5 【研究開発活動】
当社の研究開発は、当社独自のPDPSを活用することによる自社創薬及び世界中の特別な技術を有する創薬企業、バイオベンチャー企業、アカデミア等と戦略的な提携を組むことで、自社のパイプライン拡充を図っております。
2018年以降、PDPSのヒット化合物の最適化やプロファイリング(*25)の機能を拡充し、自社においてヒット化合物の創出から前臨床試験の実施までを行える体制を整えてまいりました。
*25:医薬品候補化合物の薬効や毒性などの性質を細胞や動物を用いて確認すること
2021年10月、Biohaven Pharmaceuticals社と共同研究開発を行っている「BHV-1100(ARM)+ 自家NK細胞」が第1a/1b相臨床試験の最初の被検者への投与及び被験者登録を完了いたしました。この臨床試験では、造血幹細胞移植前に測定可能残存病変(MRD)が陽性である多発性骨髄腫の被検者において、安全性、忍容性、探索的有効性に関する評価を実施しております。これは、当社の戦略的提携による自社パイプラインにおける最初の臨床試験入りとなりました。
また、当社関連会社であるペプチエイド株式会社で新型コロナウイルス感染症に対する治療薬候補として研究開発を進めているPA-001に関して、2021年11月に非臨床試験を完了し、2022年2月より臨床研究法に基づく早期探索的臨床研究(以下、「臨床研究」)が実施されております。
自社創薬においては、PDC関連プログラムの拡大についても注力しております。2016年2月よりJCRファーマ株式会社と開始した共同研究において見出した、血液脳関門(BBB)を通過し脳組織及び筋肉組織へ医薬品候補化合物を届けることを可能とするトランスフェリン受容体(TfR)結合ペプチド(キャリアペプチド)について、武田薬品工業株式会社(以下 武田薬品)と2020年12月に神経筋疾患領域における包括的な共同研究及び独占的ライセンス契約したことに続き、2021年7月に中枢神経系(CNS)疾患における複数のターゲットに対する共同研究及び独占的ライセンスを実施いたしました。
自社パイプラインについての2021年の主な進捗は下表のとおりです。
ターゲット/
作用機序
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適応症
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モダリティ
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主な進捗
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CD38
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多発性骨髄腫
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PDC
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・Biohaven社との戦略的提携プログラム
・2021/10より自家NK細胞との同時投与による第1a/1b相臨床試験を開始
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S2 Protein antagonist
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COVID-19
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Peptide
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・当社関連会社であるペプチエイドによる自社プログラム
・2022/1より安全性・薬物動態の検討を目的とした健常男性を対象とする臨床研究を開始
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HA Protein antagonist
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インフルエンザ
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Peptide
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・自社プログラム
・ライセンス活動と並行して予防的処方や、パンデミック対応(備蓄薬)としての活用が可能な次世代型PD-001の開発を遂行中
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GhR antagonist
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先端巨大症
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Peptide
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・Amolyt社との戦略的提携プログラム
・2021/9に当社からAmolyt社にライセンス、2022年中の臨床試験入りを目指す
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Myostatin antagonist
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デュシェンヌ型筋ジストロフィー
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Peptide
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・川崎医科大学との共同研究を実施する自社プログラム
・2023年の臨床試験入りを目指し、臨床入りに向けた試験段階に移行
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TfR binder
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中枢神経系疾患
神経筋疾患
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PDC
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・2021/7に武田薬品工業とCNS疾患における複数のターゲットに対する提携を実施、その他パートナー候補との交渉を継続中
・2020/12に武田薬品工業と包括的な提携を実施
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PAR2 antagonist
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炎症性腸疾患
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Peptide
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・Sosei Heptaresとの戦略的提携プログラム
・2021/5に経口投与に適した新規ペプチドの創製に成功、炎症性腸疾患等の消化器疾患における炎症・疼痛に対する経口治療薬として前臨床試験を進める
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c-Kit antagonist
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アレルギー性疾患
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低分子
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・モジュラス社との戦略的提携プログラム
・キナーゼに対する選択的低分子阻害剤を当社のPDPS技術で得られたヒットペプチドの活用により開発
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IL17
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自己免疫疾患
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Peptide
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・自社プログラム
・他のサイトカイン阻害ペプチドと結合させ、バイスペシフィック/マルチスペシフィック(*26)ペプチドの開発を目指す
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c-Met agonist
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急性脊髄損傷他
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Peptide
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・自社プログラム
・医薬品用途の権利をライセンス済(提携先非公表)
・再生医療・細胞医薬品を生産する際の成長因子の代替としての商品開発を当社と三菱商事の合弁会社であるペプチグロースが実施
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TGFb antagonist
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がん他
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Peptide
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・自社プログラム
・再生医療・細胞医薬品を生産する際の成長因子の代替としての商品開発を当社と三菱商事の合弁会社であるペプチグロースが実施
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*26:機能を有するペプチドの複数の組み合わせ
こうした活動の結果、当事業年度における研究開発費は1,638,591千円、売上高研究開発費比率は17.5%となりました。