業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績などの状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  (1) 経営成績

当期におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残るなか、ワクチン接種が進んだことで個人消費や企業収益などは緩やかながらも回復に向けた動きが見られましたが、昨年末からのオミクロン株の流行により個人消費など一部に陰りがみられています。かかる状況下、昨年から生じている企業間物価の上昇に加えて、米国を中心とした金融引き締めや、ロシアのウクライナ侵攻を契機とした原材料や燃料価格の高騰などにより、再び先行きの不透明感が高まっています。

医薬品業界につきましては、2021年4月に初めて通常改定の中間年に薬価改定が実施されたことに加え、新型コロナウイルス感染症の再拡大による患者さんの受診抑制が通期にわたり影響しました。また、ジェネリック医薬品については、他社品質問題等に端を発した市場全体の供給不足に対応するため、各社による増産対応や設備投資などを通じた安定供給確保のための努力が続きました。

このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献するべく、ジェネリック医薬品の高品質維持と安定供給確保に注力するとともに、生産性及び効率性の向上に資する施策を推し進めてきました。

また、ジェネリック医薬品事業と並行して取り組んでいる、「アルカリ化療法剤」や「自社開発創薬」に関しては、他社とのアライアンスを活用した革新的な創薬テーマへのチャレンジや、国内外企業への導出活動を本格化しています。当社グループは、まだ十分な治療薬がない病気に苦しむ患者さんのために、画期的新薬の開発に取り組んでいます。

 

セグメントの経営成績は次のとおりです。

① 医薬品事業

        1) 医療用医薬品

         (a) ジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品については、中間年の薬価改定や新型コロナウイルス感染症による受診抑制等の影響の一方で、前期発売した製品の通期売上寄与に加え、他社品質問題等を起因とした代替需要への対応に継続して取り組んできました。

また、当期においては、2021年6月に不眠症治療薬である「エスゾピクロン錠1mg・2mg・3mg『ケミファ』」(以下、エスゾピクロン)、7月にはうつ病・疼痛治療薬の「デュロキセチン錠20mg・30mg『ケミファ』」の2成分5品目を発売し、中でもエスゾピクロンについては、安定供給の観点から、自社開発・自社グループ製造品であることが評価されており、市場における高いシェアを維持しています。

営業活動では2020年7月のグループ構造改革で新たに設置した「グループ医薬営業本部」のもと、従来の卸ルートに加えて、調剤薬局チェーンやグループ病院などの多様な販路に対応しながら効率的に営業活動を行う販売戦略が徐々に浸透し、実績へと結びついてきています。

 

         (b) 主力品・新薬

2020年7月に導入した長期収載品「クラリシッド」は、当期において通期にわたり当社グループの売上に寄与しています。同製品は競合品が多い中でも長年ブランド力を維持しており、同製品を手掛かりとした医療機関へのアプローチにより、ジェネリック医薬品事業とのシナジーを創出しています。

また、主力品であるアルカリ化療法剤「ウラリット-U配合散・同配合錠」(以下、ウラリット)につきましては、ジェネリック医薬品への置き換えが進んでいるものの、子会社である日本薬品工業株式会社が販売する同剤のジェネリック医薬品「クエンメット配合散・同配合錠」と合わせて当社グループで製造・販売できる状況を活かし、痛風ならびに高尿酸血症における酸性尿改善の重要性に関する啓発活動を強化してきました。

 

以上の結果、輸出・導出なども含めたジェネリック医薬品の売上高は、26,283百万円(前期は25,532百万円)、ウラリットをはじめとする主力品・新薬の売上高は1,754百万円(前期は1,790百万円)となり、医療用医薬品全体の売上高は、28,037百万円(前期は27,322百万円)となりました。

なお、医療用医薬品の売上高比率を薬効別にみますと、循環器官用薬及び呼吸器官用薬27.7%、消化器官用薬15.8%、ウラリットなどの代謝性医薬品14.9%、神経系及び感覚器官用薬13.0%、病原生物用薬6.2%、腫瘍用薬2.3%、その他の医薬品20.1%となっています。

        2) 臨床検査薬

これまでのアレルギー検査の概念を覆す、画期的なアレルギースクリーニング検査キット「ドロップスクリーン 特異的IgE 測定キット ST-1」(以下、「ドロップスクリーン」)と、その測定装置である「ドロップスクリーンA-1」(製造販売元:上田日本無線株式会社)については、その新規性がマスコミでもたびたび取り上げられる中、導入された医療機関からは大変高い評価をいただいています。当期は、発売後に販売拡大のボトルネックとなっていた試薬の量産体制整備を鋭意進めるとともに、国内での普及活動にさらに精力的に取り組みました。

また、自社開発のアレルギー検査薬「オリトンIgE『ケミファ』」については、2020年度まで中国における測定試薬ラインナップの製造認可が順調に拡大していましたが、2021年6月に中国の監督当局である国家薬品監督管理局(NMPA)による大幅な条例変更があり、追加品目の申請・認可取得に遅れが発生している状況となっています。

以上により、医薬品事業全体の売上高は31,501百万円(前期は30,423百万円)、営業利益は729百万円(前期は546百万円)となりました。

 

② その他

「その他」の事業については、受託試験事業を行う子会社の株式会社化合物安全性研究所において、非臨床事業における農薬・化学物質に関する非臨床試験の受託が増加したことや、アカデミア及び再生医療等製品を含む創薬ベンチャーからの受注取り込みがあった一方で、「収益認識に関する会計基準」等の適用による影響がありました。

 

ヘルスケア事業及び不動産賃貸事業も含めた「その他」の事業全体の売上高は1,004百万円(前期は1,117 百万円)、営業利益は96百万円(前期は17百万円)となりました。

 

以上の結果、当期の各セグメントを通算した業績は、当期の連結売上高が32,506百万円(前期は31,541百万円)、連結営業利益が825百万円(前期は564百万円)、連結経常利益が1,022百万円(前期は582百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益が700百万円(前期は495百万円)となりました。

 

 なお、当社グループは当連結会計年度の期首から「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。この結果、前連結会計年度と収益の会計処理が異なることから、当期における経営成績に関する説明は、対前期の増減額及び増減率(%)を記載せず説明しております。なお、収益認識会計基準等の適用の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。
 

 (2) キャッシュ・フローの状況

当期における連結ベースの現金及び現金同等物は、営業活動により1,801百万円増加いたしました。また、投資活動においては35百万円の増加、財務活動においては793百万円の減少となりました。この結果、当期末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は11,645百万円(前期末比 10.8%増)となりました。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

当期において、営業活動による資金は主に売上債権及び契約資産の増加並びに棚卸資産の増加があったものの、税金等調整前当期純利益の計上及び仕入債務の増加などにより、1,801百万円の増加(前期は1,503百万円の増加)となりました。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

当期において、投資活動による資金は主に有形固定資産の取得による支出があった一方、主に有形固定資産の売却による収入などにより、35百万円の増加(前期は1,024百万円の減少)となりました。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

当期において、財務活動による資金は主に配当金の支払および長期借入金の減少により、793百万円の減少(前期は29百万円の増加)となりました。

 

 (3) 財政状態

流動資産は前期末に比べて3,048百万円増加し、33,495百万円となりました。これは、主に現金及び預金、売上債権および棚卸資産の増加によるものです。

固定資産は前期末に比べ718百万円減少し、15,957百万円となりました。これは、主に減価償却費の計上、及び賃貸用不動産の売却によるものです。この結果、総資産は前期末に比べて2,329百万円増加し、49,453百万円となりました。

流動負債は前期末に比べて2,647百万円増加し、16,750百万円となりました。これは、主に仕入債務の増加によるものです。

固定負債は前期末に比べて804百万円減少し、14,202百万円となりました。これは、主に長期借入金の減少によるものです。

この結果、負債合計は前期末に比べて1,843百万円増加し、30,952百万円となりました。

純資産合計は前期末に比べて486百万円増加し、18,501百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上によるものです。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表に影響を及ぼします。連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。

① 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、当該資産の回収が不確実と考えられる部分に対して評価性引当額を計上しています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

将来の課税所得見込額はその時の業績等により変動するため、課税所得の見積に影響を与える要因が発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の金額の修正を行うため、当期純損益金額が変動する可能性があります。

② 退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の長期期待運用収益率等に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い長期債利回りを参考に決定し、また、年金資産の長期期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び長期期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

③ 固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、収益性が著しく低下した資産または資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。

固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、当社グループの業績を悪化させる可能性があります。

 

なお、2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼしており、その影響が長期化しております。当社グループにおいては、営業活動においてMRの病院への訪問が制限されているなか、WEBやEメールを活用するなどして、医療機関の要望に沿う形で情報提供活動を展開し、その影響を最小限にすべく取り組んでおり、また研究開発、生産活動については概ね計画どおり活動を継続しており、現時点において新型コロナウイルス感染症の拡大が当社グループの事業活動に及ぼす影響については限定的であると認識しております。

 

 (5) 生産、受注及び販売の状況

  ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

9,924

19.7

その他

合計

9,924

19.7

 

(注)  金額は、製造原価によっております。

 

  ② 受注状況

当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立て、これにより生産をしております。

受注生産は一部の子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。

 

  ③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

31,501

その他

1,004

合計

32,506

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

     2 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当連結会計年度に係る販売高については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、前年同期比(%)は記載しておりません。

     3 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

アルフレッサ㈱

6,643

21.1

6,059

18.6

㈱メディセオ

6,139

19.5

5,970

18.4

 

 

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