(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、個人消費や企業の設備投資に持ち直しの動きがみられたものの、長引く新型コロナウイルス感染拡大の影響に加えて、ウクライナ情勢の緊迫化に伴うエネルギー・原材料価格の高騰や急激な円安の進行などが今後のわが国経済に与える影響について、不透明感の増す状況が続いております。
医薬品業界におきましては、医療用医薬品は、原則隔年実施であった薬価改定が毎年実施に変更されるとともに、後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策も一層強力に推進されており、事業環境は厳しさを増しております。また、OTC医薬品市場におきましては、市場競争の激化に加え、外出自粛措置や訪日外国人の激減によるインバウンド需要の減少などにより、ともに厳しい環境下で推移いたしました。
このような状況の中、当社グループは、第10次中期経営計画(2020年度~2022年度)の2年目にあたる当連結会計年度において、グローバル展開を強力に推進する中、2020年11月に欧州の子会社であるTillotts Pharma AGが、Astellas Pharma Europe Ltd.より製造販売権を承継したクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤「ディフィクリア」が大きく寄与し、海外売上高を大幅に拡大させました。また、当社グループの事業基盤の強化・拡充に資するM&Aやアライアンス、拠点の増強にも積極的に取り組み、2021年5月に、Menarini社を通じて、中国にて潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」の販売を開始いたしました。さらに、Tillotts Pharma AGがイタリアに欧州域内で8番目となる現地法人を設立し、自販国の拡大による販売体制の強化を図っております。一方、国内の医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業につきましては、回復基調とはなったものの十分な成果を上げるには至りませんでした。
これらの活動の結果、当連結会計年度の売上高は、595億32百万円(前期比12.8%増)となりました。利益につきましては、営業利益63億66百万円(前期比83.2%増)、経常利益59億35百万円(前期比85.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益39億61百万円(前期比26.0%増)となりました。
また、当連結会計年度の海外売上高比率は41.4%(前期36.2%)となっております。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
次にセグメントの状況につきまして、ご報告申し上げます。
(医療用医薬品事業)
当事業におきましては、プロモーションコードの遵守を基本に、デジタルマーケティングを含めたMR(医薬情報担当者)の情報提供活動を一層充実させ、製品価値の最大化を図ってまいりました。
主力製品である潰瘍性大腸炎治療剤「アサコール」につきましては、国内市場では数量ベースでは伸長したものの、薬価改定の影響を受け、売上は前年並みとなりました。海外市場におきましては、「アサコール1600mg」の伸長を背景に堅調に推移いたしました。また、クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤「ディフィクリア」につきましては、欧州の感染症診療ガイドラインで第一選択薬として推奨される中、営業リソースを積極的に投入した結果、売上に大きく貢献いたしました。さらに、機能性ディスペプシア治療剤「アコファイド」につきましては、前連結会計年度のアステラス製薬株式会社との共同販促終了に伴う在庫調整が解消したこともあり、売上は増加いたしました。一方、炎症性腸疾患治療剤「エントコート」(国内販売名:「ゼンタコート」)につきましては、カナダやスペインなど一部地域で苦戦し、売上が減少いたしました。なお、2020年9月より国内にて販売を開始した鉄欠乏性貧血治療剤「フェインジェクト」につきましては、消化器科・産婦人科を中心に市場構築に努めております。
これらの結果、当事業の売上高は、370億6百万円(前期比23.6%増)、営業利益は69億11百万円(前期比97.7%増)となりました。
(コンシューマーヘルスケア事業)
当事業におきましては、超高齢社会が進展する中、生活者のセルフメディケーションをサポートする製品の供給を通じて市場構築を進めてまいりました。
主力製品である「ヘパリーゼ群」につきましては、医薬品ヘパリーゼ群の伸長に加え、下期よりコンビニエンスストア向けヘパリーゼW群の売上が回復に転じ、売上が増加いたしました。一方で「コンドロイチン群」や「ウィズワン群」、殺菌消毒薬などの衛生用品につきましては、競合品の影響などにより、売上は減少いたしました。
なお、製品ラインアップ強化に努め、「イオナ スパ&ミネラル Wクレンジング」や「ハイゼリーFE」などの新製品を発売いたしました。また、西洋ハーブ製剤の開発・育成に取り組む中、販売中の月経前症候群治療薬「プレフェミン」に加え、当連結会計年度において、足のむくみ改善薬「ベルフェミン」、過敏性腸症候群(IBS)改善薬「コルペルミン」を順次発売いたしました。
これらの結果、当事業の売上高は、223億70百万円(前期比1.2%減)、営業利益は40億38百万円(前期比14.0%減)となりました。
(その他)
当事業の売上高は、保険代理業・不動産賃貸収入などにより1億56百万円(前期比0.3%減)、営業利益は2億61百万円(前期比0.5%減)となりました。
(財政状態)
当連結会計年度末の総資産は1,242億82百万円となり、前連結会計年度末対比24億21百万円の増加となりました。その内訳は流動資産が416億63百万円で、前連結会計年度末対比43億49百万円の増加、固定資産が826億18百万円で、前連結会計年度末対比19億27百万円の減少となっております。流動資産の増減の主なものは、現金及び預金の増加19億10百万円、売掛金の増加26億46百万円、商品及び製品等の棚卸資産の増加8億46百万円、前渡金の減少等流動資産のその他の減少10億60百万円であります。また、固定資産の増減の内訳は、有形固定資産の減少4億94百万円、無形固定資産の減少8億63百万円、投資その他の資産の減少5億68百万円であります。
当連結会計年度末の負債合計は691億89百万円となり、前連結会計年度末対比34億82百万円の増加となりました。その内訳は流動負債が441億93百万円で、前連結会計年度末対比96億4百万円の減少、固定負債が249億96百万円で、前連結会計年度末対比130億86百万円の増加となっております。流動負債の増減の主なものは、短期借入金の減少103億15百万円であります。また、固定負債の増減の主なものは、長期借入金の増加125億66百万円であります。
当連結会計年度末の純資産は550億92百万円となり、前連結会計年度末対比10億60百万円の減少となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上39億61百万円、前期末及び当中間期の配当の実施15億43百万円、自己株式の増加25億95百万円、その他有価証券評価差額金の減少3億30百万円、為替換算調整勘定の増加6億16百万円、退職給付に係る調整累計額の減少12億87百万円等によるものであります。
これらの結果、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末と比べ1.7%低下し、44.2%となりました。また、連結自己資本当期純利益率は前連結会計年度末と比べ1.3%上昇し、7.1%となりました。当社は連結自己資本比率と連結自己資本当期純利益率もそれぞれ重要な経営指標の一つと認識しており、引き続き、資本効率化及び収益力強化に努めることによりこれらの指標の向上を図ってまいります。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、期首残高対比19億10百万円増加し、115億79百万円となりました。これは投資活動によるキャッシュ・フローが28億92百万円、財務活動によるキャッシュ・フローが48億41百万円のマイナスであったものの、営業活動によるキャッシュ・フローが89億50百万円のプラスであったためであります。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は、以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は89億50百万円の資金の増加となりました(前連結会計年度対比20億56百万円増)。これは、税金等調整前当期純利益の計上57億21百万円、減価償却費の計上47億円、売上債権の増加20億29百万円、その他の流動資産の減少14億12百万円、法人税等の支払い8億74百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は28億92百万円の資金の減少となりました(前連結会計年度対比145億67百万円増)。これは、有形固定資産の取得による支出10億63百万円、投資有価証券の取得による支出16億40百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度は48億41百万円の資金の減少となりました(前連結会計年度対比160億26百万円減)。これは、短期借入金の減少132億41百万円、長期借入れによる収入161億58百万円、長期借入金の返済による支出33億88百万円、自己株式の取得による支出26億3百万円、配当金の支払い15億38百万円等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
イ. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
前期比(%) |
|
医療用医薬品事業 |
36,057,220 |
21.8 |
コンシューマーヘルスケア事業 |
21,646,752 |
△4.4 |
報告セグメント計 |
57,703,972 |
10.4 |
その他 |
- |
- |
合計 |
57,703,972 |
10.4 |
(注) 金額は正味販売価格換算で表示しております。
ロ. 受注実績
当社グループは販売計画並びに生産計画に基づいて生産を行っており、受注生産は行っておりません。
ハ. 商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
前期比(%) |
|
医療用医薬品事業 |
558,738 |
3.3 |
コンシューマーヘルスケア事業 |
1,060,216 |
△20.1 |
報告セグメント計 |
1,618,954 |
△13.3 |
その他 |
- |
- |
合計 |
1,618,954 |
△13.3 |
(注) 金額は実際仕入額で表示しております。
ニ. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
金額(千円) |
前期比(%) |
|
医療用医薬品事業 |
37,006,163 |
23.6 |
コンシューマーヘルスケア事業 |
22,370,061 |
△1.2 |
報告セグメント計 |
59,376,224 |
12.9 |
その他 |
156,604 |
△0.3 |
合計 |
59,532,829 |
12.8 |
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご参照ください。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フローの分析)
「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(資金需要)
当社グループの運転資金需要の主なものは、原材料、仕入商品の購入などのほか、製造費用、販売費及び一般管理費などの営業費用です。研究開発費は、販売費及び一般管理費に計上されております。一方、設備投資をはじめとして有形・無形固定資産などへの投資資金需要が発生いたします。当社グループはこれらの資金需要に自己資金及び社債の発行、長・短期借入金にて対応しております。
当連結会計年度の設備投資資金につきましては、借入金主体の調達を実施しており、当連結会計年度末における借入金の残高は522億28百万円であります。また、当社グループでは取引銀行7行と当座貸越契約並びに貸出コミットメント契約を締結し、総枠で314億50百万円の極度枠(当連結会計年度末の未利用額は109億73百万円)を確保しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は115億79百万円であります。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、その計上額に影響する見積りや判断を用いなければなりませんが、当社は特に以下の重要な会計方針が見積りや判断の要素が高いものであると考えております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項 (追加情報)」をご参照ください。
(のれん等の減損)
当社グループはのれんその他の無形固定資産について定期的に減損の兆候の有無を評価し、減損が生じている
と判断される場合には、公正価値まで減損処理することとしております。この公正価値の見積りには、将来キャッシュ・フローや割引率等多くの見積りや前提を使用しておりますが、前提条件等の変化によって見積りが変更されることにより公正価値が下落し減損損失の計上が必要となる可能性があります。
(投資の減損)
当社グループは投資の公正価値が帳簿価額を下回り、かつ回復の見込があると認められる場合を除き、その帳簿価額を実現可能価額まで減損処理することとしております。将来の市況悪化または投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。
(退職給付費用)
当社グループは退職給付費用及び債務の計上にあたって、数理計算上で設定される割引率、期待運用収益率、昇給率、退職率等の基礎率を前提条件としております。この設定された基礎率と実際の結果との間に差異が生じた場合や設定された基礎率自体を変更する必要が生じた場合には、退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは繰延税金資産を計上するにあたって、将来の収益力に基づく課税所得及び将来加算一時差異の十分性等からその回収可能性について慎重に検討しております。
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