課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、高い技術水準に裏打ちされた高品質、高機能、環境対応型の塗料製品・コーティング材料とサービスを顧客志向の組織を通じて、真心こめて提供していくことを基本方針としております。

 

また、当社は以下の「企業理念」を経営の基本としております。

 

「企業理念」

神東塗料は、

1. 塗料事業を通じて社会の発展に貢献します。

2. 堅実と信用を第一に、お客様に信頼される会社であり続けます。

3. 社員が愛着を持ち、より誇りの持てる会社を目指していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループにおきましては、業績に占める持分法適用会社の重要性を考慮し、売上高、営業利益、経常利益、売上高営業利益率及び売上高経常利益率を重要な指標として認識しておりますが、当面はコアビジネスの収益力の向上を図るため売上高営業利益率を最重要視しております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、現在主な事業地域としている国内市場の構造的な縮小、世界で広がる保護貿易主義的な傾向、原材料価格の値上がり懸念など厳しい市場環境が想定される一方、老朽化した設備の更新投資をはじめとする経費の増加も避けられず、売上高・利益の拡大は容易ではないと認識しております。この課題解決のため、既存製品の改良によるシェア拡大・収益向上、事業範囲の拡大による売上高増加、ITツール導入による生産性向上に取り組んでまいります。また、10年先の利益水準の目標を連結売上高営業利益率10%と設定し、この10年を準備・実施・収穫の3つのフェーズに分けて、様々な施策を進めてまいります。2021年3月期からの3年間は準備フェーズとして2023年3月期の連結売上高営業利益率を4.7%まで引き上げることを目標とする中期経営計画を策定、その後の環境変化等をふまえ、その計画期間を2024年3月期まで1年延長し、その達成に向け取り組んでおりました。しかしながら事業環境は、コロナ禍による業界全体の需要減が長期化する一方、供給不安等による資源価格・原材料価格の高騰が続いております。

当社グループとしては、売価是正や合理化等各種改善努力を尽くしたものの、中期経営計画2年目の2022年3月期決算は大幅な連結営業赤字を計上するに至り、最終年度に掲げた連結営業利益目標からさらに乖離する結果となりました。今後の事業環境についても、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化等急速な好転が望み難い状況であることに加えて、当社製の一部製品に係る品質不適切行為を受け、品質保証体制や不適切行為を長年放置してきた当社のコンプライアンス・ガバナンス体制について見直し、失った信頼を回復することが急務であると認識しております。
 このような状況をふまえ、今次中期経営計画の取り組みは2023年3月期で一旦終了し、新たに企業風土改革・会社体質改善を主軸とした、2023年度からはじまる3か年の中期経営計画の策定に取り組むことといたします。
 新しい中期経営計画検討の方向性については、最終目標である10年ビジョン(2029年目標連結売上高営業利益率10%)や経営基本方針は変更しませんが、従来とは以下の通りアプローチを変えて取り組む方針です。

 

① 『塗料製品の一層の高機能化』および『生産性の向上』は、再発防止策の徹底、企業風土改革・体質改善の取り組みと組み合わせ、「環境のシントー」に資する製品開発・不採算品目からの撤退も含め、検討を加速する。
② 『事業領域の拡大』は、従来の自社シーズによる自律的成長のみならず、外部資源の導入による成長も視野に、取り組みを進める。
③ 信頼される品質の製品をお届けすることを企業価値の中心に位置づけ、お届けした製品をお客様等にご評価いただくことで収益を確保していくとともに、3年後の業績目標は、各種努力の積み上げにより設定する。
 

(塗料事業)

塗料事業につきましては、利益率の改善に向けて、既存塗料製品の高機能化によるシェア獲得・高利益率化の成果発現、新規コーティング材の開発及び海外市場進出による事業拡大の加速、ITツール導入による業務の可視化等を通じた生産性向上を製造、販売、研究開発、管理の全ての分野において推進することの3つを事業展開の軸に取り組んでまいります。

 

(化成品事業)

住化エンバイロメンタルサイエンス㈱より受託生産しております化成品事業につきましては、同社と緊密に連携しつつ、高品質な製品を安定的に供給してまいります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

今後の見通しといたしましては、新型コロナウイルス感染症の収束は不透明な状況が続いておりますものの、ワクチン接種の広がりなどにより、経済活動は緩やかに正常化していくものと予想されますが、一方で原材料価格の動向など、当社を取り巻く事業環境は一層困難を伴うものになると思われます。
 このような状況に対し、当社グループが取り組むべき課題は、利益率の改善に向けて、既存塗料製品の高機能化によるシェア獲得・高利益率化の成果発現、新規コーティング材の開発及び海外市場進出による事業拡大の加速、ITツール導入による業務の可視化等を通じた生産性向上を製造、販売、研究開発、管理の全ての分野において推進することの3つを事業展開の軸として取り組むのはもちろんのこと、まずは、不適切行為を受けて、当社の品質保証体制や不適切行為を長年放置してきた当社のコンプライアンス・ガバナンス体制について見直し、失った信頼の回復が急務であると認識しております。

 

<当社の品質保証体制、コンプライアンス・ガバナンス体制の見直しについて>
1)  これまでの経緯
 当社は、2022年1月12日付「当社製の一部製品に係る不適切行為について」にて公表のとおり、当社で製造する水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料につきまして、公益社団法人日本水道協会の認証規格(JWWA K139)及びお客様との協定に関する不適切行為が確認されましたため、同年同月14日に社外弁護士を委員長とする特別調査委員会を設置し、当該不適切行為の事実関係の解明・原因分析を進めるとともに、その他の不適切行為についてもアンケート調査を実施しました。また、当社は独自に不適切行為と無関係である幹部社員を中心とする社内調査チームを編成し、外部弁護士の支援も得つつ、特別調査委員会の行ったアンケート調査により発見されたその他の不適切行為について、特別調査委員会のアンケート調査結果、及び当該委員会発足前に行っていた社内調査結果を精査するとともに、全製品を対象に納入仕様書、検査記録、検査成績書の確認を含め不適切事案の洗い出しを実施いたしました。
 その後、特別調査委員会から調査結果の報告を受けるとともに、当社が独自に行ったその他不適切行為の調査に関しても結果が出ましたので、これらに対する当社としての再発防止策を付したうえで、調査報告書として取りまとめ、同年4月28日に公表いたしました。その概要は以下のとおりです。
 
※当社の公表内容の詳細は、当社ホームページ(https://www.shintopaint.co.jp)をご覧ください。

 

2)  不適切行為の概要
一連の調査により判明した不適切行為は2つに大別されます。
①  JWWA K139塗料製品
・ JWWA K139とは異なる条件で得られた試験結果により認証を取得した製品。
・ 2008年のJWWA K139規格改訂(使用可能な原料を指定)の際、使用されていた原料の報告を怠ったことにより指定外原料を使用する状態となった製品、及び同改訂後に指定外原料を使用して認証登録した製品。
なお、これらの製品は2022年4月4日付「当社製の一部製品に係る不適切行為に関するお知らせ(第5報)」で既報のとおり、いずれも省令で定める衛生性が確認されております。
②  その他不適切行為が認められた製品
その他の不適切行為が認められた製品は、3つに大別されます。
・ 顧客に提出する検査成績書に定められた検査項目の一部につき、品質上問題がないと判断し、所定の検査頻度を落として検査を実施した行為。
・ 顧客に提出する検査成績書に定められた検査項目の一部につき、品質上問題がないと判断し、所定の検査を省略し、検査成績書に推定値を記載した行為。
・ 顧客に提出する検査成績書に定められた検査項目の一部につき、検査結果が規格の範囲外であったにもかかわらず、品質上問題がないと判断し、検査成績書には検査結果とは異なり規格内である旨の記載をしたり、検査結果が規格の範囲内であり品質上問題がないと判断し、検査成績書には検査結果とは異なる規格内の数値を記載した行為。
その他不適切行為が認められた製品はいずれも塗料性能への影響はないと考えておりますが、顧客に対しては、謝罪とともに、事案の内容及び当該製品の品質が担保されていることについて順次個別にご説明し、ご指導に従い適切に対応しております。
 
3)  不適切行為の原因分析
不適切行為が発生した主たる原因は、以下のとおりと考えております。
①  不適切行為が発生した原因
・ 顧客に使ってもらえたら良いという安易な判断に傾斜していたこと。
・ 規格及び顧客仕様への適合性について組織的な対応がとられていなかったこと。
②  不適切行為が長期間発覚しなかった原因
・ 技術部門を始め、各部門における業務態勢が内向的かつ閉鎖的であったこと。
・ 品質コンプライアンスに関する啓発不足及びモニタリング機能に不備があったこと。
・ 内部通報制度が有効に機能していなかったこと。
③  これらの背景にある根本的な原因
より根本的な原因として、当社の経営陣において、長期間にわたる経営不振の中で経営をいかにして立て直すかという意識が偏った形で働いた結果、相対的にコンプライアンス及び品質を重視する姿勢がおろそかになったことは否めないと考えております。

 

4)  再発防止策
特別調査委員会の提言もふまえつつ、当社は一連の再発防止策を策定いたしました。なお、一部の再発防止策については、既に実行に移しております。
①  経営陣を含む全社的な品質コンプライアンスに対する考え方の抜本的な変革
②  品質コンプライアンス体制の構築等を図ること
・ 品質保証・品質管理部門のレポートラインの変更
・ 品質保証・品質管理部門の人員の増員及び教育研修
・ 千葉事業所への品質保証担当部門の設置
・ 社内規程の見直し
③  コンプライアンス研修の充実・強化
④  部門・部署を跨いだ人事ローテーションの推進と属人的な業務の見直し
⑤  内部通報制度の周知、利用促進及び独立性の確保
⑥  お取引先様との密接なコミュニケーションの推進
 
5)  コンプライアンス・ガバナンス再構築プロジェクト
・ 当社として、社長直轄で全社各部門から成るプロジェクトチームを立ち上げ、上記の再発防止策を確実に実行し、当社のコンプライアンス・ガバナンスの抜本的再構築を図ります。
・ 再発防止策の実行を適時適切にモニタリングするため、社長を委員長とし、社外コンサルタント・社外役員などから構成する、『明日の神東』推進委員会を設置いたします。
 
 特別調査委員会の調査で明らかとなった当社の行った一連の行為につきましては、弁解の余地もなく、許されるものではありません。これを機会に、不正に走らない、きちんと仕事ができる会社に生まれ変わっていくために必要なことを、必死になって取り組んでまいります。
 上記のとおり、当社は再発防止に向けた種々の対策を準備し、一部については既に実行に移しておりますが、何よりも大切なのはこれらのシステムや規定のもとで働く人の心の持ちようであり、これを変えない限り逸脱の芽を摘むことができないことは重々自覚しております。
 お客様、関係先の皆様の声を大切にし、従業員ひとりひとりと語り合う覚悟で、企業風土改革に取り組み、一日も早く取引先様、関係者の皆様方から失った信頼を回復していけるよう、全身全霊を傾けてまいります。

 

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