当年度の研究開発費の総額は
医薬品の研究開発のプロセスは、長期にわたり多額の費用を伴い、その期間は10年を越えることもあります。このプロセスには、新薬の有効性および安全性の評価のための複数の試験、データを審査し販売承認の可否を判断する規制当局に対する申請が含まれます。こうした精査の過程を通過し、臨床での治療に用いることができる候補物質はごく僅かです。承認取得後も、上市後の製品に対しては、メディカルアフェアーズやその他の投資を含め、継続的な研究開発活動による支援が行われます。
臨床試験は、地域的および国際的な規制ガイドラインを遵守し、通常5から7年もしくはそれ以上を費やして実施されるものであり、相応の費用を伴います。通常、臨床試験は医薬品規制調和国際会議(ICH)が制定したガイドラインに沿って実施されます。これに関わる規制当局は、日本では厚生労働省、米国では食品医薬品局(FDA)、欧州連合では欧州医薬品庁(EMA)、中国では国家薬品監督管理局(NMPA)です。
ヒトの臨床試験は以下の3相で実施されます(各相が一部重複することもあります):
・臨床第1相(P-1)試験
少人数の健康な成人の志願者を被験者として、薬物の安全性、吸収、分布、代謝、排泄について評価するために実施
・臨床第2相(P-2)試験
少人数の志願患者さんを被験者として、安全性、有効性、用量および用法を評価するために実施
臨床第2相試験はP-2aとP-2bとの2つのサブカテゴリーに分割されることがあります。P-2a試験は通常臨床上の有効性または生物学的活性を示すためにデザインされたパイロット試験であり、P-2b試験は薬物が最少の副作用で生物学的活性を示す最適用量を探索するために行われます。
・臨床第3相(P-3)試験
大人数の志願患者さんを被験者として、既存の薬剤またはプラセボと比較した安全性および有効性を評価するために実施
これら3相のうち、臨床第3相にかかる開発費用が最も大きく、臨床第3相試験へ進めるか否かの決定は、医薬品開発における重要なビジネス判断となります。臨床第3相試験を通過した候補薬物については、管轄の規制当局に新薬承認申請書(NDA)、生物製剤承認申請(BLA)または医薬品販売承認申請(MAA)を提出し、規制当局より承認を取得した場合に上市が可能となります。NDA、BLA、MAAの作成には、膨大な量のデータの収集、検証、分析が必要であり、多額の費用が伴います。製品上市後も、保健当局により有害事象の市販後調査や、当該医薬品のリスク・ベネフィットに関する追加情報を提供するための市販後試験の実施を求められることがあります。
当社の研究開発は、サイエンスにより、患者さんの人生を根本的に変えうるような非常に革新性が高い医薬品を創製することに注力しています。当社は、「革新的なバイオ医薬品」、「血漿分画製剤」および「ワクチン」の3つの分野において研究開発活動を実施しています。「革新的なバイオ医薬品」に対する研究開発は、当社の研究開発投資の中で最も高い比率を占めています。「革新的なバイオ医薬品」における重点疾患領域(オンコロジー、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患)には未だ有効な治療法が確立されていない疾患に対する高い医療ニーズ(アンメット・メディカル・ニーズ)が存在し、当社はベストインクラスあるいはファーストインクラスとなりうる画期的な新規候補物質を創出してまいりました。これまでの数年間、Shire社の買収も含め、当社では新たな研究開発能力、さらには次世代プラットフォームに対して社内および外部との提携によるネットワークを通じて投資し、細胞療法および遺伝子治療の領域の強化を図っています。
当社のパイプラインは、当社事業の短期的および長期的かつ持続的な成長を支えるものです。初回の承認取得後も上市後の製品に対して、地理的拡大や効能追加に加え、市販後調査および剤型追加の可能性を含めた継続的な研究開発活動による支援体制が整っています。当社の研究開発チームは、販売部門との緊密な連携を通じ既発売品の価値の最大化を図り、販売活動を通じて得られた知見を研究開発戦略やポートフォリオに反映します。
自社の研究開発機能向上への注力に加え、社外パートナーとの提携も、当社研究開発パイプライン強化のための戦略における重要な要素の一つです。社外提携の拡充と多様化に向けた戦略により、様々な新製品の研究に参画し、当社が大きな研究関連のブレイクスルーを達成する可能性を高めます。
当社の主要な研究開発施設には以下を含みます:
• 湘南ヘルスイノベーションパーク:日本の神奈川県藤沢・鎌倉地域に位置する湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、「湘南アイパーク」)は、当社の湘南研究所として2011年に設立された、当社のニューロサイエンス研究の主要拠点です。2018年4月に、当社は、サイエンスのイノベーションを推進し、多様な外部パートナーとのライフサイエンスエコシステムを構築するために、湘南アイパークを開所しました。2020年4月に、当社はより多様なパートナーを招致し、湘南アイパークのさらなる成功を目指すため、湘南アイパークの所有権を信託設定することとしました。当社は、アンカーテナントとして、信託先と20年間のリースバック契約を締結するとともに、今後も日本におけるライフサイエンスの研究活性化に注力します。
• グレーターボストン地区研究開発サイト:当社のボストン研究開発サイトは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに位置しています。本サイトは当社のグローバルでのオンコロジー、消化器系疾患領域ならびに希少遺伝子疾患および血液疾患領域の研究開発の中心であり、加えて血漿分画製剤やワクチンなど他の疾患領域の研究開発や免疫調節および生物学的製剤の研究も支援しています。最近開設された最先端の細胞療法の製造施設を備えた、当社の細胞療法研究の拠点です。
• サンディエゴ研究開発サイト:米国カリフォルニア州サンディエゴにある当社の研究開発拠点であり、消化器系疾患およびニューロサイエンス領域における研究開発を支援しています。本研究サイトは、バイオテックのような形態で研究を行う拠点であり、構造生物学および生物物理学などの社内技術を駆使し、社内外で行われる研究を促進します。
• オーストリア ウィーン研究開発サイト:オーストリア ウィーンおよびオース近郊に位置する当社の研究開発サイトであり、血漿分画製剤および遺伝子治療分野における研究開発を支援しています。本研究サイトは、血漿分画製剤および遺伝子治療薬の製造施設を備えています。
当社の 2021年4月 以降の主要な研究開発活動の進捗は、以下のとおりです。
研究開発パイプライン
オンコロジー
世界中のがん患者さんに革新的な新薬をお届けするために努力し、患者さんの生活を改善するという情熱をもって、画期的なイノベーションの探求に取り組んでいます。本疾患領域では、(1)既発売品である「ニンラーロ」、「アドセトリス」、「アイクルシグ」のライフサイクルマネジメントならびに多発性骨髄腫およびその他血液がんのパイプラインへの継続的な研究開発投資を通じた、血液がんにおける基盤的な専門性の構築、(2)既発売品である「アルンブリグ」「EXKIVITY」を含む肺がんを対象とするポートフォリオおよび標的を絞った肺がん患者さんを対象とする開発プログラムのさらなる拡充、(3)社内および社外との提携を通じ、新規のがん免疫療法標的および自然免疫システムを活用した次世代基盤技術の追求の3つの分野にフォーカスしています。
[ニンラーロ 一般名:イキサゾミブ]
- 2021年5月、当社は、「ニンラーロ」について、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫に対する初回治療後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より多発性骨髄腫における維持療法の効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、主に、ランダム化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際臨床第3相試験である「TOURMALINE-MM4試験」の結果に基づくものです。本試験では、幹細胞移植歴のない成人の多発性骨髄腫患者を対象に無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として、本剤による維持療法がPFSを統計学的に有意に改善することが確認されました。ニンラーロの維持療法における安全性プロファイルは、単剤療法における既知の安全性プロファイルと同様であり、「TOURMALINE-MM4試験」で新たな懸念は確認されませんでした。
[アイクルシグ 一般名:ポナチニブ]
- 2021年6月、当社は、「アイクルシグ」について、バーチャルで開催される第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会および第26回欧州血液学会(EHA)年次総会のオーラルセッションにおいて、臨床第2相試験「OPTIC(Optimizing Ponatinib Treatment In CML)」の主要解析データを発表しました。変異の有無にかかわらず治療抵抗性例の患者群での治療を評価する「OPTIC試験」は主要評価項目を達成しました。慢性期の慢性骨髄性白血病(CP-CML)患者において、「アイクルシグ」1日45mgを開始用量とし、BCR-ABL1 IS 1%以下達成時に15mgに減量するレジメンにより、同剤の最適なベネフィット・リスクプロファイルが示されました。本試験により、本剤の安全性プロファイルは動脈閉塞イベント(AOE)を含め臨床的に管理可能であることが示唆されました。
[アルンブリグ 一般名:ブリグチニブ]
- 2021年6月、当社は、「アルンブリグ」について国内でALK融合タンパクキット「ベンタナ OptiView ALK(D5F3)」(「ベンタナALK」)によりALK融合遺伝子陽性(ALK陽性)が確認された非小細胞肺癌(NSCLC)患者の一次治療に使用が可能となったことを公表しました。「ベンタナALK」は、ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社が製造販売する免疫組織化学染色法(IHC法)を測定原理とした体外診断用医薬品で、「アルンブリグ」に対するコンパニオン診断薬として承認されました。蛍光 in situ ハイブリダイゼーション(FISH)法に加え、「ベンタナALK」がコンパニオン診断薬として追加承認されたことで、より幅広く、ALK陽性NSCLC患者に対して「アルンブリグ」による治療機会を提供できることとなりました。
- 2022年3月、当社は、「アルンブリグ」について、ALK融合遺伝子陽性(ALK陽性)の限局進行または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)に対する単剤療法として、中国の国家薬品監督管理局(NMPA)より承認を取得したことを公表しました。本剤は、米国のNational Comprehensive Cancer Network (NCCN)のガイドラインにおいて推奨される一次治療薬として記載されており、中国臨床腫瘍学会(CSCO)のNSCLCの診断・治療ガイドラインにも記載されています。「アルンブリグ」は、当社として初めて中国で承認された肺癌治療薬です。
[アドセトリス 一般名:ブレンツキシマブ ベドチン]
- 2021年9月、当社は、「アドセトリス」について、CD30陽性ホジキンリンパ腫における小児の一次治療に対する用法用量に関する製造販売承認事項一部変更承認の申請を日本において行ったことを公表しました。今回の申請は、未治療進行期ホジキンリンパ腫の小児患者を対象とし、「アドセトリス」とAVD(「ドキソルビシン」+「ビンブラスチン」+「ダカルバジン」)の併用療法における一次治療としての有効性および安全性を評価した国際共同第1/2相試験「C25004試験」の結果に基づくものです。
- 2022年5月、当社は、「アドセトリス」について、CD30陽性ホジキンリンパ腫における小児の一次治療に対する用法用量について、厚生労働省より製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。
- 2022年5月、当社とSeagen Inc.は、「アドセトリス」と化学療法の併用を検討した臨床第3相試験である「ECHELON-1」の全生存期間(OS)のデータを公表しました。本データは第59回米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO)および第27回欧州血液学会議年次総会(EHA)のオーラルセッションにおいて発表しました。未治療のⅢ期またはⅣ期の成人古典的ホジキンリンパ腫患者を対象とした「ECHELON-1試験」において、「アドセトリス」、「ドキソルビシン」、「ビンブラスチン」および「ダカルバジン」併用群(A+AVD)は、「ドキソルビシン」、「ブレオマイシン」、「ビンブラスチン」および「ダカルバジン」併用群(ABVD)に対して統計学的に有意なOSの改善を示しました。約6年間の観察期間(中央値73ヶ月)において、A+AVDの併用療法を受けた患者群は死亡リスクが41%低下し(ハザード比[HR]0.59;95%信頼区間[CI]:0.396-0.879)、推定全生存率は6年時点で93.9%(95%信頼区間[CI]:91.6-95.5)でした。「アドセトリス」の安全性プロファイルはこれまでの臨床試験の結果と一貫しており、新たな安全性シグナルは確認されませんでした。
[カボメティクス 一般名:カボザンチニブ]
- 2021年8月、当社と小野薬品工業株式会社(小野薬品)は、根治切除不能又は転移性の腎細胞がんを対象とした「カボメティクス」と小野薬品のヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体、「オプジーボ」(ニボルマブ)の併用療法について、厚生労働省より国内製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、未治療の進行性又は転移性の腎細胞がん患者を対象に「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法と、対象群である「スニチニブ」単剤療法を比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第3相「CheckMate-9ER試験」の結果に基づいています。本試験において、「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法群は、対象群と比較して、最終解析で主要評価項目である盲検下独立中央判定委員会(BICR)の評価による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目である全生存期間(OS)およびBICRの評価による奏効率(ORR)のいずれにおいても有意かつ臨床的に意義のある改善を示しました。本試験における「オプジーボ」と「カボメティクス」の併用療法の安全性プロファイルは、各々の単剤投与でこれまでに報告されているものと一貫していました。
[ゼジューラ 一般名:ニラパリブ]
- 2021年9月、当社は、経口のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬「ゼジューラカプセル100㎎」(「ゼジューラカプセル」)の剤形追加として、「ゼジューラ錠100㎎」(「ゼジューラ錠」)の製造販売承認を厚生労働省より取得したことを公表しました。今回の承認は、「ゼジューラカプセル」と「ゼジューラ錠」の同等性を確認した「ヒト生物学的同等性試験(3000-01-004 study)および溶出試験」の結果に基づいています。「ゼジューラカプセル」の貯法は冷蔵ですが、このたび承認を取得した「ゼジューラ錠」は、室温で管理することが可能です。
[EXKIVITY 一般名:mobocertinib]
- 2021年5月、当社は、「mobocertinib」の安全性および有効性を評価する臨床第1/2相試験から、プラチナ製剤ベースの化学療法の治療歴を有する上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異陽性を伴う転移性非小細胞肺がん患者を対象とした最新データを公表しました。試験結果から、「mobocertinib」は1年間の追跡調査後も臨床的に意義のある効果を持続することが示され、バーチャルで開催される第57回米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表されました。本試験の結果、全生存期間(OS)の中央値は24ヵ月、フォローアップ期間の中央値は14ヵ月、多様なEGFRエクソン20挿入変異に対して奏功したことが示されました。その他の主要なデータポイントである客観的奏効率(ORR)、奏功期間(DoR)の中央値および病勢コントロール率(DCR)においては、既報データと一貫していました。また、安全性プロファイルにおいても対応可能なもので、既報データと一貫していました。
- 2021年7月、当社は、中国国家薬品監督管理局(NMPA)の国家食品医薬品監督管理局医薬品審査評価センター (CDE)が、EGFRエクソン20の変異を伴うNSCLCの成人患者を対象とする、クラス‐1イノベーティブドラッグ「mobocertinib」の新薬承認申請(NDA)を受理し、優先審査に指定したことを公表しました。
- 2021年9月、当社は、プラチナ製剤ベースの化学療法を実施中あるいは実施後に病勢が進行し、米国食品医薬品局(FDA)で承認された検査で検出された上皮成長因子受容体(EGFR)エクソン20挿入変異を伴う局所進行または転移性非小細胞肺がんの成人患者に対する治療薬「EXKIVITY」について、FDAより承認を取得しました。本承認は、プラチナ製剤ベースによる治療歴を有するEGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者114人を対象とし、「EXKIVITY」160 mgを1日1回投与した臨床第1/2相試験における、プラチナ製剤による前治療を受けた患者集団の解析結果に基づくものです。「EXKIVITY」は、FDAにより優先審査に指定され、Breakthrough Therapy指定、Fast Track指定、およびOrphan Drug指定を受けた、EGFRエクソン20挿入変異を標的とするよう特異的に設計された初めてかつ唯一承認を取得した経口治療薬です。本適応症は、奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)に基づき、迅速承認制度のもとで承認されています。本適応症の継続的な承認は、検証試験における臨床的有用性の確認と説明が条件となります。FDAは、EGFRエクソン20挿入変異を伴う非小細胞肺がん患者の特定のために、「EXKIVITY」の次世代シークエンサー(NGS)であるコンパニオン診断薬として、ThermoFisher Scientific社の「Oncomine Dx Target Test」を同時承認しました。
[ベクティビックス 一般名:パニツムマブ]
- 2022年3月、当社は、「ベクティビックス」について国内臨床第3相試験である「PARADIGM試験」(Panitumumab and RAS, Diagnostically useful Gene Mutation for mCRC)において主要評価項目を達成したことを公表しました。「PARADIGM試験」は、RAS遺伝子野生型で化学療法未治療の切除不能進行再発大腸がん患者を対象に、mFOLFOX6+「ベバシズマブ」併用療法とmFOLFOX6+「ベクティビックス」併用療法の有効性および安全性を比較する第3相無作為化比較試験です。本試験ではRAS遺伝子野生型で原発巣占居部位が左側(下行結腸、S状結腸、直腸)である大腸がん患者における適切な治療を世界で初めて前向きに検証しました。今回の結果速報では、主要評価項目である全生存期間(OS)において、原発巣占居部位が左側および全体、いずれの集団でもmFOLFOX6+「ベクティビックス」併用療法群がmFOLFOX6+「ベバシズマブ」併用療法群に対し、統計学的に有意な延長を認めました。なお、本試験における「ベクティビックス」投与時の安全性プロファイルは、現在の添付文書の内容と同様でした。
[開発コード:TAK-924 一般名:pevonedistat]
- 2021年9月、当社は、臨床第3相「PANTHER試験(Pevonedistat-3001)」において、主要評価項目である無イベント生存期間(EFS)について、事前に規定した統計学的に有意な延長を達成しなかったことを公表しました。本試験では、高リスク骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)および低芽球性の急性骨髄性白血病(AML)の患者を対象に、ファーストライン治療として「pevonedistat」と「アザシチジン」の併用療法と「アザシチジン」単剤療法を比較しEFSの延長を評価しました。本試験におけるEFSの定義は、高リスクMDSまたはCMML患者では死亡またはAMLへの移行のいずれか早い方までの期間、AML患者では死亡までの期間としています。当社は、すべての研究開発活動を中止しました。
希少遺伝子疾患および血液疾患
当社は、希少遺伝子疾患および血液疾患において、高いアンメット・メディカル・ニーズが存在する複数の疾患に注力しています。遺伝性血管性浮腫においては、「タクザイロ」におけるC1インヒビターが正常レベルのブラジキニン介在性血管性浮腫に対する評価を含め、同製品をはじめとするライフサイクルマネジメントプログラムへの継続的な研究開発投資を通じて、既存の治療パラダイムの変革を目指します。希少血液疾患においては、「アドベイト」、「アディノベイト/ADYNOVI」に加えて、免疫性血栓性血小板減少性紫斑病(iTTP)および先天性血栓性血小板減少性紫斑病(cTTP)治療に対するパイプラインである「TAK-755」の開発を通じて、出血性疾患治療における現在のニーズへ対応することに注力しています。希少遺伝子疾患およびその他の疾患においては、ライソゾーム病(LSD)に対し、「ELAPRASE」や「リプレガル」を含む既発売品、ハンター症候群治療薬pabinafusp alfaをはじめとする後期開発段階の治験中の薬剤およびパイプライン候補品を含む治療薬を開発しています。また、「LIVTENCITY」においては、移植後サイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症の治療を再定義することを目指しています。当社は、希少疾患の患者さんに対し差別化された遺伝子治療の候補品を開発し、機能回復を提供するための研究開発機能を構築しています。
[タクザイロ 一般名:ラナデルマブ]
- 2021年7月、当社は、「タクザイロ」300mgを最長2.5年間、2週間間隔で投与した場合の長期の安全性(主要評価項目)および有効性を評価した、 臨床第3相「HELP(遺伝性血管性浮腫の長期抑制)試験の非盲検延長(OLE)試験」で得られた2つの最終解析結果を公表しました。最初の解析では、試験対象集団(n=212)で観察された発作発現回数の平均(最小値、最大値)低下率は、ベースラインと比較して87.4%(-100;852.8)であり、低下率の中央値は97.7%、「タクザイロ」の患者への平均投与期間(標準偏差)は29.6ヵ月(8.2)でした。安定期間(投与70日目から投与期間終了時)において、発作発現率はさらに平均92.4%、中央値98.2%まで低下しました。また、追加の解析では、特定の背景および疾患の特徴を有するHAE患者のサブグループにおいて、「タクザイロ」は予定されていた132週間の延長投与期間でHAE発作を抑制し、良好な忍容性を示しました。これらのデータは、2021年欧州アレルギー臨床免疫学会議(EAACI:European Academy of Allergy and Clinical Immunology)において発表されました。
- 2022年2月、当社は、成人および12歳以上の小児の遺伝性血管性浮腫(HAE)の発作抑制に対する「タクザイロ」の単回投与プレフィルドシリンジ(PFS)製剤について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したことを公表しました。PFSは薬剤が充填済みの製剤で、従来のバイアル製剤より準備工程が少なく、投与に要する器具や廃棄物を減らします。
- 2022年2月、当社は、北米における遺伝性血管性浮腫(HAE)I型またはII型の患者に対する治療として「タクザイロ」の観察臨床第4相「EMPOWER試験」の中間実臨床データや、12歳以上のHAE患者における「タクザイロ」の長期安全性および有効性を評価する臨床第3相試験「HELP非盲検延長(OLE)試験」の事後解析からの知見など4件の抄録を、米国アレルギー・喘息・免疫学会(American Academy of Allergy, Asthma, and Immunology: AAAAI)の第78回年次総会で発表しました。臨床第4相「EMPOWER試験」の中間実臨床データにおいては、発作発現率の低下ならびに治療満足度およびその他の項目における患者報告アウトカムのスコアの改善を示しました。患者報告アウトカムの中間結果において、新規の処方患者では1ヵ月あたりの発作発現率の低下、ならびに既存の処方患者では血管性浮腫コントロールテスト(AECT)を用いて12ヵ月の血管性浮腫コントロールの維持が確認されました。また、臨床第3相試験「HELP試験」および「HELP OLE試験」の事後解析より、アンドロゲン治療歴がある患者における「タクザイロ」の発作発現率の低下は両試験集団で同等でした。
- 2022年3月、当社は、「タクザイロ皮下注300mgシリンジ」(遺伝子組換え)について、成人および12歳以上の小児患者を対象に、遺伝性血管性浮腫(HAE)の急性発作の発症抑制を効能・効果として、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、主にグローバル臨床第3相試験である「HELP試験」、臨床第3相「HELP非盲検延長(OLE)試験」、および日本人患者を対象とした臨床第3相試験の結果に基づくものです。これらの試験において、「タクザイロ」はHAEの急性発作発症抑制薬として有効性と安全性を示しました。
- 2022年4月、当社は、2歳以上12歳未満の患者を対象とした臨床第3相試験である「SHP643-301試験」において、「タクザイロ」の安全性プロファイルおよび薬物動態の評価が終了し、評価項目を達成したことを公表しました。安全性プロファイルはこれまでに公表された12歳以上の小児患者を対象とした臨床プログラムと一致し、重篤な有害事象および有害事象による脱落はありませんでした。本試験において、2歳以上12歳未満の小児を対象とする遺伝性血管性浮腫の発症抑制における「タクザイロ」の臨床活性および臨床アウトカムを評価し、本剤の薬力学を特徴付ける副次評価項目を達成しました。
[リプレガル 一般名:アガルシダーゼ アルファ]
- 2021年11月、当社と大日本住友製薬株式会社(大日本住友製薬)は、当社がα-ガラクトシダーゼ酵素製剤「リプレガル点滴静注用3.5mg」の日本における製造販売承認(および販売権)を大日本住友製薬から2022年2月15日付で承継し、同日に大日本住友製薬は当社に「リプレガル」の販売を移管することを公表しました。
[フィラジル 一般名:イカチバント]
- 2021年12月、当社は、選択的ブラジキニンB2受容体ブロッカー「フィラジル」について、遺伝性血管性浮腫の小児治療に対する製造販売承認事項一部変更承認申請を日本において行ったことを公表しました。今回の申請は、主に2歳以上18歳未満の小児に「フィラジル」を皮下投与したときの安全性、有効性、および薬物動態を評価した国内第3相非盲検試験や、海外第3相非盲検試験に基づいて行っています。国内第3相非盲検試験でみられた日本人小児の治療反応は、日本人および海外の成人ならびに海外第3相非盲検試験における小児の治療反応と類似していました。
[ボンベンディ 一般名:フォン・ヴィレブランド因子(遺伝子組換え)]
- 2022年1月、当社は、出血時治療を受けている重度の3型フォン・ヴィレブランド病の患者における出血エピソードの頻度低下のための「ボンベンディ」の定期補充療法について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したことを公表しました。本承認は、出血治療歴がある重度の3型フォン・ヴィレブランド病の成人患者10例での出血エピソードの頻度低下に関する「ボンベンディ」の定期補充療法の有効性および安全性を検討した非盲検前向き国際共同試験のデータに基づくものです。今回の承認により「ボンベンディ」は、成人のフォン・ヴィレブランド病患者における出血時治療および周術期における止血管理の適応症に加えて、出血時治療歴のある重度の3型フォン・ヴィレブランド病の成人患者における定期補充療法の適応症を有します。
[LIVTENCITY 一般名:maribavir]
- 2021年6月、当社は、「maribavir」について、臨床第3相試験である「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」の固形臓器移植(SOT)患者に関する新たなサブグループ解析結果を、オンラインで開催された2021年米国移植学会議(American Transplant Congress:ATC)において発表しました。ベースラインで難治性/抵抗性(無しも含む)(R/R)サイトメガロウイルス(CMV)感染のSOT患者において、投与8週時(投与期終了時)でCMV血症の消失が達成された割合は、既存の抗ウイルス療法群(治験責任医師が定めた治療法[IAT]で、「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」もしくは「シドフォビル」のいずれか1つまたはその併用)(26.1%、18/69)と比較して、「maribavir」投与群では2倍以上(55.6%、79/142)でした(調整群間差[95%信頼区間]:30.5%[17.3, 43.6])。発表された結果は、心臓移植、肺移植および腎移植を受けた患者において「maribavir」投与の一貫した有効性を示しました。
- 2021年10月、当社は、「maribavir」について、米国食品医薬品局(FDA)抗菌薬諮問委員会(AMDAC)において、移植患者における既存の抗サイトメガロウイルス(CMV)療法である「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」、または「シドフォビル」に対して遺伝子型抵抗性を示す難治性のCMV感染治療薬として「maribavir」の使用を勧告することを全員一致で支持し、また移植患者において「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」、または「シドフォビル」に対して遺伝子型抵抗性の無い難治性のCMV感染に対する治療薬としても全員一致で使用を勧告したことを公表しました。両勧告は、臨床第2相試験および臨床第3相「TAK-620-303(SOLSTICE)試験」の結果に基づいています。「maribavir」の新薬承認申請(NDA)は、FDAにより優先審査指定を受けています。
- 2021年11月、当社は、移植後の成人患者と小児患者(12歳以上で体重が35㎏以上)における既存の抗サイトメガロウイルス(CMV)療法である「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」、または「シドフォビル」に対して遺伝子型抵抗性(無しも含む)を示す難治性のCMV感染/感染症の治療薬「LIVTENCITY」について、米国食品医薬品局(FDA)より承認を取得したことを公表しました。FDA承認前には、「LIVTENCITY」は、臨床的に重篤なCMV血症およびCMV感染/感染症リスクの高い患者の治療薬としてFDAからオーファンドラッグ指定を受けていました。さらに、移植後の既存の抗CMV療法に難治性/抵抗性を有するCMV感染/感染症の患者の治療薬としてブレークスルーセラピー指定も受けていました。当社は、進行中の臨床第3相試験において造血幹細胞移植(HCT)の患者におけるCMVのファーストライン治療として「LIVTENCITY」を検討しています。
- 2021年12月、当社は、難治性/抵抗性(無しを含む)サイトメガロウイルス(CMV)感染の移植後患者を対象とした「LIVTENCITY」のピボタル臨床第3相「SOLSTICE試験」の結果がClinical Infectious Diseases誌に掲載されたことを公表しました。「SOLSTICE試験」の主要評価項目は達成され、8週目の試験終了時(治療終了時)における 「LIVTENCITY」を投与した成人患者の55.7%(131/235)が CMVのDNA濃度が定量検出限界以下(LLOQ:<137 IU/mL)となり、比較して従来の抗ウイルス療法群(「ガンシクロビル」、「バルガンシクロビル」、「ホスカルネット」、「シドフォビル」のいずれか1つまたはその併用)の患者では23.9%(28/117)でした。(調整群間差:32.8%、95%信頼区間:22.80~42.74、p<0.001])副次評価項目である8週から16週目まで維持されたCMVのDNA値<LLOQは達成され、症状コントロールを満たした患者の割合は、従来の抗ウイルス療法群で10.3%(12/117)に対して「LIVTENCITY」群では18.7%(44/235)と高くなりました。(調整群間差:9.5%、95%信頼区間:2.02~16.88、p =0.013])
- 2022年3月、当社は、「maribavir」が、臓器移植(造血幹細胞移植を含む)におけるサイトメガロウイルス(CMV)感染症の治療を予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を取得したことを公表しました。「maribavir」はpUL97キナーゼとその天然基質を標的として阻害する経口投与可能な最初で唯一の抗CMV化合物で、日本国内において移植後サイトメガロウイルス感染/感染症を対象とした臨床第3相試験が進行中です。
- 2022年4月、当社は、米国ユタ州ソルトレークシティにて開催されたTandem移植・細胞治療学会およびポルトガルのリスボンにて開催された第32回欧州臨床微生物感染症学会議(ECCMID)において、「LIVTENCITY」に関する4つの抄録を発表しました。発表演題には、移植後のサイトメガロウイルス(CMV)感染/感染症患者において、「LIVTENCITY」投与群では従来の抗ウイルス療法群と比較して、入院率の低下(34.8%、p=0.021)と入院期間の短縮(53.8%、p=0.029)を示す臨床第3相「SOLSTICE試験」の探索的解析が含まれます。また、臨床第3相「SOLSTICE試験」のサブグループ別の事後解析では、CMVのDNA濃度が定量検出限界以下(<LLOQ)となることが最初に確認されるまでの期間が、従来の抗ウイルス療法群と比較して「LIVTENCITY」投与群で短縮することが示され、これまで報告された試験結果と一致していました。
ニューロサイエンス(神経精神疾患)
当社は、高いアンメット・ニーズが存在する神経疾患および神経筋疾患を対象に、革新的治療法に研究開発投資をフォーカスし、当社の専門知識やパートナーとの提携を生かし、パイプラインを構築しています。疾患の生物学的理解、トランスレーショナルなツール、革新的なモダリティの進展により、当社は希少神経疾患、特にオレキシン2受容体作動薬フランチャイズ(「TAK-861」、「TAK-925」など)によるナルコレプシーや特発性過眠症などの睡眠・覚醒障害および「soticlestat」(「TAK-935」)による希少てんかんの治療薬の開発に注力しています。当社はさらに、神経筋疾患、神経変性疾患および運動障害のうち患者セグメントを明確に定義できる疾患に特化した投資を行っています。
[開発コード:TAK-994]
- 2021年7月、当社は、臨床第2相試験を実施中の経口投与可能なオレキシン2型受容体選択的作動薬である「TAK-994」につき、米国食品医薬品局(FDA)よりブレークスルーセラピーの指定を受けたことを公表しました。現在「TAK-994」は、睡眠-覚醒サイクルが変化する慢性神経疾患であるナルコレプシータイプ1(NT1)の患者における日中の過度の眠気(EDS)の治療薬として臨床第2相試験(「TAK-994-1501試験」)を実施中です。「TAK-994」のブレークスルーセラピー指定は、NT1の患者において開発中の当社の経口オレキシン受容体作動薬が日中の覚醒状態の客観的および主観的評価項目において大幅な改善を示す可能性を示唆した、初期段階の予備的臨床データなどに基づくものです。
- 2021年10月、当社は、「TAK-994」の臨床第2相試験において、安全性シグナルの存在が明らかになったことにより、緊急の対応策として、患者への投与を中断し、2つの臨床第2相試験(「TAK-994-1501試験」および「TAK-994-1504試験」)を予定より早く終了する決定について公表しました。「TAK-994」のベネフィット・リスクプロファイルを評価した結果、2022年6月、当社は本プログラムの開発を継続しないことを決定しました。
[開発コード:TAK-935 一般名:soticlestat]
- 2022年2月、当社は、コレステロール24ヒドロキシラーゼ(CH24H)阻害剤「soticlestat」が、ドラベ症候群(DS)およびレノックス・ガストー症候群(LGS)を予定される効能・効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を取得したことを公表しました。DSおよびLGSは発達性てんかん性脳症(DEE)の一種で指定難病です。「soticlestat」は、CH24Hを抑制しニューロンの24S-ヒドロキシコレステロール(24HC)レベルを低下させることでDSおよびLGSの症状を改善することが期待されており、現在、DSおよびLGSを対象とした臨床第3相試験が進行中です。
消化器系疾患
消化器系疾患において、消化管疾患および肝疾患の患者さんに革新的で人生を変えうるような治療法をお届けすることにフォーカスしています。炎症性腸疾患においては、「エンティビオ」に関する皮下注射製剤、針なしの医療用デバイスの開発および活動性の慢性回腸嚢炎をはじめとする適応症拡大を含め、フランチャイズのポテンシャルを最大化しています。加えて、「GATTEX/レベスティブ」および「アロフィセル」により当社の消化器系疾患におけるポジショニングの拡大を目指しており、米国を含む一層の地理的拡大のために臨床第3相試験を実施および計画しています。また、当社は、社外との提携を通じて炎症性腸疾患、セリアック病、厳選した肝疾患、消化管運動関連疾患における機会を探索し、パイプラインの構築を進めております。そのうち後期開発段階にある「TAK-999」は、社外との提携を通じたパイプライン構築の一例であり、α-1アンチトリプシン欠損関連肝疾患に対するファーストインクラスのRNAi干渉治療薬となる可能性があります。
[エンティビオ/エンタイビオ 一般名:ベドリズマブ]
- 2021年10月、当社は、成人の中等症から重症の潰瘍性大腸炎患者を対象とした維持療法に関する「エンティビオ」の皮下注射製剤の米国における開発プログラムの進捗を公表しました。米国食品医薬品局(FDA)との継続的な協議を通じて、当社は、「エンティビオ」の皮下注射製剤の生物製剤承認再申請のために必要な要件を明確にするフィードバックを受けており、その対応に向けて取り組んでいます。現在、開発プログラムのタイムラインを検討しており、2023年度中に承認される可能性があると予想しています。
- 2021年12月、当社は、欧州医薬品庁(EMA)の欧州医薬品評価委員会(CHMP)が、潰瘍性大腸炎に対する大腸全摘術および回腸囊肛門吻合術(IPAA)を受け、抗菌剤治療で効果不十分または効果の減弱がみられた中等症から重症の活動性の慢性回腸嚢炎の成人患者における治療薬として、「エンティビオ」点滴静注製剤の承認を勧告したことを公表しました。CHMPの肯定的見解は、欧州消化器病学会年次総会である欧州消化器病週間2021バーチャル会議にて最近発表された「EARNEST試験」に基づくものです。本試験では、活動性の慢性回腸嚢炎の治療における「エンティビオ」点滴静注製剤の安全性および有効性を評価しました。また「エンティビオ」が回腸嚢炎患者に有益である可能性を示す過去のデータに関する数件のレトロスペクティブスタディーの情報も申請に含まれています。2022年1月、「エンティビオ」について、活動性の慢性回腸嚢炎に対するEU全域における初の治療薬として欧州委員会より承認を取得しました。
[GATTEX/レベスティブ 一般名:テデュグルチド]
- 2021年6月、当社は、短腸症候群の治療剤である「レベスティブ皮下注用3.8mg」(「レベスティブ」)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、海外で行われた複数の試験、ならびに国内で小児および成人を対象として実施された臨床第3相試験(「SHP633-302」、「SHP633-305」、「SHP633-306」および「SHP633-307」)等の結果に基づくものです。
- 2021年11月、当社は、短腸症候群(SBS)治療剤である「レベスティブ」の剤形追加として、低含量製剤(0.95mg)の製造販売承認申請を厚生労働省に対して行ったことを公表しました。本剤は、3.8mg製剤では投与ができない「体重10kg未満又は体重20kg未満の中等度以上の腎機能障害(クレアチニンクリアランス50mL/min未満)を有するSBS患者」への投与を可能とするものです。
[アロフィセル 一般名:ダルバドストロセル]
- 2021年9月、当社は、非活動期または軽症の活動期クローン病患者における複雑痔瘻の治療製品である「アロフィセル注」について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。本製品は、少なくとも1つの既存治療薬による治療を行っても効果が不十分な患者の治療に用いられます。今回の承認は、国内で実施された「Darvadstrocel-3002試験」および、欧州およびイスラエルで実施された「ADMIRE-CD試験」の結果に基づくものです。「アロフィセル」は、当社において日本で初めて承認された同種異系脂肪組織由来間葉系幹細胞の懸濁液であり、炎症部位において、局所的に免疫調節作用および抗炎症作用を示します。
- 2022年2月、当社は、2022年欧州クローン病・大腸炎会議(ECCO)年次総会にて、「INSPIRE試験」における最初の6ヵ月間の中間解析結果を公表しました。本試験は、クローン病(CD)に伴う複雑痔瘻の患者を対象に欧州で実施している、「アロフィセル」の実臨床での有効性および安全性を評価する承認後の多施設共同オープン観察研究です。2021年9月時点で本試験に登録された症例は230例でした。All Treated(AT群)で138例、Treated Per Protocol(PP群)で120例が治療後6ヵ月以上経過しており、6ヵ月時点の来院を完了していたのはAT群で66%(92/138)、PP群で58%(69/120)でした。そのうち、AT群では85%(78/92)、PP群では100%(69/69)において6ヵ月時点の臨床成績が得られています。本中間解析では、AT群で73%(57/78)、PP群で74%(51/69)の臨床的奏功が認められました。臨床寛解率は、両群ともに65%(AT群:51/78、PP群:45/69)でした。Harvey-Bradshaw Indexを用いて評価された、治療後のCDの疾患活動性の変化は最小限でした。治療期における全データが入手できた205例のうち、20%(41/205)で1件以上の有害事象が確認され、9.3%(19/205)で1件以上の重篤な有害事象が確認されました。なお、異所性組織形成や死亡例は確認されませんでした。これらの結果は、ピボタル臨床第3相試験である「ADMIRE-CD試験」で示された有効性および安全性と一貫していました。
[開発コード:TAK-721(予定製品名:Eohilia) 一般名:ブデソニド経口懸濁液]
-2021年12月、当社は、食道の慢性炎症性疾患である 好酸球性食道炎の治療における「TAK-721」の新薬承認申請(NDA)に対し、米国食品医薬品局(FDA)から審査完了報告通知(Complete Response Letter :CRL)を受領したことを公表しました。審査完了報告通知によると、FDAは「TAK-721」のNDA審査を完了し、現状では承認できないと判断しました。また、FDAは指摘内容を解決するために追加の臨床試験を推奨しています。2022年2月に本開発品の中止を公表しました。
血漿分画製剤
当社は、血漿分画製剤(PDT)に特化したPDTビジネスユニットを設立し、血漿の収集から製造、研究開発および商用化まで、エンド・ツー・エンドのビジネスを運営しています。本疾患領域では、様々な希少かつ複雑な慢性疾患に対する患者さんにとって生命の維持に必要不可欠な治療薬の開発を目指しています。本領域に特化した研究開発部門は、既発売の治療薬の価値最大化、新たな治療ターゲットの特定および現有する製品の製造効率の最適化という役割を担います。短期的には、当社の幅広い免疫グロブリン製剤ポートフォリオ(「HYQVIA」、「CUVITRU」、「GAMMAGARD」および「GAMMAGARD S/D」)における効能追加、地理的拡大および総合的な医療テクノロジーの活用を通じたより良い患者体験を追求しています。血液製剤およびスペシャリティケアのポートフォリオにおいては、「PROTHROMPLEX(4F-PCC)」、「ファイバ」、「CEPROTIN」および「ARALAST」における効能追加や剤型追加の開発機会の追求を優先しています。また、当社は、グローバルに販売している20種類以上にわたる治療薬ポートフォリオに加え、「20% fSCIg」(「TAK-881」)や「IgG Low IgA」(「TAK-880」)といった次世代の免疫グロブリン製剤の開発、およびその他の早期段階の治療薬候補の開発を行っています。
[開発コード:CoVIg-19 (旧 TAK-888) 一般名:抗SARS-CoV-2ポリクローナル高度免疫グロブリン製剤]
- 2021年4月、「CoVIg-19 Plasma Alliance」は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部である米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)が出資し実施した臨床第3相試験「Inpatient Treatment with Anti-Coronavirus Immunoglobulin(ITAC)」において、評価項目を達成しなかったことを公表しました。臨床試験において安全性の重大な懸念は認められませんでした。本試験は、重篤な合併症のリスクのある成人のCOVID-19入院患者に対して、抗コロナウイルス高度免疫グロブリン静注製剤(H-Ig)を、「レムデシビル」を含む標準治療に追加投与した際の、疾患進行のリスク低減を評価することを目的としていました。「ITAC試験」の結果を受けて、「CoVIg-19アライアンス」の取り組みは終了しました。「ITAC試験」の全解析結果はThe Lancetに掲載されました。
ワクチン
ワクチンでは、イノベーションを活用し、デング熱、新型コロナウイルス感染(COVID-19)、ジカウイルス感染など、世界で最も困難な感染症に取り組んでいます。当社パイプラインの拡充およびプログラムの開発に対する支援を得るために、政府機関(日本、米国)や主要な世界的機関とのパートナーシップを締結しています。これらのパートナーシップは、当社のプログラムを実行し、それらのポテンシャルを最大限に引き出すための重要な能力を構築するために必要不可欠です。
[スパイクバックス(旧販売名:COVID-19ワクチンモデルナ)筋注 (開発コード:mRNA-1273、日本での開発コード:TAK-919)]
- 2021年5月 、当社は日本における「TAK-919」の安全性および免疫原性を評価する国内臨床第1/2相試験の結果を医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出したことを公表しました。当社はModerna, Inc.(Moderna社)ならびに厚生労働省の三者間の合意により、「TAK-919」の5,000万回接種分を輸入し供給します。本試験の結果では、28日間の間隔で「TAK-919」0.5 mLを2回接種した被験者の100%に、結合抗体と中和抗体の上昇が本剤の2回目接種28日後に確認できたことが示されました。重大な安全性の懸念は報告されず、忍容性は概ね良好でした。当社は本試験の結果を、2021年3月に提出した新薬承認申請の一部として、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に提出しました。申請資料には、Moderna社が米国において実施中の臨床第3相試験(COVE試験)の安全性と有効性の結果も含まれています。
- 2021年5月、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」について、厚生労働省より医薬品医療機器等法第14条の3に基づく特例承認を取得したことを公表しました。本承認は、米国で実施されたModerna社の臨床第3相試験(「COVE試験」)の結果と同様の免疫反応が得られた、日本で実施した「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の安全性および免疫原性を評価する臨床第1/2相試験の結果に基づいています。当社は、日本国内において「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の供給を開始しました。
- 2021年7月、当社は、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」を、追加で早ければ2022年初頭から5,000万回接種分を輸入し、日本において供給することについてModerna社ならびに厚生労働省と合意したことを公表しました。本合意には、Moderna社による開発が成功し、厚生労働省より製造販売の承認が得られた場合には、新型コロナウイルスの変異株に対応するワクチンや追加接種に用いるワクチンを日本国内へ供給する可能性も含まれています。当社は、今回の追加5,000万回接種分と2020年10月に公表済みの5,000万回接種分とを合わせて計1億回接種分を輸入、供給します。
- 2021年7月、当社は、「COVID-19ワクチンモデルナ筋注」の日本における添付文書が改訂され、接種対象年齢が12歳以上に拡大されたことを公表しました。今回の改訂は、Moderna社が米国で実施した12歳以上17歳以下の3,732人を対象とした臨床第2/3相試験結果に基づき行われました。本試験では、主要評価項目として設定したワクチン2回目接種28日後の血清中和抗体価および中和抗体価応答率において、本試験対象の青少年(12歳以上17歳以下)について、ワクチンの発症予防効果が確認された海外第3相試験(「mRNA-1273-P301試験」)の若年成人(18歳以上25歳以下)に対する非劣性が示されました。また、副次評価項目として設定したワクチン2回目接種後2週間以降のワクチン有効率においても高い発症予防効果を有することを示唆する結果が得られました。安全性については、18歳以上の臨床試験の結果と同様に、重大な安全性の懸念は報告されませんでした。
- 2021年12月、当社は、2回目の接種完了から少なくとも6ヶ月以上経過した18歳以上に対する「スパイクバックス筋注(旧販売名:COVID-19ワクチンモデルナ筋注)」の50µgでの追加接種(追加免疫)について、厚生労働省より製造販売承認を取得したことを公表しました。本承認は、今までに報告されたModerna社の第2相臨床試験の良好な結果に基づいています。Moderna社の第2相臨床試験は、Moderna社の新型コロナウイルス感染症ワクチンの2回目の接種を完了した18歳以上の被験者を対象に、2回目の接種から6ヶ月以上経過後に50µg追加接種した際の安全性および免疫原性の評価を行うため、試験の計画が改訂されました。結果において本ワクチンの追加接種によって新型コロナウイルス従来株に対する中和抗体価の顕著な増加が示されました。追加接種後に観察された反応原性プロファイルは2回目接種後と同様であり、安全性プロファイルも初回免疫時と同様でした。
- 2021年12月、当社は、厚生労働省およびModerna社と、「スパイクバックス筋注」の日本での追加供給に関して合意したことを公表しました。この三者間の連携での合意は3回目となり、このたび追加供給が決まったものは、2022年に1,800万回接種分(1回あたり50μg、1バイアル当たり15回追加接種(追加免疫)できるものとして算出)となります。当社はこれまでに、2021年より日本国内において「スパイクバックス筋注」5,000万回接種分を供給するための厚生労働省ならびに Moderna社との三者間での初回契約締結を公表し、2022年に追加の5,000万回接種分(両契約で計1億回接種分)を供給するための2回目の契約締結を公表しています。前項にて記載の初回接種(100μg)の半量である50μgの追加接種の承認により、2回目契約による供給は、追加接種としては7,500万回接種分となります(接種回数は追加接種として1バイアル当たり15回接種できるものとして算出)。3回目合意分の1,800万回接種分(前述と同様に算出)と合わせて、当社は2022年に合計9,300万回接種分を日本国内に供給します。
- 2022年5月、当社とModerna, Inc.(Moderna社)は、2022年8月1日付で「スパイクバックス筋注」の製造販売承認を当社からモデルナ・ジャパン株式会社(モデルナ・ジャパン)に承継することを公表しました。承継後モデルナ・ジャパンは、日本における「スパイクバックス筋注」の輸入、薬事、開発、品質保証および情報提供活動などのすべてに責任を持つことになります。当社は、当面の間、新型コロナウイルス感染症にかかわる特例臨時接種の枠組みの下、米国Moderna社の新型コロナウイルスワクチンの流通を引き続き担います。
[ヌバキソビッド筋注 開発コード:NVX-CoV2373(日本での開発コード:TAK-019)]
- 2021年9月、当社は、Novavax, Inc.(Novavax社)の新型コロナウイルス感染症ワクチン候補である「TAK-019」の製造販売承認取得を条件として、当社が日本で生産する「TAK-019」について厚生労働省が1億5,000万回接種分を購入する契約を締結したことを公表しました。当社は日本の自社工場において「TAK-019」の生産能力の整備を進めています。Novavax社は、当社へ「TAK-019」の製造技術の使用を許諾し技術移転を進めており、抗原と共に充填する「Matrix-M TM」 アジュバントを供給します。
- 2022年4月、当社は、組換えスパイクタンパクを抗原とした新型コロナウイルス感染症ワクチン 「ヌバキソビッド筋注」について、18歳以上を対象として、厚生労働省より初回免疫および追加免疫に対する製造販売承認を取得したことを公表しました。今回の承認は、当社が実施した国内臨床第1/2相試験における中間結果、Novavax社が実施した英国ならびに米国およびメキシコで実施した2つの臨床ピボタル第3相試験、オーストラリアおよび米国における臨床第1/2相試験の安全性と有効性のデータ、申請後に追加提出した海外の安全性および有効性のデータに基づいています。国内臨床第1/2相試験の中間結果は良好で、これまで実施された臨床試験の結果と一致していました。国内臨床試験において本ワクチン投与群に重篤な有害事象は認められませんでした。 また、米国およびオーストラリアで実施した臨床第1/2相試験ならびに南アフリカで実施した臨床第2相試験において、初回接種から約6ヵ月後に本ワクチンを1回追加接種したところ、追加接種前と比較して顕著な抗体価の上昇が確認され、安全性に関する大きな懸念は認められませんでした。
- 2022年5月、当社は、「ヌバキソビッド筋注」について、予防接種法で定められた新型コロナワクチンの臨時予防接種に係る法令等の改正を経て、特例臨時接種として初回免疫(1、2回目接種)および追加免疫(3回目接種)を行う場合に使用するワクチンに指定されたことを公表しました。「ヌバキソビッド筋注」は、多くの医療用医薬品やワクチンと同様に冷蔵保存(保管温度:2-8℃)であり、通常のワクチンにおけるサプライチェーンを利用して輸送・保管することが可能です。
[開発コード:TAK-003 一般名:デング熱ワクチン]
- 2021年5月、当社は、「TAK-003」が現在進行中のグローバル臨床第3相試験「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」のワクチン接種後3年間にわたる長期評価において、本ワクチンのデング熱感染およびデング熱感染による入院に対して持続的な予防効果(被験者のワクチン接種前のデング熱感染歴の有無を問わない)を示し、懸念されるような安全性リスクも認められなかったことを公表しました。「TIDES試験」には、デング熱流行国であるラテンアメリカやアジア地域において2万人以上の小児・若年層(4歳から16歳)の健常被験者が登録されています。「TIDES試験」の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、第17回国際渡航医学会(CISTM: Conference of the International Society of Travel Medicine)で発表されました。「TAK-003」の3年間(2回目接種後36ヵ月)にわたる長期評価では、デングウイルスの各血清型(計4種)に対する「TAK-003」のワクチン有効性は、各血清型で異なっていたものの、この結果は、これまで報告してきた結果と一貫性のあるものでした。また、安全性においても全般的に忍容性が良好で、懸念されるような安全性リスクも認められませんでした。病態の増悪のエビデンスは確認されませんでした。「TIDES試験」の36ヵ月間にわたる追跡調査の安全性および有効性データは、欧州連合(EU)およびデング熱流行国における承認申請資料に含まれており、今後に承認申請が予定されている米国を含むその他の国々における申請資料にも含まれる予定です。
- 2022年6月、当社は、「TAK-003」がグローバル臨床第3相試験である「TIDES試験(Tetravalent Immunization against Dengue Efficacy Study)」において、ワクチン接種後4年半(54ヵ月)にわたる継続したデング熱の予防効果を示し、安全性について大きな懸念が認められなかったことを、第8回Northern European Conference on Travel Medicine(NECTM8)で発表しました。4年半を通して、「TAK-003」はデングウイルス感染症による入院に対して84.1%のワクチン有効性(95%信頼区間:77.8, 88.6)を示し、ワクチン接種前の血清反応陽性者では85.9%の有効性(78.7, 90.7)、血清反応陰性者では79.3%の有効性(63.5, 88.2)を示しました。また、ウイルス学的に確認されたデングウイルス感染症に対して61.2%(95%信頼区間:56.0, 65.8)の全体的な有効性を示し、ワクチン接種前の血清反応陽性者では64.2%の有効性(58.4, 69.2)、血清陰性者では53.5%の有効性(41.6, 62.9)でした。有効性は血清型によって異なっていましたが、この結果はこれまでに報告された結果と一貫性のあるものでした。「TAK-003」の忍容性は概ね良好であり、重要な安全性リスクは特定されませんでした。54ヵ月間の探索的解析からは、疾患増強のエビデンスは認められませんでした。
パイプラインの現状
当社グループの各疾患領域および事業分野における研究開発活動の概要は、以下に示すとおりです。後出する主要な疾患領域および事業分野において開示されている当社グループパイプライン上の治療薬の候補物質は、それぞれ異なる開発段階にあり、現在開発中の候補物質の開発中止や新たな候補物質の臨床ステージ入りにより、パイプラインの内容は今後変わる可能性があります。以下に示す候補物質が製品として上市に至るかは、前臨床試験や臨床試験の結果、様々な医薬品の市場動向、規制当局からの販売承認取得の有無など、様々な要因に影響されます。本表では当社が承認取得を目指しているパイプラインの主な効能および2021年度中に承認されたパイプラインを掲載しています。掲載している効能以外にも、将来の効能・剤型追加の可能性を検討するために臨床試験を行っています。以下の表記載は、米国・欧州・日本・中国に限定していますが、当社グループはその他の地域でも開発活動を行っています。以下、「グローバル」の表記は、米国・欧州・日本・中国を指します。下記の表にあるパイプラインのモダリティは、「低分子」、「ペプチド・オリゴヌクレオチド」、「細胞および遺伝子治療」、「マイクロバイオーム」、「生物学的製剤他」のいずれかに分類しています。
2022年5月11日(決算発表日)における当社グループのオンコロジー領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Seagen社との提携
(注2)Exelixis社との提携
(注3)中外製薬との提携、P-Ⅲ試験は同社が実施
(注4)中外製薬との提携、P-Ⅲ試験は当社が実施
(注5)米国FDAの審査は、FDAオンコロジー・センター・オブ・エクセレンス(腫瘍研究拠点:OCE)の取り組み である、英国、ブラジル、豪州などの国際的なパートナーとの間でオンコロジー製品の同時申請・同時審査を行う枠組みを提供するProject Orbisに基づいて行われています。
(注6)2022年3月に英国で承認取得
(注7)The University of Texas MD Anderson Cancer Centerとの提携
(注8)Noile-immune Biotech社との提携
(注9)Teva Pharmaceutical Industries社との提携
(注10)Turnstone Biologics社との提携
(注11)Memorial Sloan Kettering Cancer Centerとの提携
(注12)Maverick Therapeutics社買収を通じて取得
2022年5月11日(決算発表日)における当社グループの希少遺伝子疾患および血液疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)GlaxoSmithKline社との提携
(注2)日本においてはKMバイオロジクス社との相互に独占的な共同販売契約
(注3)Ipsen社との提携
(注4)JCRファーマと特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約を締結。
当社は、米国以外のカナダ、欧州およびその他の地域(日本と一部のアジア太平洋諸国を除く)におけるTAK-141/JR-141の事業化を独占的に実施。また、当社は本契約とは別に締結したオプション契約に基づき、当該臨床第3相試験プログラムの完了時に米国におけるTAK-141/JR-141の事業化について独占的ライセンスを得る権利を保有。
(注5)再発・難治性の多発性骨髄腫の試験は試験終了まで継続
(注6)日本におけるP-Ⅰ試験が完了し、P-Ⅲ試験開始の時期を検討中
2022年5月11日(決算発表日)における当社グループのニューロサイエンス(神経精神疾患)領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Neurocrine社との50/50共同開発・共同販売契約
(注2)Denali Therapeutics社との提携、P-Ⅰ試験は同社が実施
(注3)AstraZeneca社との提携、P-Ⅰ試験は同社が実施
(注4)TAK-994は臨床試験を中断(2022年5月11日時点)していたが、2022年6月、開発を継続しないことを決定
2022年5月11日(決算発表日)における当社グループの消化器系疾患領域のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Theravance Biopharma社との提携
(注2)Arrowhead Pharmaceuticals社との提携
(注3)COUR Pharmaceuticals社からTAK-101の開発および製品化の権利を獲得。旧名TIMP-GLIA
(注4)Enterome Biosciences社との提携
(注5)NuBiyota社との提携
(注6)クロストリジウム・ディフィシル感染症でのP-I試験完了。戦略上、本プログラムは肝性脳症で開発予定
(注7)米国FDAと協議中。タイムラインは検討中で、2023年度の承認可能性を見込む
2022年5月11日(決算発表日)における当社グループの血漿分画製剤のパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Halozyme社との提携
(注2)データ収集のための非介入試験が継続中
2022年5月11日(決算発表日)における当社グループのワクチンのパイプラインは以下のとおりです。なお、決算発表日以降の主な開発の進捗は注釈に記載しています。
(注1)Moderna社、厚生労働省との提携
(注2)Novavax社との提携
(注3)米国政府Biomedical Advanced Research and Development Authority(BARDA)との提携
(注4)12歳以上への接種年齢の拡大(2021/7)
(注5)欧州での申請に加え、欧州連合(EU)圏外の国を対象としたEU-M4all(旧称:Article58)制度により、EU-M4all制度に参加していない中南米やアジアのデング熱流行国においても申請を開始
開発中止品目
昨年度以降に中止したプロジェクトは以下のとおりです。
ライセンスおよび共同研究開発契約
当社は通常の事業において、製品開発および商業化のために第三者とライセンス契約や業務提携を行うことがあります。当社の事業は、こうした個々の契約に大きく依存するものではありませんが、これらの契約は全体として、社内外のリソースを組み合わせて活用することで新製品の開発や上市を可能にするという当社の戦略の一部を構成しています。これまで製品上市に寄与してきた契約の一部に関する概要は以下の通りであります。
- アドセトリス:2009年、当社はSeagen, Inc.(旧シアトルジェネティクス社)(以下、「Seagen社」)と、「アドセトリス」のグローバル共同開発および世界各国(同社が本剤を販売している米国、カナダを除く)における販売の提携契約を締結しました。本提携関係に基づき、当社による開発および販売の進捗に関してマイルストン支払いを行いました。また、契約対象地域における「アドセトリス」の正味売上高に基づき10%台半ばから20%台半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。当社とSeagen社は、本提携関係のもとで実施される選択された開発活動の費用を均等に共同で負担しますが、2022年3月31日現在、当社の「アドセトリス」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。本提携関係は、いずれか一方の当事者による正当な事由または両者の合意をもって解除することができます。当社は本提携関係を自由に解除でき、Seagen社は一定の状況において本提携関係を解除できます。両社により提携解除がなされなかった場合、本契約は全ての支払い義務の満了をもって自動的に終了します。
- トリンテリックス:2007年、当社はH. Lundbeck A/S(以下、「ルンドベック社」)とライセンス、開発、供給および販売契約を締結し、同社の保有する気分障害・不安障害治療薬パイプライン上の複数の化合物について米国および日本における独占的な共同開発および共同販売権を取得しました。本契約に基づき、当社とルンドベック社は、米国および日本で「トリンテリックス」を販売しており、また、開発資金の大部分を当社が負担することとし、関連化合物の共同開発に合意しました。「トリンテリックス」による収益は当社が計上し、当社はルンドベック社に対し正味売上高の一部に加え、当社による本剤の売上に基づき10%台前半から半ばの割合で段階的なロイヤルティを支払います。また、本提携関係に基づき、当社はルンドベック社に対し、開発および販売の進捗に関して一定の開発および販売マイルストンを支払うことに合意しておりますが、2022年3月31日現在、当社の「トリンテリックス」提携契約に基づく販売マイルストンの残存支払見込額はありません。本契約は無期限に存続しますが、両者の合意または正当な事由をもって解除されます。
将来に向けた研究プラットフォームの構築/研究開発における提携の強化
- 2021年7月、当社とぺプチドリーム株式会社は、2020年12月に公表済みの両社の共同研究および独占的ライセンスの枠組みを拡大し、慢性神経変性疾患において重要な役割を担う複数の中枢神経系(CNS)ターゲットについてペプチド-薬物複合体(Peptide Drug Conjugate)の創製に向けた取り組みを進めることを公表しました。今回の共同研究の拡大により、神経変性疾患に関連する複数のCNSターゲットに対してTfR1結合ペプチドリガンドを用い、当社がTfR1結合ペプチドと医薬品候補化合物の複合体を作成し、医薬品候補化合物に血液脳関門(BBB)通過能を付与する研究を行うことが可能になります。神経変性疾患に効果的な医薬品の開発で大きな課題となるのが、治療薬物のBBB通過能を高め脳内に送達させる技術です。TfR1結合ペプチド(キャリアペプチド)を各種の治療用化合物に結合させることで、化合物のBBB通過能を高め脳内に取り込まれるため、医薬品としての機能が著しく向上します。このTfR1 BBBシャトルアプローチは、BBBの通過が困難なままである治療法の開発を加速する可能性があります。また、このアプローチは現在治療薬がほとんどないかまたは全く存在しない数多くの神経変性疾患を効果的に治療するために必要とされる、広い脳領域への薬物の生体内分布を可能にする可能性があります。
- 2021年7月、当社とFrazier Healthcare Partnersは、当社のノロウイルスワクチンの開発および販売を行うバイオ医薬品企業HilleVax, Inc.(HilleVax社)設立に関して提携したことを公表しました。当社は、契約一時対価ならびに将来の売上に応じたキャッシュ・ロイヤルティおよびマイルストンを対価として、HilleVax社へノロウイルスワクチン候補である「HIL-214」(旧開発コード:「TAK-214」)の日本を除く世界における独占的開発および販売の権利を譲渡しました。当社は日本における販売権を保有し、HilleVax社は日本における開発活動をグローバル開発に統合します。ウイルス様粒子技術(VLP)を用いたワクチン候補である「HIL-214」は、4,712例の成人被験者を対象とした無作為割付プラセボ対照臨床第2相後期有効性フィールド試験を完了しています。本試験では、「HIL-214」の良好な忍容性およびノロウイルス感染に起因する中等度から重度の急性胃腸炎に対する予防効果のプルーフ・オブ・コンセプト(proof of concept)が確認されました。本ワクチンについては、2021年7月時点で9つの臨床試験が実施されており、4,500例以上の被験者の安全性データおよび2,000例以上の被験者から得られた免疫原性データが集積されています。
- 2021年9月、当社とMirum Pharmaceuticals, Inc.(Mirum社)は、Mirum社の有する希少肝疾患に対する治療薬である胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害薬「maralixibat chloride」(一般名)(「maralixibat」)(米国の商品名「LIVMARLI」)について、アラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症および胆道閉鎖症に関する日本における独占的開発・販売権に関するライセンス契約を締結したことを公表しました。「maralixibat」は、経口の薬剤であり、世界でアラジール症候群、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症および胆道閉鎖症について臨床試験が進められています。本契約に基づき当社は、胆汁うっ滞に関連した適応症における臨床試験を含む、「maralixibat」の日本における開発、製造販売承認の取得および販売の責任を担うこととなります。
- 2021年9月、当社とJCRファーマ株式会社(JCR)は、抗ヒトトランスフェリン受容体抗体とイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)の融合蛋白質でハンター症候群(ムコ多糖症2型、MPS II)の治療薬として開発中の次世代組換え融合蛋白質「JR-141」(pabinafusp alfa)の特定地域における独占的な共同開発およびライセンス契約を締結したことを公表しました。「JR-141」は、JCRが有する血液脳関門(BBB)通過技術である「J-Brain Cargo」を用い、治療効果をもつ酵素がBBBを通過し、脳内に直接到達して、ハンター症候群の身体症状と、認知機能障害の進行につながりうる神経障害性症状に働きかけるよう設計された物質です。今回の独占的な共同開発およびライセンス契約により、当社は、米国以外の、カナダ、欧州およびその他の地域(日本と一部のアジア太平洋諸国を除く)における「JR-141」の事業化を独占的に行います。両社は、JCRが実施するグローバル第3相プログラムの完了後、可能な限り速やかに本治療薬を患者にお届けできるよう連携して活動します。また、当社は、本契約とは別に締結したオプション契約に基づき、当該第3相プログラムの完了時に米国における「JR-141」の事業化について独占的ライセンスを得る権利を取得します。
- 2021年10月、当社は、免疫療法としてのガンマ・デルタ(γδ)T細胞がもつユニークな特性の探索に特化した企業であるGammaDelta Therapeutics Limited(GammaDelta社)を買収するオプション権を行使したことを公表しました。今回の買収により、当社は、GammaDelta社の同種可変デルタ1(Vδ1)ガンマ・デルタ(γδ)T細胞療法プラットフォームを取得します。同プラットフォームには血液由来および組織由来のプラットフォームと開発初期段階の細胞療法プログラムが含まれます。本買収は、2022年4月に完了しました。
- 2022年1月、当社は、可変デルタ1(Vδ1)ガンマ・デルタ(γδ)T細胞を修飾し抗体ベースの治療薬の開発を進める英国に本拠を置く企業であるAdaptate Biotherapeutics Ltd.(Adaptate社)を買収するオプション権を行使したことを公表しました。今回の買収計画により、当社は、Adaptate社の抗体ベースのγδT細胞エンゲージャープラットフォームを前臨床段階の候補品および創薬パイプラインのプログラムを含め取得します。Adaptate社のγδT細胞エンゲージャーは、腫瘍でのみγδT細胞がメディエートする免疫反応を特異的に修飾し、健康な細胞を傷つけないよう設計されています。本買収は、当社によるGammaDelta社の買収オプション権の行使に続き、革新的なγδT細胞ベースの治療薬の開発をさらに加速することを目的としています。本買収は、2022年4月に完了しました。
当社の上記以外の研究開発ライセンスおよび提携のパイプラインは下表のとおりですが、これらに限定されません。
オンコロジー領域
希少遺伝子疾患および血液疾患領域
ニューロサイエンス(神経精神疾患)領域
消化器系疾患領域
血漿分画製剤
ワクチン
その他/複数の疾患領域
知的財産
特許や登録商標を用いて可能な限り自社の製品や技術を守ることは、当社グループの事業戦略において重要な部分を占めています。当社グループが市場競争力を維持し高めるためには、営業秘密、当社独自のノウハウ、技術的イノベーションおよび第三者との契約の取り決めが欠かせません。当社がビジネス上の成功を収めることが出来るかどうかは、強固な特許を取得し行使する能力や、営業秘密を保護し続ける能力、第三者の知的財産権を侵害することなく事業を行う能力、付与されたライセンスの条件を遵守する能力に依存する場合があります。新薬の開発は長期間にわたり、研究開発は多くの費用を必要とします。また、治療薬候補のうち上市されるものはごくわずかであることから、知的財産の保護は新薬の研究開発への投資の回収において重要な役割を担っています。
当社グループは米国、日本、欧州の主要国において可能な限り当社独自の技術の特許保護を求めていきます。その他の国々についても、可能な国々において、選別したうえで特許保護を求めていきます。いずれの場合にも特許保護自体を取得するか、ライセンサーを通じて特許出願をサポートするよう努めています。特許は、当社グループが使用する技術を保護するための主要な手段です。特許は、他社による医薬品に関する発明の使用を排除する権利を特許権者に付与します。当社グループの医薬品を保護するために、有効成分をカバーする物質特許、薬の用途、製造方法、製剤に関する特許等、様々な種類の特許を使用しています。当社グループの低分子化合物医薬品は、主に物質特許によって保護されています。通常は物質特許の存続期間終了をもって当該医薬品の市場独占権は失われますが、その後も当該物質の用途、用法、製造方法、新規組成物または剤型に関する特許等の非物質特許によって、商業利益が保護されることがあります。物質特許が満了した場合でも、各国の関連法規制によるデータ保護制度により対象製品が保護されることもあります。
当社グループのバイオ製品は1件以上の物質特許によって保護されることがありますが、製品によっては物質特許以外の特許または規制当局によるデータ保護、またはその両方が適用されることもあります。しかし、競合会社によって、同じ疾患に対する類似製品および(または)バイオシミラーが当社グループの特許を侵害することなく開発され、販売されることがあることから、バイオ製品にとって特許による保護の重要性は伝統的な医薬品に比べて低い場合があります。
米国では、原則として出願から20年で特許は満了しますが、米国特許商標庁の審査遅延による特許の発行遅延があ った場合は特許期間の調整が行われる可能性があります。また、製品、製品を使用した治療法、製品の製造方法に関する米国の医薬特許は、米国食品医薬品局(FDA)による製品の承認審査期間に応じて特許期間延長の対象となる場合があります。このような場合の存続期間の延長は5年を上限としており、製品の承認取得から14年を超える延長は認められません。FDAの遅延に基づく期間延長が認められるのは、1製品につき1件の特許のみです。FDAは、新規化合物またはオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に対しては、特許による独占権に加えて、データあるいは市場の独占権を追加付与することがあり、これらは既にある特許保護期間と並行して存続します。データ保護規制またはデータ独占権は、ジェネリック医薬品を発売し得る競合他社が、先発品の安全性および有効性を確立する際にスポンサーが作成した臨床試験データを新規化合物については5年間、オーファンドラッグについては7年間使用できないようにするものです。市場独占権は、同一薬剤を同効(同じ適応症)に 対して販売することを禁止するものです。
日本では、有効成分については、特許庁により特許が付与されます。用量や投与方法など治療法については、日本では特許の対象となりませんが、特定の投与方法・用量にて使用する医薬組成物や、医薬組成物の製造方法については、特許の対象となります。日本では原則として出願より20年で特許は満了します。医薬特許は、承認までの審査に要した時間により、5年を限度として延長されることがあります。また、日本ではデータ保護制度として「再審査期間」を設けており、その期間は新有効成分含有医薬品については8年、新効能・新医療用配合剤については4年から6年、オーファンドラッグについては10年となっています。
欧州連合(EU)では、欧州特許庁(EPO)または欧州各国で特許を申請することができます。EPOの制度では、EU全体およびスイス、トルコ等のいくつかのEU非加盟国での特許を一括申請することができます。EPOが特許を付与すれば、特許権者が指定する国々において特許が有効となります。EPOまたは欧州諸国のいずれかが認める特許の存続期間は、延長や調整があり得ますが、原則として出願から20年です。医薬品の特許は、補充的保護証明書(SPC)制度のもと、さらに追加の独占期間を付与されます。SPCは、特許権者が欧州医薬品庁または各国の規制当局から販売承認を受けるのに要した時間を補償する制度です。SPCにより、特許期間とあわせて、欧州で最初の販売承認を取得した日から最長15年の独占権を与えられます。ただし、SPCの最長期間は5年です。認可された小児臨床試験計画(PIP)によるデータが提出された製品であれば、6ヶ月の小児用医薬品に係るSPCの追加延長が認められます。SPC制度を含め、承認後の特許は、各国の法制度により運用されています。特許およびSPCに関する規制はそれぞれ欧州特許庁およびEUのレベルで作られましたが、国ごとの運用の違いにより、例えば、EU各国の国内裁判所で無効申立てされた場合など、必ずしも同じ結果にはつながりません。また、EUは承認されたヒト用医薬品につき、特許保護と並行してデータ独占権を与えています。現在承認されている医薬品に関する制度は、通常「8+2+1」と呼ばれています。これは、まず初めに競合他社が関連データに依拠することができないデータ保護期間が8年間、続いて競合他社が販売承認申請のために当該データを使用できるものの、競合品を上市することができない市場独占期間が2年間、さらに、スポンサーが最初のデータ保護期間8年間の間に、他の治療薬が存在しない適応症か「既存治療薬に比べて有意な臨床的有効性」が認められる新たな適応症を追加した場合、追加で1年間の市場独占権を認めるものです。これは各国での承認にもEUの中央審査による承認にも当てはまります。また、EUには米国に類似したオーファンドラッグの独占制度があります。医薬品がオーファンドラッグとして指定された場合、10年間の市場独占権が与えられ、この間当該医薬品と同じ適応症を持つ同様の医薬品には販売承認が付与されません。特定の条件下では、小児臨床試験計画の完了によるさらに2年間の小児用医薬品に係る延長が認められます。
当社グループ製品の関連特許満了後の後発品の市場参入や、競合他社によるOTC医薬品の発売等、当社グループは世界中で知的財産に関わる課題に直面しています。当社グループのグローバルジェネラルカウンセルは、法務ならびに知的財産権の業務についても監督責任を負っています。当社グループの知的財産部は、下記3つの優先事項に注力することにより、当社グループの全社的な戦略をサポートしています。
・疾患領域別ユニットの戦略に沿った自社製品および研究開発パイプラインの価値の最大化および関連する権利の保護
・パートナーとの提携サポートによる外部イノベーションのよりダイナミックな活用の促進
・新興国市場を含む世界各国での知的財産権取得および保護
当社グループの知的財産権が侵害されることは、それらの権利から得ることが期待される収益が失われるリスクとなるため、当社グループは特許やその他の知的財産を管理するための内部プロセスを整備しています。当該プロセスでは、第三者からの侵害に継続的に警戒するとともに、当社グループの自社製品および活動が第三者の知的財産権を侵害しないよう、研究開発段階から注意を払っています。
通常の事業活動において、当社グループの特許は第三者から無効の申し立てを受ける可能性があります。当社グループは、当事者として知的財産権に関する訴訟等に関与しております。継続中の重要な訴訟の詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
下表では、記載された製品について、対象地域ごとに、存続している物質特許およびデータ保護期間(以下、「RDP」)(米国およびEU)もしくは再審査期間(以下、「RP」)(日本)ならびに満了日を記載しております。RDPとRPについてはそれらの制度的な独占期間が特許満了日後にも与えられる場合にのみ記載しています。特許期間の延長(PTE)、補充的保護証明書(SPC)、小児用医薬品に係る独占期間(PEP)は当局により認められたものについては満了日に反映され、申請手続中で認められていないものについては、延長された満了日を別途記載しています。
当社グループのバイオ医薬品は、下記の特許満了期間に関わらず、同じ適応症に対する類似製品またはバイオシミラーを製造する他社との競争に直面するか、今後直面する可能性があります。また、欧州の特許の一部は、SPCにより、いくつかの国で下表に記載の満了期限を超えて対象製品に追加的な保護が付与されます。
(注1) 表中の「—」は物質特許の満了または該当なしを表します。
(注2) 日本では、後発品の承認申請は、先発品の再審査期間終了後に行われ、規制当局による審査の後、承認、薬価収載されます。したがって、後発品は再審査期間の満了後から一定の期間を経て市場に参入します。
(注3) 本製品は、第三者への導出契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。
(注4) 本製品は、特定の地域限定で第三者からの導入契約を締結しているため、全ての地域で当社グループが販売を行っているわけではありません。詳細については「ライセンスおよび共同研究開発契約」をご参照ください。
(注5) ANDA申請者との合意により、2023年3月以降に後発品が発売される可能性があります。
(注6) これらの医薬品は血漿分画製剤です。
(注7) 当社グループは、ENTYVIOの製剤、投与方法、製造工程といった様々な項目について特許権を保有しており、そのうち一部は2032年に満了する予定です。なお、2032年より前にバイオシミラーの上市を目指す場合には、特許権侵害や関連するすべての特許の有効性を確認する必要があるため、バイオシミラーの正確な参入時期について現時点では定かではありません。
(注8) アジルバの再審査期間が2021年10月に終了しました。日本では、後発品は、一定の期間を経て、すなわち、承認申請(再審査期間終了後にのみ行うことができます)を行い、規制当局による審査を通り、承認を得た後で市場に参入します。したがって、アジルバの後発品の正確な参入時期について現時点では定かではありません。
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