業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営成績

当事業年度において、当社独自の創薬開発プラットフォームシステムであるPDPSを活用した3つの事業戦略:①創薬共同研究開発契約、②PDPS技術ライセンス、③戦略的提携/自社創薬の拡充を進めてまいりました。

1つ目の事業戦略であるPDPSを活用した国内外の製薬企業との創薬共同研究開発契約については、2021年2月17日に、当社はBayer社との間で進行中の創薬共同研究開発プログラムにおいて、2つ目のプログラムがヒットペプチドとして設定されていたクライテリア(共同研究開発先と合意している生物活性及び物性等の基準の総称)を達成したことを発表いたしました。

2021年4月5日に、当社はBayer社との間で進行中の創薬共同研究開発プログラムにおいて、1つ目のプログラムがリードペプチドとして設定されていたクライテリアを達成したことを発表いたしました。

2021年7月27日に、当社は武田薬品工業株式会社の米国子会社である武田ファーマシューティカルズUSA社との間で、両社の共同研究及び独占的ライセンス契約の枠組みを拡大し、慢性神経変性疾患において重要な役割を担う複数の中枢神経系(CNS)ターゲットについてペプチド-薬物複合体(PDC医薬品)の創製に向けた取組みを進めることを発表いたしました。

2021年7月30日に、当社はAlnylam Pharmaceuticals社(以下 Alnylam社)と、肝臓以外の組織へRNAi治療薬をデリバリーする複数のペプチド-siRNA複合体の創製・開発に関する共同研究開発契約を締結いたしました。当社とAlnylam社は低分子干渉RNA(small interfering RNA、siRNA)を様々な細胞や組織に選択的にデリバリーするため、ターゲットとなる細胞表面の受容体に特異的に結合するペプチドの同定及び最適化を共同で実施いたします。

2つ目の事業戦略であるPDPSの技術ライセンスについては、2021年12月31日現在、10社;Bristol-Myers Squibb社(2013年)、Novartis社(2015年)、Ely Lilly社(2016年)、Genentech社(2016年)、塩野義製薬株式会社(2017年)、Merck社(2018年)、ミラバイオロジクス株式会社(2018年)、大鵬薬品工業株式会社(2020年)、Janssen社(2020年)、小野薬品工業株式会社(2021年)との間で非独占的なライセンス許諾契約を締結しております。

2021年3月1日に、当社は小野薬品工業株式会社(以下 小野薬品)との間で、PDPSの自動化プラットフォームを用いた運用に関して、小野薬品に対する非独占的ライセンス許諾契約(以下 技術ライセンス契約)を締結いたしました。小野薬品はPDPSの技術ライセンス契約としては10社目となりますが、PDPSの自動化プラットフォームを用いた運用に特化した技術ライセンス契約としては2社目となります。

2021年9月29日に、Janssen社よりマイルストーンフィーを受領しました。Janssen社とは、2020年12月にPDPSの非独占的ライセンス・技術移転許諾契約を締結しております。

3つ目の事業戦略は、世界中の高い技術力を有する創薬企業・バイオベンチャー企業及びアカデミア等の研究機関と戦略的提携を組むことで、自社の医薬品候補化合物(パイプライン)の拡充を図ることが狙いです。当社はこれまで11社(JCRファーマ株式会社、モジュラス株式会社、Sosei Heptares、Biohaven Pharmaceuticals社、日本メジフィジックス株式会社、ポーラ化成工業株式会社、JSR株式会社、三菱商事株式会社(ペプチグロース株式会社)、RayzeBio社、ペプチエイド株式会社、Amolyt Pharma社)及び川崎医科大学、ビル&メリンダ・ゲイツ財団との戦略的提携を発表しております。

三菱商事株式会社とは、2021年7月29日に、ペプチグロースからの第一号製品として、HGFと同等レベルの受容体に対する活性と細胞増殖の特性を示すHGF代替ペプチド(PG-001)の販売を開始いたしました。また、2021年11月より第二号製品としてTGFβ1阻害ペプチド(PG-002)の販売を開始いたしました。ペプチグロースは、同時並行で複数の代替ペプチドの開発を進めており、2022年12月期第1四半期にはPG-003の販売開始を予定しております。

RayzeBio社とは、2021年6月10日に複数のプログラムが進捗し医薬品候補化合物が選定されたことに伴って2回目のマイルストーンフィーを当社が受領したことを発表いたしました。2022年12月期第2四半期には、最初の臨床候補化合物について発表できるものと考えております。

ペプチエイド株式会社(以下 ペプチエイド)は、2021年11月に新型コロナウイルス感染症治療薬の開発候補品であるPA-001)に関する非臨床試験を完了させ、2022年2月より、臨床研究法に基づく早期探索的臨床研究を開始いたしました。当社とペプチエイドは、PA-001に関心をもつ製薬企業との間でパートナリングや導出の可能性を積極的に協議しております。

Amolyt Pharma社(以下 Amolyt社)とは、2021年9月9日に、Amolyt社が成長ホルモン受容体拮抗薬(GHRA)候補ペプチド化合物に関するライセンスオプションを行使し、当社は、Amolyt社に対して全世界を対象とする開発・商業化の権利をライセンスいたしました。最適化に成功した先端巨大症に対する治療薬候補化合物(AZP-3813)は、既存薬であるソマトスタチンアナログによる治療で十分な効果が得られない患者さんに対して、同剤との併用を想定した開発が実施されます。Amolyt社は、IND準備試験を開始しており、2022年中の臨床入りを目標にしています。

以上の結果、当事業年度における売上高は9,365,964千円(前年同期比2,311,289千円減少)、営業利益4,418,143千円(前年同期比2,573,180千円減少)、経常利益4,774,477千円(前年同期比2,201,799千円減少)、当期純利益3,606,407千円(前年同期比841,949千円減少)となりました。

当事業年度の業績は、2021年2月10日に公表した業績予想に対して、当事業年度中に見込んでおりました新たな創薬共同研究開発契約の締結時期がずれ込んだこと等により、売上高、営業利益、経常利益については期初予想の達成に至りませんでした。一方、当期純利益につきましては、各種コスト削減等の積み重ねにより、期初の業績予想通りの結果となりました。

なお、当社の事業は単一のセグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当社は生産を行っておりませんので、記載を省略しております。

② 受注実績

当社のアライアンス事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。

③ 販売実績

当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。 

セグメントの名称

当事業年度

(自  2021年1月1日

至  2021年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

アライアンス事業

9,365,964

△19.8

合計

9,365,964

△19.8

 

(注) 1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

(自  2020年1月1日

至  2020年12月31日)

販売高

(千円)

割合

(%)

甲社

2,609,425

22.4

乙社

2,556,800

21.9

丙社

1,525,311

13.1

丁社

1,393,636

11.9

 

 

相手先

当事業年度

(自  2021年1月1日

至  2021年12月31日)

販売高

(千円)

割合

(%)

イ社

1,961,715

21.0

ロ社

1,431,245

15.3

ハ社

1,119,885

12.0

 

 (注)当社顧客との共同研究開発契約においては秘密保持条項が存在するため、社名の公表は控えさせて頂きます。

 

(2) 財政状態

当事業年度末における総資産は前事業年度末に比べ、352,439千円増加し、26,619,168千円となりました。この主な要因は、売掛金が4,844,642千円減少したものの、現金及び預金が4,597,171千円、関係会社株式が943,265千円等増加したことによるものであります。

負債は前事業年度末に比べ、3,429,151千円減少し、1,620,573千円となりました。この主な要因は、未払金1,581,632千円、未払法人税等1,666,804千円等減少したことによるものであります。

純資産は前事業年度末に比べ、3,781,590千円増加し、24,998,595千円となりました。この主な要因は、当期純利益による利益剰余金が3,606,407千円等増加したことによるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ4,597,171千円増加し、11,746,529千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払額2,391,619千円等があったものの、税引前当期純利益の計上4,823,652千円、売上債権の減少額4,844,642千円等により、6,654,708千円の収入(前年同期比4,921,974千円の収入増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社株式の取得による支出943,265千円、有形固定資産の取得による支出1,185,973千円等により、2,283,450千円の支出(前年同期比1,083,424千円の支出増加)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、新株予約権の行使による株式の発行による収入44,940千円、新株予約権の発行による収入21,490千円等により、66,067千円の収入(前年同期は237,244千円の支出)となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性

財務政策につきましては、当社の事業活動の維持拡大に必要な資金は、手許資金で賄っております。

主な資金需要につきましては、運転資金として製造原価、研究開発費を含む販売費及び一般管理費等があります。また、設備資金として、研究開発のための設備投資等があります。

有価証券報告書提出日現在において支出が予定されている重要な資本的支出はありません。

 

(5) 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 2財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

投資有価証券の減損処理

投資有価証券の評価方法については、時価のある有価証券については時価法を、時価のない有価証券については原価法を採用しています。保有する有価証券につき、時価のあるものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、時価のないものは投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損処理を行っています。

この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。

 

② 繰延税金資産の回収可能性の評価

繰延税金資産については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しています。しかし、繰延税金資産の回収可能見込額に変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により利益が変動する可能性があります。

 

なお、新型コロナウイルス感染症による当社への影響は、収束時期の見通しが不透明な状況であり、事業によってその影響や程度が異なるものの、提出日現在においては、当事業年度末の見積りに大きな影響を与えるものではないと想定しております。

今後の新型コロナウイルス感染症の広がりに伴う経済活動への影響等には不確定要素も多いため、想定に変化が生じた場合、当社の財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおりであります。

当事業年度においては、売上高11,000,000千円以上、営業利益5,000,000千円以上、売上高営業利益率45.5%以上を目標としておりましたが、売上高9,365,964千円、営業利益4,418,143千円、売上高営業利益率47.2%となり、売上高営業利益率は目標を上回る結果となったものの、売上高及び営業利益は目標を下回る結果となりました。引き続きこれらの指標について、向上できるよう努めてまいります。

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