生活ができる実感をもてるような環境を作り、それを対外的にアピールする機会を増やすことで、エンジニアにとって魅力的な職場としての認知を広めていきたいと考えております。また、エンジニアの成長機会を増やすため、社内勉強会の開催や、オンライン上で開催される社外勉強会への登壇、国内外の企業やコミュニティで開催するエンジニア向け年次カンファレンスを中心に積極的に参加してまいります。

また、当社グループでは、全社的にリモートワーク主体で業務を推進しながら、就業時間については、コアタイムのないフルフレックスタイム制をとっております。加えて、新卒採用、中途採用を問わず、外国籍の従業員の採用も積極的に行っており、居住地や働き方、国籍に捉われない自由な採用活動によって、優秀人材の獲得に繋がると考えております。さらに、産休・育休の取得率は2022年6月期において100%となっており、子育て世帯にとっても働きやすい職場環境の整備を推進することで、従業員の定着と働きがいの向上を図っております。

 

③ 研究開発活動の促進

毎期、事業の発展充実のため、積極的に研究開発活動に取り組んでおり、ライセンス数やアップセル・クロスセルの増加、解約率の低減のために顧客のニーズを具現化することを進めております。自社の業務プロセス改善や業務の迅速化・効率化を目的とした研究開発も進めており、自社利用でノウハウを蓄積し、新サービス提供へ繋げる想定です。さらに、テスト自動化、スケーラビリティの確保やアプリケーション動作の高速化を目的としたアーキテクチャ刷新のための基盤技術の調査などを研究開発の対象としております。

 

④ 品質保証体制の強化

顧客に提供するサービスを構成するソフトウェアについては、様々な施策を実施してきた結果、顧客満足度の向上によるユーザーの定着が進んできております。この取り組みは常に改善し、継続していかなければならないため、そのための仕組みづくりが課題と認識しております。この方向性を継続し、ソフトウェアエンジニアリングにおける改善をさらに進めることが課題と認識しております。品質改善に対するブレを少なくするため、ソフトウェアエンジニアへの研修などにより定期的な知識共有を進めます。検証体制においては、可能な限り製品検証体制の自動化を進め、人が実施すべき重要な部分については、特に改善活動を行う時間を確保するとともに、品質の精度を高めます。また、検証時間の短縮により、リリースサイクルが短縮されることにもなります。当社グループはサービス品質向上のため、さまざまな改善活動に積極的に取り組むことを考えております

 

⑤ カスタマーサクセスの体制構築

当社グループでは、これまでの問題解決型の「カスタマーサポート」から一歩進めて、当社グループのサービスを通じて顧客が実現したい目的や効果を実現する「カスタマーサクセス」を達成するための活動に注力しております。これは、顧客との定期的な面談を通して製品利用状況を精緻に把握し、適切な利用法を提案することで顧客によるモバイル端末導入の効果を高めてもらう新しい取り組みです。顧客の成功に寄り添うことで、製品に対する心理的なロイヤルティが向上し、製品の継続利用やライセンスの追加、関連製品の購入などに繋がります。

 既存顧客の解約を防止するとともに、ARPU(Average Revenue per User:1ユーザー当たり平均売上金額)を増加することで、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)をさらに向上すべく、本活動を強化してまいります。

 

⑥ 従業員の意欲、能力の向上

当社グループは、従業員の目標設定、評価方法を明確化し、従業員の評価の適正化を図るとともに、急速なIT技術の進歩やグローバル化にあわせて、この変革のスピードに対応できるような人材を育成していく体制を整えることが急務であると考えております。引き続きそれらを見据え、勉強会や研修の充実などにより従業員一人一人の上昇志向と能力の向上を図ってまいります。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得