課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略等

 

■経営の基本方針

当社グループは、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」ことを基本方針としております。そのためには、益々よい薬を創り、かつ製造するとともに、多くの方々に知らせ使っていただくことが必要であります。このことを成し遂げるために、シオノギのあらゆる人々が日々技術を向上させることが、すべてのステークホルダー(顧客、株主、取引先、社会、従業員など)の利益の拡大につながるものと考えております。

 

■2030年に成し遂げたいビジョン

当社グループは、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことをビジョンとして掲げ、事業の変革を進めております。医薬品ビジネスには、主力製品の特許切れという事業のサステイナビリティに関わる課題が常に存在します。また、社会保障費に対する懸念の高まりや医療ニーズの高度化、多様化が進む中で懸命にこれに対処し、人々の健康と持続可能な社会の実現に貢献し続けることが製薬会社としての社会的使命であると認識しております。したがって、従来の医療用医薬品を中心に提供する「創薬型製薬企業」から、ヘルスケアサービスを提供する「HaaS(Healthcare as a Service)企業」へと自らを変革し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事をより包括的に解決したいと考えております。そのためには、創造力と専門性をベースとした創薬型製薬企業としての強みをさらに進化させ、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる「協創の核」とならねばなりません。

当社グループは、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて自らを「Transform」することで、新たなビジョンの実現に取り組んでまいります。

 

■経営環境及び経営戦略

医薬品産業を取り巻く外部環境は、世界人口の増加と高中所得国における少子高齢化の進行、地球規模で起こる気候変動等の環境変化と、それに伴う疾病構造やヘルスケアに求められるニーズの変化、デジタルトランスフォーメーションの加速、人々の価値観の多様化等、急速に変化しております。また、医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、我が国においては医療用医薬品について2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、経営を取り巻く環境は厳しさを増しております。さらに、2019年の末より急激に拡大した新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックは、これらの環境変化に加えて、創薬の研究開発の進め方やグローバル展開の考え方など、大きな変革をもたらしています。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や、それに関連した各国の今後の対応によっては、諸外国におけるビジネス展開や医薬品の原材料の調達・供給が停滞する可能性といったカントリーリスクが懸念されています。このような中で企業が社会の要請に応え、持続的に成長していくためには、ステークホルダーとの対話の中から世の中の変化に対する予見力を高め、ビジネスにおけるリスクを低減し、強みを活かして新たな事業機会を継続的に創出していかねばなりません。

当社グループは、前中期経営計画「Shionogi Growth Strategy 2020(SGS2020)」で積み残した課題である「新製品売上」並びに「海外事業の成長」、それに伴う「生産性の向上」を早期に克服し、2028年ごろに訪れるHIV製品の特許切れによる影響(パテントクリフ)を乗り越え、新たに発生するビジネスリスクに柔軟に対応しながら、更なる成長を達成するための戦略として、2020年度を起点とする中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)」を策定いたしました。

STS2030の最初の5ヵ年の計画であるSTS Phase 1では、グループ一丸でビジネスの変革を強力に推し進め、「トータルヘルスケア企業として持続的な成長へのTransformationを具現化する」ことをテーマに、新たな価値創造に向けた「R&D戦略」及び「トップライン(売上)戦略」と、価値創造を実現するための「経営基盤戦略」を進めております。

 

(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

「(1)経営方針・経営戦略等」に記載したとおり、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題としては、「新製品売上」並びに「海外事業の成長」、それに伴う「生産性の向上」が挙げられます。当社グループは特定の薬剤クラスの中では最も優れた薬を創るcapabilityを有していると考えております。ただし、その優位性をもって、国内を含むグローバル市場の中で効率的に販売を拡大するには至っておりません。上記に挙げた3つの課題は、創薬から販売に至るビジネスのフローにおいてすべてつながっている課題であり、その克服如何が次の10年の成長確度を大きく左右するものだと認識しております。

こうした課題を克服し、2030年におけるビジョンを達成するための戦略として、前述のSTS2030を策定しており、STS Phase 1で定めた3つの戦略(「R&D戦略」、「トップライン(売上)戦略」及び「経営基盤戦略」)に則り事業活動を推進しております。

 

■R&D戦略

R&Dにおける疾患戦略として、感染症、精神・神経疾患をコア疾患として経営資源を集中する一方で、がんなどの社会的ニーズの大きい疾患に対する挑戦を継続し、アライアンスの活用も含めて創製・獲得したパイプラインの潜在的価値に応じて柔軟かつ大胆に注力プロジェクトの優先度を変更しております。現在、世界的な脅威となっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対し、60年以上にわたり積み上げてきた感染症領域における強みを発揮し、治療薬並びに予防ワクチンの研究開発を最優先で進めております。

また、注力しているパイプライン* に関しては、いずれもより良い治療法の開発が強く望まれている疾患を対象としており、現状の疾患治療に対する捉え方(パラダイム)を変え得るものです。これらの革新的なパイプラインの研究開発を促進し、引き続きHIV製品のパテントクリフへの対応を強化してまいります。

 

*:注力するパイプライン(注力プロジェクト)

 

領域

プロジェクト

詳細

感染症

S-217622

COVID-19治療薬

S-268019

COVID-19ワクチン

経鼻ワクチン

COVID-19、インフルエンザ

S-540956

感染症、がん

精神・神経

S-600918

(シボピキサント)

難治性慢性咳嗽

S-812217

(zuranolone)

うつ病・うつ状態

新たな

成長領域

S-531011

固形がん

S-005151

(レダセムチドトリフルオロ酢酸塩)

①栄養障害型表皮水疱症

②急性期脳梗塞

③変形性膝関節症

④慢性肝疾患

⑤心筋症

 

■トップライン戦略

「最適な疾患戦略を地域に応じたパートナリングを通して実現する」ことを掲げ、当社グループの重点疾患である感染症、精神・神経疾患をベースに、日本・米国・欧州・中国を強化地域として取り組んでおります。STS2030では、各疾患に対して、従来の強みである治療薬を軸に、未病・ケア、予防、診断といった多様なアプローチで疾患全体をケアし、「HaaS企業」としての新たなポジションを開拓します。この疾患戦略を統括・推進するヘルスケア戦略本部を中心に、人々の健康に必要な製品や情報をより多くの方に届ける仕組みを構築し、各地域のビジネス強化につなげていく取り組みが進行中です。これらの戦略を加速するために、2020年11月に中国平安保険(集団)股份有限公司(以下「平安グループ」という)との資本業務提携に関する基本合意書に則り、中国並びにアジア事業の起点となる2つの合弁会社を上海及び香港に設立いたしました。引き続き、塩野義製薬の保有する疾患洞察力及び研究開発のノウハウと、平安グループのIT・ビッグデータ収集やAIによる解析のノウハウを掛け合わせ、ヘルスケアの未来を創造してまいります。

 

■経営基盤戦略

STS Phase 1において、Transformationの具現化を早期に実現する上では、ダイナミックな経営基盤の改革が必要不可欠であり、その根幹を担うのは「変革の仕組み」と「人材の成長」となります。変革の仕組みとしては、意思決定システムの刷新やデータ活用の環境整備を始めとした意思決定の高度化、及び社内外の連携を促進する業務プロセスの改革に取り組んでおります。また、新たな人材像(Shionogi Way)として、「一人ひとりが他者を惹きつける尖った強みを持ち、新しいことにチャレンジを続ける人」を掲げ、成長・変革の源泉となる人材を育成・強化する施策を展開しております。

 

当社グループは、経営理念である基本方針「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬を提供する」ことをグローバルで実現するため、創薬型製薬企業としての強みを磨き、ヘルスケア領域の新たなプラットフォームを構築することで、持続的な成長を目指します。そして、世界中の患者さまやそのご家族、医療関係者の方々等、あらゆるステークホルダーの皆さまに信頼されるグローバル企業を目指し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

STS Phase 1で達成すべき経営指標として、8つの経営指標を設定いたしました。

成長性を測る指標として、売上収益、コア営業利益、コア営業利益率、ロイヤリティー収入を除く海外売上高比率、自社創薬比率の5つを設定しております。2024年度に向けて各事業年度の売上目標を達成し、HIV製品のパテントクリフを乗り越える上で必要十分なR&D投資を行いながら、コア営業利益率30%以上を堅持することを目指しております。また、市場が大きい海外での売上収益を高めるための投資効果を測る指標として海外売上高比率を設定しております。さらに、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる条件として、自社創薬比率を高水準で維持することを目指します。

株主還元を測る指標としては、事業成長と財務施策の観点から基本的1株当たり当期利益(EPS)、親会社所有者帰属持分配当率(DOE)、親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)の3つを設定しております。

 

業績評価指標(KPI)

2022年度
目標

2024年度
目標

2030年度
目標

成長性

売上収益

4,000億円

5,000億円

6,000億円

コア営業利益*

1,200億円

1,500億円

2,000億円

コア営業利益率

30%以上

30%以上

海外売上高比率**

25%以上

50%以上

自社創薬比率

60%以上

60%以上

株主
還元

EPS

370円以上

480円以上

DOE

4%以上

4%以上

ROE

13%以上

15%以上

(注)1.STS Phase 1(2020年度~2024年度)、STS Phase 2(2025年度~)

2.数値はIFRSベースとなります。

 

*:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益等)を調整した利益となります。

**:ロイヤリティー収入を除きます。

 

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