業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

また、当社グループの事業は、医療用医薬品の研究開発、仕入、製造、販売並びにこれらの付随業務を事業内容とする単一セグメントであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

①経営成績等

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は1兆1,506億1百万円で、前連結会計年度末に比べて1,516億8百万円増加しました。

非流動資産は4,913億96百万円で、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の増加、ワクチン製造設備の建設に伴う有形固定資産の増加等により前連結会計年度末に比べて486億41百万円増加となりました。流動資産は6,592億5百万円で、営業債権、3ヶ月超の定期預金及び債券(流動資産のその他の金融資産に含みます)の増減等の結果、前連結会計年度末に比べて1,029億67百万円増加しました。

資本については9,932億85百万円となり、当期利益の計上と配当金の支払、また、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の純変動額と在外営業活動体の外貨換算差額が増加した結果、前連結会計年度末に比べて1,287億34百万円増加しました。

負債については1,573億16百万円で、前連結会計年度末に比べて228億74百万円増加しました。

非流動負債は329億20百万円で、前連結会計年度末に比べて13億41百万円減少しました。流動負債は1,243億96百万円で、前連結会計年度末に比べて242億15百万円増加しました。

 

b.経営成績

当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)の経営成績は、以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

当連結会計年度

前連結会計年度

増減

増減率(%)

売上収益

335,138

297,177

37,960

12.8

営業利益

110,312

117,438

△7,126

△6.1

コア営業利益

110,570

93,963

16,607

17.7

税引前利益

126,268

143,018

△16,750

△11.7

親会社の所有者に帰属する当期利益

114,185

111,858

2,326

2.1

※会社の経常的な収益性を示す利益指標として「コア営業利益」を設定し、これを当社独自の業績管理指標として採用しております。「コア営業利益」は、営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。

 

売上収益は、3,351億円(前期比12.8%増)となりました。国内医療用医薬品の売上収益は、サインバルタの後発品参入の影響を受け、891億円(前期比5.9%減)となりました。一方、海外子会社及び輸出の売上収益は、セフィデロコルの米欧での売上の伸長により、344億円(前期比39.5%増)となりました。さらに、HIVフランチャイズに関するロイヤリティー収入の増加により、ロイヤリティー収入は、1,813億円(前期比25.3%増)となりました。

営業利益は、COVID-19関連プロジェクトへの積極投資により研究開発投資が増加したことで、1,103億円(前期比6.1%減)となりました。また、特殊要因を除くコア営業利益は1,106億円(前期比17.7%増)でした。

税引前利益は1,263億円(前期比11.7%減)となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、税引前利益は減少したものの、大阪国税局からの更正処分に対する取消請求訴訟の勝訴に関する還付金を受領した結果、1,142億円(前期比2.1%増)となりました。

2021年度はCOVID-19関連プロジェクトへの研究開発費が大幅に増加しながらも、業績予想を達成することができました。2022年度は、積み残した課題に取り組み、自らの力で利益を生み出すことができる企業体質への変革を一層強化していきます。

 

 

・国内医療用医薬品

サインバルタの後発品参入による売上減少により、国内の医療用医薬品の売上収益は891億円(前期比5.9%減)となりました。インフルエンザに関しましては、昨シーズン同様に極めて小規模な流行にとどまりましたが、ラピアクタの政府備蓄による売上収益を計上したため、インフルエンザ関連製品群の売上収益は31億円(前期比28億円増)となりました。また、インフルエンザ関連製品群を含む感染症薬に関しましては、118億円(前期比20.8%増)となりました。インチュニブとビバンセに関しましては、売上収益がそれぞれ164億円(前期比25.4%増)、8億円(前期比190.7%増)と伸長しました。

コロナ禍において、MRの医療機関への訪問規制が続いておりましたが、医療従事者に各製品の情報を適切に届けるために、デジタル環境下における情報提供体制を整備し面会機会の確保に注力しました。また、1人当たりの生産性の向上を目指し、意思決定がデータに基づいて行われる組織を実現するための営業IT基盤の構築を進めました。

 

・海外子会社及び輸出

海外子会社及び輸出の売上収益は、344億円(前期比39.5%増)となりました。米国での売上収益は、セフィデロコル※1が好調に推移したことに加え、FORTAMETの販売権等の移管に関する一時金を受領した結果、138億円(前期比84.5%増)となりました。セフィデロコルの売上収益は62億円(前期比268.7%増)となりました。欧州での売上収益は、セフィデロコルが好調に推移したことで、50億円(前期比153.7%増)となりました。また、2021年度にイタリアでの販売を新たに開始しました。引き続きセフィデロコルの販売国とサブスクリプション型償還モデル※2の採用国の拡大を通して、欧米事業の成長を進めてまいります。中国では、中国政府による医療費抑制施策の中で既存のジェネリック事業の売上収益は減少しましたが、為替変動の影響により売上収益は102億円(前期比1.1%増)となりました。

 

※1 米国の販売名:Fetroja、欧州の販売名:Fetcroja

※2 抗菌薬の処方量と切り離し、国が開発企業に対して固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができるサブスクリプション型の償還モデル

 

・ロイヤリティー収入及びヴィーブ社からの配当金収入

英国ヴィーブヘルスケア社(以下「ヴィーブ社」という)に導出したHIVフランチャイズの売上が伸長したことで一時金を除く同社からのロイヤリティー収入は対前年で増加しました。また、ヴィーブ社の米国ギリアド・サイエンシズ社(以下「Gilead社」という)に対する特許侵害訴訟が、2021年度中に和解に至ったことから、ヴィーブ社は12.5億米ドルの一時金と、今後の米国におけるBiktarvyの売上高(参考:2020年60.9億米ドル)及び将来の製品売上高のbictegravir部分の金額に対して、3%のロイヤリティーを受領することになりました。当社はヴィーブ社が受領した一時金の一部を売上収益として認識しました。また、ヴィーブ社との協議の結果、当社が将来受領予定のロイヤリティー相当分を当連結会計年度の売上収益として認識しました。 以上の結果、ヴィーブ社からのロイヤリティー収入は1,740億円(前期比41.0%増)となりました。

スイスロシュ社からのロイヤリティー収入に関しては昨シーズンに引き続きグローバルでのインフルエンザの流行が極めて小規模にとどまったため2021年度は0.4億円となりました。

また、英国アストラゼネカ社からのクレストールのロイヤリティーは、契約に基づき2020年度第4四半期より受領額が減少したことから、12億円(前期比93.1%減)となりました。

以上のように2021年度のロイヤリティー、マイルストン及び配当金収入全体としては、HIVフランチャイズに関するロイヤリティー収入が増加したことから、1,942億円(前期比15.6%増)となりました。

 

 

・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しましたとおり、当社グループは、2020年6月に新中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」を策定しております。

成長性を測る指標として、売上収益、コア営業利益、コア営業利益率、ロイヤリティー収入を除く海外売上高比率、自社創薬比率の5つを設定しており、また株主還元を測る指標として、事業成長と財務施策の観点から基本的1株当たり当期利益(EPS)、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)の3つを設定しております。

STS2030の2年目である当連結会計年度においてこれらの指標に対する結果は、以下のとおりとなりました。

 

業績評価指標(KPI)

2021年度

実績

2022年度

目標

2024年度

目標

2030年度

目標

成長性

売上収益

3,351億円

4,000億円

5,000億円

6,000億円

コア営業利益*

1,106億円

1,200億円

1,500億円

2,000億円

コア営業利益率

33.0%

30%以上

30%以上

海外売上高比率**

22.3%

25%以上

50%以上

自社創薬比率

73%

60%以上

60%以上

株主
還元

EPS

378.75円

370円以上

480円以上

DOE

3.8%

4%以上

4%以上

ROE

12.5%

13%以上

15%以上

 *:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。

**:ロイヤリティー収入を除きます。

 

2022年度はCOVID-19関連プロジェクトによる成長の実現と、収益の再投資による中長期的な成長に向けた取り組みに注力するとともに、国内及び海外事業の強化を図り、引き続き、STS2030で掲げたこれらの指標の達成に向けて取り組みを進めてまいります。

 

c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、大阪国税局からの更正処分に対する取消請求訴訟の勝訴に関する還付金受領の一方、税引前利益の減少及び営業債権の増加により、前連結会計年度に比べて69億70百万円少ない1,020億68百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の増減、余資運用に係る有価証券の取得等により、前連結会計年度に比べて909億42百万円多い962億4百万円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に自己株式の取得、第三者割当による自己株式の処分及び平安グループとの子会社設立に伴う株式発行収入があったため、前連結会計年度に比べて72億76百万円少ない366億15百万円の支出となりました。

これらを合わせた当連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額は217億52百万円の減少となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、2,544億20百万円となりました。

 

〔キャッシュ・フロー指標のトレンド〕

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

親会社所有者
帰属持分比率

87.6%

84.7%

84.8%

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率

184.9%

179.6%

197.3%

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

0.1

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ

378.1

425.6

1,161.1

(注)親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

1.指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3.キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としております。

②生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

93,484

0.9

(注)金額は、正味販売見込価格により算出したものであります。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

12,573

△3.8

(注)金額は、実際仕入額によっております。

 

c.受注状況

当社グループは、主として販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。

当社及び一部の連結子会社で受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。

 

d.販売実績

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

医薬品事業

335,138

12.8

(注)1.販売金額は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ViiV Healthcare Ltd.

123,361

41.5

176,990

52.8

 

(2)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要な会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。

 

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