(業績等の概要)
(1)業績
当事業年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、ワクチン接種が進んだこと等により回復傾向に向かうことが期待されておりますが、他方で半導体不足やロシアのウクライナ侵攻による資源価格の高騰、さらには生活必需品の物価上昇等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような経済環境のもと、当社は、製品の製造販売承認申請とライセンスアウトを加速するため、後期臨床開発品に引き続き集中し、その開発を推進してまいりました。また、中長期的な戦略として、自社技術を核とした核酸医薬をはじめとする最先端となる次世代モダリティの取り込みなどM&Aや提携を推進し、創薬事業の拡大にも積極的に取り組んでまいりました。
なお、新型コロナウイルス感染症の当事業年度における業績への影響につきましては、当社は医薬品等の研究開発段階にあるため、軽微であったと判断しております。
(臨床パイプラインの進捗状況)
臨床パイプラインの進捗状況は下記のとおりです。
VB-111: プラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんを対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験(OVAL試験)において、当社が日本国内における臨床試験を担当し、2021年6月に投与開始、2021年12月に目標症例数である30例を達成いたしました。OVAL試験全体としては、2022年3月に目標症例数の登録が完了し、全世界で409例が登録されました。
VB-111はVascular Biogenics Ltd.(イスラエル)から国内の開発及び販売権に関するライセンスを取得した遺伝子治療製品です。OVAL試験は、早ければ2022年後半に無増悪生存期間(PFS)の結果取得が予定されています。なお、2022年4月、本製品は米国食品医薬品局(FDA)よりプラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんを対象としてファスト・トラック指定※を受けております。また、海外で大腸がん及び膠芽腫(こうがしゅ)を対象とした医師主導第Ⅱ相臨床試験も進められております。
ENT103: 国内における中耳炎を対象とした第Ⅲ相臨床試験は、2021年5月に目標症例数200例の症例登録が完了し、2021年9月に持続する膿性耳漏を有する中耳炎の臨床所見を有意に改善したことが確認され、主要評価項目を達成しました。本結果をもとに2022年4月、セオリアファーマ株式会社(以下「セオリアファーマ」といいます。)が外耳炎及び中耳炎を対象に製造販売承認申請を行いました。
ENT103はセオリアファーマと共同開発中の耳鼻咽喉科領域におけるパイプラインです。今後、薬事承認、薬価収載というステップを経て、2023年度前半の販売開始を見込んでおります。
NC-6004:頭頸部がんを対象に、免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を実施してまいりましたが、2022年4月、第Ⅱb相臨床試験の暫定的な解析において、主要評価項目(PFS)を達成する可能性が低いと推察されたため、本治験について継続しないことをOrient Europharma Co., Ltd.(以下、「OEP」といいます。)と合意いたしました。
NC-6004は、シスプラチンのミセル化ナノ粒子製剤です。ライセンス先であるOEPと共同で臨床開発を進めてまいりました。本製品の開発方針及び契約については、今後、OEPとの協議を進めてまいります。
NC-6300:2021年6月にファスト・トラック指定を受け、米国で軟部肉腫を対象に第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験実施中です。並行してライセンスアウトに向けた活動を行っております。
NC-6300は、エピルビシンのミセル化ナノ粒子製剤です。
※ファスト・トラック指定
米国における画期的な新薬について優先的に審査する、優先審査制度です。完治が難しい疾患に対して高い治療効果が期待される新薬を優先的に審査して早期実用化を促すことを目的とした制度です。
(核酸医薬の推進)
当社は新たなモダリティである核酸医薬につきましては、低分子医薬や抗体医薬では標的となり得なかった遺伝子からの転写因子であるRNAをターゲットとした新たな治療法の提供を可能とします。当社の核酸用新規DDS技術(YBCポリマー複合体及びポリプレックスミセル)は、核酸医薬の生体内での搬送上の課題を解決するとともに、従来のDDSの製造工程が複雑であるという課題を解決するもので、アカデミアとの共同研究や企業との協働により新規パイプラインの拡充を推進しております。
NC-6100:公益財団法人がん研究会有明病院において2020年9月より医師主導第Ⅰ相臨床試験を実施しております。本試験は治癒的切除不能又は遠隔転移を有する再発・進行HER2陰性乳がんを対象としております。
NC-6100は、慶応大学との共同開発プロジェクトによる転写因子PRDM14に対するsiRNA DDS製剤です。PRDM14は、乳がんの約50%で過剰発現し、その幹細胞性・可塑性に関与することが知られており、新規メカニズムの治療法創出を目指しております。
TUG1(ASO:アンチセンスオリゴ):脳腫瘍の中でも悪性度が高い膠芽腫を対象に非臨床試験及びCMC開発を推進しております。
TUG1 ASOは、長鎖非翻訳RNA TUG1に対するASO DDS製剤です。本プロジェクトは、国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学との共同研究であり、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的がん医療実用化研究事業に採択されております。
RUNX1(mRNA): 2021年4月にアクセリード株式会社と共同で株式会社PrimRNAを設立し、薬理試験及びCMC研究を実施しております。
RUNX1(mRNA)は、軟骨の増殖・分化に関わる転写因子RUNX1のmRNA医薬です。本プロジェクトは、AMEDの医療研究開発革新基盤創成事業に採択されております。
(化粧品事業その他の活動)
株式会社アルビオンが販売する美容液エクラフチュール及び薬用美白美容液エクシア ブライトニング イマキュレート セラム用の当社技術を応用した原材料を供給しております。同社とは共同開発製品であるスカルプトータルケア製品「Depth」事業も共同で推進しております。
また、治療法がない領域に新たな医療を届ける一環として、当社はPRP療法を用いた不妊治療を普及することで患者様のQOL(生活の質)向上のサポートをしております。
以上の結果、当事業年度は、開発マイルストーン収入、化粧品材料供給収入、PRP事業に係る医療機器売上等により売上高は264,032千円(前事業年度売上高313,264千円)、営業損失は2,061,088千円(前事業年度営業損失1,302,882千円)、経常損失は1,925,298千円(前事業年度経常損失1,278,764千円)、当期純損失は1,881,678千円(前事業年度当期純損失2,835,793千円)となりました。なお、当事業年度におきまして、以下の営業外収益、営業外費用及び特別利益を計上しております。
・研究開発に係る補助金収入65,000千円を営業外収益に計上しております。
・外国為替相場の変動による為替差益66,320千円を営業外収益に計上しております。これは主に、当社の保有する外貨建預金の評価替えにより発生したものであります。
・第19回新株予約権の発行に伴い、新株予約権発行費4,842千円を営業外費用に計上しております。
・第5回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行に伴い、社債発行費1,775千円を営業外費用に計上しております。
・第11回、第13回及び第18回新株予約権の権利行使期間満了のため、56,136千円を新株予約権戻入益として特別利益に計上しております。
・当社の保有する株式を売却したことにより、投資有価証券売却益4,798千円を特別利益に計上しております。
(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ794,754千円減少し1,097,044千円となりました。当事業年度のキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,752,992千円の支出(前事業年度は1,247,432千円の支出)となりました。研究開発の推進に伴う研究開発費の支出等による税引前当期純損失1,879,056千円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、244,133千円の支出(前事業年度は871,694千円の支出)となりました。定期預金の預入による支出2,654,962千円、定期預金の払戻による収入2,226,659千円、有価証券の取得による支出10,600,000千円、有価証券の償還による収入10,710,080千円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,145,835千円の収入(前事業年度は11,461千円の支出)となりました。転換社債型新株予約権付社債の発行による収入1,148,225千円等によるものです。
(生産、受注及び販売の状況)
(1)生産実績
当社は研究開発を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、生産実績の記載はしておりません。
(2)受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。
(3)販売実績
当事業年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
264,032 |
84.28 |
(注)1.主要な輸出先並びに輸出販売高及び割合は、次のとおりであります。
なお、( )内は総販売実績に対する輸出販売高の割合であります
輸出先 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
アジア |
150,845 |
100.0 |
100,336 |
100.0 |
合計 |
150,845 (48.2%) |
100.0 |
100,336 (38.0%) |
100.0 |
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
|
Orient Europharma Co., Ltd. |
150,845 |
48.2 |
100,336 |
38.0 |
株式会社アルビオン |
109,250 |
34.9 |
123,379 |
46.7 |
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)財政状態
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は6,304,085千円(前事業年度末は6,902,163千円)となり、598,078千円減少しました。これは主に、当期純損失の計上に伴う現金及び預金の減少によるものです。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は832,162千円(前事業年度末は918,805千円)となり、86,643千円減少しました。これは主に、当社が保有する株式の売却に伴う投資有価証券の減少によるものです。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債の残高は361,274千円(前事業年度末は265,374千円)となり、95,900千円増加しました。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債の残高は1,208,099千円(前事業年度末は55,622千円)となり、1,152,477千円増加しました。これは主に第5回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行によるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は5,566,873千円(前事業年度末は7,499,972千円)となり、1,933,098千円減少しました。これは主に、当期純損失の計上及び新株予約権の行使期間満了に伴う減少によるものです。
(2)経営成績
当事業年度における経営成績については、「(業績等の概要) (1)業績」をご参照ください。
(3)キャッシュ・フロー
当社は現在、主たる定例的な営業収益がありませんので、研究開発の推進に伴う研究開発費の支出を、主に株式の発行による収入で賄っております。当事業年度末日現在の資金残高は1,097,044千円ですが、一時的な余剰資金については預金又は元本維持を原則とした安全かつ流動性の高い金融商品等に限定して運用しており、それら預金や金融商品まで合わせますと5,945,000千円となります。
一方支出側としましては、当事業年度の経常損失は1,925,298千円、進行期であります第27期の予想経常損失が1,463百万円でありますので、当面の研究開発資金の確保、また事業の進捗によるライセンスインやM&A等の支出にも対応できる資金の確保までできていると判断しております。
なお、新型コロナウイルス感染症に関しましては、以上のとおり当面の資金の確保ができておりますので、現時点において当社キャッシュ・フローへの影響は軽微と考えております。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。また、会計上の見積りにおける新型コロナウイルス感染症の拡大による影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。
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