当社の企業理念は以下の通りです。
私たちの存在意義(パーパス)
「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」
私たちが目指す未来(ビジョン)
当社のビジョンは、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために。私たちはこの約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続けること」です。
私たちの価値観(バリュー):タケダイズム
タケダイズムとは、まず誠実であること。それは公正・正直・不屈の精神で支えられた、当社が大切にしている価値観です。当社は、これを道しるべとしながら「1.患者さんに寄り添い(Patient)、2.人々と信頼関係を築き(Trust)、3.社会的評価を向上させ(Reputation)、4.事業を発展させる(Business)」を日々の行動指針とします。
私たちの約束(インペラティブ)
当社には、患者さん、ともに働く仲間、そして地域社会に対して果たすべき責任があります。この「私たちの約束」は「私たちの存在意義」と「私たちが目指す未来」を実現するために欠かせない要素です。
すべての患者さんのために
・私たちは、倫理観をもってサイエンスの革新性を追求します。そして、人々の暮らしを豊かにする医薬品の創出に取り組みます。また、私たちの医薬品を、より多くの人々に迅速にお届けします。
ともに働く仲間のために
・私たちは、理想的な働き方を実現します。
いのちを育む地球のために
・私たちは、自然環境の保全に寄与します。
データとデジタルの力で、イノベーションを起こします
・データを活用して導き出された成果をもとに、もっとも信頼されるバイオ医薬品企業として、これからも変革し続けます。
世界の製薬産業においては、イノベーションのスピードはかつてよりも速くなっており、がん免疫療法や細胞療法、遺伝子治療等の新たな医療技術の登場によってさらに促進されています。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大が契機となり、世界中の人々に命を救うワクチンを驚異的な速さで提供するといった新しいイノベーションの時代が到来しました。このような医療イノベーションによる成果が現れてきた一方、高齢化社会の進展や生活スタイルの変化、複合疾患に対するより高度で先進的な治療法の利用等によってヘルスケアに対する投資額はここ10年、国内総生産や総所得を上回る速度で増加してきました。このため、保険者は保険償還対象となる医薬品をより厳格に選定するようになっており、各国政府は後発品やバイオシミラーの使用を促進し、薬価引き下げの圧力を強めています。しかしながら、アンメット・メディカル・ニーズ(未だ有効な治療法が確立されていない疾患に対する医療ニーズ)は多く存在しています。世界各国の医療制度はかつてないほどに逼迫しており、医療アクセスの格差がますます拡大していることから、医療の公平性について対処するための医療アクセスの改善や政策に対する必要性が高まっています。また、国家による地域紛争や多国間紛争により、地政学的な状況の変化や市場ダイナミクスの混乱が瞬く間に引き起こされることがあります。さらに、公衆衛生は気候変動が及ぼす影響と密接に結びついており、気温上昇に伴い拡大する疾患や影響を受ける地域の患者さんの医療アクセスに関連した課題が生じます。
当社は、最も信頼され、サイエンスに基づき、データとテクノロジーの力を活用するバイオ医薬品企業を実現するため、引き続き成長していきます。現在の事業環境の下では、当社の患者さんへのコミットメントと、患者さんをサポートするための取り組みは、これまで以上に重要になっています。当社は、4つの重点疾患領域であるオンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の領域において、著しいアンメット・メディカル・ニーズのある疾患に対して、サイエンスから患者さんの人生を豊かにする革新的な医薬品を創出することを目指しています。当社のプログラムは、ヒトにおけるバリデーションが確実になされたターゲットに基づき、多様なモダリティ(治療手段)を網羅するものであり、細胞治療、遺伝子治療やデータサイエンスの領域で蓄積されつつある研究能力を活用して進められています。当社のグローバルな事業展開と多様な製品のポートフォリオは、イノベーションを拡大する基盤であり、当社は、患者さんへの新たな治療法の提供や、医薬品の適応症の拡大、既存製品の新たな地域での上市に引き続き取り組んでいきます。また、当社は、グローバル製品の成長と新製品の上市を通じた既存ポートフォリオの拡大によって、今後想定される一部製品の独占販売期間満了による収益の減少を上回る収益の増加を中期的に見込んでいます。当社は、この勢いを活かし、再構築された研究開発エンジンのもと、臨床段階にある約40の開発プログラムと200社以上との提携を通じて、多様なパイプラインの拡充に向けた取り組みを進めています。
2022年4月、当社は、業務執行の創造性と革新性を確保し、重点戦略分野へのさらなる注力により、将来にわたって競争力を維持するため、タケダ・エグゼクティブ・チーム(以下、「TET」)の体制を戦略的に変更しました。TETは、世代、国籍、性的指向、性別、の側面において多様性を有するメンバーにより構成されるチームです。グローバル ポートフォリオ ディビジョンは、製品のライフサイクルマネジメント、地理的拡大、市場浸透を通じてグローバル製品を成長させるとともに、後期開発パイプラインを引き続き進捗させるための支援を行い、製品上市や中国における事業拡大を推進するなど、当社の将来の成功に向けて機能を結集して新設されました。また、TETでは、データ、デジタルおよびテクノロジーとサステナビリティの当社が注力する分野の体制変更も行いました。
テクノロジーは、当社の事業に変革をもたらし、患者さんの人生を変え得る医薬品の創薬、開発、提供を通じて、より良い治療経験と治療結果を生み出しています。また、データとデジタルは、職場と働き方を抜本的に変革し、今後も引き続き変革を推進します。このように、データとテクノロジーの力を解き放つことが、当社の次の成長段階において重要となりますが、当社は既に、データやデジタルを活用した患者さん中心のハイブリッドなアプローチの臨床試験を取り入れて大きな前進を遂げており、今後もより多様な患者さんに臨床試験に参加していただけるよう取り組んでいきます。また、製造においては、自動目視検査機を備えた最先端の工場を建設しており、さらには、新しく入社した従業員向けの人工知能(AI)コンパニオンを使用したプログラムを作成しています。当社は、包括性や協同性を実現し、革新性を促進するため、すべての従業員がそれぞれにAIやデジタルを活用した経験を積めるよう取り組んでいきます。
私たちの存在意義(パーパス)を実現するためのサステナビリティとは、大きな社会的課題を解決するために、当社の揺るぎない価値観や文化、研究開発の原動力、製造および販売能力といった中核の資産と能力を活用して、持続可能な価値を創出し、すべてのステークホルダーに対して提供するというものであり、換言すると、サステナビリティとは当社のビジネスに対するアプローチです。当社は、サステナビリティについて、環境という枠を超えて、持続可能な医療制度の実現を含め、バリューチェーン全体に目を向けています。この取り組みは、私たちの医薬品をより多くの人々に迅速に届けるために、政策提言、段階的な価格設定や患者支援プログラム、未承認薬の人道的使用等を通じて包括的な取り組みを行い、患者さんが適切なタイミングで必要とする医薬品や治療にアクセスできることを可能にすることから始まります。また、当社は、持続可能かつ公平な方法で革新的医療を提供すること、そして、医療制度が直面する課題に取り組む上では、価値に基づく医療(バリューベースヘルスケア)が不可欠であると考えています。
多様な患者さんに価値を提供するためには、多様な人材を採用、育成し、確保することが重要です。また、当社は、多様性に富み、包括的で公平な職場環境を作ることが、従業員が積極的に当社の存在意義に沿って行動できる健全な企業文化を醸成するために不可欠であると考えており、従業員にとって理想的な働き方の実現を目指しています。当社の研究所や製造拠点、オフィスにおけるイノベーションは、ともに働く仲間の力を結集させてこそ創出することができるものであると考えています。当社は、従業員の意見を尊重し、従業員のウェルビーイング(心身の健康維持)と生涯学習のサポートを進めているほか、ハイブリッドなワーキングモデルにおける将来の理想的な働き方の検討に注力しています。
当社は、地球温暖化や環境汚染が人々の健康と当社の存在意義(パーパス)の実現に影響を及ぼすことを認識しており、環境課題に対する高い意識とリーダーシップをもって取り組んでいます。当社は、2020年以降、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成していますが、今後は、2035年までに当社の事業活動に起因するすべての温室効果ガス排出量(スコープ1、2を含む)を、2040年までに当社のバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(現在見積もっているスコープ3(注1)の温室効果ガス排出量を含む)をネット・ゼロにする(注2)ことを目指していきます。これは意欲的な挑戦となりますが、過去数年に得た経験から、当社の目指すべき目標であり、達成は可能であると考えています。また、当社は、プロダクト・スチュワードシップ、水資源の供給や廃棄物管理に注力し、環境汚染対策に積極的に取り組み、当社製品のライフサイクル全体を通して環境に対する影響を最小限に抑えています。
(注1) 実際のスコープ3の排出量は測定が困難であり不透明性が残ることからも、これらは取り組みを進めていく上で今後克服すべき重要な課題です。
(注2) 当社は、カーボンニュートラルと排出量ネットゼロを温室効果ガスプロトコルに基づき定義しています。
(新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大による影響と当社の取り組み)
① 当社の経営成績および財政状態に対するCOVID-19影響
当社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大に対して、引き続きあらゆる取り組みを行っており、業界としても様々な支援を行っております。COVID-19に対するワクチンが広く普及しつつありますが、当社は、当社プロトコールに加えて、各国・地域の公衆衛生関連規制を引き続き遵守し、新しい変異株を含め、COVID-19が当社の事業活動に及ぼす潜在的な影響を注視してまいります。
当社は、当社製品の需要動向について注視しておりますが、当社の医薬品は病院での待機手術を要しない重篤な慢性疾患や生命を脅かす恐れのある疾患に対するものが多く、COVID-19による影響は限定的です。グローバルなサプライチェーンにおいては、COVID-19の大流行による製品供給の重大な問題は発生しておらず、また、発生の可能性を予測しておりません。各国・地域の公衆衛生関連規制に従い、適切な場合においては、外勤の従業員は、医療従事者との対面の訪問業務を一部再開しております。前年度に一時的に休止しました臨床試験については、流行拡大の動向を注視しつつ、概ね再開しております。
金融市場の動向も注視を続けており、流動性や資金調達に係る重要な問題は現在見込んでおりません。
② COVID-19影響軽減のための当社の取り組み
当社は、バリュー(価値観)に基づき、従業員の健康・安全確保、当社医薬品を必要とされている患者さんへの提供、当社従業員が就業・居住するコミュニティでの感染の軽減およびサポートを中心に引き続き取り組んでおります。
COVID-19流行拡大に対する当社の取り組みについて、当年度における主なアップデートは次の通りです。
・感染力が強い変異株であるオミクロン株の影響により、新しい働き方であるハイブリッド・ワーキングモデルの導入は一部で一時的に遅延しています。今後、公衆衛生関連規制の違いや流行の分布・動態の推移、実務基準によって、職種や地域・国レベルで本モデルの導入状況が異なる見込みです。
・当社は、COVID-19の課題に対処するため二年以上にわたり支援を行ってきたグローバル危機管理委員会の活動を終了し、各国・地域の危機管理委員会が現地の保健機関からの情報に基づきガイダンスを提供する体制に移行しました。
・当社は、COVID-19に対処するため様々な取り組みを世界中で行っており、これには、二つの提携案件を通じてCOVID-19ワクチンを日本に供給することが含まれます。一つ目は、Novavax社のCOVID-19ワクチンの日本における開発、製造、流通に関する提携です。2021年9月、当社は、当社が日本で生産する同ワクチンについて厚生労働省に1億5,000万回接種分を供給する契約を締結しました。2022年4月、当社は、組換えタンパクを抗原としたCOVID-19ワクチン「ヌバキソビッド筋注」について、厚生労働省より初回免疫および追加免疫に対する製造販売承認を取得しました。
二つ目は、Moderna社のCOVID-19 mRNAワクチン「スパイクバックス筋注(旧販売名:COVID-19ワクチンモデルナ筋注)」の日本への輸入および供給に関するModerna社および厚生労働省との提携です。2021年5月以降、当社はModerna社の同ワクチンを日本において供給しています。当社とModerna社は、2021年10月、日本での1つのロットにおいて未穿刺のバイアル内に粒子状異物があるという報告を受け自主回収した計3ロットの同ワクチンについて、調査結果を公表しました。当調査結果では、本件は被接種者の安全を脅かすものではなく、この製品のベネフィット・リスク評価に悪影響を与えるものではないと記載されています。
当社は、2021年12月にModerna社および厚生労働省と合意に達した追加の1,800万回接種分とあわせ、2022年に合計9,300万回接種分を日本国内に供給します。本供給については2022年1月より開始しています。
2022年5月、当社およびModerna社は、2022年8月1日付で同ワクチンの製造販売承認を当社からモデルナ・ジャパンに継承することを発表しました。当社は、当面の間、COVID-19にかかわる特例臨時接種の枠組みの下、同ワクチンの流通を引き続き担います。
③ COVID-19の世界的な拡大に伴う事業等のリスク
「2 事業等のリスク」をご参照ください。
④ 2021年度実績におけるCOVID-19影響
当年度におけるCOVID-19のグローバルな流行拡大に伴う業績への影響は、軽微でありました。COVID-19が流行している期間においては、ニューロサイエンス(神経精神疾患)といった一部の疾患領域において、外出制限期間中に患者さんの医療機関訪問の頻度が減少する等のマイナス影響が見られてきました。これは前年度の最初の数ヶ月において顕著でした。以降この動向は断続的に発生し、COVID-19流行前の水準にまで完全に回復しておりませんが、当社の生命を救う一定数の医薬品はこのような環境下においても耐久力を示し、また、成長を遂げることが出来ています。なお、業績影響は軽微でしたが、下期においてはオミクロン株による感染拡大により、幾つかの製品の出荷の遅れや患者さんの診断数の減少といった若干の影響がみられました。
(ウクライナとロシアにおける事業について)
すべての患者さんと従業員を大切にするという私たちの変わらぬ約束は、危機の中において、より重要なものとなっています。当社は従業員の安全を確保し、ウクライナや周辺地域の患者さんに必要な医薬品を提供し続けるために、あらゆる努力を重ねています。
当社は、国際赤十字・赤新月社連盟に3億円(約260万米ドル)を寄付し、国際的な人道的活動を支援しています。国際赤十字・赤新月社連盟は、今回の事態を受け避難している方々に地域での緊急人道支援を積極的に行っています。また、当社は医療を必要としている患者さんのために、24時間体制で医療行為を行っている病院に医薬品を無償提供しています。
当社は、患者さんへの医薬品の安定供給と従業員への支援を維持するために必要不可欠な活動を除き、ロシアにおける活動を中止しました。これには、すべての新規投資の中止、広告・宣伝活動の中止、新規の臨床試験を実施しないこと、および進行中の臨床試験への新規患者登録の中止を含みます。
当社はタケダイズムと患者さんを中心に考えるという私たちの価値観、そして私たちの医薬品や治療法を必要とするウクライナやロシア、周辺地域の患者さんへの倫理的な責任に基づいた必要不可欠な活動に注力します。それと同時に、当社はロシアに課せられたすべての国際的な制裁を遵守しています。
また、ウクライナで被害を受けた方々への寄付金や医薬品の無償提供などの人道的支援活動を強化します。そして、周辺地域の患者さんが必要とする、新たな支援についても検討を続けます。
当社はこれからも状況を注視し、私たちの価値観に基づき、適切に行動してまいります。
当年度のロシア/CISにおける売上収益は、連結の売上収益3兆5,690億円の1.7%でした(「3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容、①当年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容、(a)当年度の経営成績の分析、(iii)当年度における業績の概要」の地域別売上収益をご参照ください)。これら国々における危機による当年度の当社業績に対する重大な影響はありませんでした。しかしながら、今後の事態の進展によっては、当社の業績や財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
[主要製品一覧]
消化器系疾患領域における主要製品は以下の通りです。
・ エンティビオ/エンタイビオ(ベドリズマブ):「エンティビオ」は、中等症から重症の潰瘍性大腸炎・クローン病に対する治療剤です。「エンティビオ」は、2014年に米国および欧州において発売以来、売上が伸長しており、2021年度の当社グループの売上トップ製品です。現在、「エンティビオ」は世界74カ国で承認されています。当社は本剤の可能性を最大化するため、その他の国においても本剤の承認取得を進め、さらなる適応症の開発を行うとともに、皮下注射製剤の開発を行います。2021年度の「エンティビオ」の売上収益は5,218億円となりました。
・ アロフィセル(ダルバドストロセル):「アロフィセル」は、非活動期/軽度活動期の成人の管腔型クローン病患者さんにおける、少なくとも一回以上の既存治療または生物学的製剤による治療が効果不十分であった複雑痔瘻に対する治療薬です。「アロフィセル」は、2018年に欧州の中央審査により販売承認(MA)された、欧州初の同種異系幹細胞療法であり、日本でも2021年に承認されました。2021年度の「アロフィセル」の売上収益は18億円となりました。
・タケキャブ(ボノプラザンフマル酸塩):酸関連疾患の治療剤「タケキャブ」は、2015年に日本で発売され、逆流性食道炎や低用量アスピリン投与時における胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発抑制などの効能により飛躍的な成長を遂げました。「タケキャブ」(中国の製品名:Vocinti)は、2019年に胃食道逆流症の治療剤として中国で承認されました。2021年度の「タケキャブ」の売上収益は1,024億円となりました。
・GATTEX/レベスティブ(テデュグルチド[DNA組換え型]):非経口(静脈栄養)サポートを必要とする短腸症候群(SBS)の治療薬です。2019年、FDAより、「GATTEX」の1才以上の小児SBS患者さんへの適応拡大が承認されました。「レベスティブ」は2021年に日本において承認されました。2021年度の「GATTEX/レベスティブ」の売上収益は758億円となりました。
・ DEXILANT (dexlansoprazole):「DEXILANT」は、全グレードのびらん性逆流性食道炎の治療およびその維持療法、症候性非びらん性胃食道逆流症(GERD)に伴う胸やけの緩和・治療など、胃酸関連疾患の治療薬です。後発品の市場参入により、売上は減少傾向にあり、2021年度の「DEXILANT」の売上収益は508億円となりました。
希少疾患領域における主要製品は以下の通りです。
・タクザイロ(ラナデルマブ):「タクザイロ」は、遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作予防に用いられます。「タクザイロ」は、HAEの患者さんにおいて慢性的に制御不能な酵素である血漿カリクレインに選択的に結合し、減少させる完全ヒト型モノクローナル抗体です。「タクザイロ」は2018年に米国と欧州にて、2020年に中国にて、2022年に日本にて承認され、さらなる地理的拡大を目指しています。2021年度の「タクザイロ」の売上収益は1,032億円となりました。
・LIVTENCITY (maribavir):「LIVTENCITY」は、成人患者さんと小児患者さん(12歳以上で体重35 kg以上)に対する、ガンシクロビル、バルガンシクロビル、ホスカルネット、またはシドフォビルに対して遺伝子型抵抗性(無しも含みます)を示す難治性の移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症治療薬であり、2021年12月に米国において発売されました。「LIVTENCITY」はpUL97プロテインキナーゼとその天然基質を標的として阻害する経口投与可能な最初で唯一の抗CMV治療薬であり、発売当初から売上が順調に伸長しています。2021年度の「LIVTENCITY」の売上収益は13億円となりました。
・エラプレース(イデュルスルファーゼ):「エラプレース」は、ハンター症候群(ムコ多糖症II型またはMPS II)に対する酵素補充治療薬です。2021年度の「エラプレース」の売上収益は731億円となりました。
・リプレガル(アガルシダーゼ アルファ):「リプレガル」は、ファブリー病に対して米国以外の市場で販売され、2020年に中国でも承認された酵素補充療法治療薬です。当社は、2022年2月に大日本住友製薬株式会社から「リプレガル」の日本における製造販売承認を承継し、同剤の販売の移管を受けました。ファブリー病は、脂肪の分解に関与するリソソーム酵素α-ガラクトシダーゼAの活性の欠如に起因する遺伝子性の希少疾患です。2021年度の「リプレガル」の売上収益は517億円となりました。
・アドベイト(抗血友病因子(遺伝子組換え型)):「アドベイト」は、血友病A(血液凝固第Ⅷ因子欠乏)の治療薬であり、出血の制御と予防、周術期管理および出血の頻度を予防または軽減するために行う定期補充療法に使用されます。2021年度の「アドベイト」の売上収益は1,185億円となりました。
・アディノベイト/ADYNOVI(抗血友病因子(遺伝子組換え型) [PEG化]):「アディノベイト」は、血友病A治療薬であり、遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤です。「アディノベイト」は遺伝子組換え型半減期延長第Ⅷ因子製剤「アドベイト」と同じ製造工程で作られ、当社がネクター社より独占的にライセンス取得しているPEG化(体内での循環時間を延長し、投与頻度を減らすための化学修飾処理)技術を追加したものです。2021年度の「アディノベイト」の売上収益は607億円となりました。
血漿分画製剤(免疫疾患)領域における主要製品は以下の通りです。
・GAMMAGARD LIQUID(静注用人免疫グロブリン10%製剤):「GAMMAGARD LIQUID」は、抗体補充療法用免疫グロブリン(以下、「IG」)の液体製剤です。「GAMMAGARD LIQUID」は、原発性免疫不全症(PID)の成人および2歳以上の小児患者さんに対して使用され、静注または皮下注のいずれかの方法で投与します。また、「GAMMAGARD LIQUID」は、成人の多巣性運動ニューロパチー(MMN)患者さんに対しても静注投与にて使用されます。「GAMMAGARD LIQUID」は、米国以外の多くの国で製品名「KIOVIG」として販売されています。「KIOVIG」は、欧州においてPIDおよび特定の続発性免疫不全症患者さん、ならびに成人のMMN患者さんへの使用が承認されています。
・HYQVIA(ヒト免疫グロブリン注射製剤10%):「HYQVIA」は、ヒト免疫グロブリン(IG)および遺伝子組換え型ヒトヒアルロニダーゼ(Halozyme社よりライセンス取得)からなる製剤です。「HYQVIA」は、PID患者さんに対して最長で1ヶ月に1回の投与で、1回あたりの注射部位一ヶ所でIGの全治療用量の投与が可能な唯一のIG皮下注用治療薬です。「HYQVIA」は、米国では成人PID患者さんへの使用、また欧州においてPID症候群および骨髄腫患者さんまたは重度の続発性低ガンマグロブリン血症および回帰感染を伴う慢性リンパ性白血病患者さんへの使用が承認されております。
・CUVITRU(ヒト免疫グロブリン皮下注用20%製剤):「CUVITRU」は、原発性体液性免疫不全症の成人および2歳以上の小児患者さんに対する補充療法に用いられます。「CUVITRU」は、欧州では特定の続発性免疫不全の治療薬としても承認されています。「CUVITRU」は、プロリン不含で、投与部位1ヶ所あたりの耐用量内で最大60 mL(12g)および1時間あたり60 mLまで投与可能な唯一の20%皮下IG治療薬であり、従来の皮下IG治療薬と比較してより少ない投与部位および短い投与時間での使用が可能です。
2021年度の「GAMMAGARD LIQUID/KIOVIG」「HYQVIA」「CUVITRU」を含む免疫グロブリン製剤の売上収益は3,859億円となりました。
・FLEXBUMIN(ヒトアルブミンバッグ製剤)およびヒトアルブミン(ガラス瓶製剤):「FLEXBUMIN」および「ヒトアルブミン」は、濃度5%および25%の液体製剤として販売されています。両製品とも、血液量減少症、一般的な原因および火傷による低アルブミン血症、ならびに心肺バイパス手術時のポンプのプライミングに使用されます。また、「FLEXBUMIN」25%製剤は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)およびネフローゼに関連する低アルブミン血症、ならびに新生児溶血性疾患(HDN)にも適応されます。2021年度の「FLEXBUMIN」および「ヒトアルブミン(ガラス瓶製剤入り)」を含むアルブミン製剤の売上収益は900億円となりました。
オンコロジー領域における主要製品は以下の通りです。
・アルンブリグ(ブリグチニブ):「アルンブリグ」は、非小細胞肺がん(NSCLC)治療に使用される経口投与の低分子未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害剤であり、2017年に米国で迅速承認され、2018年に欧州委員会より製造販売承認を取得しました。2020年5月に米国で初めて、新たにALK陽性転移性NSCLCと診断された患者さんに対する効能が追加されました。2021年1月に日本、2022年3月に中国において承認されました。2021年度の「アルンブリグ」の売上収益は136億円となりました。
・EXKIVITY(mobocertinib)は、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行した上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療薬であり、2021年9月に米国において迅速承認制度のもとで承認されました。発売以来、高度医療機関および開業医において売上が急速に伸長しています。2021年度の「EXKIVITY」の売上収益は10億円となりました。
・ベルケイド(ボルテゾミブ):「ベルケイド」は、多発性骨髄腫(MM)や少なくとも治療を一つ受けたマントル細胞リンパ腫(MCL)に対する治療剤であり、2003年に米国において承認されました。2008年にミレニアム社を買収して以来、「ベルケイド」の売上収益は当社グループの売上収益の増加に貢献してきました。なお、2022年に米国において後発品が市場に参入することにより、今後売上は減少することが見込まれます。2021年度の「ベルケイド」の売上収益は1,100億円となりました。
・リュープリン/ENANTONE(リュープロレリン):「リュープリン」は、前立腺がんや乳がん、小児の中枢性思春期早発症、子宮内膜症、不妊の治療や、子宮筋腫による貧血の症状改善に用いられる治療薬です。「リュープリン」の特許期間は満了していますが、製造の観点から後発品の市場参入は限定的です。2021年度の「リュープリン」の売上収益は1,065億円となりました。
・ニンラーロ(イキサゾミブ):「ニンラーロ」は、多発性骨髄腫(MM)治療に対する初めての経口プロテアソーム阻害剤です。「ニンラーロ」は、再発又は難治性の多発性骨髄腫の効能で、2015年に米国で承認されて以来、2016年に欧州、2017年に日本、2018年に中国で承認されております。日本においては、多発性骨髄腫の維持療法の治療薬としても承認を受けております。2021年度の「ニンラーロ」の売上収益は912億円となりました。
・アドセトリス(ブレンツキシマブ ベドチン):「アドセトリス」は、ホジキンリンパ腫(HL)および全身性未分化大細胞リンパ腫(sALCL)の治療に使用される抗癌剤で、2020年5月には中国で承認され世界70カ国以上で販売承認を受けております。当社は、Seagen社と「アドセトリス」を共同開発し、米国およびカナダ以外の国での販売権を保有しています。2021年度の「アドセトリス」の売上収益は692億円となりました。
ニューロサイエンス領域における主要製品は以下の通りです。
・バイバンス/ビバンセ(リスデキサンフェタミンメシル酸塩):「バイバンス」は、6歳以上の注意欠陥・多動性障害(ADHD)患者さんおよび成人の中程度から重度の過食性障害患者さんの治療に用いられる中枢神経刺激剤です。2021年度における「バイバンス」の売上収益は3,271億円となりました。
・トリンテリックス(ボルチオキセチン臭化水素酸塩):「トリンテリックス」は、成人大うつ病性障害の治療に適応される抗うつ薬です。「トリンテリックス」はH. Lundbeck A/S社と共同開発し、当社は米国および日本での販売権を保有しており、米国では2014年、また日本では2019年より販売しています。2021年度の「トリンテリックス」の売上収益は823億円となりました。
売上収益の地域別内訳は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 事業セグメントおよび売上収益」をご参照下さい。
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