課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

   文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

  (1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「医薬品を中核としたトータルヘルスケアで人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことを経営理念とし、国内外において存在価値のある企業グループとして発展することを目指しております。

  (2) 中長期的な会社の経営戦略

(1)の経営理念の下、当社はグループの経営課題としてかねてより以下の3つのミッションを掲げております。すなわち、
ⅰ)ジェネリック医薬品市場におけるプレゼンスを確立する
ⅱ)アルカリ化療法に関する臨床研究の成果を最大限に活用する
ⅲ)自社開発創薬により社会に貢献する
さらに、将来にわたる当社グループの成長持続のためには、国内のみならず海外での事業拡大が不可欠と考えており、2015年度からは
ⅳ)海外の事業基盤確立
を「3つのミッションプラス1」として加え、これらの達成を経営戦略の中心に据え、日々事業に取り組んでいます。

  (3) 当社グループをめぐる業界や市場の動向等の経営環境

2019年度末から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の社会・経済活動に深刻な影響を及ぼし、その影響が長期化しております。医薬品業界においては、2021年4月に初めて通常改定の中間年に薬価改定が実施されたことに加え、新型コロナウイルス感染症の再拡大に伴う患者さんの受診抑制が通期にわたり影響しました。また、ジェネリック医薬品については、他社品質問題等に端を発した市場全体の供給不足に対応するため、各社による増産対応や設備投資などを通じた安定供給確保のための努力が続きました。

このような環境下で、当社グループは引き続き「信頼できるジェネリック医薬品」の普及に貢献すべく、ジェネリック医薬品の高品質維持と安定供給確保に注力するとともに、生産性および効率性の向上に資する施策を推し進めております。

  (4) 会社の対処すべき課題

 ① ジェネリック医薬品

  1) 販売

国内ジェネリック医薬品市場はオーソライズドジェネリックの台頭による競争の激化や、2021年から始まった薬価の中間年改定などの影響で、依然として厳しい事業環境が続いています。当社グループはこの状況に対処していくため、2020年7月のグループ構造改革で新たに設置した「グループ医薬営業本部」のもと、従来の卸ルートに加えて、調剤薬局チェーンやグループ病院などの多様な販路に対応しながら効率的に営業活動を行うことで、グループ全体で利益を伸ばす販売戦略が徐々に浸透し、実績へと結びついてきています。

また、ポストコロナの新しいワークスタイルへの対応や生産性向上のため、2021年度からSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)を本格的に導入しており、今後はMR活動におけるPDCAサイクルの一層の最適化や高速化を図っていきます。

  2) 品質保証

当社グループでは安全でより良い医薬品の品質を確保するため、品質保証部門が中心となり、省令に従って定期的に製造業者等への監査、すなわち製造施設設備・製造記録及び試験記録等の確認をとおして、医薬品の製造管理及び品質管理が適正に実施されていることを、原則的に3年に1回の頻度で確認しています。併せて、重大な製品クレーム等が発生した場合には臨時に監査を行い、迅速かつ適切な措置を講じ再発防止に努めています。また、当社グループが製造販売するジェネリック医薬品の原薬製造国や製剤製造会社名、安定供給体制等に関する情報をホームページ上で公開することにより、医療関係者のご要望に応えるとともに透明性の高い製造管理体制を構築しています。

2022年4月には当社グループの品質保証にかかる業務を統括する「グループ品質保証統括部」を新設し、グループ共通の品質課題の検討や解決、統一した管理基準・管理手法の提案や運用等を行い、全体の品質保証レベルを引き上げることにより、さらなる製品の品質向上を目指していきます。

  3) 安定供給

当社グループではかねてより生産設備及び人員の増強に加え、製品の安定供給において重要な原薬の確保について、複数の製造所から購入するマルチソース化に努めることで安定供給に向けた取り組みを進めてまいりました。

しかしながら、他社ジェネリック医薬品の品質問題等を起因とした国内市場における供給不足については、当社としても既存取引先に影響の出ない範囲での在庫調整や、工場における残業・休日出勤による増産対応を行ってきましたが、全てのご要望にお応えすることはできませんでした。このような状況を踏まえ、2021年度中より工場人員と生産設備を増強するためのさらなる投資を続けており、品質保証レベルの向上を伴う増産体制の整備は当社グループにとって喫緊の課題となっています。

また、当社グループの生産量拡大とコスト削減を実現する、Nippon Chemiphar Vietnam Co., Ltd.(以下、NC-VN社)のベトナム工場では、コストメリットの出しやすい品目を中心に国内工場からの移管が順調に進んでおり、将来的にはグループ製品の3割程度を生産できる体制を目指しています。

② アルカリ化療法剤

当社グループがウラリットで培ってきたアルカリ化療法剤については、さまざまな方面で展開が進んでいます。

まず、創薬ベンチャーであるDelta-Fly Pharma株式会社(以下、DFP社)とライセンス契約を締結した抗がん剤「DFP-17729」は、がん細胞周辺の微小環境改善作用を有し、酸性に傾いているがん細胞周囲の微小環境をアルカリ化することによる難治性がんの画期的治療効果が期待されています。DFP社は2021年4月にDFP-17729と他の抗がん剤の併用群、並びに他の抗がん剤単独群との比較試験であるフェーズⅡをスタートしており、2022年度中には、本剤の有用性を検証し、その結果次第で、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)へ承認申請を行うことが可能か、あるいはフェーズⅢの準備に取り掛かるかの判断を行う予定です。試験の対象となる膵臓がんは早期発見が難しく、特に末期では満足できる治療剤がない状況にあるため、一日も早い新薬の開発が期待されています。

また、当社グループが協力を行いながら東北大学で進められている、アルカリ化療法剤と慢性腎臓病(以下、CKD)との関連を解明する臨床研究「CKOALA Study」は、初期的なデータ解析を終えて手ごたえを得たことから、AI(Artificial Intelligence:人工知能)やRWD(Real World Data:リアルワールドデータ)を活用した追加の解析を行っています。研究結果についてはいずれ学会で発表が行われ、論文化されるものと見込んでおり、当社といたしましてはそれらの成果を踏まえ適応拡大に向けた検討を進めていきます。さらにこの研究で集められたデータを応用し、クエン酸塩の機能性表示食品としての開発を進めているところで、現在は1品目が消費者庁に受理されています。

③ 自社開発創薬

  1) パイプライン

新薬の研究開発については、領域を絞り込み、その領域の第一人者との共同研究を推進することを基本方針としています。その上で探索研究に重点を置き、得られた成果を早期段階で導出することで、開発上のリスクを軽減しつつ効率的に開発を進めていきます。また、パイプラインの拡充やAIなどの新技術を活用した研究開発を進めるため、他社とのアライアンス戦略も取り入れています。

この方針のもと、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「CiCLE事業」に採用されている、オピオイドデルタ受容体作動薬「NC-2800」(抗うつ、抗不安薬)については、2021年6月に住友ファーマ株式会社(旧大日本住友製薬株式会社以下、住友ファーマ)と共同研究開発契約及びオプション契約を締結し、同社がCiCLE事業の研究開発に分担機関として参画しました。

NC-2800の開発ステージは2021年7月にフェーズIへと移行していますが、当社は住友ファーマに対し、CiCLE事業終了後のフェーズⅡbに移行する時点で全世界をテリトリーとした開発・販売権に関するライセンス契約を締結できるオプション権を付与しており、今後の開発の進展に応じたオプション料、マイルストーン及びロイヤリティ収入が期待できると考えています。

P2X4受容体拮抗薬「NC-2600」については、これまでの神経障害性疼痛に加え、複数の適応症にフォーカスした開発を展開しています。そのうち慢性咳嗽治療薬としては、既存薬にはない新しい機序を有する可能性が示されており、さらに開発を進め早期の導出を目指してまいります。また、「NC-2500」(キサンチンオキシドレダクターゼ阻害薬)と「NC-2700」(URAT1阻害薬)についても、そのユニークな特性を国内外の企業へアピールしながら導出活動を行っており、共同開発なども含め、さまざまな可能性を検討しています。

さらに2022年3月にはDFP社が非小細胞肺がん(上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性、ステージⅢ/Ⅳ)の患者を対象に開発中の「DFP-14323」について、日本国内における独占的販売権を取得するライセンス契約を締結しました。本剤は、がん免疫担当細胞の表面に存在するアミノペプチダーゼNと結合してがん患者の免疫応答を強め、標準的な抗がん剤と併用しても副作用を増強することなく効果を高めることから、高齢者や末期のがん患者の治療剤として期待されています。

DFP社は本剤による既存の抗がん剤との併用で非小細胞肺がん(EGFR 遺伝子変異陽性、ステージⅢ/Ⅳ)の患者を対象に実施したフェーズⅡ試験で良好な成績を得ており、同社がPMDAと相談の上で開発を進めながら、非小細胞肺がん(EGFR 遺伝子変異のあるステージⅢ/Ⅳ)の患者の治療に係る適応で製造販売承認を申請する予定であり、当社は承認が得られ次第、日本において本剤の販売を行うことができます。

  2) 新技術を活用した創薬・臨床開発

当社グループは進歩が著しいAIなど新技術を活用した手法を導入することで、有望な創薬テーマの創出や開発プロセスの迅速化、業務の効率化などにつなげたいと考え、現在、デジタル技術に強みを持つベンチャー企業2社への出資や業務提携を行っています。

AI創薬ベンチャーである株式会社MOLCUREとは、創薬プロセスの初期段階における化合物の探索と最適化のプロセスを効率化することを目指しています。同社との協業により当社グループとして初めてAIを用いた創薬に着手し、現在はペプチド医薬品の素となるリードペプチドの創成と最適化について開発を進めています。

デジタル医療を推進するサスメド株式会社とは、特定の開発候補テーマに関して、同社のAIシステムとRWDを用いた多面的な分析を行い、効率的な治験デザインを構築するチャレンジを行っています。現在は将来の共同開発も視野に入れ、アルカリ化療法剤によるCKD進展抑制の検討において、サスメドのAIとCKOALA研究データ及びRWDを用いた分析を進めているほか、同社の臨床開発システムを用いた臨床試験効率化の検討も行っています。

④ Plus1 海外展開

中国では、新型コロナウイルスの感染拡大を機にオンライン診療が急速に普及しており、当社のカルバン錠についても、2021年末よりインターネット病院での処方が開始されています。また本年度中にジェネリック医薬品1品目の承認取得が期待されており、さらに、現地でBE試験(biological equivalence study:生物学的同等性試験)を予定している品目もあるなど、引き続き中国での実績を着実に積み上げてまいります。

ベトナムでは、NC-VN社による現地での製品販売に向けた準備が整いつつあります。2022年度中には日本で販売しているものとは用量規格の異なる製品を、初めてベトナム当局へ申請する見通しです。現地開発・現地製造の強みを活かし、市場のニーズに合った製品を開発することで新規市場に挑戦していきます。

加えて、2022年3月には世界銀行グループの国際金融公社(IFC)との間で、ASEAN市場拡大のサポートとともに中東・アフリカの市場調査を支援していただくアドバイザリー契約を締結しました。世界最大の国際開発機関である同公社の助言・ネットワーク・資金を活用し、ASEANのその先に広がる市場への進出を検討していきます。

 

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