文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「投資家の皆様の資産形成に役立つ」ことを事業目的としております。「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つ」ファイナンシャル・サービス事業と「投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供する」アセットマネジメント事業を拡大し、投資家の皆様の資産形成に役立つことで、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとして成長していきたいと思っております。
(2)経営環境
① 基本的経営環境
金融庁の「平成27事務年度 金融レポートについて」は、「我が国の家計金融資産の構成等を他の先進国と比較してみると、現預金比率が高く、株式・投信等の比率が低いといった特徴がある。株式・投信等を直接に保有している比率は、米国が3割を超えているのに対し、我が国では1割強に留まっている。(47頁)」、我が国の預金は長期にわたり、低金利が続いていますので、「家計金融資産の構成にこうした違いがあることは、米英と比べ、我が国の家計金融資産の伸びが緩やかなものに留まっていることの一因となっているものと考えられる(47頁)」、「高齢化が進む中でいかに老後の資産を形成するか、また、勤労世代の資産形成をいかに行っていくかが重要な課題である。公的年金等にも自ずと財政的な制約がある中では、勤労世帯の自助努力を促し、安定的な資産形成を進めることを実現していくことが重要であると考えられる。(49頁)」として、いわゆる「貯蓄から資産形成」を政府として進めていく旨が記載されています。
その一環として、国民の資産形成のために、NISA、つみたてNISAやiDeCoなど資産形成を税務上優遇する制度が創設されました。
前述のとおり、当社グループは、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つ」ファイナンシャル・サービス事業と「投資家の皆様の資産形成に役立つために、投資家にとって望ましい投資信託を提供する」アセットマネジメント事業を行っています。
当社グループの事業目的は、政府の指針・政策に適合しており、当社グループの事業は、我が国の現状と政府の指針・政策を背景とする需要が存在しますので、当社グループの基本的な経営環境は良好であると考えております。
また、当社グループは、国内外の投資信託をはじめとする金融情報をデータベースに蓄え、このデータベースを基盤として、順次提供情報の質的・量的拡充に努めてまいりました。また、より多くの一般投資家の皆様に当社グループの比較・評価情報の意義・内容を理解していただき、当社グループの客観的な比較・評価情報を入手する機会を増加させ、投資信託をはじめとする金融情報なら「モーニングスター」とのブランドを社会的に確立し、多くの一般投資家の信頼と利用を拡大してきました。これらの金融情報を金融機関、一般投資家へ提供するASPやアプリケーションの開発にもかなりの資金を投資してきました。
このように、一般投資家に金融情報についての社会的ブランドを確立し、金融情報のデータベースを構築し、さらにそれを収益化することは容易ではなく、当社グループと同じ事業形態で、ファイナンシャル・サービス事業に参入するのは困難であり、投資信託を中心とする金融情報に関しては、当社グループは他の追随を許さないリーディングカンパニーとなっています。
当社の大株主であり、かつ、提携先であるモーニングスター・インクグループ(Morningstar, Inc. 米国モーニングスター・インクとその子会社および関連会社)は、投資信託を中心に、様々な金融商品に関する調査分析情報を提供するグローバルな運用調査機関であり、北米、欧州、アジア・オセアニアの20カ国の拠点でビジネスを展開しています。
当社は、モーニングスター・インクとの間でライセンシング・アグリーメントを締結し、モーニングスター・インクの商標および評価方法の使用等を認められています。米国での知名度および評価が高いモーニングスター・インクの「モーニングスター」のライセンスを使用できることは、当社にとって大きなメリットがあります。
また、当社グループは、モーニングスター・インクとの提携で、モーニングスター・インクの米国を中心とする海外金融データベースや様々な金融商品に関する調査分析情報を利用できるなど、海外金融情報に関して優位な立場にあります。
当社グループのアセットマネジメント事業は、当社グループの金融情報のデータベースやモーニングスター・インクの海外金融情報を利用して、投資信託を組成、運用することができます。
当社グループは、親会社であるSBIホールディングス株式会社とその傘下に擁する金融関連のグループ企業各社と緊密な関係を保つことで、相互のシナジー効果によって競争力の強化を図ることができ、効率的な経営と事業展開を追求していくことができます。
② 最近の経営環境
2 事業等のリスク に記載のとおり、当社グループは、投資信託を中心とした金融情報を提供し、投資信託を組成、運用しています。
そのため、投資信託市況に影響を受け、投資信託の構成要素である株式市況、株価、為替、市場金利の影響も受けます。
当社グループのアセットマネジメント事業は、運用する投資信託の運用残高の一定割合の信託報酬を得ています。
特に、子会社 SBIアセットマネジメント株式会社が運用する公募追加型株式投資信託は、投資信託への資金流出入額と投資している株式の株価により、運用残高が変動し、信託報酬が変動します。
当連結会計年度(2021年4月1日から2022年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の拡大により緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返し発令され、経済活動の停滞や個人消費の低迷が続く厳しい状況で推移しました。
当社グループの事業に関連性の高い投資信託市場においては、ETFを除く公募追加型株式投資信託の純資金流入額が、前連結会計年度(2020年4月1日から2021年3月31日まで)の3兆1,179億円から当連結会計年度は9兆6,885億円と大幅に増加しました。一方、当連結会計年度末の日経平均株価は、前年度末比4.6%下落し、27,821円となりました。
このような経営環境下で、当社グループのアセットマネジメント事業は、公募のインデックスファンドを中心に運用するSBIアセットマネジメント株式会社の当連結会計年度末の運用残高が、前連結会計年度末の4,530億円から2.26倍に拡大し、1兆224億円となりました。
また、地域金融機関の有価証券運用の高度化と多様化を支援するSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社とSBI地方創生アセットマネジメント株式会社の2社合計の当連結会計年度末の運用残高は、前連結会計年度末の1兆8,879億円から10.5%増加し、2兆859億円となりました。当社グループ全体の当連結会計年度末の運用残高は、前連結会計年度末の2兆8,691億円から28.0%拡大し、3兆6,976億円となりました。
ファイナンシャル・サービス事業のメディア・ソリューションは、新型コロナウイルス感染症は、2022年3月に全地域のまん延防止等重点措置が解除され、経済活動が持ち直しに向かうことが期待されるものの、依然として先行きが不透明な状況にあります。
新型コロナウイルス感染症への対応として、当連結会計年度は、対面での資産運用セミナーが開催できない状況が続きましたが、対面セミナーをオンライン中心に切り替えるとともに、対面とオンラインを合わせたハイブリッド型セミナーを開催することで、セミナーの売上と、併せてWEB広告の売上も前連結会計年度比で増加いたしました。
今後は、規模・回数の制限のない対面によるセミナーも開催できるのではないかと考えております。
一方、インターネット上で集客するオンラインセミナーは年間3万人以上の参加者を集めるようになりました。2023年3月期もオンラインセミナーの集客に努め、メディア・ソリューションの収益基盤を拡大したいと考えております。
今
一方、ファイナンシャル・サービス事業のデータ・ソリューションは、金融機関の販売員の方に顧客への商品説明に使っていただくタブレットアプリによるファンドデータの提供を中心に、株価や新型コロナウイルス感染症の影響をあまり受けることはなく、堅調に推移しています。
(3)経営戦略
当社グループは、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つこと」を事業目的に、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとして成長していきたいと考えております。
そのために、当社グループの信用力・ブランド力の向上を図るとともに、提供情報・商品を発展・拡充して、投資家のためにより有用な情報を提供すること、投資家本位の投資信託を提供すること、そのための情報提供チャネル、販売チャネルを開拓していくこと、フィデューシャリー・デューティー(金融機関の顧客本位の業務運営)へ適格に対応することなどにより、中長期の事業運営を行なっていく所存です。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
具体的には以下の施策に重点を置いて中長期の事業運営を行なってまいります。
(新型コロナウイルス感染症への対応について)
新型コロナウイルス感染症は、2022年3月に全地域のまん延防止等重点措置が解除され、経済活動が持ち直しに向かうことが期待されるものの、依然として先行きが不透明な状況にあります。
新型コロナウイルス感染症への対応として、当連結会計年度は、対面での資産運用セミナーが開催できない状況が続きましたが、対面セミナーをオンライン中心に切り替えるとともに、対面とオンラインを合わせたハイブリッド型セミナーを開催することで、セミナーの売上とWEB広告の売上も前連結会計年度比で、増加いたしました。
2023年3月期(2022年4月1日から2023年3月31日まで)においては、規模・回数の制限がない対面でのセミナーを開催できるのではないかと考えております。
一方、セミナー会場に集客して対面で開催するセミナーの減少による影響をカバーするため開始したインターネット上で集客するオンラインセミナーは年間3万人以上の参加者と集めるようになりました。2023年3月期もオンラインセミナーの集客に努め、メディア・ソリューションの収益基盤を拡大したいと考えております。
(主な課題とその施策)
当社グループは、「中立・客観的立場から豊富で偏りのない金融情報を提供し、投資家の皆様の資産形成に役立つこと」を事業目的に、金融を中心とした情報社会に不可欠な企業グループとして成長していきたいと考えております。そのために、当社グループの信用力・ブランド力の向上を図るとともに、提供情報・商品を発展・拡充して、投資家・消費者のためにより有用な情報を提供すること、そのための情報提供チャネルを開拓していくことなどにより、中長期の事業運営を行なっていく所存です。
中長期の経営目標を達成するために、具体的には以下の施策に重点を置いて中長期の事業運営を行なってまいります。
① 評価情報の中立性および信頼性の更なる向上
当社グループの営業基盤は、当社グループが行なう各種の評価情報の客観性と中立性にあると考えております。そのため、ユーザーからの当社グループの信頼性が損なわれないように、評価情報が客観的事実に基づくものか否かのチェック体制を構築しております。今後も評価情報の客観性を高め、中立性の確保を図り、信頼性をさらに向上させる必要があると考えております。
② ブランディング
当社グループの知名度(ブランディング)を更に強固なものにするために、より多くの一般投資家・消費者の皆 様に当社グループの比較・評価情報の意義・内容を理解していただく必要があり、当社グループの客観的な比較・評価情報を入手する機会を増加させる必要があります。そのためには、「モーニングスター」「株式新聞」「サーチナ」「SBIアセットマネジメント」「Carret Asset Management」「SBIボンド・インベストメント・マネジメント」「SBI地方創生アセットマネジメント」のブランドを社会的に確立する努力が不可欠であり、ブランドの確立により、ウェブサイトほかの広告価値や提供データの利用価値を高め、業績の向上を図りたいと考えております。
③ フィデューシャリー・デューティー(金融機関の顧客本位の業務運営)への対応
政府が2016年6月2日に閣議決定した「日本再興戦略2016」のなかに「金融機関に対しては、利益相反の適切 な管理や運用高度化等を通じ、真に顧客・受益者の利益にかなう業務運営がなされるよう、フィデューシャリー・デューティーの徹底を図ることとし、これにより、国民の安定的な資産形成への貢献を促す」とあります。これは当社の事業の目的と合致するものであります。
また、金融庁は2016年9月15日に公表した「平成27事務年度金融レポート」のなかで、金融機関に対し、(1) 良質な金融商品の提供と投資信託選定プロセスの透明化、(2) 金融機関と顧客の間にある「情報の非対称性」の解消と顧客本位の業務運営、(3) 顧客の金融リテラシー強化と顧客の「投資への興味促進」を求めています。当社は、これらのソリューションとなるサービスを金融機関に提供してまいりました。
(1)について、当社は、金融機関に投資信託のラインナップ分析や導入ファンドの選定支援などのファンドレポートを提供しております。(3)について、当社は投資家の皆様に金融情報をWEB上で無料提供し、資産運用セミナーには無料でご招待しております。
特に、(2)について、金融機関の販売員の皆様が顧客である個人投資家に、適切に金融商品の説明ができるツールとしてタブレットアプリを提供しております。その台数の増加に努め、より多くの投資家が適切な金融商品の説明を受けるようにすることで、フィデューシャリー・デューティーに貢献し、同時に当社グループの安定した収益基盤を拡大していきたいと考えております。
④ 提供情報の拡大および情報環境の変化に迅速かつ適切に対応できる体制の構築
当社は、国内外の投資信託をはじめとする金融情報をデータベースに蓄え、このデータベースを基盤として、順次提供情報の質的・量的拡充に努めてまいります。また、スマートフォンやスマートタブレットなどの最新の情報端末による金融情報提供を行ない、金融市場、インターネット環境の変化に適宜対応する努力をしてまいりました。
2011年3月期に開始したタブレットアプリによるファンドデータの提供は、当連結会計年度末には114,680台となり、タブレットアプリ「Wealth Advisors」によるデータ提供は、当社の収益の大きな柱となりました。
当社グループは、国内・海外のファンドデータ、株式、企業情報、暗号資産等のデータをさらに拡充し、他社の追随を許さない総合的金融情報を提供する体制を整え、情報環境の変化に対応できる体制を構築し、常に最新の情報機器、コミュニケーションツールを活用した商品・サービスを提供していきたいと考えております。
そのために、提供サービスの品質向上、情報データベースの拡充のための設備投資を怠りなく実施していきたいと考えております。
⑤ アセットマネジメント事業の強化
当社グループは、アセットマネジメント事業の強化を図ってきました。
当社グループは、これまで子会社SBIアセットマネジメント株式会社が行なっている公募追加型株式投資信託の運営を中心にアセットマネジメント事業を行なってきましたが、2019年2月に米国の資産運用会社CarretAsset Management LLCを子会社とし、同社が運営する海外債券型ファンド等について、アセットマネジメント事業の範囲を拡大いたしました。
2019年12月に、主として、地域金融機関の自己資金を受託する私募の投資信託を運用するSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社およびSBI地方創生アセットマネジメント株式会社を子会社といたしました。
これにより、運用する投資信託の種類・範囲と残高が拡大し、グローバル・アセット・アロケーションの進展に対応し、収益の安定、拡大を図ることが可能な体制となりました。
また、当社グループが運営するファンドの運用資産残高は、2019年3月末の6,377億円から2021年3月末に28,691億円、2022年3月末には36,976億円と大幅かつ急速に拡大いたしました。
今後も、公募追加型株式投資信託を提供するSBIアセットマネジメント株式会社が、投資家へ低コストの投資信託を提供し、投資家の資産形成に貢献することで、当社グループの収益を拡大したいと考えております。また、私募の投資信託を運用するSBIボンド・インベストメント・マネジメント株式会社及びSBI地方創生アセットマネジメント株式会社は、地域金融機関から預かった資金を、収益性を高く運営して、地域金融機関の業績に貢献し、同時に、当社グループの運用残高を増加させ、収益基盤を安定的に拡大していきたいと考えており
ます。
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