文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
当社は、“「がん」だけを見ることなく、「がん患者」の全体を診ることにより、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供すること”を企業理念としております。
この企業理念の実現のため、当社は、独自の「モジュール創薬」に基づく、抗がん剤の研究開発を行います。モジュール創薬は、既存の抗がん剤等を「モジュール」(構成単位)として利用し、創意工夫(用法用量・結合様式等)を加えて「アセンブリ」(組み立て)することで臨床上の有効性と安全性のバランスを向上させた新規抗がん剤を創製する方法です。
当社は、「モジュール創薬」に基づき創製した新規抗がん剤の上市により、がん患者のQOL(Quality Of Life)向上に寄与することを目指しております。
当社は、新規抗がん剤の上市を目指して研究開発を先行して行う創薬ベンチャー企業であり、現時点における主な収入はライセンス契約締結による契約一時金やマイルストーンによるものであり、製品売上により利益を安定的に計上するステージにはありません。
当面の経営管理上の課題は、抗がん剤の早期上市に向けて、開発パイプラインを計画通り推進すること、新規開発化合物の探索により開発パイプラインを充実すること、そして保有する各パイプラインについて提携パートナーを開拓してライセンス契約を締結することです。
従いまして、当社は、ROAやROEといった経営指標を目標とはせず、開発パイプラインの進捗に応じた収入に目標をおいて事業活動を推進しております。
当社の中長期における最重要課題は、新規抗がん剤の研究開発を着実に推進すると共に、提携パートナーを開拓してライセンス契約を締結し、承認を取得して製品販売による安定的な収益源を確保することです。
当社の開発パイプラインは、DFP-10917、DFP-14323、DFP-17729及びDFP-14927が臨床試験段階にあり、また、DFP-11207は臨床第2相試験に向けた準備を進め、DFP-10825も臨床試験に向けた準備を進めておりますので、日本国内やアジア、欧米などの各地域での提携パートナーとライセンス契約を締結し、それぞれの地域において承認を取得していく予定です。新型コロナウイルス感染症により、日米で進行及び計画中の臨床試験に影響が及ぶ場合は、日米における治験施設の拡大に加えて、アジア及び欧州での臨床試験を検討して対応してまいります。また、開発パイプラインの充実に向けた探索研究も継続的に実施してまいります。創薬ベンチャーである当社にとっては、これらの研究開発を並行して行っていくために、研究開発体制の強化と研究開発資金の調達が不可欠であります。
従いまして、当社は、日本の提携先に留まらず、グローバルの製薬会社等とのライセンス契約締結による契約一時金及びマイルストーンによる収入とともに、必要に応じて、株式市場等からの資金調達を行いながら、研究開発を推進していく方針です。
当社は、「モジュール創薬」により、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供することを目指しています。このような背景の下で、当社は、次の対処すべき課題に取り組んでまいります。
再発・難治性急性骨髄性白血病治療剤のDFP-10917は、米国における臨床第3相試験の症例登録を進めました。ほとんどの医療機関で新型コロナウイルス感染拡大による影響がでていますが、治験対象範囲の拡大や治験参加施設の拡大などの対応をし、症例登録への影響を少なくする対策などで臨床試験を継続しています。また、日本における独占的開発及び販売のライセンス契約を締結している日本新薬㈱に対しては、国内での臨床第1相試験が円滑に進むように、継続して支援してまいります。なお、日本以外のテリトリーについては、米欧並びにアジアの提携パートナーと協議を進めており、再発・難治性急性骨髄性白血病の治療においてグローバル展開を目指してまいります。
がん免疫機能調整剤のDFP-14323は、日本国内における臨床第2相試験の症例登録を完了し、無増悪生存期間や全生存期間を明らかにするための経過観察を終了しました。この臨床試験データに基づいて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への医薬品申請前相談の準備と臨床第3相試験(大規模比較試験)の計画を進めるとともに、日本における独占的販売のライセンス契約を締結している日本ケミファ㈱やこのデータに高い関心を示している海外の製薬企業の協力とともに、臨床第3相試験の加速を目指してまいります。
がん微小環境改善剤のDFP-17729は、国内における臨床第1/2相試験を開始し、第2相試験部分の症例登録の完了まで進めました。臨床第2相試験部分を早急に実施し、その結果に基づいて効果と安全性を評価し、日本における独占的販売のライセンス契約を締結している日本ケミファ㈱からの協力を得て、臨床第3相試験への移行や、医薬品医療機器総合機構(PMDA)への承認申請などの可能性についても検討してまいります。
当社は、DFP-11207、DFP-14927及びDFP-10825などの複数の開発品を保有しています。
がん細胞代謝調節剤のDFP-11207については、日本での臨床第2相試験の実施に向けて検討を開始しており、日米欧並びにアジアにおける提携パートナーの確保を目指してまいります。
抗がん剤高分子デリバリーのDFP-14927については、米国において臨床第1相試験を進め、推奨投与量を確定した後、前期第2相試験に相当する拡大試験に移行させてまいります。
核酸医薬デリバリーのDFP-10825については、臨床第1相試験の開始に向けた治験薬の準備及び前臨床試験を進め、国内外の会社から支援を受けながら、更に開発を進めてまいります。
これら複数の開発品を世界の主要国において承認を取得するためには、臨床試験を実施するための開発体制の強化と開発資金の確保が課題となります。このため、当社は提携パートナーの獲得を目指しながら、公募増資や新株予約権の行使で調達した資金を計画的に投入して開発の推進を図ってまいります。
当社は、「モジュール創薬」により新しい抗がん剤候補化合物の探索研究を行っており、これらの候補化合物を開発パイプラインに載せられる段階まで推進するためには、開発資金の確保が課題となります。
当社は、多額の研究開発費用が先行して必要となるため、継続的な営業損失が発生するとともに営業キャッシュ・フローもマイナスとなる傾向があり、そのため、財務体質の強化が課題となります。今後は、ライセンス契約の締結を始めとした国内外のパートナーとの提携、研究開発活動の適切なコントロールに加え、株式市場や金融機関からの資金調達等により、更なる財務体質の強化に努める方針です。
当社は、研究開発のマネジメント業務に特化し、外部の人材紹介企業を有効活用することにより、小規模な組織で効率的な運営を行っております。しかしながら、上記の通り、今後開発品の増加が見込まれるため、適切な人材確保を図っていく方針です。
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