課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社は、

1.社会に対し、食を通じて健康と豊かな食生活を提供する

2.コンプライアンス精神に基づいた事業活動を行い、社会的責任を果たす

3.フレキシビリティのある、かつ創造力に溢れた企業として発展する

4.事業活動の視点・範囲を海外にも向け[世界の理研ビタミン]としてのブランドを高める

5.人間尊重の思想に基づき魅力ある職場をつくる

の経営理念のもと、創業以来一貫して「天然物の有効利用」を事業展開の根幹に据え、独自の技術力・開発力を通じて食品・食品用改良剤・化成品用改良剤・ビタミンの各分野において多彩な製品を創り出し、日本のみならず世界各地にお届けしてまいりましたが、この姿勢はいささかも揺らぐことなく堅持してまいります。

当社グループを取り巻く事業環境については、これまでにないスピードで変化しており、世界的レベルで大きく変動する政治・経済・社会情勢は、かつてないほど混沌としている状況で各国経済にも大きな影響を与えております。また、新型コロナウイルス感染症の完全な収束にはまだかなりの時間を要する見通しであり、これまで以上に先行きが見通せない状況の中、ウィズコロナと言われるこれまでの生活様式からの変化に対応していくことが重要であり、当社グループ各社とのさらなる連携のもと、的確かつ機動的な意思決定を行うことが強く要請されていると認識しております。

加えて、社会の信頼に応える公正で透明性の高いコンプライアンス体制、企業グループ全体での健全な事業運営を推進する上でのガバナンス体制のより一層の向上が求められております。

 

食品業界におきましては、国内市場では、昨年前半から原材料価格の高騰を受けた価格改定が相次いでおり、非常に厳しい環境が続いています。また、消費者の生活防衛意識の高まりから節約志向がより一層強まる一方で、健康志向や簡便化志向が強まっており、ライフスタイルの変化やニーズの多様化への対応に加え、最近ではフードロス(食品ロス)問題への取組みが求められていると認識しています。他方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛など経済活動の制限の影響を受けた結果、内食需要の高まりが見られる一方で、外食需要が落ち込むなど消費行動や市場構造に大きな変化が生じるなど、より一層厳しい経営環境の中において新常態と言われる新しい消費動向への対応が課題と認識しています。

また、成長が見込める海外市場においても、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展や感染者数の減少を背景に経済活動の再開が進みましたが、一部地域において新たな変異株の感染が拡大するなど、先行きが不透明な状況が続いています。中国や東南アジアといった成長エリアに対してもこれまでの取組みに加え、新しい生活様式への対応が求められる状況にあると認識しています。

さらに、高騰が続いている原材料価格や物流コストなどが企業収益を圧迫しており、経営環境は一層厳しさを増しております。

 

当社は、青島福生食品有限公司(以下「青島福生食品」という。)の業績悪化および不適切な会計処理を契機として、グループ内における同社の位置付けについて検討を行い、当社と青島福生食品との間でシナジーが見込めないこと、また、当期においても冷凍水産品の販売低迷等により同社の収益が悪化していることなどから、青島福生食品の全持分を譲渡することが最善であると判断し、2021年6月29日に青島福生食品の全持分を譲渡しました。また、2021年8月6日に公表しました「東京証券取引所への「改善状況報告書」の提出に関するお知らせ」のとおり、過年度決算短信等を訂正した件につきまして、改善措置の実施状況および運用状況を記載した「改善状況報告書」を株式会社東京証券取引所に提出しております。

なお、今後の当社グループのガバナンス体制の強化につきましては、後述の「新中期経営計画」において基本方針の一つに掲げており、その取組みを推進してまいります。

 

このような経営環境の中、前期の新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛等を背景とした内食需要の急激な高まりの反動を受けた結果、『家庭用食品』の売上は前期を下回りました。また、『業務用食品』の売上は、学校給食の需要は回復しつつありますが、外食産業は依然として厳しい状況が続いており、前期を下回りました。一方で『加工食品用原料等』、『化成品(改良剤)』、『海外改良剤』においては、関係先業界の一部で需要の回復が進んだことに加え、高騰が続く原材料価格を受け販売価格改定への取組みを推進した結果、売上高は前期を上回る実績を確保しました。利益面では、引き続き油脂原料価格の高騰の影響を強く受けましたが、販売価格改定の取組みや売上の回復による売上総利益の獲得に加え、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動の制限を受けて活動諸経費が引き続き低水準で推移した結果、営業利益は前期を上回りました。

 

当社グループでは、従前より3年間を対象とする中期経営計画を策定しております。しかしながら、2022年3月期につきましては、青島福生食品の一連の問題に対する業務改善策に最優先で取り組み、ステークホルダーの皆さまからの信頼の回復を図るとともに、新型コロナウイルスの感染拡大により毀損した業績を新常態と言われる新しい消費行動への対応を進めることで回復させ、持続的な成長を遂げる企業となるための長期戦略を練り上げる期間とすべく、中期経営計画の策定および公表を1年延期しておりました。

 

「新中期経営計画」の策定にあたり、当社グループのありたい姿として、中長期ビジョンと基本方針を次のように定めました。

<中長期ビジョン>

「持続可能な社会をスペシャリティ製品とサービスで支え、成長する会社になる」

<基本方針>

(1)経営基盤(ガバナンス)の強化、新たな企業文化の構築

(2)アジア・北米での展開を加速、海外スペシャリティ製品の拡大

(3)国内の深掘りと新領域への挑戦、戦略的なポートフォリオの見直し

(4)サステナブル経営の推進

 

上記の中長期ビジョンおよび基本方針を踏まえ、さらなる国内事業の収益基盤の強化と海外事業の成長加速化を図り、社会とともに成長し続け継続的な企業価値の向上に取り組むべく、本年4月より2025年3月までの3年間を対象とする「新中期経営計画」を策定しました。

「新中期経営計画」の概要は以下のとおりであります。

<基本方針>

(1)経営基盤(ガバナンス)の強化

・外部機関による取締役会の実効性評価、サクセッションプランの強化・推進、政策保有株式の縮減などにより、コーポレート・ガバナンスの実効性の強化を図ります。

・国内外子会社と本社との連携を深める組織体制の構築や、監査部門の強化等により、グループ・ガバナンスを強化します。

・事業内容や非財務情報について、正確でわかりやすい開示の充実を図り、市場との対話を強化します。

(2)アジア・北米での展開を加速

・海外事業の中でもアジア・北米を成長ドライバーと位置付け、主力のベーカリー向けの食品用改良剤をはじめ、化成品用改良剤、北米のポークエキス事業を中心に拡大を図ります。また、海外工場の生産能力増強に取り組みます。

(3)国内の深掘りと新領域への挑戦

・既存領域に隣接する市場に向けた新商品の開発、既存の取引先に対する未取扱い製品群の提案、コロナ後の新常態における成長市場である老健・中食市場に向けた商品開発、ビタミンやマイクロカプセル、機能性食品用原料など好調な健康関連製品の提案を強化し、人口減少による市場の縮小が予想される国内での成長を図ります。

・フードロス削減につながる製品の提案、海藻養殖産業の活性化につながる研究、バイオマスプラ・生分解性プラ向け製品の拡大など、事業を通じたサステナビリティ課題の解決に取り組み、新たな成長機会を捉えていきます。

・持続的な成長に向け、グローバルサプライチェーンを全体で支える生産体制への変革を図ります。

(4)サステナブル経営の推進

・GHG排出量削減、環境負荷の低減、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、健康経営の推進に取り組み、サステナビリティと経営の一体化を目指していきます。

 

なお、「新中期経営計画」の最終年度における数値目標は、下表のとおりであります。

(1)連結目標

                               (単位:百万円)

 

第86期

(2022年3月期)

第89期

(中期経営計画最終年度)

 

実績

目標

 売上高

79,231

94,000

 営業利益

5,840

8,000

 経常利益

6,182

8,200

 親会社株主に帰属する

 当期純利益

21,582

6,500

 

(2)事業別売上高目標

                               (単位:百万円)

 

第86期

(2022年3月期)

第89期

(中期経営計画最終年度)

 

実績

目標

 国内食品事業

54,130

61,000

 国内化成品その他事業

6,617

8,500

 海外事業

19,926

25,800

 セグメント売上高

80,674

95,300

 調整額

△1,443

△1,300

 連結売上高

79,231

94,000

 

(3)目標とする経営指標

当社グループは、持続的成長と資本効率向上の尺度としてROEの向上を追求してまいります。第89期(新中期経営計画最終年度)のROE8.0%以上を目指し、取組みを推進します。

 

(4)資本・財務政策

 

2022-2024年度方針

キャッシュアロケーション

2022年4月から2025年3月までの3年間累計

IN :事業活動により獲得したキャッシュ(投資有価証券売却益を含む) 約300億円

OUT:設備投資 約100億円、配当金 約50億円、戦略投資(人財投資、追加設備投資、株主還元) 約50億円、財務基盤の強化(有利子負債返済) 約100億円

株主還元

連結配当性向30%以上を目安に安定的な配当を継続して実施

政策保有株式

2025年3月末までの縮減目標:連結純資産比率で20%未満

自己株式

2023年3月期に700万株を消却(2022年5月に実施)

 

新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないこと、原材料価格や物流コストが高水準で推移していることなど先行き不透明な時代にあってこそ、「信頼に応える安全な製品の提供」の基本姿勢を堅持して社会への貢献を果たす中で、一層の収益基盤の強化と持続的成長を可能とする強い企業体質の構築を目指して、スピード感を伴った経営を推進してまいります。

 

(※)この中期経営計画は、本資料策定時点において入手可能な情報に基づいて策定したものです。実際の業績等は、今後さまざまな要因によって記載内容と異なる可能性があります。

 

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