① 経営成績の状況
(単位:億円)
(注)当社は2020年7月1日を効力発生日として普通株式を1株につき3株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定してCore EPSを算定しております。
<連結損益の概要(IFRSベース)>
当連結会計年度の売上収益は9,998億円(前年同期比27.1%増)、営業利益は4,219億円(同40.1%増)、当期利益は3,030億円(同41.1%増)となりました。これらには当社が管理する経常的業績(Coreベース)から除外している無形資産の償却費22億円、無形資産の減損損失45億円及び事業所再編費用等55億円が含まれています。
<連結損益の概要(Coreベース)>
当連結会計年度の売上収益は、製商品売上高、ロイヤルティ等収入及びその他の営業収入ともに大幅に伸長し、9,998億円(前年同期比27.1%増)となりました。
売上収益のうち、製商品売上高は8,028億円(同26.8%増)となりました。国内製商品売上高は、薬価改定や後発品の影響を受けたものの、主力品のテセントリク、ヘムライブラ、カドサイラ、アクテムラの好調な推移や、新製品のエンスプリング、ポライビー等の順調な市場浸透に加え、ロナプリーブの政府納入により、前年比で大幅に増加しました。海外製商品売上高は、ロシュ向けのアクテムラ輸出が大きく減少しましたが、ヘムライブラ輸出が大幅に増加したため、前年を大きく上回りました。ロイヤルティ等収入及びその他の営業収入は、一時金収入が減少したものの、ヘムライブラに関するロイヤルティ及びプロフィットシェア収入の増加等により、1,969億円(同28.2%増)となりました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により41.8%と前年同期比で1.2%ポイント改善した結果、売上総利益は6,643億円(同29.1%増)となりました。
経費については、2,302億円(同11.4%増)となりました。デジタルマーケティングの推進等により販売費は758億円(同6.0%増)、研究開発費は開発テーマの進展に伴う費用の増加等により1,298億円(同14.4%増)、一般管理費等は主に法人事業税(外形標準課税)及び諸経費等の増加により246億円(同13.4%増)となりました。以上から、Core営業利益は4,341億円(同41.0%増)、Core当期利益は3,115億円(同42.0%増)となりました。
※Core実績について
当社はIFRS移行を機に2013年よりCore実績を開示しております。Core実績とはIFRS実績に当社が非経常事項と捉える事項の調整を行ったものであり、ロシュが開示するCore実績の概念とも整合しております。当社ではCore実績を、社内の業績管理、社内外への経常的な収益性の推移の説明、並びに株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標として使用しております。
株主還元を行う際の指標には、Core EPS及びCore配当性向を指標として使用しております。Core EPSは、Core実績をもとに算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益であり、Core配当性向は、Core EPS対比の配当性向です。
※Core EPS:当社が定める非経常的損益項目を控除したうえで算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益であります。
<製商品売上高の内訳>
(単位:億円)
[国内製商品売上高]
国内製商品売上高は、一昨年及び昨年4月の薬価改定と後発品浸透の影響を受けたものの、主力品及び新製品の好調な市場浸透により、5,189億円(前年同期比26.8%増)となりました。
オンコロジー領域の売上は、2,615億円(同12.6%増)となりました。後発品浸透の影響により抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン」や抗悪性腫瘍剤/抗CD20モノクローナル抗体「リツキサン」などの売上が減少したものの、適応拡大した主力品の抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」や抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体「カドサイラ」が堅調に推移しました。あわせて、昨年5月に発売した抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体「ポライビー」や、昨年8月に新たに血液検体による検査サービスを開始した遺伝子変異解析プログラムFoundation Medicine*の検査数の伸長により売上が増加しました。
プライマリー領域の売上は、2,574億円(同45.6%増)となりました。後発品や薬価改定の影響により、骨粗鬆症治療剤「エディロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」などの売上が減少したものの、主力品の血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤「ヘムライブラ」及びヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ」が好調に推移しました。新製品では昨年7月に特例承認された抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入による売上が計上され、pH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング」に加え、昨年8月に発売したSMN2スプライシング修飾剤「エブリスディ」も寄与しました。
* 「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイリング」及び「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイリング」
[海外製商品売上高]
海外製商品売上高は2,839億円(前年同期比26.6%増)で、前年比での円安影響も加わり前年を大幅に上回りました。ロシュ向け輸出については、通常出荷価格での輸出の本格化に伴い「ヘムライブラ」が前年比で大幅に増加し、抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」も堅調に推移しました。一方、「アクテムラ」は前年比で大幅に減少しましたが、これは前年同期において、新型コロナウイルス肺炎を対象とした臨床試験用を含む輸出が増加したためです。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末における純営業資産(NOA)は前連結会計年度末に比べ1,266億円増加し、7,726億円となりました。うち、純運転資本は、主に営業債権の増加により前連結会計年度末に比べ701億円増加し3,701億円となりました。また、長期純営業資産は主に中外ライフサイエンスパーク横浜及び藤枝工場における合成原薬製造棟(FJ3)への投資により前連結会計年度末から564億円増加し、4,024億円となりました。
次項「③ キャッシュ・フローの状況」で示すとおり、有価証券や有利子負債を含むネット現金は前連結会計年度末に比べ934億円増加し、4,720億円となりました。その他の営業外純資産は、主に未払法人所得税の増加により前連結会計年度末から119億円減少し、△565億円となりました。
これらの結果、純資産合計は前連結会計年度末に比べ2,080億円増加し、11,880億円となりました。
※純営業資産(NOA)及び純資産について
連結財政状態計算書は国際会計基準第1号「財務諸表の表示」に基づいて作成しております。一方で、純営業資産(NOA)及び純資産は、連結財政状態計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、純営業資産(NOA)及び純資産にはCore実績のような除外事項はありません。
※純営業資産(NOA)について
純営業資産(NOA:Net Operating Assets)は金融取引や税務上の取引とは独立に当社グループの業績を評価することを可能としております。純営業資産は純運転資本及び有形固定資産、使用権資産、無形資産等を含む長期純営業資産から引当金を控除することで計算しております。
③ キャッシュ・フローの状況
(単位:億円)
営業利益から、営業利益に含まれる減価償却費などのすべての非現金損益項目及び純営業資産に係るすべての非損益現金流出入を調整した調整後営業利益は、4,664億円(前年同期比39.0%増)となりました。
純運転資本等の増加831億円、有形固定資産の取得による支出660億円等があった一方で、営業利益の増益等により、営業フリー・キャッシュ・フローは3,014億円(同49.8%増)の収入となりました。純運転資本等の増加要因は前項「② 財政状態の状況」に記載したとおりです。
営業フリー・キャッシュ・フローから法人所得税1,041億円を支払ったこと等により、フリー・キャッシュ・フローは1,894億円(同39.9%増)の収入となりました。
フリー・キャッシュ・フローから配当金の支払986億円等を調整したネット現金の純増減は934億円の増加となりました。
また、有価証券及び有利子負債の増減を除いた現金及び現金同等物は555億円増加し、当期末残高は2,678億円となりました。
※フリー・キャッシュ・フロー(FCF)について
連結キャッシュ・フロー計算書は国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」に基づいて作成しております。一方で、FCFは、連結キャッシュ・フロー計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、FCFにはCore実績のような除外事項はありません。
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
(注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は消費税等抜きの売価換算(仕切単価ベース)であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の商品仕入実績は次のとおりであります。
(注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は消費税等抜きの実際仕入高であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は消費税等抜きであり、百万円未満を四捨五入して記載しております。
3.販売高は売上収益(製商品売上高とロイヤルティ及びその他の営業収入)であります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況 及び ② 財政状態の状況」に記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 3. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社グループは、これまで、運転資金並びに設備投資及び研究開発活動を自己資金で賄ってきております。2021年度に始動しましたTOP I 2030 は「R&Dアウトプットの持続的な創出」に代表されるイノベーションへの継続的な経営資源の配分を掲げています。引き続き資金流動性の確保と事業活動からくるキャッシュ・インフローの最大化に努めるとともに、継続的なイノベーション投資に必要な財務健全性を維持していく方針です。また、計画外の急な資金需要が生じた場合の財源につきましては、金融機関からの借入や短期社債等を利用するなどの体制を整えており、既存の手許資金も含めて十分な流動性を確保しております。
従いまして、今後とも資本財源は事業活動を通じて獲得した資金を基盤とする方針であり、継続的なイノベーションへの投資を通じ、持続的な企業価値の向上を目指す方針です。なお、資本配分としての配当につきましては、継続的で安定的な配当の実施を目標としており、Core EPS 対比45%(5年平均)を目安としております。
③ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当連結会計年度においては、昨年10月22日に公表した修正予想に対して、売上収益は、主にヘムライブラのロシュ向け輸出の上振れの他、アクテムラ及びヘムライブラに関するロイヤルティ及びプロフィットシェア収入の増加や、国内製商品売上の好調により9,998億円(修正予想比3.1%増)となりました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により41.8%と修正予想を1.6%ポイント改善、経費は2,302億円(同0.3%減)となりました。この結果、Core営業利益は、修正予想を上回る4,341億円(同8.5%増)となり、5期連続で過去最高の売上収益・営業利益を達成しました。また、長期にわたる投資効率の指標として重点的に管理することとしているCore ROICの実績は、前年を上回る44.3%となりました。
成長戦略「TOP I 2030」の実現に向けて、初年度の2021年は、定性面においても創薬、開発、製薬、Value Delivery、成長基盤という5つの改革分野で設定している中期マイルストン(3~5年後の目標)に対し、順調な進展が見られました。
創薬においては、抗体、低分子に続く第3のモダリティとして注力する中分子医薬品について、初のプロジェクトである抗がん剤LUNA18が臨床開発段階に入るとともに、がんや免疫など非臨床段階の後続プロジェクトも進展しました。また、自社の強みとする抗体医薬品においても、次世代抗体技術の開発とプロジェクトの創出を進めています。こうした自社の技術基盤を強化するとともに、外部連携の活用等によりマルチモダリティ創薬を推進しています。
開発プロジェクトの進展については、2021年は合計9プロジェクトが承認・発売され、新薬・適応拡大を含め10個のプロジェクトが承認申請に移行しました。また、ロシュ品・自社品含めて計10プロジェクトの第Ⅲ相国際共同治験、前述の中分子LUNA18をはじめ7プロジェクトの第Ⅰ相臨床試験を開始しました。引き続き、画期的な医薬品をより速く、より多くの患者さんにお届けできるよう、臨床予測性の向上や複数疾患の同時開発、後期臨床開発オペレーションの進化に向けた活動に取り組んでいます。
製薬では、中分子医薬品の製造体制・プロセスの確立に向けて、藤枝工場に建設中の低・中分子治験原薬製造棟(FJ2)に加え、後期臨床試験用原薬の製造と上市後の初期生産への対応を目的とする製造棟(FJ3)の追加投資を決定しました。また、R&Dアウトプット倍増という高い目標に対応すべく、バイオ原薬開発・製造体制の構築をはじめ、生産性向上に向けた生産技術の強化、IT基盤整備、ロボティクスの活用に取り組んでいます。
Value Deliveryにおいては、多様化する顧客ニーズに対応すべく、リアル・リモート・デジタルを組み合わせた最適な顧客エンゲージメントモデルを構築し、医療従事者や患者さんが求める情報を的確かつ迅速に提供できる体制の強化を図っています。また、個別化医療に資する独自エビデンスの創出を目指し、社内外データの統合的な活用にも取り組んでいます。
成長基盤については、D&Iの推進とともに、会社のビジョンや目標の達成に向けて自発的・能動的に行動できる人財の増加を目指す「人・組織」、新薬創出力の高度化・効率化やすべてのバリューチェーン効率化の柱である「デジタル」、世界水準でのサステナブル基盤としての「環境」、新モダリティ・新ビジネスプロセスを見据えた質と効率を両立する次世代クオリティマネジメントを目指す「クオリティ」、そして事業化を目指す「インサイトビジネス」など、イノベーション創出に必要な成長基盤の強化を図っています。
なお、女性活躍推進に優れた上場企業として「なでしこ銘柄」に選定されたほか、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に2年連続で選定されました。また、世界の代表的なESG評価指数である「Dow Jones Sustainability Index World」の2年連続選定(医薬品企業で世界2位)、国際環境非営利団体CDPによる最高A評価獲得(気候変動対策と水セキュリティ対策の二部門)、温室効果ガス削減目標のSBT(Science Based Target)認定など、当社の事業活動を通じたESGの取り組みが高く評価されました。
※ROICについて
投下資本利益率(ROIC:Return On Invested Capital)は事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかを知ることができます。
④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループはIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 1.重要な会計方針等 (2)重要な会計上の判断、見積り及び前提」に記載のとおりです。
お知らせ