課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中において将来について記載した事項は、提出日現在において判断したものです。

(1) 経営理念

当社の経営理念は、「存在意義」「使命」「信条」の3つのパートから構成されています。この経営理念は、有用性と信頼性の高い医薬品で世界の人々の健康に貢献し、企業価値を持続的に向上させることを目指していく当社の姿勢を表現しています。

 

アステラスの存在意義:先端・信頼の医薬で、世界の人々の健康に貢献する

・生命科学の未知なる可能性を、誰よりも深く究めたい。

・新しい挑戦を続け、最先端の医薬品を生み出したい。

・高い品質を確かな情報と共に届け、揺るぎない信頼を築きたい。

・世界の人々の健やかな生活に応えていくために。

・世界で輝き続ける私たちであるために。

 

アステラスの使命:企業価値の持続的向上

・アステラスは、企業価値の持続的向上を使命とします。

・アステラスは、企業価値向上のため、お客様、株主、社員、環境・社会など、すべてのステークホルダーから選ばれ、信頼されることを目指します。

 

アステラスの信条

アステラスの「信条」は、私たちが常に大事にする行動規範です。

アステラスは、これらの信条に共鳴し実践する人々の集団であり続けます。

 

高い倫理観: 常に、高い倫理観をもって、経営活動に取り組みます。

顧客志向:  常に、お客様のニーズを把握し、お客様の満足に向かって行動します。

創造性発揮: 常に、現状を是とせず、未来志向で自己革新に挑戦し、新しい価値を創造します。

競争の視点: 常に、視野広く外に目を向け、より優れた価値を、より早く生み出し続けます。

 

アステラスは、信条に則した行動を通じて、ステークホルダーの皆様への責任を適切に果たし続けるとともに、積極的な情報開示を行います。

 

(2) 対処すべき課題

製薬産業を取り巻く事業環境は時代とともに大きく変化しています。新薬開発の難易度の上昇、医療費抑制政策等マイナスの影響がある一方で、イノベーションを評価する制度の拡充や、科学技術の進歩に伴い、創薬に活用できる治療手段が増加するなどプラスの動きもあります。また、デジタル技術や工学技術の進歩は、異業種との融合を促し、患者さんに新しい医療ソリューションの提供を可能にします。当社は、これらの変化に柔軟に対応し、社会の持続可能性への貢献、その結果としてアステラスの持続可能性に寄与する戦略を策定することで、企業価値を持続的に向上させ、革新的な医療ソリューションを患者さんに届け続けていきます。

 

   経営計画2021

当社は、「変化する医療の最先端に立ち、科学の進歩を患者さんの『価値』に変える」ことをVISIONに掲げ、 最先端の科学を追求し、患者さんに「価値」をもたらす医療ソリューションの創出を継続的に目指しています。 2021年5月に公表致しました5年間の新たな経営計画である経営計画2021では、4つの戦略目標、それを推進する企業風土を醸成するための “道しるべ”となる3つの組織健全性目標、それらが全て達成された際に到達できると考える3つの成果目標を設定しています。

 

 

4つの戦略目標

 戦略目標1:患者さんのより良いアウトカムの実現

当社は、中長期的な成長を牽引するXTANDI及び重点戦略製品(注)について、最初の申請国における最適な申請計画の立案、計画したスケジュールから遅滞のない承認申請、より速く世界中の多くの方へ届けるためのグローバル展開までの期間短縮、洗練された発売計画の立案と実行を行うことなどによって、(i)アステラス製品に対する患者さんの持続的なアクセス、(ii)患者さんがアステラスの製品から享受するアウトカムの最大化に取り組んでいきます。

(注)ゾスパタ、パドセブ、ゾルベツキシマブ、エベレンゾ、fezolinetant、AT132

 

戦略目標2:科学の進歩を確かな「価値」へ

研究開発における重点戦略領域であるPrimary Focusに優先的に経営資源を投下し、パイプライン価値を高めます。「価値」の実証とPrimary Focus拡大の加速、バイオ医薬品における最先端のイノベーションの効果的な探究によって、経営計画2018での取り組みを新たな次元へと進化させます。特に、基盤技術として有する細胞医療や遺伝子治療によるアプローチは、これまでの「対症療法」から「根本治療」へと大きなパラダイムシフトをもたらし、いまだ治療法のない疾患に対する新たな治療法を切望する患者さんにとって大きな希望になりうると考えています。

 

  Primary Focus 遺伝子治療

約7,000種類にも及ぶ遺伝子疾患は、遺伝コードの突然変異又は欠損により起こり、多くの場合は出生時から発症し幼児が罹患しています。遺伝子治療は、1回の投与により、欠損遺伝子を置換あるいは異常遺伝子を調節し、重篤で致命的な疾患に対する治療効果を大幅に改善することが期待されます。治療の選択肢が全く、又はほとんどない遺伝性疾患において、患者さんの人生を変えるような革新的な遺伝子治療法の開発を目指します。

 

  Primary Focus がん免疫

現在のがん免疫治療法に反応するがんはわずか20%程度。その割合を20%から100%に変えるべく、現在のがん免疫療法では治療することのできない患者さんのために、新しいモダリティとテクノロジーを活用した次世代のがん免疫療法の開発を目指します。

 

・ Primary Focus 再生と視力の維持・回復  

全世界で1億6千万人以上が眼科疾患により失明状態にあり、患者さんの生活の質は長期的に深刻な影響を受けています。細胞医療や遺伝子治療によって、視力をつかさどる重要な眼の細胞を修復・維持することを目指し、視力の維持や回復をもたらす新たな治療選択肢を提供することを目指します。

 

  Primary Focus ミトコンドリアバイオロジー

ミトコンドリアはほぼ全ての種類のヒト細胞に存在し、エネルギー産生及び代謝や細胞シグナル等のプロセスにおいて重要な役割をもっています。ミトコンドリアの機能不全は腎臓、肝臓、筋肉、中枢神経系、目及び耳等の疾患と関連しています。これらの多くは治療の選択肢がほとんどありません。ミトコンドリアを標的とすることにより、ミトコンドリアの機能不全に伴う疾患の革新的な治療法を創出することを目指します。

 

・  Primary Focus候補 免疫ホメオスタシス

自己免疫疾患に対する治療法として、現在は主に免疫抑制剤が使用されていますが、これは自己反応性免疫細胞のみを標的としたものではありません。疾患に関連する免疫反応のみを抑制することにより、安全で特異的な新しい治療法を生み出すことを目指します。

 

 

  Primary Focus候補 標的タンパク質分解誘導

これまで多くの重要ながんドライバー変異に対する創薬は困難と考えられていましたが、科学的知見の蓄積と技術の進化により、創薬可能と考えられるがん種も拡大しています。標的タンパク質分解誘導によってシグナル伝達を阻害することにより、そのゲノム異常を有する患者さんに革新的な治療効果をもたらすことを目指します。

 

戦略目標3:Rx+ビジネスの進展

経営計画2018で掲げた「Rx+プログラムへの挑戦」を、経営計画2021では「Rx+ビジネスの進展」としました。経営計画2021の期間は、これまでの事業創成に向けた取り組みが実を結び始めるステージとなります。Rx+プログラムの事業化に、より一層力を入れて取り組むことで、我々が目指す「科学的根拠に基づくヘルスケアソリューションによって、心身ともに健康に、自分らしく生きることができる社会の実現」に向けて前進していきます。

 

戦略目標4:サステナビリティ向上の取り組みを強化

経営計画2021で新たに加えた戦略目標です。当社は、従来の企業の社会的責任に基づく(CSR)経営を見直し、今後は環境・社会・ガバナンス(ESG)を考慮しつつ、社会及びアステラスの持続可能性を共に向上させていくという、当社のサステナビリティの考え方に基づいて全社で取り組んでいきます。サステナビリティの向上に向けた取り組みの中から、アステラスの強みや技術・専門性を活かした「保健医療へのアクセス向上(ATH:Access to Health)」と、環境問題、特に「気候変動対策」を重点課題として位置づけ、優先的に取り組みを進めています。

 

3つの組織健全性目標

長期にわたり優れたパフォーマンスを生み出す社内環境を構築するために以下の3つの組織健全性目標を策定しました。組織健全性目標への取り組みによって組織の最大限のポテンシャルを引き出し、One Astellasとして優れた実行力とイノベーションを生み出すための社内環境を構築します。

 

組織健全性目標1:果敢なチャレンジで大きな成果を追求

適切なリスクを取ることができるよう社員に権限が与えられるとともに、成果を追求し、イノベーションに注力できる環境を構築します。

 

組織健全性目標2:人材とリーダーシップの活躍

目的を持った人材マネジメントと、一貫したリーダーシップスタイルにより、望ましいマインドセットと行動が促進される環境を構築します。

 

組織健全性目標3:One Astellasで高みを目指す

共通の目標を達成するために社員が効果的に協働し、組織的に力強く戦略を推進する環境を構築します。

 

3つの成果目標

理想とする組織に近づき、4つの戦略目標を確実に実行できた時、2025年時点で達成できているだろうと考えられる姿を、数値目標として表したものが、この成果目標です。

・ 売上収益:XTANDI及び重点戦略製品の売上は2025年度に1.2兆円以上

・ パイプライン価値:Focus Areaプロジェクトからの売上は2030年度に5,000億円以上

・ コア営業利益率(注):2025年度に30%以上

これら3つの成果目標を達成することで、2025年度には当社は株式時価総額7兆円以上と評価されるような企業となることを目指します。

(注)当社は、会社の経常的な収益性を示す指標としてコアベースの業績を開示しています。当該コアベースの業績は、フルベースの業績から当社が定める非経常的な項目を調整項目として除外したものです。調整項目には、減損損失、有形固定資産売却損益、リストラクチャリング費用、災害による損失、訴訟等による多額の賠償又は和解費用等のほか、会社が除外すべきと判断する項目が含まれます。

 

   株主還元方針

当社は、企業価値の持続的向上に努めるとともに、株主還元にも積極的に取り組んでいます。成長を実現するための事業投資を優先しながら、配当については、連結ベースでの中長期的な利益成長に基づき、安定的かつ持続的な向上に努めます。

また、自己株式の取得を必要に応じて機動的に実施し、資本効率の改善と1株当たり利益の向上を図ります。

 

   新型コロナウイルス感染症拡大に対する取り組み

当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、製薬会社の使命として患者さんの安全確保及び医療現場の負担軽減に寄与するべく様々な取り組みを行っています。これまでに、医薬品の安定供給、治療薬等の研究開発への貢献、感染が拡大する地域への救援等の取り組みを実施しています。

今後も各方面からの情報収集を迅速に行い、日々変化する状況を正確に把握し、各国の関係機関とも連携しながら必要な対応を速やかに実施していきます。

 

1) 事業の継続と医薬品の安定供給の維持について

・国や地域の状況に応じ、出社と在宅での勤務を組み合わせて、社員の安全確保及び感染拡大防止に努めています。

・社員の安全を最優先としながらも、当社の社会的使命である、医薬品の安定供給・品質管理・安全管理・情報提供につきましては、必要な活動を継続しています。

 

2) 患者さんの安全確保と医療現場への負担軽減に向けて

患者さんの安全を確保すること、そして医療現場への負担を軽減するために、以下のとおり、介入臨床試験の実施に関する対応を取っています。

・各国の薬事規制当局が発行したガイダンスに沿って、臨床試験実施計画書を評価し、患者さんの安全を確保しつつ、医療制度への負担を軽減するための対応を行っています。

・試験によっては、患者さんの安全を最優先するために、臨床試験実施計画書に定められた時期に患者さんが来院できない場合には、電話等による遠隔での安全性確認、治験実施施設以外の近隣施設での必要な検査の実施や患者さん宅への治験薬の送付等の取り組みも実施しています。

・いまだ感染拡大が続いている国・地域においては、患者さんや治験実施施設に対する固有の状況や制限に応じて、柔軟に対応しながら、臨床試験を進めています。

・当社及び当社のグループ会社が実施する全ての介入臨床試験について、常に状況を注視しながら対応を評価・検討していきます。

・引き続き、患者さんの安全性確保を第一に考え、臨床開発プログラムにおけるコンプライアンスの徹底及びデータインテグリティ(データ完全性)の維持に注力します。

 

3) 治療薬等の研究開発への貢献について

・政府の要請に応じた医薬品の提供等に対し、関係機関と連携しながら適切な対応を速やかに実施しています。

・各国政府からの要請に基づく研究段階の化合物の提供要請に対応しています。当社では、安全性を第一に考え、同時に一刻も早くあらゆる可能性を探るため、治療薬等の研究開発に引き続き貢献していきます。

 

 

4) 各国・地域における救援活動について

当社及び当社のグループ会社は、新型コロナウイルス感染症と闘う医療関係者等が使用する個人用保護具(マスク等)の購入支援等を目的として、これまでに30か国のNGO、政府・医療機関に対して約50件の経済的支援を実施しています。

 ・2021年度は、インドにおいて当社及び当社のグループ会社(アステラス ファーマ インディア Pvt. Ltd.) が新型コロナウイルス感染症で被害を受けたインドの地域への必要物資補給のためにNPOへ約490万インドルピーの寄付を行いました。

・政府や非営利団体等からの様々な医療現場の支援活動の要請に対応できるよう、医療資格を有するアステラス社員が自らのコミュニティで求められるボランティア活動への参加を希望する場合には、各国の法令及び社内規程に準拠した上で最長4週間の有給休暇を付与します。

 

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