研究開発活動

5【研究開発活動】

当連結会計年度においては、体性幹細胞再生医薬品、iPSC再生医薬品の各分野において、以下のとおり研究開発を推進いたしました。

当連結会計年度における研究開発費の総額は、3,700百万円(前連結会計年度は2,986百万円)であります。

 

(1)体性幹細胞再生医薬品分野

当連結会計年度において、体性幹細胞再生医薬品を用いて、日本国内における脳梗塞急性期及びARDSに対する治療薬(開発コード:HLCM051)の開発を進めました。

<炎症>

脳梗塞急性期に対する治療薬の開発においては、有効性及び安全性を検討するプラセボ対照二重盲検第Ⅱ/Ⅲ相試験(治験名称:TREASURE試験)を実施しており、全国40施設強の医療機関で臨床試験を進め、2021年8月に患者組み入れを完了いたしました。今後は、治験登録患者の経過観察期間を経てデータ解析・評価を行う予定です。

ARDSに対する治療薬の開発においては、肺炎を原因疾患としたARDS患者を対象に、有効性及び安全性を検討する第Ⅱ相試験(治験名称:ONE-BRIDGE試験)を全国20施設強の医療機関で実施し、2021年3月に患者組み入れを完了いたしました。2021年8月と11月に、ONE-BRIDGE試験におけるHLCM051投与後90日と180日の評価項目のデータの一部を発表し、有効性並びに安全性について良好な結果が示されました。なお、ARDSを対象としたHLCM051は、2019年11月に希少疾病用再生医療等製品として指定されております。

当連結会計年度においても、依然新型コロナウイルス感染症の影響が上記治験実施施設においてもみられ、治験の進行スケジュールに影響が生じました。引き続き治験実施施設との連携を図りながら、できるだけ早い段階での治験完了および承認申請に向け継続して取り組んでまいります。

2020年4月に、ONE-BRIDGE試験内に新型コロナウイルス由来の肺炎を原因疾患とするARDS患者を対象に安全性の検討を行う評価対象群を追加しておりましたが、2020年8月に患者組み入れを完了しております。

 

(2)iPSC再生医薬品分野

当連結会計年度において、がん免疫療法、細胞置換療法に関する研究開発を進めました。

当社では、iPSCプラットフォームとして、遺伝子編集技術を用いた、HLA型に関わりなく免疫拒絶のリスクを低減する次世代iPS細胞、UDCに関する研究を進めております。患者の免疫細胞に認識されにくいiPS細胞を作製する事で拒絶反応を抑制し、有効性と安全性を高めた再生医療等製品を開発するための次世代技術プラットフォームの確立を目指しております。現在、UDCの臨床株およびマスターセルバンクが完成し、様々な細胞に分化できる能力を有することの確認など具体的な臨床応用に向けた研究を進めております。

<がん免疫>

eNK細胞を用いて、固形がんを対象にしたがん免疫療法の研究を進めております。これまで当社グループが培ってきたiPS細胞を取り扱う技術と遺伝子編集技術を用いることで、殺傷能力を高めたeNK細胞の作製に成功しており、更に大量かつ安定的に作製する製造工程も開発するなど、次世代がん免疫療法を創出すべく自社研究を進めております。2021年5月、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構が新設する細胞加工製造用施設(Cell Processing Center: 以下、CPCと言います。)に、当社向けCPCを整備することを決定し、稼働に向けた準備を進めています。2021年11月には、国立がん研究センターとの共同研究の成果として複数種類のがん腫に由来するJ-PDX(Patient-Derived Xenograft:患者腫瘍 組織移植片)サンプルにおいて、eNK細胞が認識する特定の分子候補の発現をRNAシーケンシングと免疫染色で確認しています。

また、自社研究の成果として、eNK細胞(開発コード:HLCN061)が肺がん細胞生着マウスモデルに対して抗腫瘍効果を有することを確認しております。さらに、広島大学大学院と、HLCN061を用いた肝細胞がんに対するがん免疫細胞療法に関する共同研究契約を締結いたしました。今後、HLCN061の肝細胞がんに対する抗腫瘍効果を評価いたします。

<細胞置換>

眼科領域において、iPS細胞由来網膜色素上皮(RPE)細胞(開発コード:HLCR011)を用いた治療法開発に向けて治験への準備を進めてまいりました。2019年6月、大日本住友製薬株式会社との共同開発体制の変更を決定し、現在は同社が主体となって治験の準備が進められています。

肝疾患領域において、機能的なヒト臓器をつくり出す3次元臓器(開発コード:HLCL041)を用いた治療法開発に向けて、横浜市立大学と肝臓原基の製造に関する共同研究を進めております。肝臓原基は、肝細胞に分化する前の肝前駆細胞を、細胞同士をつなぐ働きを持つ間葉系幹細胞と、血管をつくりだす血管内皮細胞に混合して培養することで形成されますが、これらの構成細胞及び形成された肝臓原基の機能評価や品質規格に関してデータ取得を進めたほか、大量培養法、細胞凍結法、移植法の開発を進めております。

 

なお、当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 

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