当社は、リスク担当役員(サステナビリティ委員会リスクマネジメント部会長)のもと、リスクマネジメント部会がグループ全体のリスクを網羅的・総括的に管理しております。また、当企業グループの各社・各部門では、日常業務に潜むリスクを洗い出して評価・検討し、対策を実施しております。
リスクマネジメント部会では、各社・各部門のリスクを発生頻度と重大性に基づき評価したリスクマップを作成して全社で共有しております。重大リスクについては取締役会に報告するとともに、リスク低減のための活動の進捗と達成度を部会で確認しております。新たに重大リスクとなりうる問題が発生した場合は、緊急対策本部を設置し対応を図ってまいります。
上記リスクマネジメント活動を通じて経営者が当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。
①色材・機能材関連事業
当企業グループにとって、有機顔料の合成技術は原点の一つです。また、インキや塗料の製造で培われた分散技術は、着色するという用途を大きく越え、液晶ディスプレイカラーフィルター用材料やカーボンナノチューブを応用した新たな分散体の開発などにも展開しております。
顔料事業においては、国内印刷市場のデジタル化に伴う構造的不況のなか、印刷インキ用顔料の需要が大きく縮小するリスクがあり、売上高及び利益の低下を招く可能性があります。そのため、成長性の高い食品包装用途への展開を図ることにより事業リスク低減に努めてまいります。着色事業においては、廃プラスチック問題など環境意識の高まりに伴う需要減少のリスクがありますが、生分解樹脂用の着色剤といった環境調和型製品の開発、あるいは電気自動車や自動運転をターゲットとした製品群の展開によって持続可能な社会に貢献するとともに、事業リスク低減に取り組んでまいります。
②ポリマー・塗加工関連事業
当企業グループでは、ポリマー・塗加工の技術を活かし、パッケージ、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、メディカル・ヘルスケアなどの分野に展開しております。
当事業の原材料の多くは石油由来であり、環境保全を目的とした各国の規制や社会要請などにより使用の制約を受け、売上高等が変動する可能性があります。社会生活に必要な最終製品の材料供給者としての責任を果たすべく、現行品の機能を確保する環境調和型製品の開発と代替を進めてまいります。
エレクトロニクス市場向け材料については、スマートフォンのように、毎年、最終製品の仕様が変わるなか、その採用可否により売上高や利益が変動する可能性があります。品質・コスト面などの優位性を高めることでの採用確度の向上や、使用先の拡大などにより、リスク低減に努めます。
メディカル・ヘルスケア市場向け材料については、研究開発に相応の時間と費用を必要とし、上市までの過程で、研究開発の遅れや変更又は中止となる可能性があります。また、医薬行政の動向を受けた関連法規の改変や公定価格の変動が、売上高や利益に影響を及ぼす可能性があります。開発のパイプラインを増やすとともに、ヘルスケア粘着剤や医療機器の周辺材料など事業の裾野を拡げてリスク分散に取り組んでまいります。
③パッケージ関連事業
当企業グループでは、パッケージの製造工程において多様な高機能製品を提供しております。特に安心・安全が求められる食品包装の分野では、インキや接着剤の水性化、無溶剤化などを進めております。また、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向け、バイオマス製品の開発も積極的に行っております。
パッケージ関連事業においては、廃プラスチック問題など環境意識の高まりによって、フィルム用インキや接着剤の消費需要が落ち込み、売上高及び利益の低下を招く可能性があります。市場や環境の変化をチャンスと捉え、新たな製品開発を強化し、リスク分散に取り組んでまいります。
④印刷・情報関連事業
当企業グループでは、原材料の顔料や樹脂から最終製品までを一貫生産できる強みを活かし、環境調和型製品や高機能のUVインキなど多様な製品を開発するとともに、お客様の印刷工程でのソリューション提供にも取り組んでおります。
印刷・情報関連事業においては、デジタル化に伴う情報系印刷市場の縮小により、想定以上に売上高及び利益の低下の進展が早まり、また、印刷市場を取り巻く変化に伴う顧客や取引先の経営状況によっては、売掛債権の回収に影響を及ぼすリスクがあります。そのため、経済情勢の変化や信用不安の兆候を早期に把握できるよう情報収集と与信管理を徹底してまいります。経営資源を成長分野に弾力的にシフトするとともに、事業効率を徹底的に高め、市場環境への適合を進めてまいります。
①海外活動に潜在するリスク
当企業グループは、海外においても生産及び販売活動を行っており、今後伸長が見込まれる事業分野において、海外事業の深耕を行っていく方針です 。これらの海外事業には以下のようなリスクが内在しております。
・予期しえない法律・規制・不利な影響を及ぼす租税制度の変更
・社会的共通資本が未整備なことによる当企業グループの活動への悪影響
・不利な政治的要因の発生
・テロ、戦争、伝染病などによる社会的混乱
・予期しえない労働環境の急激な変化
・海外の重要取引先や現地パートナーを取り巻く環境の変化
これらの事象の発生可能性や影響等を合理的に予測することは困難でありますが、当企業グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。しかしながら、当企業グループにおいては、各国の経済動向やその他リスクの影響を受けづらい収益構造とするために、世界各国における事業展開の促進や事業分野のバランスの向上、リスクに対して柔軟に対応できるSCM(サプライチェーンマネジメント)の構築、固定費や原材料費等の変動費の削減を行い、そのリスクを最小化するための対策に努めております。
②情報漏洩、滅失、毀損に関するリスク
当企業グループでは、事業を展開する上で、当企業グループ及び取引先の機密情報や個人情報などの秘密情報を保持しております。その多くは電子情報として保持・利用されておりますが、テレワークが拡大するビジネス環境のもと、インターネットを通じたコンピュータウイルスやセキュリティ侵害による情報漏洩、滅失又は毀損のリスクは増大する傾向にあります。当企業グループとしては、情報システム面で万全の対策を講じるとともに、情報セキュリティオフィスを設置し、情報管理強化と社員教育を通じてリスク低減に努めております。万一不測の事態により情報漏洩、滅失又は毀損が発生した場合は、社会的信頼の失墜、秘密保持契約違反、ノウハウの流出又は逸失による競争力の低下などにより、当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③品質・製造物責任に関するリスク
当企業グループでは、品質保証体制の強化を図っておりますが、製品の品質に起因する事故、あるいはクレームにより当企業グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が支払う損害賠償金が製造物責任賠償保険で全額補償される保証はありません。
当企業グループでは、引き続き、品質や安全に関する法的規制の遵守に努めるとともに、製品の性能向上やお客様の安心・安全に貢献する製品開発を継続して進めることで更なる満足度向上と信頼を得ることにより、リスク低減に取り組んでまいります。
④自然災害・疫病等に関するリスク
当企業グループでは、新型コロナウイルスの感染拡大と長期化により、世界的な消費活動の停滞に伴う販売の伸び悩みに加え、原料の調達や生産活動への支障が発生しました。新型コロナウイルスの感染拡大が更に長期化することにより、当企業グループ製商品の需要が一層落ち込むほか、予想を上回る規模での原料の調達困難、事業所の操業停止、従業員の出勤不能、物流機能の停滞等に至った場合は、当企業グループの経営成績及び財政状態等に更なる影響を及ぼす可能性があります。なお、当企業グループでは、関係者の安全と事業継続のため、社員向け新型コロナウイルス対策ハンドブックの作成と周知をした上で、下記施策等を実施中です。
・検温、マスク着用、手洗い、消毒
・時差出勤、在宅勤務、WEB会議システムの活用
・社員及びその同居家族に感染が疑われる場合の管理者及び対応部門に対する迅速な状況報告と感染の有無
や症状に応じた出勤制限
・新型コロナウイルスワクチン職域接種
近年、大規模地震や大雨等の自然災害や国内外における感染症の大流行(パンデミック)等に関するリスクは高まりつつあり、予想を上回る被害の拡大や長期化が進みますと、建物や生産設備等をはじめとする資産の毀損、従業員の出勤不能、電力・水道の使用制限、原材料の調達困難、物流機能の停滞等により供給能力が低下し当企業グループの経営成績及び財政状態等に甚大な悪影響を及ぼす可能性があります。これらの不可避的な事業中断リスクを想定し、リスクに応じた緊急行動マニュアルの策定や定期的な実地訓練等による事業継続体制の整備に努めております。
⑤原料調達に関するリスク
当企業グループの製品の主原料は石油化学製品であり、仕入価格及び調達状況は、原油・ナフサなどの市況変動、天災、事故、政策などに影響を受けます。特に当連結会計年度においては、昨年来の新型コロナウイルスの感染拡大と、米国での寒波による工場停止、各国大手メーカーで発生したプラント事故、中国のエネルギー規制強化、グローバルでの物流混乱、需要急回復による供給不足などにより、多くの原料で入手困難と価格高騰のリスクが発生しました。仕入価格の上昇につきましては、当企業グループの製品が使用される消費財は、市況価格及び供給責任の面からも、販売価格への転嫁には時間を要するため、当企業グループの売上高及び利益の低下を招く可能性があります。また、原料が入手困難となるリスクにつきましては、顧客への製品供給不履行による損害賠償が発生し、その賠償金額によっては経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。このようなリスクを回避すべく、市況価格の予測や需要予測の精度をあげて原料調達に反映させ、最適な価格での購入を進めるとともに、市況及び顧客の需要に基づいた生産計画のもと、原料の特性に応じた在庫確保などによる製品の安定供給のための原料調達を進めております。また、日頃より原料購入先の情報を幅広く収集し、特定の企業、国に偏ることなく、原料調達を進めることで、当企業グループの業績に与える影響を緩和することに努めております。
⑥為替の変動に関するリスク
当企業グループは世界各国で事業を展開しており、海外連結子会社の財務諸表項目は連結財務諸表作成のために円換算されますが、急激な為替変動によって当企業グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、輸出入等の外貨建て取引においても、同様の可能性があります。このため、当企業グループは、為替予約や外貨建て債権債務のバランス化等によって、為替相場変動リスクの抑制に努めております。
⑦一般的な法的規制に関するリスク
当企業グループは、事業活動に関わる一般的な法的規制の適用を、事業展開する内外各国において受けております。これらの遵守のためサステナビリティ委員会の傘下に専門部会であるESG推進部会、コンプライアンス部会、リスクマネジメント部会を設置・運用し、事業活動に関わる法的規制を調査、抽出するとともに、適法・適正な事業活動を確保するため、製造・販売・研究開発の各活動領域における業務プロセスの検証や見直し、社内規程の整備、関係者への教育などの必要な施策を展開しています。また、財務報告の適正性確保のための内部統制システムの整備と運用の確保に努めております。
しかしながら、国内及び海外事業に関連して、環境問題や製造物責任、特許侵害を始めとする当企業グループの事業に重大な影響を及ぼす訴訟紛争、その他の法律的手続きが今後発生しないという保証は無く、万一訴訟等が提起された場合、その争訟金額等によっては当企業グループの経営成績及び財政状態等に場合によっては甚大な影響を及ぼす可能性があります。
⑧環境負荷発生のリスク
当企業グループは化学品製造業を主な事業としており、原材料及び製品として各種の化学物質を扱っております。これらの化学物質が環境に及ぼす影響度を確認し環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。当企業グループはサステナビリティ委員会を設置しSDGsの推進を意識するとともに、自社拠点だけでなくサプライチェーン全体における環境負荷低減に取り組んでまいります。当企業グループは製造の過程で発生する廃棄物や排水、騒音・振動、土壌汚染、CO2排出などについても国内外の様々な環境法令を遵守し活動を行っておりますが、近年は、これらの化学物質関係法令や環境法令は国内外において規制が強化されたり、基準がより厳しくなる傾向にあり、設備投資や管理のためのコストが発生する可能性があります。また、社会的要請としても脱プラスチック、カーボンニュートラルなどが求められており、環境負荷の少ない原材料の選択・調達、製造工程におけるエネルギー使用量の低減(省エネルギー)、製品による環境への貢献を拡大していく必要があり、追加的な投資(コスト)の発生、生産プロセスの改善、又は事業形態の変更などの必要が生じる可能性があり、当企業グループの経営成績・財務状況に悪影響を及ぼす可能性がありますが、これらリスクに対して、適切に対処し、積極的な開示を行うことで長期的には社会的信頼が高まり優位性を得る可能性もあります。当企業グループとしては、長期の経営計画の中で製造工程の見直しによる使用エネルギーやCO2の排出削減、化学物質の管理強化やシステム化、製品の脱VOC(揮発性有機化合物)化、マテリアルリサイクル化など様々な施策に取り組んでおります。
⑨気候変動に関するリスク
世界的な GHG (温室効果ガス)排出増大に起因する地球温暖化がもたらす急性的あるいは慢性的な気候変動、及びそれに対して各国や地域行政が講じる政策・施策は、市場環境や原材料の調達、消費者の志向などに大きな影響を与え、当企業グループの事業の継続や業績に悪影響を及ぼす可能性が高いと認識しております。当企業グループは、このような気候変動の可能性に対して適切な対応を図り、経営計画や事業計画に反映させていくため、 TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース)に準拠した対応活動を推進し、投資家に向けた適切な情報開示を実施すべく、気候変動に対応する体制を構築し、取り組みを行っております。具体的な組織体制として、当企業グループのコーポレート・ガバナンス体制における従来の CSR 統括委員会をサステナビリティ委員会と改称し、その下部組織として ESG 推進部会を新設いたしました。
当企業グループにおける全社的な気候変動対応活動の推進、施策の立案と経営・事業主体に向けた提言、グループ社員に向けた啓発と情報提供、そして、投資家をはじめとする社外ステークホルダーに向けた情報開示を遂行する体制を構築しております。
⑩一般的な債権回収に関するリスク
当企業グループは、国内外のさまざまな業界の多数の顧客に製品を納入しておりますが、顧客の経営状況によっては、これらに対する売上債権等を回収することができないこともあり得ます。現有債権につきましては回収不能見込額を既に引当金として計上しておりますが、予想を上回る回収不能が発生した場合には、当企業グループの経営成績及び財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、与信情報等を参考に、営業現場からの定性的情報も加味することで、顧客の与信リスクを定期的に見直し、それに応じた債権保全策を実施するなど与信管理の強化に努めてまいります。
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