当社の企業理念は、“「がん」だけを見ることなく、「がん患者」の全体を診ることにより、安心して家族のがん患者に勧められる治療法を提供すること”です。
一般的な医薬品の研究開発プロセスには、新しい開発化合物を探索する「基礎研究」、実験動物等を用い開発化合物の有効性及び安全性を確認する「前臨床試験」、患者への投与により有効性及び安全性を確認する「臨床試験」の段階があります。また、開発の進捗にあわせた製造規模と品質確保のため、原薬・製剤にかかる製造法開発も随時行う必要があります。医薬品の販売承認を取得するには、これらの品質、有効性及び安全性にかかる膨大な試験データに基づき、各国の規制当局に対し承認申請を行い、審査を受ける必要があります。
この結果、一つの医薬品を開発するためには、約10~15年に亘る長い期間と数十億円~数百億円に到る大規模な資金が必要になります。それにも拘らず、医薬品開発は、承認に到るまでの各段階において、試験データや事業環境の変化等から開発中止に到るリスクが大きく、世界の製薬会社や創薬ベンチャー企業にとっては、研究開発プロセスの効率化と開発リスク低減が大きな課題となっております。
<一般的な医薬品の開発プロセス>
当社の創薬方法は、既存の抗がん活性物質等を「モジュール」(構成単位)として利用し、創意工夫(用法用量・結合様式等)を加えて「アセンブリ」(組み立て)することで臨床上の有効性と安全性のバランスを向上させた新規抗がん剤を創製する「モジュール創薬」です。
一般的な抗がん剤の創薬は、基礎の探索研究からがんに特異的な部分に作用する化合物をスクリーニングし、可能性のある化合物を抗がん剤候補とする方法ですが、その場合は臨床段階で作用を確認し、臨床試験で有効性と安全性を実証する必要があり、長い期間を要します。それに対して、抗がん剤のモジュール創薬は、医薬品になっている抗がん剤の活性物質を利用して組み合わせる方法ですので、基礎の探索研究がほとんど不要であり、臨床での有効性と安全性の予測が可能となることから、着手して1~2年後には臨床試験を開始できていることなど、一般的な抗がん剤よりも研究開発の効率が高く、その期間も短く、臨床試験で失敗する等の開発リスクが低減されています。また、特許切れの医薬品を、がん患者の治療で問題になっている点に注目して、抗がん剤の知識とノウハウを駆使して組み合わせれば、新規の抗がん剤としての特許化が可能であり、抗がん剤の問題点を解決しようとする限り、新規の抗がん剤を生み出せることから、新たな創薬手法の大きなイノベーションになり得ると確信しております。
当社の開発パイプラインは以下のとおりです。
抗がん剤候補化合物DFP-10917は、今までの化学療法で用いられてきた投与を見直し(モジュールの改良)、低用量で長時間持続点滴投与することにより、従来使用されてきている核酸誘導体(シタラビンやゲムシタビンなど)とは異なる作用を引き起こし、既存の化学療法が無効な患者に対しても、薬効を期待できることが特徴です。それにより、標準療法が無効な再発・難治性の急性骨髄性白血病のがん患者に対しても、効果が期待されます。
従来の核酸誘導体は、核酸の生合成阻害に基づく細胞毒性の抗がん剤であり、核酸代謝拮抗剤とも呼ばれ、核酸代謝酵素等の標的分子に結合することにより、その酵素反応を阻害したり、DNAあるいはRNA合成酵素の基質となり、DNA鎖やRNA鎖に取り込まれた後にDNA鎖やRNA鎖の伸長を阻害したりして、抗がん活性を発揮します。
DFP-10917は、低用量で長時間持続点滴投与をすると、DNA鎖に取り込まれ、β脱離反応*3によってDNA鎖を自己切断して細胞周期調節作用(G2/M期停止)を引き起こし、アポトーシス*4(がん細胞死)を誘導することにより、抗がん活性を発現します。
作用機序を図示すると、次のとおりとなります。
DFP-10917は、2012年10月から再発・難治性の急性骨髄性白血病の患者を対象に臨床第1/2相試験を米国治験施設であるM. D. Anderson Cancer Centerにおいて実施しました。この試験の第1相パートでは、7日間持続点滴投与から開始し、その後14日間持続点滴投与に移行して、安全性の確認と至適投与量の決定を行い、その際に14日間持続点滴の低用量投与で70%(7/10例)の患者で奏効する臨床効果が認められ、基礎及び動物の試験で示されていた低用量・長期間持続点滴の投与方法の有用性が、ヒトを対象とする臨床試験でも確認されました。また、第2相パートにおいても再発・難治性の急性骨髄性白血病患者を対象に低用量・長期間点滴投与によるDFP-10917の有効性及び安全性の確認を行い、48%(14/29例)の患者で奏効している結果が得られ、高い有用性が示唆されました。当事業年度末現在、米国の主要ながんセンターにおいて、臨床第3相試験の症例登録を進めております。
急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia:AML)は、骨髄で造血幹細胞から白血球などの血液細胞に成熟する過程で「がん化」する疾患の一つで、幼若な血液細胞である芽球が異常に増殖して、正常な血液細胞が極端に少なくなり、感染や貧血などを引き起したり、体内に広がったりして、早期に死に至る疾患です。治療法としては、抗がん剤などを用いてがん細胞を殺すか、または細胞分裂を停止させてがん細胞の増殖を抑える化学療法と、正常の造血幹細胞を注入して置き換える造血幹細胞移植などがあります。初回治療の標準的な化学療法では8割以上の患者に効果を示しますが、治癒に至るケースは3割程度に留まっており、それ以外は再発・難治性となり、二次または三次治療の化学療法が実施されてもほとんど効果を示しません。DFP-10917はこの二次または三次治療の化学療法が対象となる急性骨髄性白血病の患者に絞って開発を進めております。
2017年3月に、再発・難治性の急性骨髄性白血病患者を適応として、日本新薬㈱との間で日本における独占的ライセンス契約を締結しました。一方、グローバルでのライセンスの提携先は決まっていません。当事業年度末現在、米欧並びにアジアの提携パートナーと協議を開始し、日本以外のライセンス先の確保に向けて活動を続けている状況です。
DFP-14323は、医薬品として承認・販売されているウベニメクスの適応追加を目的とした開発品で、ウベニメクスの抗腫瘍免疫能の活性化作用と癌幹細胞の抑制作用に着目し、常量よりも低い用量で単剤または抗がん剤及び分子標的治療薬*5などとの併用により、がん患者の免疫機能を改善し、末期又は高齢の肺がん等患者の治療が期待できることが特徴です。
DFP-14323は、宿主の免疫担当細胞に作用し、がん患者の免疫機能を高めることにより、抗腫瘍効果を発揮するものと考えられています。
ウベニメクスは「成人急性非リンパ性白血病に対する完全寛解導入後の維持強化化学療法剤との併用による生存期間の延長」の効能・効果で承認済みであり、がん患者に対する安全性や免疫機能を改善することが明らかになっていることを踏まえ、DFP-14323では新規の効能・効果として、固形がんの一つである肺がんに対する臨床第2相試験を、2018年1月から日本国内で開始しました。当事業年度末現在、関西地区の主要基幹病院9施設において臨床第2相試験の予定症例登録を2020年3月に完了し、無増悪生存期間と全生存期間を明らかにするための経過観察を2022年1月に終了しました。
末期又は高齢のがん患者は免疫機能が低下傾向にあり、標準的な化学療法による治療効果は不十分であることから、効果と安全性のバランスに優れた治療薬の開発が望まれています。DFP-14323はがん患者の免疫機能を高めて抗腫瘍効果を発揮することから、末期又は高齢の肺がん患者を対象として、国内での臨床第2相試験が完了し、次試験である臨床第3相試験に向けて準備を開始する予定です。
2022年3月に、日本ケミファ㈱との間で日本における独占的ライセンス契約を締結しました。一方、グローバルでのライセンスの提携先は決まっていません。当事業年度末現在、米欧並びにアジアの提携パートナーと協議を開始し、日本以外のライセンス先の確保に向けて活動を続けている状況です。
抗がん剤候補化合物DFP-11207は、抗がん作用を有する5-フルオロウラシル(5-FU)を徐放・阻害・失活させて薬物動態をコントロールする3つのモジュール化された活性物質(モジュールⅠ、Ⅱ、Ⅲ)をアセンブリ(結合)した化合物であり、既存の5-FU系抗がん剤と比較して、有効性と安全性のバランスを改善していることが特徴です。それにより、がん患者の生存期間の延長やQOL(Quality Of Life:生活の質)の改善に寄与することが期待されます。
DFP-11207は、5-FUを徐放するプロドラックのエトキシメチルフルオロウラシル(EMFU:モジュールⅠ)と、5-FUを分解する酵素ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(DPD)を阻害するギメラシル(CDHP:モジュールⅡ)と、5-FUによる消化管障害を局所で阻害するシトラジン酸(CTA:モジュールⅢ)の3つの成分を結合して、抗がん作用を有する5-FUの効果と毒性のバランスを最適化した化合物です。DFP-11207は体内で速やかに各成分に分かれて効果を発揮しますが、3つの成分を配合するよりも結合することにより、血中の5-FU濃度が低く長く維持され、従来の5-FU系抗がん剤で発現していた血小板減少を含む血液毒性も回避することができ、継続して治療することが可能となります。
DFP-11207は、2014年7月から固形がん(膵がん等)を対象に米国の治験施設であるM. D. Anderson Cancer Centerで臨床第1相用量漸増試験(用量を順次上げながら、新薬候補化合物の安全性を確認する試験)を進めました。その結果、推奨用量が決定され、抗がん活性成分の5-FUが血中で低い濃度を長く維持していることを確認するとともに、従来の5-FU系抗がん剤で発現していた血小板減少の副作用がないことを確認しました。また、すでに標準的治療が終了したがん患者にもかかわらず、3例に腫瘍増殖の抑制(RECIST判定*6でStable disease:安定)が認められ、その内の1例は1年近く増悪することなく投与が継続されるなど、薬理効果が相応に確認されました。当事業年度末現在、日米並びに中国を実施候補国として臨床第2相試験に向けて、治験薬の準備を完了しております。
対象とする疾患は、膵がん、胃がん、大腸がんなどの消化器がんです。特に膵がんは、その臓器が体の深部に位置し、早い段階では特徴的な症状もなく、内外分泌の異常などから膵がんと分かったときにはすでに進行していることが多く、罹患数と死亡数がほぼ等しい疾患です。再発膵がんの治療は、5-FU系抗がん剤またはゲムシタビンが汎用されていていますが、単剤や併用療法で骨髄毒性や下痢等の消化管毒性が発現しやすく、特に血小板減少の毒性は、投薬を中止し、血小板輸血を複数回繰り返す過程で出血して、死亡に至るケースが少なくありません。こうした膵がん治療の現状から、血小板減少のないDFP-11207が患者から待ち望まれていると考え、開発を進めております。
当事業年度末現在、日本及びグローバルでのライセンスの提携先は決まっていませんが、日米欧並びにアジアにおける提携パートナーの確保に向けて、活動を続けている状況です。
抗がん剤候補物質DFP-14927は、DFP-10917の高分子デリバリーに係る物質であり、がん組織へ選択的に集まり、がん細胞内で効果的にDFP-10917を放出することを可能としたことが特徴です。動物を用いた薬効試験では、膵がん等の固形がんに対して、1週間に1回だけの投与で、有効性と安全性が示されていることから、DFP-14927の固形がん患者への治療に貢献することが期待されます。
DFP-14927は、DFP-10917に4本鎖のポリエチレングリコール(4-arm-PEG、分子量4万の高分子)を結合させた物質であり、血中分解と腎排泄を受け難くしてがん組織へ選択的に送達し、がん細胞内でDFP-10917を徐放して作用を発揮します。それにより、血中での影響が少なくなり、固形がんに対してもDFP-10917と同様にDNA鎖に取り込まれ、β脱離反応によってDNA鎖を自己切断して細胞周期調節作用(G2/M期停止)を引き起こし、アポトーシス(がん細胞死)を誘導することにより、抗がん活性を発現します。
DFP-14927は、前臨床試験のデータから、週1回投与で血液中濃度が長時間安定であることを確認しており、固形がんに対する抗腫瘍効果を認めています。2018年3月に三洋化成工業㈱と共同開発契約を締結し、当事業年度末現在、米国での臨床第1相試験を進めております。米国の治験施設で前期第2相試験に相当する臨床第1相試験の拡大試験を準備する予定です。
DFP-14927はDFP-10917で効果が認められたAMLの前がん病変である骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes :MDS)、また、MDS以外で前臨床試験において効果が認められた固形がんを対象とし、臨床第1相試験を進めています。次試験として拡大試験では、特に膵がんを対象に実施する予定です。
当事業年度末現在、日本及びグローバルでのライセンスの提携先は決まっていません。現在、ライセンス先の確保に向けて活動を続けている状況です。
正常細胞では細胞内と比べて細胞外でアルカリ性となっていますが、がん細胞の細胞外は酸性となっています。これは、がん細胞の増殖により解糖系が亢進し、乳酸や水素イオンが産生され、それを積極的に細胞外へ排出しているからです。DFP-17729は、がん細胞の細胞外をアルカリ化することにより、がんの増殖を抑えるのが特徴の薬剤です。
DFP-17729は、がんの増殖に関与するNa+/H+交換輸送体を阻害する作用があり、腫瘍微細小環境(TME:Tumor microenvironment)をアルカリ化することにより制御し、がん細胞の増殖を抑えます。また、免疫チェックポイント阻害薬にDFP-17729を併用させると、TMEがアルカリ化し、免疫チェックポイント阻害薬単独療法に比べて効果を増強することが動物実験で確認されています。
DFP-17729は、医薬品として承認・販売されている尿アルカリ化剤を腫瘍の微小環境改善剤として、固形がんの一つである末期の膵臓がんに対する新薬での臨床第1/2相試験を2020年7月から日本国内で開始しました。当事業年度末現在、関東地区の主要基幹病院6施設において臨床第2相部分の症例登録を完了しております。
DFP-17729は、抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤との併用により、膵がんなどの固形がんを対象に国内で適応追加の開発を進める予定です。
当事業年度末現在、日本ケミファ㈱と日本における独占的ライセンス契約を締結し、国内での臨床第1/2相試験を進めております。
抗がん剤候補物質DFP-10825は、RNA干渉*7を利用した核酸医薬であり、がんの増殖に多大な影響を与える因子をRNA干渉で特異的に阻害させるために、腹腔内投与で効果を発揮できるように工夫していることが特徴です。卵巣がんや胃がん等の患者は、終末期になると胸水や腹水などの体液貯留(腹膜播種転移)が認められ、つらい状態になりますが、腹腔内に直接注入して効果を発揮することにより、腹水をコントロールして苦しさを和らげ、延命につながることが期待されます。
DFP-10825は、がんの増殖に多大な影響を与えるチミジル酸合成酵素(TS)をコードしているDNAに対して、RNA干渉によりブロックするショートへアピンRNA(TS-shRNAi)を、リン脂質から成る微粒子の表面に付着させてがん細胞に取り込ませ、TSの産生を阻害して、がんの増殖を抑制します。
DFP-10825は、治験用原薬の製造を完了し、当事業年度末現在、臨床第1相試験開始に向けた前臨床試験を進めました。
DFP-10825は、腹水などの体液貯留をコントロールして延命につなげることを考えており、特に腹水が多く認められる卵巣がん、胃がんの腹膜播種転移のがん患者を対象に開発を進める予定です。
当事業年度末現在、日本及びグローバルでのライセンスの提携パートナーの確保に向けて、活動を続けている状況です。
がんは全世界において主要な死因の一つであり、患者や家族、社会にとって大きな問題となっています。新しい治療法や新規抗がん剤により、生存予後が改善する傾向がみられており、がん患者であっても社会生活を営むことができるようになってきております。その一方で、がんが進行した状態では、抗がん剤の治療効果は限定的であり、また、その抗がん剤の多くは様々な副作用を伴い、がん患者のQOLに十分寄与しているとは言い難い状況です。
当社は、その現状を少しでも打破したいと考えた抗がん剤開発の経験豊富なメンバーによって設立されました。過去の経験とノウハウから、医薬品になっている抗がん剤の問題点に着目すると、種々の工夫や組み合わせで副作用を少なくして、治療効果を改善できる可能性が極めて高い領域と考えられたためです。このがん領域は、まさに当社が得意とする「モジュール創薬」の宝庫であり、当社が強みを発揮し、安心して家族のがん患者にも勧められる治療法を提供する企業として、事業領域を抗がん剤開発に特化しております。
当社は、組織の効率的運営のため、外部機関と積極的な連携を図りながら、研究開発を進めております。
当社は、研究開発のマネジメント業務に集中し、具体的な業務については、外部の研究開発受託会社や製造受託会社に委託する形で研究開発を進めております。
当社は、独自のモジュール創薬により新規抗がん剤候補物質を探索し、前臨床試験及び臨床試験を実施し、製薬会社に対し、医薬品の開発権及び販売権等を許諾して提携関係を構築し、事業を推進する方針です。
<当社の事業領域と役割>
当社が得る収入は、当面の間は、提携製薬会社からの収入です。一般的に、研究開発の段階においては、「契約一時金」、「マイルストーン」及び「開発協力金」を受け取ります。さらに、将来、提携対象の製品が上市に至った場合には、売上高に応じた「ロイヤリティ」の収入を受けるビジネスモデルです。
今後、開発が順調に進み、申請・承認されれば、マイルストーンやロイヤリティの収入を受け取ることになります。
<提携製薬会社からの受け取る主な収入>
<主な収入の内容>
[用語解説]
*1 細胞周期G2/M期
細胞周期は一つの細胞が二つの細胞に分裂する一連の現象で、細胞が分裂する「M期」とその次のM期の間の間期に分けられます。間期は、DNA合成の準備の「G1期」、DNA複製の「S期」、細胞成長の「G2期」に分けられます。G2期では細胞分裂に必要なタンパク質合成が行われ、M期に進めるかどうかを判断しています。この過程がG2/M期となります。
*2 チミジル酸シンターゼ
がん細胞は増殖するために活発なDNA合成を行っていますが、このDNA合成に必要な材料としては核酸(プリン塩基、ピリミジン塩基)や葉酸などがあります。チミジル酸は核酸の構造を持つ有機化合物の一種で、DNAの部分構造となっており、それを合成するための酵素の一つがチミジル酸シンターゼです。チミジル酸シンターゼを阻害するとチミジル酸の合成が止まってしまい、最終的にはがん細胞死となります。
*3 β脱離反応
化学反応の一種で、炭素-炭素の結合が二重結合を生成する過程で、炭素(α)に結合している水素が離れる際に、その隣の炭素(β)に結合している分子が電子を持ち去りながら離脱する反応で、種々の条件下で起こる反応機構です。
*4 アポトーシス
細胞の死に方の一形態で、生物の発生や恒常性の維持に必要不可欠な機能です。ヒトの細胞が生体内で死ぬ場合、ほとんどがアポトーシスであり、個体維持の過程で積極的に引き起こされるプログラムされた細胞死です。細胞の内容物を周囲に漏らすことなく、最終的にマクロファージなどの食細胞が除去するので、痕跡は残りません。
*5 分子標的治療薬
分子標的治療薬は、がん細胞などの病気の細胞の表面にあるたんぱく質や遺伝子を標的として、効率よく攻撃する薬の総称です。がん細胞の増殖や転移を起こす特定の分子だけを狙い撃ちにするので、従来の抗がん剤よりも正常な細胞へのダメージが少ないはずですが、今までになかったタイプの副作用が現れるケースも増えています。
*6 RECIST判定
固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(response evaluation criteria in solid tumours)のことで、抗がん剤の有効性を判定する基準です。完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、進行(PD)、評価不能(NE)の5段階で評価されます。
*7 RNA干渉
RNA干渉(RNA interference;RNAi)は、標的遺伝子と同じ配列をもつ2本鎖のRNAを導入すると、mRNAが分解され、遺伝子の発現が抑制される現象です。標的mRNAを分解させることができるため,がんやエイズ、遺伝病の治療など、医学分野への応用が期待されております。
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