(1)経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当社グループは、眼科領域に特化しグローバルに医療用医薬品、医療機器の研究開発を行う眼科医療ソリューション・カンパニーです。
当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染の更なる拡大等により、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような市場環境のもと、当社グループは以下のとおり研究開発を進めました。
[低分子化合物]
エミクススタト塩酸塩については、スターガルト病を対象とする第3相臨床試験を2018年11月に開始し、現在も世界11カ国、29施設において継続して実施しております。当該臨床試験は、被験者をランダムに10mgのエミクススタト投与群とプラセボ群に2対1で割り当て、1日1回の経口投与にて24ヶ月間実施するもので、主要評価項目には、若年性黄斑変性スターガルト病患者における黄斑部の萎縮の進行を抑制する効果の検証、副次的評価項目には、最良矯正視力のスコアや読速度などの視機能の変化が含まれます。
当社グループは、被験者登録数の目標を当初162名と設定しておりましたが、新型コロナウイルス感染拡大等の影響を踏まえ、被験者登録数を194名に積み増しました。最後の被験者登録は2020年4月(アメリカ時間)に完了しており、順調に進めば2022年後半にデータベースのロックが完了する見通しです。
当該第3相臨床試験は、2020年8月にFDA(米国食品医薬品局)によりOrphan Products Clinical Trials Grants Programの助成プログラムに選定されており、3年間で総額最大163万ドル(約1.9億円)の助成金を受給する見込みです。初年度となる前連結会計年度は合計57百万円をその他の営業収益に計上し、当連結会計年度も同様に合計60百万円をその他の営業収益に計上しました。
なお、エミクススタト塩酸塩は、スターガルト病の新規治療薬候補として、2017年1月にFDA、2019年6月にEMA(欧州医薬品庁)よりオーファンドラッグ指定を受けています。
エミクススタト塩酸塩は、スターガルト病の他にも増殖糖尿病網膜症を対象とする第2相臨床試験を2017年度に実施しております。当該臨床試験の解析の結果、エミクススタト塩酸塩が黄斑浮腫を改善する可能性が示唆されましたが、第3相臨床試験は規模も大きく、多額の研究開発資金が必要になると見込まれることから、当社グループ単独で進めることは難しいと考え、パートナー企業との共同開発の可能性を模索しております。
[医療機器]
在宅で網膜の状態の測定を可能にする遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS(Patient Based Ophthalmology Suite)」については、2020年7月の初期型試作機の完成以降も更なる機能改善のため、AI(人工知能)を活用した3D生成機能などのソフトウェア改良を行いつつ、パートナー企業との共同開発、商業化の可能性を模索しております。
また、当社グループは有人火星探査に携行可能な超小型眼科診断装置の開発をNASA(米国航空宇宙局)と共同で進め、2020年4月に同プロジェクトのフェーズ1が完了しました。本プロジェクトのフェーズ2の詳細につきましては協議を続けておりますが、開始時期は未定です。
当社独自のアクティブスティミュレーション技術を活用した、近視の進行抑制、治療を目指すウェアラブル近視デバイス「クボタメガネ」については、2020年に卓上デバイス及びウェアラブルデバイスでの概念実証試験において、眼軸長(角膜から網膜までの長さ)が対照眼と比較して短縮することを確認し、2020年12月には初期型プロトタイプが完成しました。当連結会計年度には、台湾における医療機器の製造許可取得に続き、2021年10月には医療機器のデザイン・開発会社として「ISO 13485:2016」の認証取得を発表しました。現在も、台湾支店の設立など、商業化へ向けた製品開発や製造販売の準備を進めるとともに、より多くのエビデンスを得るための臨床試験等を継続しております。
[遺伝子治療]
遺伝子治療については、これまで遺伝性網膜疾患である網膜色素変性を対象に前臨床研究を継続してきましたが、当プログラムへの今後の投資を保留することで現金支出を抑制し、経営資源を開発後期にある他のプロジェクトに重点的に配分する方針としております。
a.経営成績
(研究開発費)
当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度と比較して68百万円増加(前年度比3.4%)し、2,041百万円となりました。これは、被験者登録が完了したエミクススタト塩酸塩の研究開発費及び遠隔眼科医療モニタリングデバイス「PBOS」の開発費用が減少した一方で、ウェアラブル近視デバイスの開発費用が増加したことが主な要因です。
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(単位:%を除き、千円) |
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2020年12月期 |
2021年12月期 |
増減額 |
増減率(%) |
研究開発費 |
1,972,837 |
2,040,674 |
67,838 |
3.4 |
(一般管理費)
当連結会計年度の一般管理費は、前連結会計年度と比較して2百万円減少(前年度比△0.4%)し、604百万円となりました。これは各プロジェクトの進展に伴い、特許関連費用及び事業開発関連費用が増加した一方で、経費削減施策の影響によりその他の一般管理費が減少したことが主な要因です。
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(単位:%を除き、千円) |
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2020年12月期 |
2021年12月期 |
増減額 |
増減率(%) |
一般管理費 |
606,272 |
603,905 |
△2,367 |
△0.4 |
b.財政状態
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末と比べて1,792百万円減少し、4,625百万円となりました。これは、その他の金融資産が満期を迎え減少したことが主な要因です。
(非流動資産)
当連結会計年度末の非流動資産は、前連結会計年度末と比べて68百万円減少し、207百万円となりました。これは、その他の金融資産が減少したことが主な要因です。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末と比べて36百万円増加し、542百万円となりました。これは、リース負債が減少したものの、一方で未払債務が増加したことが主な要因です。
(非流動負債)
当連結会計年度末の非流動負債は、前連結会計年度末と比べて55百万円減少し、137百万円となりました。これは、リース負債が減少したことが主な要因です。
(資本)
当連結会計年度末の資本は、前連結会計年度末と比べて1,840百万円減少し、4,153百万円となりました。これは、当期損失の計上により繰越損失(利益剰余金のマイナス)が拡大したことが主な要因です。
② キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物は、取得日後3ヶ月以内に満期が到来する短期の流動性の高いすべての投資を含み、現金同等物はマネー・マーケット・ファンドで構成されております。取得日現在の満期が3ヶ月から1年の間である投資は、短期投資に分類されます。短期投資は社債、コマーシャル・ペーパー、米国政府機関債及び譲渡性預金から構成されております。
当社グループが保有する現金、現金同等物及び短期・長期の金融商品は、前連結会計年度末及び当連結会計年度末において、それぞれ6,339百万円及び4,416百万円でありました。第三者金融機関への預金額は、連邦預金保険公社及び証券投資家保護公社の適用ある保証上限を超える可能性があります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度及び当連結会計年度における営業活動に使用した現金及び現金同等物(以下、資金)は、それぞれ2,249百万円及び2,514百万円となりました。使用した資金が265百万円増加した主な要因は、前連結会計年度に比べ、当連結会計年度は研究開発費用の支払いに使用した資金が増加したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度及び当連結会計年度における投資活動により得られた資金は、それぞれ340百万円及び3,563百万円となりました。得られた資金が3,222百万円増加した主な要因は、満期を迎えた金融資産の再投資を抑制したことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
前連結会計年度及び当連結会計年度における財務活動により得られた資金は、それぞれ454百万円及び171百万円となりました。得られた資金が282百万円減少した主な要因は、前連結会計年度に比べ、当連結会計年度は新株予約権の権利行使に伴う普通株式の発行による収入が少なかったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、生産活動を行っていないため、該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループは、受注活動を行っていないため、該当事項はありません。
c.販売実績
当社グループは、医療用医薬品・医療機器事業及びこれらに関連する事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。なお、当連結会計年度において、事業収益の計上はありません。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
前年同期比(%) |
医療用医薬品・医療機器事業及びこれらに関連する事業(百万円) |
- |
- |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
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金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
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TRISH(Translational Research Institute for Space and Health: NASA関連の資金供与を行うコンソーシアム) |
38 |
100.0 |
- |
- |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSを適用しております。重要な会計方針、重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断については、本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況」に記載のとおりであります。
当社経営陣は連結財務諸表及び添付の注記で報告された数値に影響を与える見積り及び仮定を行わなければなりません。実際の結果はこれらの見積りと相違する場合があります。
② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
また、経営成績に重要な影響を与える要因については、本報告書「第一部 企業情報 第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)パイプライン」をご参照ください。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要は、研究開発投資が中心となります。当社グループでは流動資産が流動負債を大きく上回っており、資金の源泉については内部資金の充当を基本と致しますが、市場環境を考慮して株式市場からも機動的に資金調達するとともに、パートナー企業との提携を通じた資金確保も検討し、財務の健全性や安全性の確保を目指してまいります。
当連結会計年度末の流動資産が4,625百万円(うち、現金及び現金同等物は3,977百万円、その他の金融資産は439百万円)がある一方で、流動負債は542百万円であり、本報告書提出日時点において必要な流動性は十分に満たしていると認識しています。
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