業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

なお、当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

(1)経営成績の分析

当連結会計年度は、前年度から引き続く新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界経済は大きな影響を受けながら推移いたしました。

わが国においては、感染拡大防止策を講じながら経済活動を再活性化させていく中で、一時的には新規感染者数が減少に転じたものの、新たな変異株の出現により感染が再拡大する等、依然として先行き不透明な状況が続いております。当社グループを取り巻く事業環境におきましても、感染者数の増減と連動して各種検査数が変動する等、予断を許さない状況が続いております。一方、迅速抗原検査キットの有用性が改めて認知される等、検査の重要性に対する認識が広まり、検査に関与する企業が果たすべき役割は益々大きなものとなりました。

このような環境の中、当社グループといたしましては安定的な事業継続性を実現するための経営基盤の強化や業務効率の改善を推進すべく、2022年1月よりH.U. Bioness Complexが段階的な稼働を開始いたしました。また、新型コロナウイルス感染症罹患患者の早期発見・早期治療による社会・経済活動の維持に貢献する取り組みとして、PCR検査および高感度抗原定量検査の受託、抗原検査試薬の製造・販売、空港検疫所における高感度抗原定量検査試薬の提供を含めた包括的な検査サポートなど、様々な製品・サービスの提供を行ってまいりました。2021年夏に開催された大規模イベントにおいては、イベント関係者の日々の感染状況の検査を実施し、オミクロン株発生以降の検査需要の急増に対しては、検査ラボおよび検査試薬・検査キット製造工場の稼働率を高め、環境変化に応じ検査の受託および検査試薬・検査キット製造の両面での対応を行いました。

これらの結果といたしまして、当連結会計年度の売上高は272,944百万円(前期比22.4%増)となりました。主な増収要因は検査・関連サービス事業における、新型コロナウイルス感染症関連検査の受託や空港検疫所における包括的検査サポートの提供ならびにがんゲノムを始めとした遺伝子関連検査の伸長、臨床検査薬事業における、新型コロナウイルス高感度抗原定量検査試薬および迅速抗原検査キットの販売の伸長です。

利益では、営業利益については、売上高の増加に伴う売上総利益の増加を主要因として、50,490百万円(前期比98.8%増)となりました。

経常利益については、持分法による投資損失が拡大したことに加えて債務保証損失引当金の繰り入れ等があったものの、営業利益の増加により、47,422百万円(前期比86.3%増)となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益については、子会社における減損や投資有価証券評価損等があったものの、経常利益の増加により、29,599百万円(前期比69.5%増)となりました。

 

① 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等

当社グループでは、将来の飛躍的かつ持続的な成長と収益力向上の観点から、連結売上高、連結営業利益およびEBITDAを、株主資本の効率的な運用の観点からROE(株主資本利益率)を、投下資本に対する収益性向上の観点からROIC(投下資本利益率)を、それぞれ重要な経営指標と位置付けています。

当連結会計年度の実績は、連結売上高が272,944百万円、連結営業利益が50,490百万円、EBITDAが65,118百万円、ROEが23.2%、ROICが15.4%となっております。

 

② セグメントごとの経営成績

当連結会計年度の期首より、報告セグメントとして記載する事業セグメントを変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。

 

イ.検査・関連サービス事業(LTS)

売上では、大規模イベントでの対応を含めた新型コロナウイルス感染症関連検査の受託や空港検疫所における高感度抗原定量検査の包括的検査サポートの提供ならびにがんゲノムを始めとした遺伝子関連検査の伸長に加えて、前期において患者様の受診抑制等の影響により減少した検査受託数が当期に回復したこと等により増収となりました。これらの結果、売上高は179,932百万円(前期比27.7%増)となりました。利益では、H.U. Bioness Complex稼働に関連した一時的な費用および減価償却費の一部が発生したものの、増収に伴う売上総利益の増加等により営業利益は23,630百万円(前期比87.4%増)となりました。

 

ロ.臨床検査薬事業(IVD)

売上では、国内外における高感度抗原定量検査試薬「ルミパルスSARS-CoV-2 Ag」および迅速抗原検査キット「エスプラインSARS-CoV-2」の販売の伸長に加えて、前期はグローバルでの検査需要減少の影響を受けていたCDMO・原材料供給事業が、検査需要の回復にともない成長したこと等によって増収となりました。これらの結果、売上高は64,335百万円(前期比28.6%増)となりました。利益では、増収に伴う売上総利益の増加等により、営業利益は26,732百万円(前期比109.1%増)となりました。なお、当連結会計年度の第3四半期より、事業・製品特性を考慮し、OEM・原材料供給事業の名称をCDMO・原材料供給事業へ変更しております。

 

ハ.ヘルスケア関連サービス事業(HS)

売上では、滅菌関連事業における物販の拡大に加えて、在宅・福祉用具事業が伸長した一方、滅菌関連事業における医材預託品販売に関して収益認識に関する会計基準を適用した影響および大口顧客との契約を終了したことによって減収となりました。これらの結果、売上高は28,676百万円(前期比10.6%減)となりました。利益では、人件費の増加および貸倒引当金を計上したこと等により、営業利益は1,801百万円(前期比22.8%減)となりました。

 

③ 生産、受注および販売の実績

イ.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

検査・関連サービス事業(百万円)

177,028

128.7

臨床検査薬事業(百万円)

106,450

128.9

ヘルスケア関連サービス事業(百万円)

26,209

102.0

合計(百万円)

309,688

126.0

(注)金額は、販売価格換算によっております。

 

ロ.受注実績

当社グループは、役務又は商品等の受注から完了又は納品等までの所要時間が短いため、常に受注残高は僅少であり、期中の受注高と販売実績とがほぼ対応するため記載を省略しております。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

検査・関連サービス事業(百万円)

179,932

127.7

臨床検査薬事業(百万円)

64,335

128.6

ヘルスケア関連サービス事業(百万円)

28,676

89.4

合計(百万円)

272,944

122.4

(注)主要な販売先については、総販売実績に対する割合が10%以上に該当する販売先がありませんので、記載を省略しております。

 

(2)財政状態の分析

 

前連結会計年度

(2021年3月31日)

当連結会計年度

(2022年3月31日)

増減

(百万円)

資産合計(百万円)

252,751

286,587

33,835

負債合計(百万円)

137,452

146,408

8,956

純資産合計(百万円)

115,298

140,178

24,879

自己資本比率(%)

45.6

48.9

3.3

(資産)

当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ33,835百万円増加し、286,587百万円となりました。その主な要因は、ソフトウエアの増加14,422百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加12,618百万円、建物及び構築物(純額)の増加5,795百万円、建設仮勘定の増加5,160百万円、現金及び預金の増加3,528百万円および工具、器具及び備品(純額)の増加2,741百万円があった一方、ソフトウエア仮勘定の減少6,521百万円、投資有価証券の減少2,087百万円および繰延税金資産の減少2,071百万円があったためであります。

(負債)

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ8,956百万円増加し、146,408百万円となりました。その主な要因は、流動負債その他の増加4,222百万円、未払法人税等の増加3,459百万円、支払手形及び買掛金の増加3,157百万円、未払金の増加2,514百万円、退職給付に係る負債の増加1,668百万円および債務保証損失引当金の増加1,414百万円があった一方、短期借入金の減少4,500百万円および長期借入金の減少3,621百万円があったためであります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ24,879百万円増加し、140,178百万円となりました。その主な要因は、親会社株式に帰属する当期純利益29,599百万円および為替換算調整勘定の増加3,597百万円があった一方、配当金の支払8,917百万円があったためであります。

以上の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.3%増加し、48.9%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

(連結キャッシュ・フローの状況)

 

前連結会計年度

 (自 2020年4月1日

   至 2021年3月31日)

当連結会計年度

 (自 2021年4月1日

   至 2022年3月31日)

増減

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

35,588

55,229

19,641

投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△28,273

△30,862

△2,589

フリー・キャッシュ・フロー(百万円)

7,315

24,367

17,052

財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)

△1,566

△21,725

△20,158

現金及び現金同等物(百万円)

42,950

46,479

3,528

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ3,528百万円増加し、46,479百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動により獲得した資金は、55,229百万円(前期比55.2%増)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益41,323百万円、減価償却費14,527百万円、その他の流動負債の増加額5,739百万円、その他の固定負債の増加額2,374百万円、持分法による投資損失2,342百万円、減損損失2,173百万円および仕入債務の増加額1,941百万円があった一方、売上債権及び契約資産の増加額10,036百万円および法人税等の支払額5,747百万円があったためであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動により使用した資金は、30,862百万円(前期比9.2%増)となりました。この主な要因は、出資金の分配による収入3,603百万円があった一方、有形固定資産の取得による支出23,733百万円および無形固定資産の取得による支出11,392百万円があったためであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動により使用した資金は、21,725百万円(前期比1,287.0%増)となりました。この主な要因は、配当金の支払額8,906百万円、短期借入金の純減少額4,500百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出3,989百万円および長期借入金の返済による支出3,898百万円があったためであります。

 

(4)資本の財源および資金の流動性についての分析

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資、研究開発、借入金の返済ならびにこれらに係る利息の支払い、配当の支払い、法人税の支払いおよびM&Aであります。当社グループは、引き続き財務の健全性を保ちつつ、営業活動により相応のキャッシュ・フローを生み出すことにより、当社グループの成長に必要な資金調達が可能であると考えております。

短期運転資金は自己資本および金融機関からの短期借入金を基本としており、設備投資や長期運転資金につきましては、金融機関からの長期借入、社債又はその組み合わせによる調達を基本としております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債は73,001百万円であります。主なものは、社債35,000百万円、長期借入金18,700百万円、長期リース債務11,649百万円、短期リース債務4,029百万円および1年内返済予定の長期借入金3,621百万円であります。

また、当社は、緊急時の手元流動性を確保すること等を目的として、主要取引金融機関と総額500億円のコミットメントライン契約を締結しております。当該契約に基づく当連結会計年度末における借入実行残高はありません。

当社グループは、格付機関である株式会社格付投資情報センター(R&I)より格付A(安定的)を取得しており、引き続き格付けの維持・向上に努めてまいります。

 

(5)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要としており、経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績、将来計画やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。

また、連結財務諸表の作成に当たって用いた重要な会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

会計上の見積りおよび見積りに用いた仮定のうち、重要なものおよびその補足事項については以下のとおりであります。

なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しております。

 

a.繰延税金資産の回収可能性の評価

 繰延税金資産は、過去の業績や納税状況、将来の業績予測等を総合的に勘案し、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積り、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金のスケジューリングの結果、将来の一時差異等加減算前課税所得の見積額および将来加算一時差異の解消見込額と相殺され、税金負担額を軽減することができると認められる範囲内で計上し、その範囲を超える額については控除しております。

 将来の一時差異等加減算前課税所得の見積りは、当社の包括的な承認を得た連結納税主体の翌連結会計年度予算および中期経営計画の数値を、過去の計画達成状況を踏まえて修正し、当連結会計年度の臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得・税務上の欠損金の発生状況を考慮して算定しております。

 繰延税金資産の評価には、翌連結会計年度予算および中期経営計画の達成状況が影響します。翌連結会計年度の業績が予算を大きく下回る場合には、繰延税金資産を減額する可能性があります。

 

b.投資有価証券の評価

 市場価格のない株式等の評価は、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が50%程度以上低下し、かつ実質価額の回復可能性がないと判断したときは、実質価額までの減損を行います。

 また、当社グループで保有する関連会社に対する投資については、個別の投資の価値が下落し、その下落が一時的でないと判断される場合には、公正価値まで減損します。公正価値の算定は、主に外部専門家を利用しております。

 翌連結会計年度において、投資先の財政状態の悪化により、投資有価証券の実質価額が著しく低下した場合には、評価損を計上する可能性があります。

 

c.固定資産の評価

 有形固定資産・無形固定資産については、資産又は資産グループに減損の兆候がある場合には、減損損失を認識するかどうかの判定を行います。当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識すべきと判定し、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上します。回収可能価額は、正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額とし、正味売却価額は資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を控除しています。使用価値は資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャッシュ・フローを現在価値に割り引いて算定します。

 翌連結会計年度の業績が予算を大きく下回る場合や、将来キャッシュ・フローに重要な影響を与える事象が発生した場合には、減損損失を計上する可能性があります。

 

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