業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下「経営成績等」) の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

[財政状態]

当連結会計年度末の連結財政状態計算書の概要及び前連結会計年度末からの主な変動は以下のとおりです。

 

総資産は、2兆3,324億円 (前連結会計年度末比588億円増) となりました。

非流動資産は、1兆4,090億円 (同80億円増) となりました。有形固定資産は、2,690億円 (同44億円増) となりました。のれんは3,030億円 (同190億円増) 、無形資産は6,234億円 (同280億円減) となりました。第4四半期連結会計期間において、遺伝子治療薬AT132の開発計画の見直しに伴う無形資産の減損損失やDNAワクチンASP2390の開発中止に伴う無形資産の減損損失を計上したことなどにより、無形資産が減少しました。

流動資産は、9,234億円 (同508億円増) となりました。現金及び現金同等物は3,160億円 (同101億円減) となりました。

 

資本合計は、 1兆4,603億円  (同 742億円増 ) となり、親会社所有者帰属持分比率は 62.6% となりました。 当期利益1,241億円 を計上した一方で、剰余金の配当 852億円 に加え、自己株式の取得 507億円 を実施しました。なお、2022年3月に 514億円 (2,594万株)の自己株式を消却しました。

 

負債合計は、8,721億円 (同154億円減) となりました。

非流動負債は1,847億円 (同1,105億円減) となりました。その他の金融負債は959億円 (同1,031億円減) となりました。第4四半期連結会計期間において、長期借入金300億円の返済及び1年以内返済予定の長期借入金への500億円の振替により、減少しました。

流動負債は6,874億円 (同950億円増) となりました。当連結会計年度末の社債及び借入金の残高は1,400億円となりました。上述の長期借入金からの振替などにより、その他の金融負債は1,850億円 (同368億円増) となりました。その他の流動負債は3,228億円(同339億円増)となりました。

 

 

[経営成績]

<連結業績 (コアベース) >

当連結会計年度の連結業績 (コアベース) は下表のとおりです。売上収益は増加した一方、コア営業利益及びコア当期利益は減少しました。

 

[連結業績 (コアベース) ]

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2021年3月期)

当連結会計年度

(2022年3月期)

増減額

(増減率)

売上収益

1,249,528

1,296,163

46,635

(3.7%)

売上原価

246,063

253,009

6,946

(2.8%)

販売費及び一般管理費

504,316

548,840

44,523

(8.8%)

研究開発費

224,489

246,010

21,521

(9.6%)

無形資産償却費

23,763

28,283

4,520

(19.0%)

無形資産譲渡益 (注)

24,234

24,234

()

持分法による投資損益

478

489

11

(2.2%)

コア営業利益

251,375

244,744

△6,631

(△2.6%)

コア当期利益

209,906

190,584

△19,322

(△9.2%)

基本的1株当たりコア当期利益 (円)

113.03

103.03

△9.99

(△8.8%)

 

(注) 第3四半期連結会計期間から製品及び研究開発に関する権利の譲渡取引により生じる譲渡益を計上する科目を

新設

 

売上収益

主要製品の前立腺がん治療剤XTANDI/イクスタンジや急性骨髄性白血病治療剤ゾスパタ、尿路上皮がん治療剤パドセブ、腎性貧血治療剤エベレンゾが伸長したほか、過活動膀胱(OAB)治療剤ベタニス/ミラベトリック/ベットミガや骨粗鬆症治療剤イベニティの売上も拡大しました。

・加えて、COVID-19の感染拡大の影響で主に前第1四半期連結会計期間に売上が減少した心機能検査補助剤レキスキャンの売上が回復したことも、増収要因となりました。

これらによって、消炎・鎮痛剤セレコックスや高コレステロール血症治療剤リピトールの販売契約終了、前立腺がん治療剤エリガードの製品譲渡などによる売上の減少を補いました。

 

以上の結果、売上収益は、1兆2,962億円 (前連結会計年度比3.7%増) となりました。

 

 

コア営業利益/コア当期利益

売上総利益は、1兆432億円 (同4.0%増) となりました。売上原価率は、グループ間取引における未実現利益消去に伴う為替の影響等を受けた一方で、主に製品構成の変化により、前連結会計年度に比べ0.2ポイント低下し、19.5%となりました。

・販売費及び一般管理費は、5,488億円 (同8.8%増) となりました。製品ポートフォリオの変化に伴うグローバルでの要員最適化による費用の減少(同約90億円減)があった一方で、為替の影響(同250億円増)をはじめ、XTANDIの米国での売上拡大に伴う共同販促費用の増加(同113億円増)やデジタルトランスフォーメーションへの投資(同約80億円増)、新製品上市・育成に向けた販売促進活動費用の増加(同約50億円増)などにより、総額として増加しました。なお、XTANDIの米国での共同販促費用を除いた販売費及び一般管理費は、4,095億円(同6.6%増)となりました。

・研究開発費は、2,460億円 (同9.6%増) となりました。為替の影響をはじめ、抗Claudin18.2モノクローナル抗体ゾルベツキシマブの開発費用の増加やRx+事業(iota関連)への投資を拡充したことなどにより、総額として増加しました。

・無形資産償却費は、283億円 (同19.0%増) となりました。

・無形資産譲渡益は、 242億円 となりました。第3四半期連結会計期間において、欧州などで販売していた5製品のCheplapharm社への譲渡(123億円)や開発品の譲渡(92億円)、ベンダムスチンの譲渡(20億円)などに伴う譲渡益を計上しました。

 

以上の結果、コア営業利益は2,447億円 (同2.6%減) 、コア当期利益は1,906億円 (同9.2%減) となりました。

 

<連結業績 (フルベース) >

当連結会計年度の連結業績 (フルベース) は下表のとおりです。売上収益、営業利益及び当期利益はいずれも増加しました。

 

フルベースの業績には、コアベースの業績で除外される「その他の収益」、「その他の費用」等が含まれます。当連結会計年度における「その他の収益」は153億円 (前連結会計年度:76億円) 、「その他の費用」は1,043億円 (前連結会計年度:1,230億円) になりました。

「その他の費用」として、第4四半期連結会計期間において、遺伝子治療薬AT132の開発計画の見直しに伴う無形資産の減損損失(312億円)やDNAワクチンASP2390の開発の中止に伴う無形資産の減損損失(113億円)、GITRアゴニスト抗体ASP1951の開発中止に伴うのれんの減損損失(52億円)を計上しました。

 

[連結業績 (フルベース) ]

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

(2021年3月期)

当連結会計年度

(2022年3月期)

増減額

(増減率)

売上収益

1,249,528

1,296,163

46,635

(3.7%)

営業利益

136,051

155,686

19,635

(14.4%)

税引前利益

145,324

156,886

11,563

(8.0%)

当期利益

120,589

124,086

3,497

(2.9%)

基本的1株当たり当期利益 (円)

64.93

67.08

2.15

(3.3%)

 

 

 

 

包括利益

181,499

208,117

26,618

(14.7%)

 

 

 

<主要製品の売上>

 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2021年3月期)

当連結会計年度

(2022年3月期)

増減率

XTANDI/イクスタンジ

4,584

5,343

16.6%

ゾスパタ

238

341

42.9%

パドセブ

128

217

69.5%

エベレンゾ

11

26

131.5%

ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ

1,636

1,723

5.3%

プログラフ (注)

1,827

1,854

1.5%

 

(注) プログラフ:アドバグラフ、グラセプター、アスタグラフXLを含む

 

<XTANDI/イクスタンジ>

・さらなるマーケットアクセスの強化と泌尿器科医への一層の浸透に取り組むとともに、発売後に蓄積した臨床試験に基づく豊富なデータを活用して早期ステージの前立腺がん市場における処方の拡大を図り、販売している全ての地域で売上が拡大しました。

米国において前連結会計年度と比べて大きく伸長したほか、欧州においては「転移性ホルモン感受性前立腺がん(M1 HSPC)」の適応追加(2021年4月承認)が売上の拡大に貢献しました。加えて、日本や中国、インターナショナルマーケットにおいても引き続き力強い成長を示しました。

<ゾスパタ>

血液内科専門医やがん専門医への浸透、製品認知度向上やFLT3遺伝子変異検査実施率の向上に取り組むなど、マーケットリーダーとしてのポジショニングの確立を図り、販売している全ての地域で売上が拡大しました。

・米国と欧州において前連結会計年度と比べて伸長したことに加えて、2021年4月に発売した中国での売上も貢献しました。また、インターナショナルマーケットにおいて承認国が増加したほか、日本においては現在の適応症で高いマーケットシェアを獲得しました。

<パドセブ>

・米国において既存の適応症の患者層に対する推奨治療オプションとしてのポジショニングの確立を図るとともに、「シスプラチン不適応で治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん」の適応追加(2021年7月承認)も貢献し、共同販促収入は想定どおりに伸長しました。

2021年11月に発売した日本においては、想定を上回る立ち上がりを示しました。加えて、欧州においては、2022年4月に白金製剤を含む化学療法およびPD-1またはPD-L1阻害剤による治療歴のある局所進行性または転移性尿路上皮がん患者における単剤療法として、承認を取得しました。

<エベレンゾ>

・日本においてマーケットシェアの拡大に取り組むなど売上は拡大したものの、市場での競争激化の影響で、売上は想定を下回りました。

2021年9月に発売した欧州においては、COVID-19の感染拡大の影響で発売時の販売促進活動が制限されたことに加えて、既存の標準治療薬との差別化の浸透が想定を下回り、売上は想定を下回りました。

<ベタニス/ミラベトリック/ベットミガ>

主に欧州と日本において伸長し、グローバルの売上は拡大しました。

プログラフ

欧州や中国で伸長した一方で、米国や日本で売上が減少するなど、地域ごとに増減はあったものの、グローバルの売上は想定どおりに推移しました。

 

<地域別売上収益の状況>

地域別の売上収益は下表のとおりです。米国、エスタブリッシュドマーケット及びグレーターチャイナは増加した一方、日本及びインターナショナルマーケットは減少しました。

 

 

 

 

(単位:億円)

 

前連結会計年度

(2021年3月期)

当連結会計年度

(2022年3月期)

増減率

日本

2,791

2,588

△7.3%

米国

4,732

5,375

13.6%

エスタブリッシュドマーケット

2,932

3,152

7.5%

グレーターチャイナ

593

663

11.8%

インターナショナルマーケット

1,111

1,101

△0.9%

 

(注) エスタブリッシュドマーケット:欧州、カナダ、オーストラリア

グレーターチャイナ:中国、香港、台湾

インターナショナルマーケット:ロシア、中南米、中東、アフリカ、東南アジア、南アジア、韓国、輸出売上等

 

[セグメント情報]

当社グループは、医薬品事業の単一セグメントのため、記載を省略しています。

 

② キャッシュ・フローの状況

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、2,574億円 (前連結会計年度比494億円減) となりました。

・法人所得税の支払額は421億円 (同242億円増) となりました。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、△624億円 (同195億円支出減) となりました。

・無形資産の売却による収入が243億円ありました。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、△2,163億円 (132億円支出減) となりました。

長期借入金の返済による支出300億円と、社債及び短期借入金の減少が300億円ありました。

・配当金の支払額は 852億円 (同 91億円増 )となりました。また、自己株式の取得による支出 507億円 (同 416億円支出増 )がありました。

 

以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、3,160億円 (前連結会計年度末比101億円減) となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額 (百万円)

前連結会計年度比

(%)

医薬品事業

507,683

84.6

合計

507,683

84.6

 

(注) 金額は、販売価格によっています。

 

b.受注実績

当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額 (百万円)

前連結会計年度比

(%)

医薬品事業

1,296,163

103.7

合計

1,296,163

103.7

 

(注) 主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、以下のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額 (百万円)

割合 (%)

金額 (百万円)

割合 (%)

McKesson Group

193,182

15.5

218,745

16.9

 

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。また、文中において将来について記載した事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大による当連結会計年度における経営成績等への大きな影響はありませんでした。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しています。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

[キャッシュ・フロー]

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

[財務政策]

当社グループは、企業価値の持続的向上に努めるとともに、株主還元にも積極的に取り組んでいます。

成長を実現するための事業投資を優先しながら、配当については、連結ベースでの中長期的な利益成長に基づき、安定的かつ持続的な向上に努めます。また、自己株式の取得を必要に応じて機動的に実施し、資本効率の改善と1株当たり利益の向上を図ります。資金の流動性については、短期社債及び借入金による資金調達を行い、当面の運転資金及び設備資金に加え、一定の戦略的投資機会にも備えられる現預金水準を確保しています。

「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、当社グループの事業等は医薬品事業に特有の様々なリスクを伴っています。事業展開にあたっては、必要資金を円滑にかつ低利で調達できるよう財務基盤の健全性の維持に努めます。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等  連結財務諸表注記 3.重要な会計方針 4.重要な会計上の見積り、判断及び仮定」に記載のとおりです。

 

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