課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「企業理念」である「医薬品の創製を通じて、世界の人々の健康に貢献します」のもと、「めざす姿」である「国際創薬企業として、社会から信頼される企業になります」の実現に向けて、新薬の創製や海外事業展開、医療ニーズに対応する新たな事業機会の創出に挑戦しております。

また、すべての企業活動にあたっては、高い倫理観を持ち、公正かつ誠実な企業活動を展開することを「企業行動憲章」に定め、当社グループの全役員および全従業員が最優先する行動の規範と位置付けております。

そして、これら理念を踏まえ、持続的な事業活動を行っていく上で、優先的に取り組むべき7つの重要課題(マテリアリティ)を特定しました。今後、これらに対する評価指標を定め、適宜、実績を公表してまいります。当社グループは、事業活動を通じた社会課題の解決に取り組み、人々の健康寿命の延伸、そして持続可能な社会の実現に今後とも一丸となって貢献してまいります。

マテリアリティ:

① 新たな価値を持つ医薬品・医療サービスの創製

② 製品の品質保証と安定供給

③ 製品の適正使用の推進

④ 倫理的で公正・誠実な事業活動

⑤ ステークホルダーとの対話と信頼される情報開示

⑥ 従業員の健康と多様性の尊重

⑦ 人々の健康に関連する社会貢献活動

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略および会社の対処すべき課題

「中期経営計画16-20 Open Up the Future」

 国内医療用医薬品を取り巻く事業環境は急激に変化しており、当社グループが成長を持続するためには、世界最大の医薬品市場である米国における自社販売による事業基盤の成長・拡大および国内市場における育薬・営業強化を通じた重点品の価値最大化と重点疾患領域でのプレゼンスの向上が重要課題であります。

 当社グループは、患者さんやそのご家族の未来を切り拓くことに貢献することで、自らの未来も切り拓くことができると確信し、「医薬品」のみならず「医療」というより広い領域を視野に入れ、「Open Up the Future ―医療の未来を切り拓く」をキーコンセプトとして、(ⅰ)パイプライン価値最大化、(ⅱ)米国事業展開、(ⅲ)育薬・営業強化、(ⅳ)業務生産性改革という4つの挑戦への取組みを示した中期経営計画16-20を2015年に策定しました。また、その後の事業環境変化を踏まえて2018年11月に目標数値の見直しを行い、最終年度である2020年度に、売上収益4,300億円、コア営業利益600億円、親会社の所有者に帰属する当期利益400億円、研究開発費850億円、海外売上収益比率30%の達成をめざしてまいります。

 4つの挑戦の主な課題および当連結会計年度における主な進捗は、以下のとおりです。

 

※当社グループは、IFRSの適用にあたり、会社の経常的な収益性を示す段階利益として「コア営業利益」を導入し、経営管理等の重要指標と位置付けています。「コア営業利益」は、営業利益から当社グループが定める非経常的な要因による損益(以下、非経常項目)を除外したものです。非経常項目として、事業譲渡による損益、構造改革費用、製品に係る無形資産の減損損失等を想定しております。

 

(ⅰ)パイプライン価値最大化

・本中期経営計画期間中に10品目の後期開発品を創製する事を目標として掲げ、それを実現していく中で、重点領域に更に特化し、その領域の中で疾患の再定義、ニーズの再定義を行いながら、自社オリジナル品による独自の医療価値を提供していくことをめざします。

・創薬機会の拡大を図るべく、従来の低分子、抗体に加え、新規モダリティとして核酸、遺伝子治療、デザインドファーマ、デジタルメディスン等にも戦略的に取り組み、新たな医療ニーズに応えることをめざします。またこれらの取組みを加速すべく、社外の創薬研究拠点を活用しながらアカデミアや他社との協業によるオープンシェアードビジネスを積極的に拡大していきます。

 

(当連結会計年度における主な進捗)

「第2 事業の状況 5 研究開発活動」に記載しております。

 

(ⅱ)米国事業展開

・筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)治療剤「ラジカヴァ」の販売拡大とともに、2021年度にラジカヴァ経口懸濁剤、インフルエンザVLPワクチン、2022年度にND0612の上市をそれぞれ見込んでおり、2023年度には米国市場での売上収益の大幅拡大をめざします。また、外部からの製品や後期開発品の導入、または事業買収などを通じた「米国事業の拡大」の機会を狙いつつ、米国で上市できる自社創製品の開発にも注力し、「米国事業の持続的成長」に取り組んでいきます。

 

(当連結会計年度における主な進捗)

2017年8月に販売を開始したALS治療剤「ラジカヴァ」については、医師への訪問活動の他、患者アクセスの向上などの多角的な販売活動を推進し、当連結会計年度末までに、本製剤の累計投与患者数は3,760名、売上収益は270億円となりました。

米国事業の拡大を目的として買収したニューロダーム社の医薬品と医療器具(デバイス)とを組み合わせたパーキンソン病治療剤「ND0612」については、開発計画の見直しを行い、2022年度の上市に向けてFDAと第3相臨床試験のデザインについて概ね合意いたしました。

さらに、研究開発子会社であるメディカゴ社が事業化準備を進める季節性インフルエンザVLPワクチン「MT-2271」については、成人を対象とした第3相臨床試験の結果を取得し、北米において申請準備を進めるとともに、高齢者を対象とした第3相臨床試験を開始いたしました。

 

(ⅲ)育薬・営業強化

・開発品の早期上市をめざすとともに、開発の初期段階から製品ライフサイクル戦略を積極的に実施して、製品価値を最速で最大化させていきます。国内市場において、炎症免疫領域では、重点品のライフサイクルマネジメント施策によってシェアNo.1を堅持し、糖尿病・腎領域では、重点品のエビデンス獲得と販路拡大をめざします。これらの施策により、薬価改定はあるものの、国内医薬品の年間売上収益3,000億円を維持し、新薬および重点品の売上収益比率を75%まで高めていきます。

・営業プロモーションの強化では、ICTを活用した市場ニーズ把握の精度向上と業務効率化をめざしたデジタルマーケティングを推進します。同時に、重点疾患領域の専門性を更に高めたエリアマーケティングを推進することで、地域のニーズを的確かつ迅速に捉えた独自の医療連携企画を実施していきます。これらの施策を通じ、中長期的な視点で地域医療に貢献していきます。

 

(当連結会計年度における主な進捗)

糖尿病疾患領域において、2017年9月より第一三共株式会社との共同プロモーションによる販売を開始した「カナリア」が、当連結会計年度においても、引き続き順調な売上の伸長を示しました。また、炎症免疫領域においては、2017年11月より帝國製薬株式会社と共同販売を開始した「ルパフィン」も売上が伸長いたしました。さらにヤンセンファーマ株式会社から導入したヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤「ステラーラ」について、国内での流通を同社から当社に変更する販売枠組み変更契約を2018年6月に締結し、当社の売上収益として計上しています。

 

(ⅳ)業務生産性改革

・国内事業環境の厳しさに対応すべく、収益を維持できる体質に、継続的に改革していくことが急務であり、売上原価と販売費及び一般管理費を2015年度比で200億円削減する目標をさらに引上げ、300億円の削減をめざして取り組んでいます。

・働き方改革では、時間外労働の削減、有給休暇取得促進、勤務間インターバル導入、テレワーク勤務制度の充実、プレパパ・イクパパ休暇制度(男性の育児参画支援)など多様な働き方の環境整備に取り組んでいます。従業員の働く意欲の向上・健康管理に主眼を置いたこれらの施策は、仕事の生産性向上につながるものと考えています。

・人材の育成では、経営人材育成プログラム(MT-VIVID)を2016年度から開始し、将来を担う次世代グローバルリーダー育成に継続して取り組んでいます。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」の実践により、様々な違いを受け入れて、個性を活かしながら、世界で戦える人・組織を創り、成果創出へとつながるよう取り組んでいきます。

 

(当連結会計年度における主な進捗)

本中期経営計画期間中における売上原価と販売費及び一般管理費の300億円削減(対2015年度比)に向け、当連結会計年度末までに約250億円の削減を実現しました。一方、デジタルトランスフォーメーションの取り組みとして、RPA(Robotic Process Automation)等を活用して医薬品情報に係る業務および経理・総務・人事等の運営に係る業務を効率的かつ高品質に推進するためのグループ中核会社として、田辺三菱製薬プロビジョン株式会社を2019年1月に発足させました。

また労働環境については、経済産業省が行う「健康経営優良法人2018(ホワイト500)」の大規模法人部門での認定、厚生労働省の「イクメン企業アワード2018」特別奨励賞受賞、ワーキングウーマン・パワーアップ会議主催の「女性活躍パワーアップ大賞」優秀賞受賞など、複数の外部機関から評価を受けております。

 

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