課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

Mission, Vision、経営環境、中長期的な経営戦略および対処すべき課題

Ⅰ.当社グループのMission, Vision

当社および当社グループは、「ヘルスケアにおける新しい価値の創造を通じて、人々の健康と医療の未来に貢献する」というMissionのもと、「人々の健康に寄り添い、信頼とイノベーションを通じて、ヘルスケアの発展に貢献するグループを目指す」というVisionを掲げ、事業環境が急激に変化する中、将来の飛躍的な成長のために、医療領域に留まることなく広くヘルスケア領域へと事業を展開しております。

 

Ⅱ.中期計画「H.U. 2025 ~Hiyaku(飛躍) & United~」の概要

当社は、将来の飛躍的かつ持続的な成長に向けて、2025年3月期を最終年度とする中期経営計画『H.U. 2025 ~Hiyaku(飛躍) & United~』(以下、「本中期計画」)を2020年9月に策定いたしました。

本中期計画策定時点において、新型コロナウイルス感染症は概ね2022年3月期には収束するものと見込んでおりましたが、当初想定を大幅に上回る感染の拡大と長期化により、当社としましてもグループ一丸となってPCR検査や空港検疫所における高感度抗原定量検査等の対応に尽力してまいりました。一方、新セントラルラボ(以下、「H.U. Bioness Complex」)の自動搬送ラインの稼働が当初の予定よりも後ろ倒しになる等、本中期計画の実行に一部遅れが生じております。当社としましては、このような社内外の状況に対する対応や新型コロナウイルス感染症の収束後に向けた成長戦略について継続的に協議をしておりますが、本中期計画に係る重要テーマや事業展開等の骨子は変更することなく、引き続き本中期計画の達成に向けて尽力してまいります。

なお、H.U. Bioness Complexの今後のスケジュールにつきましては、「(1)Mission, Vision、経営環境、中長期的な経営戦略および対処すべき課題 Ⅳ.2023年3月期の計画 ②2023年3月期計画の骨子」に記載しております。

 

①当社グループを取り巻く事業環境と本中期計画の重要テーマ

当社グループを取り巻く事業環境は、高齢化や先端的医療の導入等による医療費の伸長が見込まれる中、医療機関の経営状況の悪化や医療費の削減要請に伴う検体検査実施料の抑制により、国内臨床検査市場は今後も厳しい状況が継続するものと見込まれます。一方、医療費の抑制策が進む中、病院および病床再編に伴う在宅医療や予防医療のニーズの拡大、先進医療技術の向上やIT技術の進展など新たな成長の機会があり、事業環境の様相は刻々と変化しております。

また、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う生活者の行動変容や患者様の受診抑制等、足元の流動的な環境変化にも適切な対応が求められております。

海外臨床検査市場においては、新興国を中心に成長しているものの先進国では社会保障費抑制による低成長が継続しております。また、各国の制度変更等による薬事関連コストが増加する等、厳しい事業環境が継続しております。

このような事業環境の中、当社は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画『Transform! 2020』(以下、「前中期計画」)において推進してきた成長基盤の整備、組織と業務の変革を土台として、下記3点を本中期計画における重要テーマとして掲げグループ一丸となって推進してまいります。

 

・H.U. Bioness Complexの稼働

・CDMO事業の強化

・ヘルスケア×ICT

 

②企業価値向上へのストーリー

当社グループは、LTS事業およびIVD事業を有する世界的にみても稀有なグループ企業であり、これらの事業に加えて滅菌関連事業や在宅・福祉用具事業をはじめとする様々なヘルスケアに関連する事業の拡大・強化に取り組んでおり、幅広い事業展開を行っております。これらの事業活動により高付加価値または新しい価値を創出していくことが、当社グループの企業価値を向上させるものと考えております。

 

・当社グループの価値創造ストーリー

当社グループの有する無形資産を基にグループシナジーを最大限活用し、顧客提供価値の最大化を図ってまいります。

LTS事業およびIVD事業においては、検査の早期開発、開発評価、承認取得を、グループR&D機能も活用し一体となって進めることにより、新規臨床検査の早期実用化を実現してまいります。このLTS事業とIVD事業での価値創造モデルは、今般のSARS-CoV-2抗原検査の早期実用化と収益への貢献により、あらためて実証されたと考えております。また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、検査の重要性および当社グループが行うLTS事業が医療を支える社会インフラであるということも社会的に広く認識されたと自負しております。

今後は、中央材料室および手術室における滅菌サービスを提供する滅菌関連事業と合わせて、グループとしての総合提案を行っていくことで、顧客提供価値を最大化し、グループの企業価値を向上してまいります。

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※1HSセグメントにおける滅菌関連事業

※2多様な顧客との関係性、それらのカスタマーリレーション

※3KOL:Key Opinion Leader

 

・グループの事業展開

病院を中心とした医療機関へのグループ総合提案等により着実な成長を果たすとともに、先端領域の検査拡充、次世代プラットフォームの開発等、更なる成長のための施策に取り組んでまいります。

また、検査情報のデジタル化を推進するとともに、PHR(Personal Health Record)を含むICT(Information and Communication Technology)サービスツールを導入・推進することにより、事業を通じて得られる様々なデータの利活用と医療/健康情報プラットフォームの確立を目指し、ヘルスケア×ICT領域へと事業展開を進めてまいります。

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※ HSセグメントにおける滅菌関連事業

 

 

・ヘルスケア×ICTサービスの展開

地域医療や予防医療の一層の充実が求められる中、当社は、在宅事業やセルフメディケーション・健保事業等を新規育成事業として強化しており、これらのサービスとICTを融合させた新たなサービスを展開してまいります。

また、開業医向け業務支援SaaS(Software as a Service)と、生活者向けのPHRを当社グループで一体的に提供することで、医療の場における検査結果のさらなる活用をサポートし、LTS事業における開業医向けサービスの付加価値向上に取り組んでまいります。
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③本中期計画における重要施策

本中期計画は、新型コロナウイルス感染症への対応およびH.U. Bioness Complex稼働に向けた構造改革を実行していくフェーズと、H.U. Bioness Complexの稼働後の投資の回収および収益拡大を果たす2つのフェーズに分かれます。

これを前提として、「H.U. Bioness Complexの安定稼働と自動化による原価低減」、「LTS事業における固定費削減および収益性改善」、「グループ一体化戦略の推進」、「IVD事業におけるCDMO事業の拡大」を本中期計画における重要施策と定め、グループ一丸となって実行してまいります。

 

1.H.U. Bioness Complexの安定稼働と自動化による原価低減

当社は、本中期計画における最重要施策と位置付けておりましたH.U. Bioness Complexの稼働を2022年1月に開始しました。

H.U. Bioness Complexは、将来の事業環境においても高品質な検査サービスを継続して提供するためのものであり、一般検査においては全自動化による業務効率化と24時間稼働による大量処理が可能となり、また特殊検査においては最先端の検査項目に対応する設備・環境を整備し、AI技術やロボティクス等を導入することで、徹底した業務効率化とさらなる品質向上を追求いたします。

検査の自動化等により、2025年3月期には、2020年3月期と比較して、H.U. Bioness Complex単体で一般検査では15%、特殊検査では7%の原価の低減を見込んでおります。

 

2.LTS事業における固定費削減および収益性改善

H.U. Bioness Complexの稼働を踏まえ、全国的なラボ再編を実施してまいります。まず、2021年3月にエスアールエル福岡ラボラトリーを移転リニューアルし、福岡県福岡市にSRL Advanced Lab. FMAを開設いたしました。また、地域の医療需要を考慮し、顧客ニーズに対応したラボ体制を構築すべく、地域毎にSTAT(Short Turn Around Time)ラボを設置し、迅速検査への対応を強化してまいります。なお、新関西ラボにつきましては、資材価格が高騰していること等に鑑み、投資の規模や稼働時期等について継続的に検討してまいります。

また、外部とのアライアンス推進によるシェアリング・ロジスティクスの構築やグループ内の集荷機能および拠点の統合を進めることにより、集荷・物流に係るコストの最適化を図ってまいります。

これらの施策を通じて、高品質な検査を提供することに加え、コスト競争力の向上と検査結果報告時間の短縮化によりお客様に選ばれる検査会社となり、更なるシェア向上を果たしてまいります。

 

3.グループ一体化戦略の推進

3-1グループ営業統合

当社は、2020年9月に、株式会社エスアールエル、富士レビオ株式会社および日本ステリ株式会社の国内営業部門およびマーケティング部門を統合したH.U.フロンティア株式会社(以下、「H.U.フロンティア」)を設立し、2020年10月1日より営業を開始いたしました。また、2021年10月1日より、当社の連結子会社である株式会社日本医学臨床検査研究所、株式会社北信臨床および株式会社エスアールエル北関東検査センターの営業部門およびマーケティング部門をH.U.フロンティアに統合しております。

 

H.U.フロンティアは、当社グループがかねてより進めてきたグループシナジーの強化をより加速するために設立されたものであり、医療を取り巻く環境が急速に変化する中、当社グループがもつ臨床検査サービス、臨床検査薬の製造販売、医療器材の滅菌サービスなど幅広い事業をもって、顧客ニーズに応じて様々なサービスや総合的なソリューションを提供してまいります。

また、各社の顧客基盤を一元化することで、セグメント間のクロスセル拡大や既存顧客への拡販を強化するほか、各社がもつ高い技術力を活用し、最適な新サービスや製品の開発も行うことで、グループ一体での顧客提供価値の最大化を目指してまいります。

 

3-2グループ内販拡大

引き続き検査ラボや院内顧客に対するルミパルス製品の内販拡大を推進するとともに、原価率の高い検査試薬や使用量の多い試薬の開発を進めグループ内での内製化を推進し、LTS事業のコスト削減およびグループ全体でのキャッシュ・フロー改善に取り組んでまいります。

 

3-3R&Dの強化

グループ内のR&D機能を統合し知の共有を図るとともに、グループ全体最適のR&D戦略を推進し、機動的な技術の導入・開発の加速を推進してまいります。

 

4.IVD事業におけるCDMO事業の拡大

IVD事業における海外戦略は、ルミパルス製品の拡販を中心に取り組んでまいりましたが、後発のプレーヤーとしてグローバル大手企業と競争し収益を拡大していくことは非常に難しく、また、各国における規制等の変更により薬事関連のコストが増大しております。このような事業環境の中、海外ルミパルスに関しては、展開地域および項目に関する選択と集中を進めてまいります。一方、IVD事業の強みである免疫分野の良質な原材料・試薬開発技術および、LTS事業におけるルミパルス製品の採用実績をもとにした信頼性と評価を活用することで、CDMO事業の強化・拡大に取り組んでまいります。

 

④2025年3月期の経営数値目標(連結)

本中期計画において、売上高の着実な成長と利益率の追求のみならず、資本効率の向上と安定的なキャッシュ・フローの創出を果たすべく、下記のとおり経営数値目標を掲げております。

 

・2021年3月期および2022年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標

 

2021年3月期(実績)

2022年3月期(実績)

2025年3月期(目標)

売上高CAGR

(2021年3月期実績は対前年成長率)

18.2%

20.3%

6%以上(※)

EBITDAマージン

17.0%

23.9%

18%以上

営業利益率

11.4%

18.5%

10%以上

ROE

16.0%

23.2%

12%以上

ROIC

8.7%

15.4%

8%以上

(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)

 

・2021年3月期および2022年3月期の実績と本中期計画における累計数値目標

 

2021年3月期(実績)

2021年3月期~

2022年3月期

(累計実績)

2021年3月期~

2025年3月期

(累計目標)

営業キャッシュ・フロー

356億円

908億円

1,500億円以上

フリー・キャッシュ・フロー(※)

73億円

317億円

500億円以上

(※)リース債務を除く

 

⑤セグメント別計画

1.LTS事業

LTS事業においては、収益性の改善を最重要課題として認識しており、「③本中期計画における重要施策」に記載のとおり、H.U. Bioness Complexの安定稼働と自動化による原価低減、全国ラボ再編、集荷物流機能の合理化、営業統合によるグループ総合提案等の施策を通じて、収益構造を抜本的に改善してまいります。

さらに、先進医療技術の向上、地域包括ケアシステムの進展や医療におけるICTツールの重要性が高まる等、LTS事業を取り巻く環境は刻々と変化しており、LTS事業が環境変化に対応し飛躍的な成長を果たすべく、「商品力の強化」および「医療機関および生活者へのICTツールの導入」に関しても重要施策として掲げております。

(商品力の強化)

特殊検査に強みを持つ臨床検査会社として、がんゲノム、血液疾患、感染症や希少疾患等、最先端かつ医療需要の大きい疾患分野の新規項目の導入を推進してまいります。また、将来的に需要が拡大することが予測される再生医療・細胞医療領域への進出を図ってまいります。

一方、収益性の面では、ルミパルス試薬の採用項目拡大、外注項目の内製化および不採算項目の整理等を通じて、コスト競争力を向上してまいります。

(医療機関および生活者へのICTツールの導入)

開業医、生活者の双方のニーズに合致したICTツールを提供してまいります。開業医には、これまで提供してきた検査結果システムに加え、業務支援システムを提供し、生活者には、個人のヘルスケア情報を一元管理できるPHRを提供してまいります。

当社グループが提供するICTツール間を連携させることで、開業医と生活者との間に新しい接点を創出する等、診療効率と患者様サービスの向上に資する新たな価値を創出してまいります。

 

(LTS事業における2021年3月期および2022年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標)

 

2021年3月期(実績)

2022年3月期(実績)

2025年3月期(目標)

売上高CAGR

(2021年3月期実績は対前年成長率)

17.2%

22.3%

6%以上(※)

EBITDAマージン

14.0%

18.0%

17%以上

営業利益率

9.0%

13.1%

9%以上

(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)

 

2.IVD事業

「③本中期計画における重要施策 4.IVD事業におけるCDMO事業の拡大」に記載のとおり、IVD事業の強みを活かすとともに、生産体制の拡充と社内リソースの再配置等により、CDMO事業の強化・拡大に取り組んでまいります。

国内事業については、H.U.フロンティアによるグループ総合提案および営業力強化、内外販におけるルミパルス試薬の項目拡販、LTS事業向けの項目内製化・導入推進および、マニュアル製品の選択と集中による固定費の最適化により、国内事業の成長と収益性の改善を図ってまいります。

海外ルミパルス事業については、地域の選択を行うとともに、独自性のあるアルツハイマー関連項目に注力してまいります。

また、新型コロナウイルス感染症により需要を再認識したエスプライン製品をはじめとするPOCT(Point Of Care Testing)を強化してまいります。具体的には、検体種別(唾液、鼻前庭、無痛採血等)の拡大や感染症項目のラインナップ強化等により商品力を強化していくほか、H.U.フロンティアによるLTS事業の顧客への販売を進めるとともに、生産キャパシティを拡充してまいります。

さらに、次世代プラットフォーム開発に関しても推進してまいります。

 

(IVD事業における2021年3月期および2022年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標)

 

2021年3月期(実績)

2022年3月期(実績)

2025年3月期(目標)

売上高CAGR

(2021年3月期実績は対前年成長率)

24.8%

26.7%

4.5%以上(※)

EBITDAマージン

31.8%

46.6%

25%以上

営業利益率

25.6%

41.6%

20%以上

(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)

3.HS事業

滅菌関連事業においては、病院の経営環境が厳しさを増す中、医療現場のニーズに応えるとともに、医療現場の効率化やコスト削減に資するサービスを積極的に提案してまいります。

重点施策としては、営業統合によるグループ総合提案、手術室を含めた全面受託化の深化および、継続的なオペレーションの改善により収益拡大を図ってまいります。また、労働集約型ビジネスであることに鑑み、人件費の最適化を図ってまいります。

 

(HS事業における2021年3月期および2022年3月期の実績と2025年3月期の経営数値目標)

 

2021年3月期(実績)

2022年3月期(実績)

2025年3月期(目標)

売上高CAGR

(2021年3月期実績は対前年成長率)

13.0%

0.5%

9%以上(※)

EBITDAマージン

11.6%

11.5%

12%以上

営業利益率

7.3%

6.3%

9%以上

(※)5か年(2020年3月期-2025年3月期)

 

4.持分法適用関連会社

(Baylor Miraca Genetics Laboratories, LLC)

2022年3月期につきましては、新たなパートナーシップの獲得等により、がんや先天性疾患に関わる遺伝学的検査の受託数が増加し、増収となりました。2023年3月期につきましては、引き続き売上成長を図るとともに、株式公開に向けて事業を推進してまいります。

(中国平安JV(深圳平安好医医学検験実験室))

引続き、三位一体モデル(健診クリニック、画像センター、検査ラボ)を推進しながら、中国平安グループの顧客基盤やネットワークの活用等による院内ラボ事業の拡大、特殊検査項目の導入等により、持分法投資損益の黒字化を目指してまいります。

(株式会社札幌ミライラボラトリーおよび株式会社札幌メディ・キャリー)

2021年6月10日付で、札幌臨床検査センター株式会社との間で、北海道札幌地域において共同で検体検査ラボ事業を行うための合弁会社および同地域において共同で臨床検査関連の集荷・物流事業を行うための合弁会社を設立し、2022年3月期より事業を開始しております。

 

⑥財務戦略と財務規律

本中期計画においては、安定的なキャッシュ・フローの創出と健全な財務規律の維持を重要なテーマとして掲げ、下記のとおり財務戦略を実行してまいります。

1)キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善等による営業キャッシュ・フローの改善

2)ファイナンスリースおよび不動産ファイナンスの活用

3)不動産売却の推進

(財務規律)

 

2021年3月期

(実績)

2022年3月期

(実績)

2025年3月期(目標)

(リース債務を除く)純有利子負債
/EBITDA倍率(倍)

0.6倍

0.17倍

1.3倍以下(※)

(本中計期間中2.5倍以下を維持する)

自己資本比率(%)
(不動産ファイナンスを除く)

45.6%

48.9%

40%以上

(※)2025年3月期

 

Ⅲ.サステナビリティに関する取り組み

①サステナビリティ推進体制

当社グループは、当社の代表執行役社長が委員長を務める「H.U.グループ サステナビリティ委員会」において、サステナビリティに係る基本方針と活動計画を協議します。同委員会は、計画の実行にあたってグループ各社の活動状況をモニタリングするほか、サステナビリティに関わる社外の最新動向を収集・共有する役割も担います。同委員会のもと、関係各部門の本部長を責任者とする、活動テーマごとの6つの部会を設置し、サステナビリティ活動を推進しています。

 

当社グループのサステナビリティ推進体制

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当社グループは、指名委員会等設置会社として、監督と執行の明確な分離と事業を迅速に運用できる執行体制を確立しており、サステナビリティに関しても、同コーポレート・ガバナンス体制のもと活動を行っています。

 

②サステナビリティにおける中長期的な重要課題および目標

当社グループは、ESGの観点だけでなく、顧客資産、知的資産やブランドを含めた無形資産全般も対象に含め、中長期的な企業価値に影響を与える要素として17のマテリアリティ(重要課題)を定義しています。

 

当社グループのマテリアリティ(2021年7月改定)

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さらに、当社グループでは、マテリアリティの解決に向けて取り組みを進めるため、2021年3月期から2023年3月期までのサステナビリティ活動に関わるKPIおよび3カ年目標を「サステナビリティ・ロードマップ」として公表しています。

 

当社グループのサステナビリティ・ロードマップ

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当社は、2021年12月にCDP(Carbon Disclosure Project)の「気候変動レポート2021」でA-(Aマイナス)の評価を獲得、2022年1月にはH.U. Bioness Complexがオープンし、同年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で選出する「ホワイト500」に認定されるとともに当社グループ初のESG説明会を開催しました。また、臨床検査の普及啓発を開始してから2021年で40年を迎えました。

 

③気候変動への取り組み

地球温暖化に対する世界潮流の変化を踏まえ、当社グループでは、マテリアリティの一つである「気候変動」への取り組みを加速しています。2020年10月にはCO₂排出量の原単位削減に関する長期目標を策定しましたが、昨今のグローバルにおける状況を踏まえ、2021年10月より総量削減目標に変更しました。

 

当社グループのCO₂排出量削減の中長期目標(2021年10月改定)

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また、気候変動に関連したリスク・機会に関する情報開示の高まりを受け、当社グループは、2021年11月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言への賛同を表明しました。TCFDの提言に基づく情報開示として、不確実性の高い気候変動の影響を捉えるため、シナリオ分析を行いリスクと機会を定性的に評価しています。検討に際しては、移行リスクが大きくなる世界(1.5℃、2℃)、物理的リスクが大きくなる世界(4℃)を想定し、発生し得る事象を整理しました。各事象への備えとして、「短期:1年」「中期:5年」「長期:10年」の時間軸を設定し、事業への潜在的影響および対応事項を整理するとともに、事業リスクおよび機会について分析しました。

 

TCFD提言に基づく気候変動シナリオ分析

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④人権・人材領域の取り組み

当社グループがMission, Visionを実現するためには、変革に挑戦することが求められます。変革のドライバーとなるのは「人(従業員)」であり、従業員の意識と行動を変えていくことでヘルスケアにおける新しい価値が創造できると考えます。そのため、人権・人材は当社グループが最も重視しているテーマであり、この考え方のもと、人権・人材領域に関する4つのマテリアリティ(人権・ダイバーシティ・働きやすい環境・健康増進)を特定し、多様かつ健康で活性化された組織風土づくりに取り組んでいます。

 

当社グループでは、人権・人材領域に関するマテリアリティに基づき、2021年3月期から2023年3月期までの3カ年の中期目標を設定し、目標達成に向けて取り組みを進めています。

 

人権・人材に関連する当社グループのサステナビリティ・ロードマップ(主要部分)

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2022年3月、当社に加え、当社子会社の株式会社エスアールエル、富士レビオ株式会社およびH.U.フロンティア株式会社は、「ホワイト500」に認定されました。

 

Ⅳ.2023年3月期の計画

①2023年3月期の見通しについて

2023年3月期につきましては、PCR検査をはじめとする新型コロナウイルス感染症関連検査の減少に加え、H.U. Bioness Complexに係る減価償却費や運営費用の増加等により、下記のとおりとなる見込みです。

単位:億円(四捨五入)

2022年3月期実績

2023年3月期予想

売上高

2,729

2,540

EBITDA※1

651

410

営業利益

505

210

ROE

23.2%

8.8%

ROIC※2

15.4%

6.0%

※1 EBITDA=営業利益+減価償却費+のれん償却費

※2 ROIC=NOPAT(営業利益-みなし法人税)/ 投下資本 [(純資産+有利子負債(リース債務含む)

+ その他の固定負債)の期首・期末残高の平均]

 

②2023年3月期計画の骨子

本中期計画の3年目にあたる2023年3月期について、「(1)Mission, Vision、経営環境、中長期的な経営戦略および対処すべき課題 Ⅱ.中期計画「H.U. 2025 ~Hiyaku(飛躍) & United~」の概要」に記載のとおり、重要テーマに取り組んでまいります。

・H.U. Bioness Complexの全面稼働

臨床検査室を運営するための国際規格であるISO15189を取得後、2022年1月より検査機器、搬送ロボ、受付システムなどが稼働を始め、H.U. Bioness Complexにて一部の検査を開始しております。以降、並行して本プロジェクトの重要な要素である自動搬送ラインについて各種検証を継続してまいりましたが、同年3月の検収時点では、自動化に対する品質について当社が求める水準を満たしていないものと判断するに至りました。その大きな要因は、自動搬送ラインの搬入遅れに伴うテスト期間の短縮により、十分なボリュームテストが実施できなかったことにあります。

2023年3月期については、自動搬送ラインの追加開発のための投資に加えて、一部マニュアル作業の発生・追加開発部分にかかる検証・八王子ラボとの並行稼働にともなう費用が発生することを見込んでおります。

当社としましては、追加の開発・検証を行いながら、全面稼働に向けて順次稼働範囲を拡大させてまいります。

・CDMO事業の強化

CDMO事業における中長期な需要拡大を見据え、グローバルでの主要拠点における生産体制を強化してまいります。

・ヘルスケア×ICT

診療所向け業務支援SaaS(Software as a Service)である「医’sアシスト®」のサービス拡充および顧客基盤の拡大を推進するとともに、スマートフォン向けPHRアプリ「ウィズウェルネス®」については、顧客基盤拡大および健保組合への導入推進によりユーザー数の拡大を推進してまいります。

 

Ⅴ.株主還元と成長への投資

各事業から生み出される利益および資金につきましては、主たる配当のKPIとして連結自己資本配当率(DOE)6%レベルを目指し、その上でキャッシュ・フロー、中長期的に健全な財務基盤の維持などを総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を実施してまいります。

また、内部留保にかかる資金は、中長期的な成長に向けた投資を最優先として充当してまいります。

 

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