当事業年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
これに伴い、当社が代理人としての機能を果たす取引について、顧客から受け取る対価の総額で収益認識する方法から、顧客から受け取る対価の総額から第三者に対する手数料その他の支払額を差し引いた純額で収益認識する方法に変更いたしました。
そのため、当事業年度における経営成績に関する説明は、売上高(販売実績)及び売上原価については前事業年度と比較しての増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。
詳細は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における世界経済は、感染力を増す新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の変異株の影響により、全世界的に感染拡大の及ぼす影響が見通せず、不透明な状況が継続しております。各国でワクチン接種を積極的に進めているものの、国・地域ごとのワクチン接種率や経済対策優先等で対応に差異が生じており、未だ厳しい状況が続いております。
我が国経済においても、ワクチン接種の浸透により、一時は新規感染者がピークアウトし、段階的に警戒レベルを引き下げつつ景気対策を開始したものの、新型コロナウイルス変異株の流行に伴う感染者数の再拡大が顕著となった地域における緊急事態宣言等の再発出により、消費活動は依然として低調に推移しており、企業収益においても力強い回復には至らず、引き続き業況は厳しいものとなりました。
当社が属する情報通信・エレクトロニクス業界におきましても、世界規模での新型コロナウイルス感染拡大の長期化に加えて、半導体不足による生産活動の停滞等により、全体として力強い回復基調には至っておりません。
このような事業環境の下、当社では、継続的で安定した事業基盤の構築に向けて、ストリーミング・ネットワーク関連プロトコルスタック開発で長年培ったストリーミング技術を基に、組込みソフトウェアやシステム開発を、要件定義から設計・実装、各種標準規格提案、アプリケーション開発、検証環境構築まで一気通貫で技術提供可能なエンジニアリング・サービスを展開し、経営の安定化を進めてまいりました。特に、お客様の製品開発におけるパートナーの位置付けを目指し、エンジニアリング・サービス、ストリーミング製品(ソフトウェア製品、システムプラットフォーム製品)を組み合わせた付加価値の高いソリューション提案活動に注力してきた結果、ドライブレコーダ開発、VRシステム開発、防犯カメラシステム開発等、数多くの受注獲得が実現いたしました。
以上のような取り組みにより、当事業年度においては、継続的な受注取引を有する既存取引先からの受注拡大(件数・金額)に加えて、新規取引先からの受注獲得が実現した結果、売上高は8億1百万円となりました。また損益面では、プロジェクトマネジメント強化に伴う開発原価低減や経費削減により、営業利益91百万円(前事業年度は営業損失62百万円)、経常利益86百万円(前事業年度は経常損失50百万円)を計上し、当期純利益は69百万円(前事業年度は当期純損失82百万円)となりました。
当事業年度末の資産につきまして、流動資産は7億73百万円(前年同期比1億7百万円増加)となりました。これは主に、現金及び預金の増加1億70百万円、売掛金の減少46百万円、前払費用の減少20百万円等によるものであります。固定資産は32百万円(前年同期比1百万円増加)となりました。これは主に、工具、器具及び備品の増加7百万円、電話加入権の減少5百万円等によるものであります。この結果、資産合計は8億6百万円(前年同期比1億9百万円増加)となりました。
負債につきまして、流動負債は1億80百万円(前年同期比39百万円増加)となりました。これは主に、未払金の増加9百万円、未払法人税等の増加21百万円、未払消費税等の増加16百万円、賞与引当金の増加2百万円、製品保証引当金の増加2百万円、前受収益の減少13百万円等によるものであります。固定負債は14百万円(前年同期比0百万円増加)となりました。これは主に、長期前受収益の増加2百万円、リース債務の減少1百万円等によるものであります。この結果、負債合計は1億95百万円(前年同期比40百万円増加)となりました。
純資産合計につきましては6億10百万円となり、前事業年度末の純資産合計と比べ、69百万円の増加となりました。これは、当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加69百万円によるものであります。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純利益86百万円、売上債権の減少額41百万円、前払費用の減少額20百万円、未払消費税等の増加額16百万円等により、前事業年度末に比べ1億70百万円増加し、当事業年度末には5億92百万円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1億85百万円(前事業年度に使用した資金は47百万円)となりました。これは主に、税引前当期純利益86百万円(前事業年度は税引前当期純損失60百万円)、売上債権の減少額41百万円(前年同期比284.7%増加)、前払費用の減少額20百万円(前年同期比6.9%増加)、未払消費税等の増加額16百万円(前事業年度は未払消費税等の減少額7百万円)等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は10百万円(前年同期比52.7%増加)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出4百万円(前年同期比1176.3%増加)、無形固定資産の取得による支出6百万円(前年同期比8.3%減少)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は4百万円(前年同期比14.5%増加)となりました。これは、リース債務の返済による支出4百万円(前年同期比14.5%増加)によるものです。
(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移
|
2018年 3月期 |
2019年 3月期 |
2020年 3月期 |
2021年 3月期 |
2022年 3月期 |
自己資本比率(%) |
76.3 |
78.6 |
75.9 |
77.7 |
75.7 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
474.5 |
261.2 |
178.1 |
290.6 |
246.3 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
0.1 |
0.1 |
0.8 |
- |
0.1 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
1,324.0 |
602.9 |
72.8 |
- |
906.7 |
自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としております。
(注4)2021年3月期は「キャッシュ・フロー対有利子負債比率」及び「インタレスト・カバレッジ・レシオ」については、営業キャッシュ・フローがマイナスのため、記載しておりません。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当事業年度の生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別の名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
製品 |
|
|
開発サービス (千円) |
570,737 |
151.3 |
標準製品 (千円) |
201,510 |
115.9 |
その他 (千円) |
60,884 |
108.3 |
合計 (千円) |
833,133 |
137.2 |
(注)1.当社は、通信ミドルウェア事業の単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.金額は、販売価格によっております。
b.商品仕入実績
当事業年度の商品仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別の名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
他社製パッケージ製品 (千円) |
- |
- |
その他 (千円) |
392 |
349.5 |
合計 (千円) |
392 |
69.0 |
(注)当社は、通信ミドルウェア事業の単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
c.受注実績
当事業年度の受注実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別の名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
|||
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
製品 |
|
|
|
|
開発サービス |
621,120 |
139.4 |
166,516 |
143.4 |
標準製品 |
166,324 |
110.4 |
17,671 |
29.6 |
その他 |
82,095 |
145.8 |
54,666 |
163.4 |
小計 |
869,541 |
133.3 |
238,854 |
114.1 |
商品 |
|
|
|
|
その他 |
1,053 |
121.2 |
- |
- |
合計 |
870,594 |
133.2 |
238,854 |
114.1 |
(注)1.当社は、通信ミドルウェア事業の単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.金額は、販売価格によっております。
d.販売実績
当事業年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別の名称 |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
製品 |
|
|
開発サービス (千円) |
570,737 |
- |
標準製品 (千円) |
168,865 |
- |
その他 (千円) |
60,884 |
- |
小計 (千円) |
800,487 |
- |
商品 |
|
|
その他 (千円) |
1,080 |
- |
合計 (千円) |
801,567 |
- |
(注)1.当社は、通信ミドルウェア事業の単一セグメントであるため、品目別に記載しております。
2.前事業年度及び当事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前事業年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社 |
18,400 |
3.0 |
118,749 |
14.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産、負債の計上金額及び会計期間における収益、費用の計上金額に影響を与えるような見積りや判断を必要とします。これらの見積りや判断は、当社が継続的に過去の実績、あるいは状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により様々な検討を行い、その見積りと予測を評価して、これらの評価結果を資産、負債、収益及び費用の計上金額についての判断の基礎としております。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の影響等、不確実性が大きく、将来事業計画等の見込み数値に反映させることが難しい要素もありますが、当事業年度末現在において入手可能な情報を基に検証を行っております。
(繰延税金資産の回収可能性の評価)
繰延税金資産の回収可能性について当社は、企業会計上の資産及び負債と、課税所得計算上の資産及び負債の間に生じる一時差異の影響を、法定実効税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債に計上しており、かつ繰延税金資産について回収可能性がないと見込まれる金額まで評価性引当額を計上しております。つまり、評価性引当額の計上に際しては、将来の収益予想、課税所得予測を考慮しておりますが、当社が繰延税金資産を回収するには、十分な課税所得を計上する必要があります。
当事業年度末においては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が今後も一定期間続くと考えられ、終息が見通せない状況にあること、及びエンジニアリング・サービス主体の事業構造への転換途上であるため、翌事業年度の事業計画の達成可能性に不確実性が存在すること等を踏まえ、中長期的に不確実性が高い状態が続くと想定されることも考慮し、一定のストレスを負荷した課税所得見積額とすることが合理的な算定に寄与すると判断し、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っております。
また、当該見積り及び仮定について、将来の不確実な経済条件の変動により見直しが必要となった場合は、翌事業年度の財務諸表において認識する繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に影響を与えることとなり、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 当事業年度の財政状況及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.売上高
当事業年度の売上高は、強みであるストリーミング技術を基に、ネットワークからメディア配信/管理まで一気通貫で技術を提供できるエンジニアリング・サービスを中心に営業活動を展開し、お客様の製品開発におけるパートナーの位置づけを目指して、エンジニアリング・サービス、ストリーミング製品(ソフトウェア製品、システムプラットフォーム製品)を組み合わせた付加価値の高いソリューション提案活動を推進してきた結果、8億1百万円となりました。
b.売上原価
当事業年度の売上原価は4億19百万円となりました。
c.販売費及び一般管理費
当事業年度の販売費及び一般管理費は2億90百万円(前年同期比16.4%減少)となりました。これは主に、人件費、研修費、販売促進費、研究開発費の減少によるものです。
d.営業利益
当事業年度の営業利益は91百万円(前事業年度は営業損失62百万円)となりました。これは主に、売上高の増加に伴う売上総利益の増加によるものです。
e.経常利益
当事業年度の経常利益は86百万円(前事業年度は経常損失50百万円)となりました。これは主に、営業利益及び営業外費用(固定資産除却損)の計上によるものです。
f.当期純利益
当事業年度の当期純利益は69百万円(前事業年度は当期純損失82百万円)となりました。これは主に、経常利益及び法人税、住民税及び事業税の計上によるものです。この結果、1株当たり当期純利益は11.06円となりました。
g.財務状況
当事業年度末における総資産は8億6百万円(前年同期比15.8%増加)となりました。これは主に、現金及び預金、工具、器具及び備品の増加、売掛金、前払費用、電話加入権の減少によるものです。また、当事業年度末における純資産は、6億10百万円(前年同期比12.8%増加)となりました。これは、当期純利益の計上によるものです。
h.キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローについては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
i.当社の資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資金需要のうち主なものは、製造原価のうちの労務費、外注加工費、販売費及び一般管理費等の運転資金、並びに設備投資資金であります。特に販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は、技術革新の速い情報通信・エレクトロニクス業界におきまして継続的に投資していくことが不可欠であると認識しております。また、新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞等、事業遂行中に発生する不測の事態に対処するためにも、当座の必要資金を十分に確保した財務安定性は不可欠であると認識しております。
これらを踏まえ当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金並びに設備投資資金とも自己資金を充当することを基本としています。また一方で、先行投資的な資金も必要なことから事業運営上必要な資金は、手元流動性の高い現金及び現金同等物として保持していく方針であります。なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は5億92百万円であります。
j.当社の経営成績に重要な影響を与える要因
当社の経営成績に重要な影響を与える要因に関しては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
k.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社の経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、売上高総利益率とROE(自己資本利益率)であります。当社では、事業環境・社会情勢の変化を踏まえ、継続的で安定した事業基盤の構築に向け、強みであるストリーミング技術を基に、ネットワークからメディア配信/管理まで一気通貫で技術を提供できるエンジニアリング・サービス(受託開発)に注力する事業方針への転換を図り、財務体質の健全性を維持しながら安定的に売上高を計上できる事業構造の実現を目指しております。また、収益性を重視し、毎事業年度において売上高総利益率50%を目標とするとともに、ROEの向上にも注力しております。なお、当事業年度における売上高総利益率は47.7%となりました。
(3)経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、新型コロナウイルス感染症の終息時期や、経済活動、社会活動の回復速度を見通すことが引き続き困難な状況でありますが、当社が属する情報通信・エレクトロニクス業界においては、5GやDXをはじめとする技術革新が非常に早いスピードで進行しており、お客様の新規開発投資は今後とも拡大を続けていくものと考えております。
このような事業環境の下、当社としては、強みであるストリーミング技術を基に、ネットワークからメディア配信/管理まで一気通貫で技術を提供できるエンジニアリング・サービス(受託開発)に注力し、早期に経営の安定化をはかることが急務であると認識しております。
また、持続的な成長を実現させるためには、エンジニアの確保・育成も課題となっております。当社では事業基盤を支えるエンジニアの新卒・中途採用を強化するとともに、先端技術の習得と新製品・新サービスの企画・開発・品質管理を担うことのできる付加価値の高い人材の育成を進めてまいります。
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