業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の概況

 当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急事態宣言等の断続的発出が経済活動の本格的再開に向けた動きの重石となりました。年明け以降新たな変異株の感染が急拡大し、まん延防止等重点措置が適用され再び経済活動は低迷しました。その後、感染者数はピークアウトし、3月にまん延防止等重点措置は解除されたものの収束には至らず先行きは極めて不透明な状況です。一方、海外経済においては、欧米ではワクチン接種の進展や感染者数の減少を背景に経済活動の再開が進みましたが、一部地域への渡航制限の継続や中国でのゼロコロナ政策の長期化など、依然として予断を許さない状況が続いています。さらに、ロシアのウクライナ侵攻、米中の対立や各国の政治政策動向、地政学的リスクの高まりに加え、世界的な半導体不足や海運を始めとする物流の混乱、原油や穀物などの国際商品価格が高水準で推移するなど、先行き不透明な状況が続いています。

 また、当社グループを取り巻く食品業界においては、国内市場では、昨年前半から原材料価格の高騰を受けた価格改定が相次いでおり、非常に厳しい環境が続いております。また、消費者の生活防衛意識の高まりから節約志向がより一層強まる一方で、健康志向や簡便化志向が強まっており、ライフスタイルの変化やニーズの多様化への対応に加え、最近ではフードロス(食品ロス)も社会問題化しており取組みが求められています。他方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛などの影響を受け内食需要の高まりが見られる一方で、外食需要が落ち込むなど消費行動や市場構造に大きな変化が生じており、新常態と言われる新しい消費動向への対応が課題となっております。また、成長が見込める海外市場においても、一部地域において新たな変異株の感染が拡大しており、中国や東南アジアといった成長エリアに対してもこれまでの取組みに加え、新しい生活様式への対応が求められる状況にあります。さらに、高騰が続いている原材料価格や物流コストなどが企業収益を圧迫しており、経営環境は一層厳しさを増しております。

 

 当連結会計年度の経営成績につきましては、『国内食品事業』は売上が前期を下回りましたが、『国内化成品その他事業』、『海外事業』は前期を上回る実績を確保し、売上高は792億31百万円(前期比15億9百万円、1.9%増)となりました。

 

 利益面では、営業利益は58億40百万円(前期比44億73百万円、327.2%増)と前期を上回りました。引き続き油脂原料価格の高騰の影響を強く受けましたが、販売価格改定の取組みや売上の回復による売上総利益の獲得に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の制限を受けて活動諸経費が引き続き低水準で推移した結果、前期から増益となりました。

 

 経常利益は61億82百万円(前期比45億30百万円、274.1%増)と前期を上回りました。営業外収益である為替差益が減少した一方で、営業外費用である支払利息やデリバティブ評価損が減少した結果、前期から増益となりました。

 

 親会社株主に帰属する当期純利益は215億82百万円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失16億18百万円)となりました。当社の連結子会社であった青島福生食品の全持分の第三者への譲渡および同社に対する債権放棄の実施に伴い、特別利益として関係会社出資金売却益120億76百万円、および特別損失として関係会社出資金売却関連費用1億50百万円を計上しました。さらに、特別利益として投資有価証券売却益22億1百万円を計上しました。加えて、当社において繰延税金資産の計上に伴い法人税等調整額△18億33百万円を計上したことにより、法人税等合計は△12億85百万円となりました。

 

 なお、会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。このため、前期比較は基準の異なる算定方法に基づいた数値を用いております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)(収益認識に関する会計基準等の適用)」をご参照ください。

 

セグメント毎の経営成績の概況

国内食品事業

 『家庭用食品』では、ドレッシングのTVCMやわかめスープ発売40周年記念キャンペーンなどのプロモーション活動の展開が需要喚起に貢献しましたが、前期の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛や在宅勤務等を背景とした内食需要の急激な高まりの反動を受け、部門全体の売上は前期を下回りました。

『業務用食品』では、学校給食の需要は回復しつつありますが、外食産業は依然として厳しい状況が続いており、部門全体の売上は前期を下回りました。

『加工食品用原料等』では、販売および技術・開発部門の連携による顧客ニーズに対応した取組みの推進に加え、関係先業界の一部で需要の回復が進んだこと、さらには高騰が続く原材料価格を受け販売価格改定への取組みを推進したことから、部門全体の売上は前期を上回る実績を確保しました。一方で、引き続き原材料価格の高騰が収益面に影響を与えています。

 

これらの結果、各部門における売上高は、『家庭用食品』129億28百万円(前期比10億81百万円、7.7%減)、『業務用食品』181億96百万円(前期比3億91百万円、2.1%減)、『加工食品用原料等』230億5百万円(前期比10億89百万円、5.0%増)となり、当セグメント全体の売上高は541億30百万円(前期比3億83百万円、0.7%減)となりました。

 また、営業利益では、『家庭用食品』『業務用食品』の売上減少や『加工食品用原料等』の原材料価格の高騰の影響を受けるも、活動諸経費の発生が低水準で推移したことにより、49億38百万円(前期比2億60百万円増)となりました。

 

国内化成品その他事業

 化学工業用分野(プラスチック・農業用フィルム・食品用包材・ゴム製品・化粧品など)において、機能性付加および加工性向上に効果的な『化成品(改良剤)』では、顧客ニーズを捉えたソリューションビジネスの展開に加え、前期に新型コロナウイルスの感染拡大および米中貿易摩擦の影響を受けた関係先業界の業況が波及した一部の分野において需要の回復が見られること、さらには高騰が続く原材料価格を受け販売価格改定への取組みを推進したことから、部門全体の売上は前期を上回りました。一方で、引き続き原材料価格の高騰が収益面に影響を与えています。

また、『その他』の事業では、飼料用油脂の売上が前期を下回りました。

 

 これらの結果、当セグメントの売上高は66億17百万円(前期比4億13百万円、6.7%増)となり、営業利益は6億2百万円(前期比60百万円増)となりました。

 

海外事業

 『改良剤』分野においては、情報発信基地である「アプリケーションセンター」と世界各地に設けた販売会社との連携による既存市場の深耕および新市場の開拓ならびに高付加価値品の拡販等の施策の推進に加え、高騰する原材料価格を受けた販売価格改定の推進や為替影響による増収効果もあり、売上は前期を上回りました。また、営業利益は、高水準で推移している原材料価格や海上運賃の影響を強く受けましたが、販売価格改定の推進もあり、前期を上回る実績を確保しました。

また、『青島福生食品』においては、当社は青島福生食品の全持分を譲渡しているため、第1四半期連結会計期間までの実績を反映しております。その実績は、水産加工品の輸出の減少に加え、中国国内向け販売の低迷が続いた結果、売上は前期の実績を下回り、営業損益は損失計上となりましたが、前期に棚卸資産評価損28億45百万円を計上していたため、前期から営業損失額が大幅に減少しました。

 

 これらの結果、当セグメントの売上高は199億26百万円(前期比13億76百万円、7.4%増)となり、営業利益は7億5百万円(前期は営業損失33億3百万円)となりました。

 

中期経営計画との比較分析

 2021年2月15日に公表しました「次期中期経営計画の策定および公表の延期に関するお知らせ」のとおり、2022年3月期につきましては、青島福生食品の一連の問題に対する業務改善策に最優先で取り組み、ステークホルダーの皆さまからの信頼の回復を図るとともに、新型コロナウイルスの感染拡大により毀損した業績を新常態と言われる新しい消費行動への対応を進めることで回復させ、持続的な成長を遂げる企業となるための長期戦略を練り上げる期間とすべく、中期経営計画の策定および公表を1年延期しておりました。そのため、当連結会計年度の数値目標は中期経営計画ではなく単年度計画の目標数値(売上高750億円、営業利益40億円、経常利益40億円、親会社株主に帰属する当期純利益28億円)となり、それらとの比較分析は次のとおりです。当連結会計年度は、引き続き原材料価格の高騰の影響を強く受けましたが、販売価格改定の取組みや売上の回復による売上総利益の獲得に加え、青島福生食品の全持分譲渡に伴う特別利益の計上や投資有価証券売却益の計上等により、売上および各段階利益の実績は目標を上回りました。

 なお、2022年5月13日に公表しました「中長期ビジョンおよび中期経営計画(2022-2024年度)に関するお知らせ」のとおり、新中期経営計画の最終年度である89期の目標数値は売上高940億円、営業利益80億円、経常利益82億円、親会社株主に帰属する当期純利益65億円としております。

 

目標とする経営指標との比較分析

 当社グループは、持続的成長と資本効率向上の尺度として自己資本利益率(ROE)の向上を追求しております。当連結会計年度の単年度計画ではROE6.0%以上を目指し取組みを推進しました。

 当連結会計年度は青島福生食品の全持分譲渡に伴う特別利益の計上や投資有価証券売却益の計上、税金費用のマイナス計上等により親会社株主に帰属する当期純利益が215億82百万円と大幅な黒字回復となったことにより、ROEは38.3%となりました。

 なお、新中期経営計画最終年度のROE8.0%以上を目指し、取組みを推進します。

 

(2)財政状態の概況

 当連結会計年度末の総資産は1,026億60百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億75百万円減少しました。主な増加は、棚卸資産7億90百万円、主な減少は、有形固定資産24億32百万円、現金及び預金19億27百万円、投資有価証券14億31百万円であります。

 

 負債は361億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ237億39百万円減少しました。主な増加は、長期借入金134億9百万円、支払手形及び買掛金11億9百万円、主な減少は、短期借入金202億45百万円、仮受金142億96百万円、繰延税金負債22億47百万円、未払法人税等10億81百万円であります。

 

 純資産は665億39百万円となり、前連結会計年度末に比べ198億64百万円増加しました。主な要因として、利益剰余金が親会社株主に帰属する当期純利益の計上で215億82百万円増加し、剰余金の配当13億85百万円により減少したことによります。

 

(3)キャッシュ・フローの概況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は150億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ35億91百万円減少しました。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは68億23百万円の収入となりました。主な増加は、税金等調整前当期純利益203億13百万円、減価償却費37億36百万円であり、主な減少は、関係会社出資金売却益120億76百万円、投資有価証券売却益22億1百万円、法人税等の支払額19億9百万円、棚卸資産の増加額14億27百万円であります。

 

 投資活動におけるキャッシュ・フローは36億61百万円の支出となりました。主な増加は、投資有価証券の売却による収入26億51百万円、定期預金の払戻による収入15億44百万円であり、主な減少は、有形固定資産の取得による支出32億50百万円、定期預金の預入による支出30億88百万円であります。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは31億62百万円の純収入となっております。

 

 財務活動によるキャッシュ・フローは75億65百万円の支出となりました。主な増加は、長期借入れによる収入182億37百万円であり、主な減少は、長期借入金の返済による支出142億89百万円、短期借入金の純減少額95億85百万円、配当金の支払額13億85百万円であります。

 

 当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる原材料費やエネルギー費、営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発などであります。資金調達は主としてフリー・キャッシュ・フロー及び銀行借入により十分な資金を確保しております。これらに加えて、国内金融機関と借入枠60億円のコミットメントライン契約を締結することにより財務の安定性及び流動性を補完しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

国内食品事業

52,859

102.2

国内化成品その他事業

6,197

116.4

海外事業

19,089

114.4

合計

78,146

106.0

 (注)金額は生産者販売価格で算出しており、セグメント間取引については相殺消去しております。

b.受注実績

当社グループは一部の製品について受注生産を行っておりますがウエイトも小さく、大部分の製品は販売計画に基づく生産計画に従った見込生産を主体としております。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

国内食品事業

54,130

100.2

国内化成品その他事業

6,617

106.7

海外事業

18,483

105.6

合計

79,231

101.9

(注)1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

2.セグメントの各事業内容は次のとおりであります。

国内食品事業……………………一般家庭向け加工食品、業務用市場向け加工食品、食品業界向け加工食品用原料・食品用改良剤・ビタミンなどの製造、販売

国内化成品その他事業…………化成品用改良剤、飼料用添加物などの製造、販売

海外事業…………………………食品用改良剤、化成品用改良剤、水産加工品、冷凍野菜、エキス・調味料類などの製造、販売

3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得