事業等のリスク

2 【事業等のリスク】

Zホールディングス(株)(以下「当社」という。)および子会社・関連会社(以下「グループ会社」という。また、当社と併せて「当社グループ」という。)は、持株会社である当社がグループ会社を統括して管理する一方、グループ会社が、国内外において多岐にわたる事業を展開しています。これらの企業活動の遂行にはさまざまなリスクを伴います。2022年3月31日現在において、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主なリスクは以下の通りです。なお、これらは当社グループで発生しうるすべてのリスクを網羅しているものではありません。また、将来に関する事項については別段の記載のない限り、2022年3月31日現在において判断したものです。

 

 1. 事業の競争力維持・運営に関わるリスク

 2. サービスの品質維持等に関わるリスク

 3. 人材獲得等に関わるリスク

 4. ガバナンス・内部統制等に関わるリスク

 5. 法規制や法的紛争等に関わるリスク

 6. 産業や社会倫理、意識の変化に関わるリスク

 7. 安全保障や国際関係に関わるリスク

 8. 自然災害等のインシデントに伴う事業継続に関わるリスク

 

 

1. 事業の競争力維持・運営に関わるリスク

 当社グループが展開する各種事業の伸び悩みや新規事業の収益化の遅れなどでグループの成長が遅滞しステークホルダーの要求に応えられなくなる、グローバル企業を目指す上での自覚や意識の不足により不適切な戦略や行動をとってしまう、近年のプラットフォーマー批判などが更に拡大しグループ全体の戦略に影響する、グループの規模や活動に見合う事業推進体制等を整えることができなくなる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 事業戦略に関わるリスク

当社グループの事業戦略として、中核企業であるヤフー(株)およびLINE(株)を中心とした「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を「根幹領域」と定め推進するとともに、特に課題が大きくインターネットでその解決が見込める領域である「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech(フィンテック)」「社会」の4つを「集中領域」と定め、取り組んでいます。さらに、それらの領域にデータやAI技術を掛け合わせることでシナジーを強固に創出するとともに、ユーザーの日常生活、企業活動、そして社会自体をアップデートするサービスを提供していきます。しかしながら、これらのサービスの事業性は、そのユーザー数、利用頻度、収益化能力等に大きく依存しています。さらに、ユーザーの嗜好の変化は激しい為、市場の変動やニーズの的確な把握、ニーズに対応する開発・提供等ができない可能性があります。また、当社グループは「Clova」等のクラウドAIプラットフォーム事業やFintech事業、NFT(非代替性トークン)関連事業等にも注力していますが、これらの新規事業が全て将来的に収益性を確保できるかは定かではありません。さらに、当社グループで提供する事業における課金ユーザーの数や利用頻度の低下が業績に影響する可能性があります。これらに加えて、ブランドイメージの毀損等の外部要因や適切な判断能力の不足、技術革新に適切に対応する技術力の不足等の内部要因により、事業の目的が十分に達成できなくなる可能性があります。主な例としては、当社グループのLINE(株)およびその子会社・関連会社(以下「LINEグループ」という。)の収益はLINE GAMEにおけるユーザーからの課金、LINEスタンプの販売、および広告主からの広告料が大半となっていますが、LINE GAMEは少数のヒット作から大部分の収益が生じる傾向にあり、今後においてヒット作を継続的に出せなくなる可能性があります。また、LINEスタンプの販売は、今後人気作品を提供できない場合、低下する可能性があります。さらに、ユーザー数や利用頻度、市場変化や景気変動により広告料が低下する可能性があるほか、新たな広告商品が受け入れられない、パートナーシップを維持できない、等によっても収益が低下する可能性があります。

当社グループはこのような可能性の顕在化を低減させるべく、マーケティング、技術開発および教育への投資、インテリジェンスおよび計数管理の機能強化といった総合的な施策を継続して行っています。

 

(2) プラットフォームに関わるリスク

当社グループのヤフー(株)、LINE(株)をはじめ、グループ会社がインターネットを通して提供するサービスは、他社が開発したOS、ブラウザーなどのプラットフォーム上で展開しているため、これらの技術仕様やガイドラインの変更をうけ、サービスが提供できなくなるなどのリスクがあります。そのため、当社グループでは、他社の技術動向や各種ガイドライン等の動向を常に把握し、最新の変更に合わせて変更していくなど、影響を最小限にするよう努めています。

 

(3) パートナーシップに関わるリスク

当社グループでは、他のサイトとパートナーシップを組むことで当社グループ以外のサイトのユーザーとの接点を増やし、パートナーサイトを含めたネットワーク全体としての利用度を拡大するために、法人および個人のインターネットメディアとのパートナーシップの構築を積極的に進めていますが、パートナーの売上収益およびトラフィックが期待値に満たない、もしくは他社との競合の結果、パートナーシップの構築が遅滞する可能性や、パートナー獲得における費用の増加を余儀なくされる可能性、また、パートナーシップ契約を解除される可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。

当社グループのパートナーへのサービスは、当社グループの関連会社、提携会社のシステムにより提供していますが、これらシステムの障害などによりパートナーが損害を被った場合、当社グループのブランドイメージが低下したり、損害賠償を請求されたりする可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。また、パートナーのサービスの品質や評判が、当社グループの評判や信用に影響し、当社グループのブランドイメージに影響を及ぼす可能性があります。当社グループはこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、契約前および契約後の継続的な信用調査や数値管理、必要となる設備投資の強化などに努めています。

当社グループは、ニュース、気象情報、株価等の情報サービスや、映像、ゲーム等のコンテンツをユーザーに提供していますが、その確保に想定以上の費用がかかったり、他社に起因する諸要因により予定通り情報やコンテンツが集まらなかったりした場合、ユーザーによる当社グループのサービスの利用度が低下し、期待通りの業績を上げられない可能性があります。当社グループはこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、マネジメントプロセスの強化などに努めています。

 

(4) グーグル・インクに関わるリスク

当社グループであるヤフー(株)は、検索エンジン(技術)や検索連動型広告配信システム(技術)等のサービスを提供するために、グーグル・アジア・パシフィック・プライベート・リミテッドとの間で契約を締結しています。検索サービスはヤフー(株)の重要な業績の柱の一つであるため、当該契約内容が変更され、または終了した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) データ事業に関わるリスク

当社グループのヤフー(株)は、保有するビッグデータやインフラストラクチャー、データサイエンス、組織を活用し企業や自治体、研究機関の課題解決に資するべくデータソリューション事業を展開しています。同社は同事業を将来に向けた新たな収益の柱の一つとすべく注力し、同事業は現在の所順調に拡大しています。また、LINE(株)においても、データ活用戦略を統括する専門組織の下で同社の事業展開に資するよう、保有するビッグデータの分析等を行っています。しかしながら将来、ビッグデータの取得源となっている当社グループが提供するサービスのシェアの低下や、プライバシーに関わる規制・ルールの変更のような外的要因に基づくデータの不足・不備、インフラストラクチャーの障害、データサイエンスの誤用、組織の人員不足等により、当初の想定通りに事業展開等ができなくなる可能性があります。当社グループはこのような可能性の顕在化を低減させるべく、事業継続に必要な投資およびその効果検証を継続し、各領域における高品質化に努めています。

 

(6) 銀行事業に関わるリスク

当社グループのPayPay銀行(株)が保有する金融資産は、主として有価証券(国債・地方債・財投債・社債・投資信託等)であり、そのほかにも短期のコールローンおよび買入金銭債権を保有しています。これらには、それぞれの発行体の信用リスク、金利の変動リスク、為替の変動リスクおよび市場価格の変動リスクがあります。貸出金については、個人向け非事業性ローンは全て保証会社の保証付貸出金であり直接的な信用リスクは低減されていますが、事業性ローンについてはお客様の契約不履行によってもたらされる信用リスクがあります。同社の金融負債は、主として預金であり、また、コールマネーによる資金調達を行う場合もあります。いずれの負債も、金利の変動リスクがあります。これらのリスクに対応するため、同社では、資産および負債の総合的管理(ALM)を行っており、資産・負債に対するリスク量上限の設定、その順守状況のモニタリング等により、その適切なコントロールに努めています。

PayPay銀行(株)では、短期もしくは期間の定めのない預金の受け入れにより資金を調達し、これを様々な期間の貸出金および有価証券の購入等により運用を行っていますが、何らかの理由によりお客様の預金の引き出しが集中するようなことで、調達と運用の期間ギャップが発生する可能性(流動性リスク)を負っています。これに対して同社では、短期の要資金調達額に対して閾値を設定し、その順守状況を適時モニタリングするとともに、資金化が可能な運用資産の残高状況についてもモニタリングを行い、資金流動性に問題を来たさないよう十分な管理を行なっています。

 

(7) FX事業に関わるリスク

当社グループのLINE証券(株)が取扱う外国為替証拠金取引は、お客様が当社グループの定める所定の金額以上の証拠金を当社グループに預け入れることにより、取引を行うことができます。これにより、お客様は実際に預け入れた資金以上の金額の外国為替証拠金取引を行うことができることから、高い投資収益が期待できる半面、多大な投資損失を被る可能性があります。お客様が預け入れた資金以上の損失が発生し、お客様が不足分を支払うことができない場合、お客様に対する債権の全部または一部について貸倒損失を負う可能性がありますが、当社グループは、取引証拠金が所定の維持率を下回った際に、当社グループの所定の方法により強制的にお客様の保有するポジション(建玉)の全部を反対売買して決済する制度を設け、お客様の資産の保護および当社グループの損失の拡大防止に努めています。

当社グループが取扱う外国為替証拠金取引は、お客様と当社グループの相対取引ですが、お客様との取引から生じるリスクの減少を目的として、実績のある銀行、証券会社等複数の金融機関との間でカバー取引を行っています。当該金融機関の業務・財務状況の悪化等によりカバー取引が困難となった場合、お客様に対するポジションのリスクヘッジができない可能性があります。また、当該金融機関の経営破綻等により、当社グループが担保金として差し入れている資金の回収ができない可能性があります。このような場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(8) カード事業に関わるリスク

当社グループのPayPayカード(株)が発行する「PayPayカード」等において、クレジットカード会員がカード決済した代金について、クレジットカード加盟店に対し立替払いを行います。クレジットカード会員からの資金回収が月1回であるのに対し、クレジットカード加盟店に対しては月2回程度の立替払いを行っています。また、クレジットカード会員がその支払方法として、分割払い、リボルビング払いを指定した場合には、クレジットカード会員からの資金回収が約定の期間を通じて行われることから、それらの期間の立替資金の調達が必要となります。事業の拡大に備え調達方法の多様化を進めていますが、立替払いに必要な資金を適切なコストで調達できない可能性があります。さらに、経済状況の悪化等により、クレジットカード会員に対する立替金や貸付金が予定通り回収できず貸倒となる可能性があります。これに対して同社では審査機能やモニタリングを強化し利用枠等を制限することや適切な延滞管理を行うこと等により、その低減を図っています。

 

(9) その他決済・金融事業に関わるリスク

当社グループの決済・金融事業において、何らかの要因によりシステム障害や不正アクセスが発生し、約款等に定める免責事項では補完できない損失がお客様に発生した場合、お客様の機会損失、当社グループの信用低下や損害賠償義務の負担等により、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

例えば、当社グループのヤフー(株)の持分法適用会社であるPayPay(株)は2018年10月に電子決済サービスの提供を開始しましたが、2022年1月19日には登録ユーザー数が4,500万人を突破しています。LINE Pay(株)が2014年12月から提供している電子決済サービス(今後、PayPay電子決済サービスと統合を予定)と共に、現在国内有数の決済事業者・資金移動業者に成長しており、上述のような事象が発生した場合には当社グループも一定の影響を受けることが見込まれます。当社グループはこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、システムの常時安定稼働および強化に努めています。

 

(10) 海外における事業展開に関わるリスク

当社グループは、LINEグループを中心に、対象国のスマートフォンの普及・拡大に合わせて海外展開を図っていますが、その収益性は対象国の文化・制度・環境・競合等により不確実です。また、対象国の政府による検閲・アクセス制限が生じる可能性、海外展開の費用が増加する可能性があるほか、当社グループは海外展開において特定国に対する国際的な制裁に従う意向ですが、過失等により違反が生じ制裁を受ける可能性があります。さらに、海外事業においては会計・決算時における為替変動リスクがあります。当社グループは、事前のリサーチ、対応・対策のシミュレーション、対象国の状況および変化の正確な把握、対象国と日本との円滑な情報連携と意思決定の迅速化、などを合理的な費用を投じて推進・遂行することにより、それらの可能性の影響の最小限化に努めています。

 

2. サービスの品質維持等に関わるリスク

 サービスを提供する上で、社内のリソース不足や開発運用面での継承の断絶などからオペレーションミスが生じたり外部からの侵入を招きやすくなったりすることにより、個人情報漏洩等の事故や障害が発生する、組織の想像力が衰え利用者や社会の反応を見誤り対外コミュニケーション等で失敗することにより品質の適切な維持ができなくなる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) サイバーセキュリティに関わるリスク

当社グループでは、安心して利用できる安全なサービスをユーザーに提供するため、中長期的な視点で全社を挙げて情報セキュリティの向上に取り組んでいます。しかしながら、これらの取り組みが及ばず、業務上の人為的ミスや故意による不法行為、災害などによるシステム障害、マルウェア感染や標的型攻撃などのサイバー攻撃、システムや製品等の脆弱性などにより、情報漏洩、データの破壊や改ざん、サービスの停止などの被害等が発生した場合、当社グループの業績に影響を与えるだけでなく、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

当社は、グループ会社の情報セキュリティを支援しています。具体的には、情報セキュリティ対策の仕組みの共有や導入支援、脆弱性情報など情報セキュリティに関する情報の共有、各社の求めに応じて情報セキュリティ対策の相談対応などを行っています。また、グループ会社に対しては当社と同等の情報セキュリティ対策を行うための規程の提供や第三者認証取得支援などの支援を行っています。さらに、当社グループでは、日々高度化するサイバー攻撃などの脅威に備え、必要かつ前衛的な対策を取るべく必要十分な費用の確保に努めています。しかしながら、想定以上のサイバー攻撃などの脅威が発生した場合には追加費用が発生し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 「Yahoo! JAPAN ID」「LINEアカウント」等のIDに関わるリスク

当社グループのヤフー(株)やLINE(株)は、「Yahoo! JAPAN ID」や「LINEアカウント」による利用者のアクセス管理を行っています。悪意ある第三者が、他人のIDとパスワードをフィッシングやダークウェブ等で不正に入手して乗っ取ったり、身元を偽って取得したりすることで、当社グループ、パートナーサイトの各種サービスを不正に利用されてしまう可能性があります。当社グループではそれらのIDを守る機能の提供や、ユーザーを含む日本のインターネットユーザーへ安全なID管理についての啓発を行ったり、IDの取得時には身元の確認をとる手段を講じたりしつつ、一定の不正利用を事前に想定した対策や、不正利用されたり不正利用が懸念されたりするIDの利用停止措置を継続的に行なっています。しかしながら、不正利用により立替金の回収に支障をきたす可能性や不正利用の被害に対する想定外の補償や再発防止対策費用により、業績に影響を及ぼしたり、当社グループのブランドイメージが低下・失墜したりする可能性があります。

 

(3) 通信の秘密に関わるリスク

当社グループのLINE(株)やヤフー(株)は、「LINE」「Yahoo!メール」等のサービスにおいて、通信内容等の通信の秘密に該当する情報を取り扱っています。これらの取扱いの際は電気通信事業法に則り、情報セキュリティに対する取り組みのもと、適切な取扱いを行っています。しかしながら、これらの情報が「LINE」「Yahoo!メール」等のサービスを提供するシステムの不具合や、マルウェア等の影響、通信設備等への物理的な侵入、当社グループの関係者や業務提携・委託先などの故意または過失等によって侵害された場合、当社グループのブランドイメージの低下や法的紛争に発展し、ユーザーの減少やサービスの停止や縮退に伴う損害賠償や売上収益減少などによる業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他サービス品質・イメージに関するリスク

当社グループのサービスを通じて使用されるアプリケーションやリンク先のウェブサイトによって、当社の保有するブランドのブランド力が悪影響を受ける可能性があります。また、ユーザー数の多い「LINE」を通じて、ユーザー間のいじめ、誹謗中傷、わいせつ、詐欺等のトラブルが生じ、LINEブランドや当社グループ全体のブランドが毀損される可能性があります。さらに、当社グループのサービスに関する報道や情報の流布により経営成績が影響を受ける可能性があります。

 

3. 人材獲得等に関わるリスク

技術者の不足や意識の変化などにより、サービス開発・運用が滞り、事業の成長が阻害される、データプロテクションやAIなどの中長期的な成長を担う人材を適切に確保できない、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 従業員や雇用に関わるリスク

当社グループの事業は、業務に関して専門的な知識、技術を有している役職員、いわゆるキーパーソンに依存している部分があり、これらのキーパーソンが当社グループを退職した場合、事業の継続、発展に一時的な影響が生じる可能性があります。また、各グループ会社において、今後の中長期的な業務拡大を目的とする体制の強化や各種サービスの運用、品質向上のための増員が必要となりえますが、労働市場や社会意識の変化により、それが適切になされない可能性があります。適切に増員がなされる場合にも、費用が増大し、業績に影響を与える可能性があります。そのため当社グループでは、業界水準を参考にした適正賃金テーブルの把握や目標評価制度等の実施による賃金レベルの相当性の確保、要員計画等での人員規模の適正性の確認に努めています。さらに、各グループ会社の事業特性および業種・職種を考慮した働き方の多様性を拡大することにより、より多様な人材の活躍を見込むとともに、各個人および組織の生産性やエンゲージメントの向上に結び付けています。

 

4. ガバナンス・内部統制等に関わるリスク

 多様かつ多軸な当社グループにおいて、各社へのガバナンスの実効性が及ばず事故や問題が生じる、体制の不備により問題や事故が生じる一方で、ボトルネックが生じサービスのリリースの遅れなどにつながる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 経営統合の推進・進捗におけるリスク

当社は2021年3月1日付でLINE(株)との経営統合を行いました。これにより当社グループは日本国内で200超のサービスを提供し、国内総利用者数は3億超、国内総クライアント数は約1,500万、自治体との総連携案件数は3,000超となり、グループ従業員2.3万人を擁する国内最大規模のインターネットサービス企業グループとなりました。この経営統合の効果によって当社グループの売上収益及び営業利益も増大していますが、今後、当初に期待した経営統合の効果を十分に発揮できない場合には、各グループ会社が展開するサービスの連携の不調・遅れが発生し、統合戦略やシナジーに影響が出る、グループ会社間のストレスや統合に起因する混乱が問題発生の一因となる、などのリスクが生じる可能性があります。それらにより、当社グループの業務運営や業績、財政状態に影響を与える可能性があります。経営統合効果の進展を妨げる主たる要因として以下が考えられますが、これらに限定されるものではありません。

・業務面での協調体制の強化や経営資源の相互活用が、組織体系や業務プロセスの相違等から奏功せず、コスト削減・戦略的マーケティング・新規研究開発等の統合によるシナジーが十分に発揮できないリスク

・経営統合に伴う諸経営インフラの整備・統合・再編等により、想定外の追加費用が発生するリスク

当社は、これらを含むグループの事業等のリスクの全般に関して「リスクマネジメントに関する規程」を定め、代表取締役を委員長とするリスクマネジメント委員会を定期的に開催し、リスクの調査、分析、判断、対応計画、対応の推進を図っています。なお、特にリスクの高いサイバーセキュリティや金融事業、人権等の課題については、委員会の下に当社グループの企業で構成する「データガバナンス分科会」、「アンチマネーロンダリング分科会」、「人権分科会」を設置し、グループ会社横断のリスクマネジメントを行っています。

 

(2) データガバナンスに関わるリスク

LINE(株)との経営統合に伴い、当社グループが個人情報をはじめとするデータを取り扱う量も飛躍的に増大しています。データの取り扱いに際して当社は「分かりやすい説明」「国内法に基づく運用」「有識者による助言・評価」「プライバシー&セキュリティファースト」の4点を重視しつつ、その利活用を合理的・効率的にするためにデータガバナンス(データ資産管理の統制)の確立を図っています。当社グループのヤフー(株)とLINE(株)とのデータ連携にあたっては、同意取得を前提とした分かりやすい説明に努めるほか、各種の国際基準への準拠を前提とするなど、安全安心の確保に努めています。今後も個人情報の適切な取り扱いに関して当社グループ全体のガバナンスの強化に取り組んでいきますが、かかる対策やガバナンス強化の施策が有効に機能しないことによる当局から当社グループへの行政処分、当社グループの信用の毀損、当社グループのサービスへの需要の減少、追加の対策の策定・実施、また、データの漏洩やその恐れとなる事象の発生等により、当社グループの社会的信用や業績等に影響を与える可能性があります。
 

(3) 主要株主等に関わるリスク

当社グループは、主要株主であるAホールディングス(株)を連結子会社に持つソフトバンク(株)をはじめとするソフトバンクグループ内の各企業やAホールディングス(株)の主要株主であるNAVER Corporationおよびそのグループ企業との間で取引を行っています。ソフトバンクグループ(株)やソフトバンク(株)、また、NAVER Corporationは、その保有株数の構造上、当社の意思決定に影響力を及ぼしうる立場にあります。当社は社内規程や独立社外取締役4名で構成されるガバナンス委員会、その顧問弁護士による確認などによる監督の仕組みを整備・運用していますが、こうした仕組みが機能しない場合に、当社とそれらの親会社との間で利益相反が生じ、当社の利益が損なわれる可能性があります。また、ソフトバンクグループ各社やNAVER Corporationの事業戦略方針の変更等に伴い、当社グループのサービスや各種契約内容への影響や、関係の変化が生じる可能性があり、その場合、当社グループのビジネスに影響を与える可能性があります。

 

(4) その他コーポレート・ガバナンスに関わるリスク

当社グループでは、業務上の人為的ミスやその再発、意思決定プロセスの潜脱等が起きることのないよう関連する規程を定めているほか、取締役会内でも監査等委員4名全員を独立社外取締役として、経営の意思決定・業務執行の監督を強化しています。また、Co-CEO直属の内部監査部を設置し運営することにより、適法かつ適正なコーポレート・ガバナンスの強化を図っています。しかしながら、このようなガバナンス機能が想定通りに機能せず、ガバナンス不全に陥った場合、当社グループのブランドイメージや業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 内部通報・コンプライアンスに関わるリスク

当社グループでは、企業価値の持続的な増大を図るにはコンプライアンスが重要であると認識しています。そのため当社グループでは、コンプライアンスに関する諸規程を設け、全役員および全従業員が法令、定款などを順守するための規範を定め、その徹底を図るため、イントラネット上に諸規程を明示し、定期的な社内研修を実施しています。また、内部通報制度を設けており、従業員がコンプライアンス違反やその疑いのある事実について相談できる通報窓口を作るとともに、その通報者を保護しています。しかしながら、これらの取り組みにもかかわらず法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループのブランドイメージならびに業績に影響を与える可能性があります。

 

(6) 社内経営情報に関わるリスク

会社の経営・財務など投資判断に影響を及ぼすような未公表の重要事実(インサイダー情報)や非公開の社内経営情報の情報セキュリティが侵害された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、出願前の特許情報、公開前のM&Aや業務提携に関わる情報、取引先・株主・従業員の個人情報、監査資料、およびその他の営業資料などの社内経営情報をユーザーからお預かりしたパーソナルデータなどとは分離し、適切なアクセス制御のもとで管理しています。しかしながら、これらの情報が漏洩・改ざんまたは利用できない事態が発生した場合、株主・取引先・従業者などの利害関係者への直接的な影響、市場優位性の低下、法令違反に発展した場合の業務停止、ブランドイメージの低下などの可能性があります。

 

(7) 財務に関わるリスク

当社グループによる投資、融資の結果、十分な利益が得られない場合や、資金の回収が滞る可能性があります。また、投資先の業績の悪化や株価の下落、市場動向の悪化等による損失の発生や関連する減損処理などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループは、大小合わせ様々な事業取引を行うグループ会社で構成されていますが、中には与信管理が不十分な取引先と取引を行い、債権に基づいた金銭の支払を受けられないグループ会社が発生する可能性があり、これを積算することで、当社グループの業績にも影響を与える可能性があります。また、当社グループの事業の拡大に伴って資金需要も増大します。

当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行、債権の流動化等、資金調達方法の多様化等についての検討および対応を進めていますが、金利の上昇や信用格付の引き下げなどの条件の悪化により調達コストが増加する、一時的に資金が適切に調達できなくなる等の可能性があります。また、一部の借入には財務制限条項が附帯されており、経営成績や財務状況の悪化により財務制限条項に抵触する場合には、期限の利益を喪失し、借入金の一部または全額の返済を求められ、または新規借入が制限される可能性があります。

 

5. 法規制や法的紛争等に関わるリスク

法規制対応へのグループ会社間の足並みが揃わずにグループとしての責任を問われる、改正個人情報保護法等への対応が不十分なものとなる、クッキーなど利用履歴情報への規制がグループ会社の広告やECビジネスの根幹に影響を及ぼす、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 個人情報・プライバシーに関わるリスク

当社グループではプライバシーポリシーをユーザーに公開し、サービスを通じ取得したパーソナルデータをプライバシーポリシーに準拠し利用しています。パーソナルデータは、アクセス権限を持つ担当者を必要最小限に絞るなど複数の対策を組み合わせ、保護しています。しかしながら、これらの対策が及ばず、情報セキュリティが侵害された場合、サービスの停止または縮退により、当社グループの業績に影響を与えるだけでなく、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

パーソナルデータでも氏名や住所、電話番号等の「個人情報」の情報セキュリティが侵害された場合、上記リスクに加え、法的紛争に発展する可能性があります。一部についてはユーザー自身の個人情報の照会・変更・削除等をユーザー自身がシステムから行える機能を提供しており、問い合わせに回答するためにやむを得ない場合等に限り、必要最小限の情報を隔離された居室のみで取り扱うなどの対策を講じ、その他の役員、従業者等が個人情報を参照できない対策を導入しています。

個人情報の取り扱いを社外に業務委託する場合は、個人情報委託先選定基準を定め、一定水準以上の情報セキュリティ対策を実施できる業務委託先に限定して委託し、委託中は委託先の監督・監査を定期的に行っています。しかしながら、これらの対策が及ばず、情報漏洩、情報破壊や改ざんなどの被害等が発生した場合、信用の低下や損害賠償請求等の法的紛争が発生する可能性があります。加えて、ユーザーにおけるパーソナルデータへの関心の高まりを受け、当社グループより適法に個人情報の提供を受けたパートナーが、個人情報を漏洩したような場合において、当社グループに法的な責任はないとしても、社会的な責任を問われ、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

銀行口座番号、クレジットカード番号等が漏洩した場合、ブランドイメージが低下したり、法的紛争に発展したりする可能性があります。当社グループでは「PayPay」「LINE Pay」「Yahoo!ウォレット」などの決済金融系サービスやユーザーの本人確認のために銀行口座番号、クレジットカード番号等をお預かりし、または利用しています。これらの情報が第三者に悪用された場合、ユーザーに経済的被害を直接与える可能性があるとの認識のもと、さらに隔離したシステムでこれらの情報を機微な個人情報として厳重に管理しています。

個人情報が当社グループの提供するサービスの出店ストアから情報漏洩した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループであるヤフー(株)が提供する、「Yahoo!ショッピング」や「ヤフオク!」などのB to C取引では、購入者が入力した個人情報は、商品を販売したストアに送られ、各ストアが個人情報の収集主体として責任を持って管理しています。また、購入者の個人情報や購入情報がストアから別の個人や団体に開示されることがないように、ストアに対して、購入者の個人情報およびプライバシー情報について商品の送付や販促目的以外に利用をすることを固く禁じており、適切な管理をするよう適宜指導を行っています。なお、ストアのクレジットカード決済にあたっては、ストアにて当社グループの運営する決済手段を利用するか、直接カード会社と決済契約を締結するかいずれかの方法をとっています。当社グループの決済サービスを利用しているストアの場合、購入者が入力したクレジットカード番号等は当社グループを通じてカード会社に送信されますので、各ストアに保存されることはありません。一方、直接カード会社と決済契約をしているストアについては、購入者が入力したクレジットカード番号等の管理に関して、他の個人情報と同様に厳重な指導と注意喚起を行っています。しかしながら、これらの対策が及ばず、情報漏洩の被害等が発生した場合、当社グループの責任の有無にかかわらず、信用失墜によるユーザーの減少に伴い、当社グループ業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 金融事業の法規制に関わるリスク

当社グループで外国為替証拠金取引業や証券業を営むLINE証券(株)、銀行業を営むPayPay銀行(株)などは、それぞれ金融商品取引法、銀行法、その他の関連法令・諸規則等に従って業務を行っています。しかしながら、これらの規制に抵触する事態が発生した場合は、業務停止、登録抹消等の行政処分を受ける可能性があります。今後これらの規制が強化された場合にはコンプライアンス体制やシステム対応の強化、再整備等による費用の増加、他方でサービスの業績の低下などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

また、犯罪による収益の移転防止に関する法律は、テロ資金や犯罪収益の追跡のための情報確保とテロ資金供与およびマネー・ロンダリング等の利用防止を定め、事業者に義務を課していますが、当社グループは、お客様との間で外国為替証拠金取引や銀行取引を行うに際し、同法に基づき所定の書類等をお客様から徴収し、本人確認を実施するとともに本人確認記録および取引記録を保存しています。しかしながら、当社グループの業務管理が同法に適合していない事態が発生した場合や今後新たな法的規制が設けられた場合には、当社グループの業績および今後の事業展開に影響を与える可能性があります。

当社グループではこれらの可能性の顕在化に伴う影響を低減すべく、インテリジェンス機能や内部監査体制等の強化に取り組んでいます。

 

(3) デジタルプラットフォーム関連の法規制に関わるリスク

当社グループのヤフー(株)は、同社が提供するサービスである「Yahoo!ショッピング」について、特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律に基づき特定デジタルプラットフォーム提供者としての指定を受けています。同法により義務付けられる情報開示や自主的体制の整備に関しては、外部有識者の意見も聴取し、一部は法施行に先行する形で積極的に対応するほか、2022年春の政府への報告書提出に向けて、外部有識者の意見も聴取しながら対応を進めています。また、2021年4月に内閣官房デジタル市場競争本部より公表されたデジタル広告市場競争評価最終報告の課題についても、ヤフー(株)に加えLINE(株)においても、高い透明性や公正性を意識し、継続的な改善を行っていきます。しかしながら、万が一取組が不十分であると政府から認定され同法に基づく行政措置の対象となった場合や、同法に基づき政府に提出する報告書が低い評価を受け、その評価結果が公表された場合、当社グループに対する取引先及び一般ユーザーからの評価や社会的評価が低下する可能性もあります。さらに、デジタルプラットフォームを提供する企業に対して、より一層厳しい規制の対象としていくという諸外国の動向に鑑み、仮に日本国内でも規制が強化され、当社グループ企業がその対象となった場合、当該企業の円滑な事業遂行が困難となる可能性があります。

 

(4) 法規制一般に関わるリスク

当社グループの事業は様々な法規制の影響を受けています。国内外を問わず、事件や事故の発生に対し報道等がなされ、社会の関心が高まった場合などに何らかの法規制がかけられるという動きがあります。特に、独占禁止法、電気通信事業法、個人情報保護法、銀行法、貸金業法、利息制限法、資金決済法、旅行業法、プロバイダー責任制限法、労働者派遣法、下請法などの法令の執行状況や改正、デジタルプラットフォーム事業者の透明性・公正性を図る新法制定による情報開示などの新たな対処、また、各種会計基準や税制等の変更などが当社グループの経営に影響を与える可能性があります。そのため、当社グループは各種法令を順守するとともに、関係各所と協力して、法規制や法改正の動向に注意し、様々な施策や啓発活動等を実施しています。

 

(5) 訴訟等に関わるリスク

当社グループは、その事業活動を遂行する過程において、個人ユーザー、法人顧客、その他の利害関係者から、当社グループが提供するサービスの不備、個人情報や機密情報の漏洩、知的財産の侵害、従業員の労務管理等に関する訴訟等の法的手続を提起されたり、当局による捜査や処分等の対象となったりする可能性があります。これらの法的手続に対応する費用の支出や、事業活動に支障をきたす可能性があります。

このような法的手続は、長期かつ多額、また、結果の予測が困難となる場合があり、当社グループに不利な判断がなされた場合には、ブランドイメージの毀損や賠償金の支払いなど、当社グループの社会的信用や業績等に影響を与える可能性があります。

 

(6) 知的財産権に関わるリスク

当社グループの事業において、他者の保有する特許権、著作権等の知的財産を侵害したとして、クレームや損害賠償を請求される可能性があります。特許権の範囲の不明確性により特許紛争の回避のために行う当社グループ自身の特許管理の費用が増大し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。インターネット技術に関する特許権の地域的な適用範囲については不明確であり、国内の特許のみならず、海外の特許が問題となる可能性もあります。また、当社グループが提供するサービスの内容や業務で使用するソフトウェアの利用が他者の著作権等の知的財産権を侵害したりする問題が生じる可能性があります。その場合、損害賠償請求等の訴訟を起こされたり、多額のロイヤルティの支払を余儀なくされたり、サービスの一部を提供できなくなる可能性があります。そのため、専門の部署を設置し特許の調査や出願、ソフトウェアライセンスの確認、社内への啓発活動、社内規則の制定や社内教育を実施するなど、発生防止に努めています。

 

6. 産業や社会倫理、意識の変化に関わるリスク

 産業構造の変化やゲームチェンジ等によりコア事業の収益性や成長性が低下する、主要サービスでの競争優位性を維持できずチャレンジャーに市場を奪われる、世の中の意識・時代の変化に適切に対応できないことにより社会からの信頼を失う、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 市場動向に関わるリスク

当社グループの事業はインターネット全体の利用規模、景気の動向、有料会員数、有料サービスの利用状況の変動等に影響を受ける可能性があります。そのため当社グループでは、利用者にとって正確で有益なサービスの提供、安心・安全な利用体験、広告媒体としての価値を向上させる調査研究および活動、啓発、有料会員向けの魅力的な特典やコンテンツの提供等を通じ、利用者の維持および拡大に努めています。

 

(2) 競合環境に関わるリスク

当社グループが提供する各サービスには国内外に競合が存在するため、今後もインターネット業界において優位性を発揮し続けられるかどうかは不確実です。当社グループではインターネットサービスや、スマートフォン向けアプリケーションを通じて、情報提供サービス、コマースサービス、決済サービス、コミュニケーションサービス等を提供していますが、それぞれのサービスには多数の競合が存在します。また、他企業の提供する新しいサービスがユーザーの支持を急速に集め、競合となる可能性があります。そのため、常に競合を意識し、既存サービスにおける新たな機能の追加、新規サービスの開発等を実施しています。しかし、これら競合への競争優位性を発揮するための研究開発費用等が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 自然環境・気候変動に関わるリスク

当社グループが気候変動問題等の国際的な意識変化のスピードや潮目の変化に適切に対応できない可能性があります。電力を中心としたエネルギー消費はCO2排出という形で環境に負荷を与えており、産業全体の拡大とともにその負荷も増大しています。当社グループでは、事業活動にともなう環境負荷の低減に向け、最新技術を活用した温暖化対策を実施し、継続的に設備の入れ替え、新規設備投資などを行うことによりエネルギー使用効率の改善を図っています。一方で、気候変動に伴う被害の激甚化・頻発化が当面は見込まれる情勢であり、事業運営に影響が出る可能性があります。また、Eコマース事業においては法令順守に基づく運営姿勢を貫徹していますが、生物由来製品の売買など、「生物多様性の保全」に対する影響への一部の見方が顕在化することで、ブランドイメージへの被害や、社会的「操業許可」が認められない状態になる可能性があります。

なお、当社グループは「未来世代に向けた地球環境への責任」を重点課題(6つのマテリアリティ)の一つとして位置づけ、環境負荷の低減や生態系に配慮し、電力の再生可能エネルギー化など脱炭素社会の実現を目指しています。また、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識し、2020年6月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)賛同表明を行いました。TCFD提言を参照し、気候変動に関わるリスクを移行リスクと物理的リスクに大別し開示しています。移行リスクの一つとして、炭素税導入を想定しています。CO2排出量に応じた炭素税導入やその規制・罰則が厳格化される場合、税負担が将来において増すなど財務面での影響を受ける可能性があります。当社グループは事業を運営するために、データセンター、オフィス、物流センターなどにおいて電力を使用しています。データセンターによる消費電力量は当社グループ全体の約90%であることから、データセンターの効率性を高めることと再生可能エネルギー化とがリスク回避につながると考えます。2030年度までにグループ全社の事業活動での温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることをコミットし、低炭素社会への移行を促進し、移行リスクの低減を図ります。

 

 (4) 人権・倫理に関わるリスク

人権や多様性に関して、当社グループが提供するサービスの内容や経営陣や従業員の発言・行動・意思決定が社会的な批判を受ける、柔軟性や想像力の不足によりAI倫理、生物多様性などの新たな倫理・価値観の変化に適切に対応できないことにより社会からの信頼を失う、などの可能性があります。これに対し当社グループは、リスクマネジメント委員会の下に「人権分科会」を設置し、グループ会社横断の認識・知識の共有、およびリスクマネジメントに取り組んでおり、これらの可能性の顕在化の低減に努めています。

 

7. 安全保障や国際関係に関わるリスク

経済安全保障関連における対応の失敗、安全保障事案へのサービスの悪用などにより信用・評判の低下を招く、当社グループの拠点や事業が国際紛争などに巻き込まれる蓋然性が高まる、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 有事に関わるリスク

一般的な紛争、クーデター、テロ等の発生、近時の経済安全保障体制の進行により、これまでの政治、経済の枠組みを大きく変える事態が発生した際、適切な対応を行わなかった場合は当社グループの事業に大きな影響があります。たとえば、当社グループのサービス運営が制限される、事業の継続に間接的に必要となる設備やサービス等をサプライヤーやメーカーから適切に調達できなくなる、ネットワーク回線の断絶により、ユーザーがサービスを利用できなくなる、広告掲載の取りやめ、広告掲載量の減少、有料サービス利用者の減少などにより、収益が減少する可能性があります。また、海外での通信や交通に支障が発生した場合は、海外関係者および海外に在住する当社グループ従業員との連絡・連携に支障が生じ、事業運営に影響を与える可能性があります。

なお、近時のウクライナ情勢や東アジアにおける国家間の情勢の変化に関連して、我が国においても資源・エネルギー価格の高騰や為替の急激な変動、サイバー攻撃の増加等の不確実性の影響が生じえます。これらの影響を最小限のものにすべく、当社グループでは従前より、事業を展開している各国・各地域における有事に関わるリスクに係る情報の収集およびモニタリングを継続的に実施しており、地政学的要素を勘案しながら、安定的な事業運営に取組んでいます。また、グローバルな事業基盤の強化及び拡充を図り、複数の利益の創出が継続的に可能となる市場を確保することで、特定の国・地域においてリスクが顕在化した場合でも業績への影響が最小限になるよう努めています。

 

8. 自然災害等のインシデントに伴う事業継続に関わるリスク

当社グループの主要拠点や物流拠点、データセンターが集中する首都圏が地震等で被災する、大規模停電や大規模通信障害で事業継続や意思決定・伝達が大きな影響を受ける、グループ全体での拠点被災想定や影響度評価が未整備で非常時対応が十分にできない、新型コロナウイルス感染症の状況が長引くことで他のリスクと複合して未知のリスクに発展する、などのリスクが生じる可能性があります。個別には以下のような例があります。

 

(1) 自然災害に関わるリスク

当社グループの事業は、地震等の自然災害、火災等の事故、昨今の新型コロナウイルス感染症など、広範囲な感染症の発生、それらによる、建造物の破壊、ライフラインの停止、回線障害、都市機能の停止、入館禁止措置等の影響を受けます。また当社グループの物的、人的資源の大部分は東京に集中しています。当社グループでは、システムの冗長化やデータセンターの多重化、分散化などの環境整備を進めるとともに、こうした災害等の発生時には、速やかにかつ適切に全社的対応を行うよう準備しています。しかしながら、事前の想定を大きく超える事故等である場合、業務継続、復旧計画がうまく機能しない可能性があります。さらに、当社グループが所有する建物に起因する火災等の災害が発生した場合には、被害の収束、再建、周辺への補償等を含む対策により、業績等に影響がでる可能性があり、当社グループの事業、業績、ブランドイメージ等に影響が出る可能性があります。

2019年12月より発生の報告が続いていた新型コロナウイルス感染症の流行は拡大を続け、世界的な規模で経済活動に影響を及ぼしています。現時点においてもその収束は見通せない状況ですが、当社グループでは、各種の報道機関が同感染症の拡大について報じ始めた2020年1月より事象の重大性・深刻度についての認識を深めており、同感染症の流行拡大による事業への影響度を測り、関連して生じうる不確実性を低減させるべく、代表取締役社長の主導のもと、総合的なリスク評価、および対応方針を策定して参りました。リスク評価および対応方針を策定した代表的なものとしては、従業員の罹患、各事業拠点や施設の入館停止、リモートワークの推進に伴う生産性の変化などがあります。ただし、現時点での収束が見通せないこともあり、上記の事前想定を超えた内的要因(生産性の低下や設備投資の増加など)、外的要因(売上収益の減少など)により、通期連結業績にも影響が出る可能性があります。それらへの対応のため、当社グループは引き続き本件への管理体制を強化していき、感染対策の徹底等、従業員の安心・安全の確保に努めながら、グループ一丸となってリスク管理に不断に取り組んで参ります。

また、物理的リスクの一つとして、データセンターの機能停止、機能低下を想定しています。気候変動がもたらす自然災害、火災等によりデータセンターが建造物の破壊、回線障害の影響による機能の停止ないし低下により主要サービスを安定的に提供できなくなることから、財務面での影響を受ける可能性があります。影響を緩和するため、システムの冗長化やデータセンターの多重化、分散化などの環境整備を進めています。データセンターは日本国内においては北九州DC(福岡県)と白河DC(福島県)に東西分散させており、海外はアメリカ(ワシントン州)に構築し、リスク分散を図っています。気候変動をグループの重点リスクと位置づけ継続して必要な対策を実施し、リスクの低減に努めていますが、想定を超える大規模な自然災害等により被害を受け、サービスの継続に支障を期した場合には、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。

 

(2) インシデントに関わるリスク

 グループ会社のオフィスや倉庫、店舗などに対する外部からの襲撃や火災等の想定にグループとして把握や対策が不十分である、グループ会社各社での事故やインシデントへのグループとしての態勢が未熟で把握・対応が十分にできない、サービス提供において使用しているクラウドコンピューティングサービスの障害などの影響が事業継続にも影響を与える、データセンターやシステム構成の冗長性の未担保を一因として不具合発生時に影響が拡大する、などのインシデント発生および事業継続に関わるリスクが生じる可能性があります。これらに対して当社グループは、正確な現状認識に基づく実効性のあるBCP(事業継続計画)の確立と、拠点や依存対象の分散化、冗長性の担保等の施策により、リスクが顕在化した場合でも業績への影響が最小限になるよう努めています。

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