業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、引き続き、新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が始まったことなどにより、原材料やエネルギー価格が上昇するとともに急激な円安が進行し、物価が上昇し始めるなど、国内外ともに先行き不透明で予断を許さない状況となっております。

 医療用医薬品業界におきましては、医療費削減の影響による薬価引き下げの動きは続き、2021年4月には「中間年改定」が実施され、ついに毎年の薬価改定が始まるなど、その事業環境はますます厳しくなっており、2022年4月の薬価改定では薬価ベースで業界平均6.7%の引下げが行われ、当社製商品の薬価引き下げによる影響は6.5%となりました。

 また、少子化への対応が喫緊の社会課題となるなか、2020年5月29日に閣議決定された少子化社会対策大綱において、不妊治療に係る経済的負担の軽減を図るため、適応症と効果が明らかな治療には広く医療保険の適用を検討する政府方針が打ち出され、同年12月23日の第138回社会保障審議会医療保険部会において、本年4月から不妊治療に関する医薬品の保険適用を実施することが結論付けられました。これらにより2022年4月から「ウトロゲスタン腟用カプセル200㎎」を含む、複数の当社製品について、新たに不妊治療に用いられる医薬品として保険適用を受けることとなりました。

 このような状況のもと、当社グループは2030年ビジョンとして「世界の女性のwell-beingの向上に貢献している」「薬の富山からGlobal Marketに進出している」「世界一幸せな会社と社会貢献が一体化している」を ”10年後のありたい姿”として掲げ、これを実現するための中間地点である2024年9月期に向かう道筋を示した行程表として、新たな中期経営計画を策定いたしました。本中期経営計画では「Fujiらしくをあたらしく」をテーマとし、当社の強みである女性医療領域・急性期医療領域を強化しつつ、スピード感を持って、ASEANや北米といった海外事業へ積極的に参入し、その先の5年間でさらに拡大できるように新薬・バイオシミラー・ジェネリックのパイプラインを充実させるなど、2030年に向けた成長戦略にグループ全体で取り組んでおります。

 そのなかで当社は、重点領域である産婦人科領域において、2022年4月に不妊治療に用いられる医薬品として薬価基準に収載された「生殖補助医療における黄体補充」を効能・効果とする天然型黄体ホルモン製剤「ウトロゲスタン腟用カプセル200㎎」の販売に注力するとともに、ジェネリック医薬品においては、子宮内膜症治療剤「ジエノゲスト錠」、緊急避妊剤「レボノルゲストレル錠」、経口避妊剤「ファボワール錠」、経口避妊剤「ラベルフィーユ錠」を中心にシェア拡大を図っております。これら主要製品の需要増加に対応するため、富山工場内にホルモン錠剤を製造する新錠剤棟を建設し、2023年から本格稼働する予定です。ホルモン錠剤の生産能力を拡大し、安定供給の責任を果たしてまいります。

 また、2021年9月27日に本邦で初めて更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制を効能効果とした、天然型黄体ホルモン製剤「エフメノカプセル100mg」(一般名:プロゲステロン)の日本国内での製造販売承認を取得し、2021年11月より販売を開始いたしました。本剤は、更年期障害治療に伴うホルモン補充療法に用いる黄体ホルモン製剤で、厚生労働省の主導する「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において2010年に開発募集が行われ、当社がその募集に対して開発の意思を表明し、開発を行った製剤です。当社は、本剤を供給することで、更年期障害に対するホルモン補充療法の新たな治療選択肢を提供でき、女性のwell-beingの向上により一層貢献できるものと期待しております。

 2021年12月には日本製薬株式会社から「フォリアミン®(注射液、錠剤、散剤100mg/g)」、「サルプレップ®配合内用液」、「ミンクリア®内用散布液0.8%」、「オスバン®消毒液(0.025%、0.05%、0.1%、10%、オスバンラビング®)」の計4製品について製造販売承認を承継する資産譲渡契約を締結し、承継が完了しました。これらの製剤の多くが、今後の バイオシミラー事業との相乗効果が期待される製剤であり、将来のバイオシミラーの販売につながるものとして販売拡大に向けて取り組んでおります。

 

 以上の結果、当連結会計年度の売上高は、35,426百万円(前年同期比4.2%増)となりました。利益面につきましては、女性医療領域の製剤の売上が順調に推移したことや、OLIC社の受託売上が伸長したことなどにより、営業利益は3,777百万円(同12.8%増)となり、経常利益は3,725百万円(同14.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,696百万円(同10.9%増)となりました。

 なお、当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント情報は記載しておりません。

 

 ②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末の総資産額は75,538百万円となり、前期末と比べ11,298百万円の増加となりました。流動資産は、棚卸資産が増加した一方で現金及び預金が減少したこと等により34,727百万円となり、前期末と比べ107百万円の減少となりました。固定資産は、建物及び構築物等の有形固定資産や販売権等の無形固定資産の増加などにより40,810百万円となり、前期末と比べ11,405百万円の増加となりました。

(負債)

負債の部においては、流動負債は、短期借入金や前受金が増加したこと等により23,975百万円となり、前期末と比べ3,783百万円の増加となりました。固定負債はリース債務が減少した一方で、長期借入金が増加したこと等により15,756百万円となり、前期と比べ4,390百万円の増加となりました。

(純資産)

純資産の部においては、利益剰余金の増加等により35,806百万円となり、前期末と比べ3,124百万円の増加となりました。

 

 ③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前期末に比べ6,653百万円減少し、3,546百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益3,723百万円に、減価償却費2,462百万円、仕入債務の増加額447百万円などを加える一方、棚卸資産の増加額3,618百万円、法人税等の支払額1,498百万円があったこと等により、営業活動による支出は658百万円(前年同期は5,993百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の売却による収入1,383百万円があった一方で、無形固定資産の取得による支出7,326百万円有形固定資産の取得による支出5,097百万円があったこと等により、投資活動による支出は11,271百万円(前年同期比8,926百万円の支出増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

長期借入金の返済による支出2,140百万円配当金の支払額729百万円などがあった一方で長期借入による収入7,300百万円があったこと等により財務活動による収入は5,094百万円(前年同期は5,435百万円の支出)となりました。

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標

 

2020年9月期

2021年9月期

2022年9月期

自己資本比率(%)

64.5

50.9

47.4

時価ベースの自己資本比率(%)

62.8

44.2

33.3

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

214.0

312.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

154.6

112.8

・自己資本比率:自己資本/総資産

・時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

・キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

・インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/支払利息

(注)1.いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

3.有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

4.営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書上に計上されている「営業活動によるキャッシュ・フロー」、支払利息は、連結損益計算書に記載されている「支払利息」を用いております。

5.マイナスの場合はを記載しております

 

④生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

薬 効

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

ホルモン剤(百万円)

14,614

123.3

診断用薬(百万円)

8,792

92.3

代謝性医薬品(百万円)

2,535

84.9

泌尿・生殖器官系用薬(百万円)

1,883

127.2

外皮用薬(百万円)

1,582

103.2

循環器官用薬(百万円)

741

89.8

抗生物質及び化学療法剤(百万円)

578

82.9

体外診断用医薬品(百万円)

73

101.8

その他(百万円)

8,204

120.0

合計(百万円)

39,006

108.9

(注)1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、薬効分類別生産実績を記載しております。

2.金額は販売価格で表示しております。

 

(2)商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績は、次のとおりであります。

薬 効

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

ホルモン剤(百万円)

658

125.4

体外診断用医薬品(百万円)

87

94.1

その他(百万円)

789

817.2

合計(百万円)

1,535

206.7

(注)1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、薬効分類別商品仕入実績を記載しております。

2.金額は仕入価格で表示しております。

 

(3)受注実績

当連結会計年度における受注実績は、次のとおりであります。

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

10,622

113.1

1,313

74.2

(注)1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載しておりません。

2.金額は販売価格で表示しております。

 

(4)販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

薬 効

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

製品

 

 

ホルモン剤(百万円)

12,073

19.5

診断用薬(百万円)

7,447

△4.4

代謝性医薬品(百万円)

1,486

5.4

組織細胞機能用医薬品(百万円)

948

△3.8

神経系及び感覚器用剤(百万円)

924

△17.3

抗生物質及び化学療法剤(百万円)

651

10.9

循環器官用薬(百万円)

553

△17.9

その他(百万円)

9,032

4.3

小計(百万円)

33,117

5.7

商品

 

 

ホルモン剤(百万円)

1,227

25.4

体外診断用医薬品(百万円)

149

△19.2

その他(百万円)

930

514.8

小計(百万円)

2,308

75.4

合計(百万円)

35,426

8.5

(注)1.当社グループは、医薬品事業の単一セグメントであり、セグメント情報を記載していないため、薬効分類別販売実績を記載しております。

2.(会計方針の変更)に記載のとおり、「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号 2020年3月31日以下収益認識会計基準という)等を当連結会計年度から適用し収益認識に関する会計処理方法を変更したため利益の測定方法を同様に変更しておりますなお前連結会計年度の販売実績については変更後の利益の測定方法により作成したものを記載しております

3.金額は販売価格で表示しております。

4.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は,次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年10月1日

  至 2021年9月30日)

当連結会計年度

(自 2021年10月1日

  至 2022年9月30日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社メディセオ

7,335

22.5

8,312

23.5

アルフレッサ株式会社

5,069

15.5

5,566

15.7

株式会社スズケン

4,123

12.6

3,987

11.3

東邦薬品株式会社

2,989

9.2

2,980

8.4

(注)(会計方針の変更)に記載のとおり、「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号 2020年3月31日以下収益認識会計基準という)等を当連結会計年度から適用し収益認識に関する会計処理方法を変更したため利益の測定方法を同様に変更しておりますなお前連結会計年度の販売実績については変更後の利益の測定方法により作成したものを記載しております

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定

を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記情報(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

②経営成績に重要な影響を与える要因について

 医薬品事業は医薬品関連法規等の規制を受けており、医療制度改革、後発品の使用促進及び薬価改定等の医療費適正化策の動向、及び主力品の市場における競争状況が経営成績に継続的に影響を及ぼす要因として認識しております。また、経営成績に大きな影響を与える要因となる可能性があるリスクについては、2[事業等のリスク]に記載のとおりであります。

 当連結会計年度は、こうした諸要因の影響も計画に織り込み、事業に取り組みました。その結果、「(1)① 経営成績の状況」に記載のとおりの経営成績となったと認識しております。

 

③資本の財源及び資金の流動性

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は上記「(1)③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、必要に応じて内部資金の活用及び金融機関からの借入金により資金調達を行っております。

 主な資金需要につきましては、運転資金として、医薬品に係る製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、医薬品に係る研究開発及び生産のための設備投資等があります。

 

 

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