課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、あらゆる事業者のバックオフィス業務の改善に貢献することを使命とし、金融機関をはじめとしたさまざまなパートナーと共に支援を行っております。中でも日本の事業者の99%を占めながら、情報を入手しにくいことで不利益を受けることが多い個人事業主と中堅中小企業の支援に注力してまいりました。時流を捉え多様なニーズに応えうる有益で価値あるサービスを、リーズナブルな価格で提供する「サービスの水道哲学」を企業哲学として、いただいた報酬以上の価値を顧客に提供することを事業のコンセプトとしております。そして全社員が愛される人物となり、「関わる全ての人と企業を物心両面で豊かにする」ことを、事業活動を行う上での目標とし、わが国経済の活性化に貢献できる経営に努めております。

 

(2)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは当面、収益力の向上を図ることが優先課題であると認識しております。従いまして、経営成績や事業の進捗を把握する上で、売上高営業利益率と売上原価率の変動要因の把握を重視しています。また、全社的にストック型のビジネスモデルを基本として事業を展開していることから、契約継続率についても重要指標として捉えております。

 今後の施策としましては、引き続き各セグメントにおいて、既存チャネルの深耕を進めると共に、マーケティングオートメーションを積極的に取り入れることで営業機会の増強に努めると共に、販売チャネルの拡大に取り組むことでトップラインを引き上げてまいります。また、マーケットの拡大や顧客ニーズの多様化に対応するため、属人的なスキルやノウハウに頼らないサービスオペレーションの構築に努めます。同時に、それぞれが持つ暗黙知を形式知にすることで高品質なサービスに昇華させ、蓄積データの活用や顧客とのタッチポイントを戦略的に組み合わせることで、画一的ではなくパーソナライズされたサービスの提供に努めます。これにより顧客満足度を上げつつ営業及び顧客フォロー効率を高め、ストック部分の売上高を着実に増加させてまいります。また、ビジネスソリューション事業における「オフィスステーション」シリーズの拡販においては、既に何らかのプロダクトを利用いただいているユーザーについて、アップセル・クロスセルの取り組みに注力することでLTVの向上に努めてまいります。

 コストコントロールについては、主にアカウンティングサービス事業においてAI活用を更に推進することで処理工程における生産性の向上を図ること、また全社的にさまざまなITツールを活用し業務効率化を追求することなどを通して、ローコストオペレーションに継続して取り組んでまいります。

 

(3)経営環境

 国内景気は新型コロナウイルス感染症の再拡大により停滞感が続いたものの、ワクチン接種が進んだことに伴い、社会経済活動の正常化に向けた持ち直しとして、生産や設備投資等に回復の動きが見られるようになりました。波状的に出現する変異型ウイルスへの対抗策を講じながらの事業活動ではあるものの、ニューノーマルに適応して事業を継続・発展させるために、自動化、非対面、非接触等を実現するためのIT投資への関心はますます高まっており、バックオフィスにおいても労働生産性向上を目的とした各種ソリューションへの期待は強まっていると認識しております。このような状況のもと、当社グループといたしましては、引き続きあらゆる面でコスト競争力を追求し改善を継続的に進めると共に、時流を捉え多様なニーズに応えうる事業展開をしてまいります。

 コロナ禍がもたらした行動変容の筆頭にIT化の推進が挙げられますが、日本のデジタル社会実現の司令塔としてデジタル庁が発足し、2021年12月には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。政府がコロナ禍で打撃を受けた企業や個人に対して講じている様々な支援策や、社会保険手続き等の行政手続きにかかるコスト削減の取り組みにもデジタルファーストの原則が適用されており、利便性を享受するためにはテクノロジーの活用が必須となります。税分野においては2023年10月に「インボイス制度」の導入が控えていますが、これに対応するためには請求書や領収書のデジタル化、キャッシュレス対応、税や社会保険手続きの電子化を促進させていく必要があります。免税事業者が制度開始と同時に適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、2023年3月31日までに登録申請書を税務署に提出しておく必要があり、その期限まで一年を切りました。当社グループでは小規模事業者や個人事業主をはじめ様々な業界・業種の相談先として機能できるよう準備を進めております。

 社会保険手続きの電子化については、2022年10月から社会保険の適用範囲が拡大され従業員数101人以上の企業が対象となり、さらに2024年10月からは51人以上の企業と段階的に適用が予定されています。また短時間労働者の要件が見直されることから対象者は確実に増加することになります。それに伴い増大する申請業務に企業や社会保険労務士が対応を迫られることはマーケットの広がりと捉えており、今後ますます大きなチャンスを迎えることになるものと考えております。

 昨今、あらゆる企業がデジタル社会に最適化するために、生産性向上に向けた取り組みをより一層推進しており、バックオフィス業務の外部委託やITの活用促進の動きが強まってきております。この流れは当社グループにとってはマーケットの拡大であり、全事業の成長速度を加速させる機会と捉えております。今後も各事業間のシナジーを高め、更なるワンストップ・サービスの構築を図ってまいります。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 更なるシナジーを生む事業体制の強化

 当社グループはバックオフィスの業務改善により、事業経営の持続的な成長を支援することを使命として事業活動を展開しておりますが、バックオフィス全般のコンサルティングサービスを提供できる点、全国の地域金融機関をパートナーとしている点、税理士・公認会計士及び社会保険労務士の会員ネットワークを持つ点は、ほかにはない当社の強みであると認識しております。長期化するコロナ禍において、国内需要は持ち直してきつつあるものの景況感は業界によって温度差があり、企業経営は難しい舵取りを強いられております。中でも中小企業は従来から抱える人手不足や労働生産性の向上などの課題に加え、コロナ禍による行動変容により生じた顧客ニーズの変化やサプライチェーンの見直し、デジタル化への取り組みなど新たな課題への対応が求められています。中小企業の経営支援を行う上で金融機関や税理士・公認会計士は非常に重要な役割を担っており、継続的な伴走型の支援が必要とされております。特にコロナ融資制度の返済据え置き期間の終了に伴い返済負担が増加する企業や、事業の見直しや新たな事業展開のため、事業計画の作成や補助金活用を検討する経営者に対して機動的に支援できる体制の強化が必要であると認識しております。多様なチャネルによるアプローチを駆使し一貫性が高いサービスを提供することで、あらゆる事業者の活性化に貢献してまいります。

 

② 業務効率化による利益率向上への取り組み

 利益率向上のための取り組みとして、業務効率化は不可欠であると認識しております。その実現に向けて、業務処理工程の見直し、高度な判断を必要としない比較的単純な情報処理、顧客からの問い合わせ等に対する一次対応、顧客属性に合わせた情報発信などへのITの積極活用を継続してまいります。属人的なサービス提供は品質に均一性を欠くのに加え、量的・質的限界を迎えやすくマーケットの拡大や顧客ニーズの多様化への対応に時間を要することになります。全社的に属人的なスキルやノウハウに頼らないサービスオペレーションを構築することにより、より多くの顧客に効率的にアプローチできる体制を整備してまいります。同時に、求められているのは画一的ではなくパーソナライズされたサービスであると認識しており、顧客のエンゲージメントを高めていくため、蓄積データの活用や顧客とのタッチポイントを戦略的に組み合わせて顧客満足の向上につとめてまいります。

 

③ 導入ハードルを下げた付加価値の高いサービスの開発

 「オフィスステーション」シリーズは、2020年4月1日からの大企業(資本金または出資金額が1億円を超える法人)を対象とした社会保険手続きの電子申請義務化、健康保険組合に対する手続きなど電子化の対象範囲の拡大、コロナ禍により加速したHR領域でのIT化などに対応すべく、機能開発ならびにシリーズ展開を行ってまいりました。管理部門では多様な情報管理を行うことに加え、昨今HR領域では市場に実に多くのHRツールが出現したことにより、複数のソフトウエアを導入することによる情報連携の複雑化、既存ツールとの機能重複などの事象が発生しております。そのような現状を踏まえ、当社グループでは導入を検討する企業が自社にとって必要な機能ごとに導入いただけるよう、アラカルト方式の販売を行っております。それを前提として開発の優先順位を検討すると共に、顧客生涯価値(LTV)の最大化を企図した機能改善の開発ならびにカスタマーサクセスの強化に取り組んでまいります。

 

④ 優秀な人材の確保と育成

 当社グループの今後の更なる成長を実現するためには、優秀な人材の確保及び育成が重要な課題であると認識しております。当社グループの唯一最大の財産は「人」であるため、採用後は「他社で3年で学ぶことを1年でマスターする」の教育方針に基づき、営業力・人間性の両面から3倍速の成長を支援しております。各人が能力を開発することが提供サービスの品質向上を加速させ、経営成績向上の重要な原動力となります。テレワークの推進、育児等と仕事が両立しやすい環境の整備、成果を正当に評価する仕組みの構築を進めるなどして、全社員の能力が最大限発揮できる環境づくりを行うことで、組織体制の強化に取り組んでまいります。合わせて当社の経営理念に共感し、高い意欲を持った人材を採用するために積極的な新卒・キャリア採用活動を行い、早期に戦力化するための育成体制を強化することで、持続的な成長を支える重要資本である人材に対する中長期的な投資を継続してまいります。

 

⑤ コーポレート・ガバナンスの強化

 持続的な成長と企業価値向上のためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが不可欠であると認識しております。当社グループが事業活動を行う上では、顧客の個人情報や過去に当社グループと取引のあった企業を含む会員企業の各種機密情報等を扱うことが多くあります。外部からの不正な手段によるコンピューター内への侵入や、従業員等の過誤によりこれらの情報が漏洩した場合、当社グループの著しい社会的信用低下を招き、その結果、経営成績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクを回避するため、業務フローの厳格な運用、継続的かつ定期的な情報管理及びインサイダー取引に関する社内教育の実施、保管データへのアクセス制限などのシステム運用整備、データを取り扱う外部委託先に対する秘密保持契約の取り交わしを行っております。今後も事業規模の拡大に対応した内部管理体制の整備を進め、より適正かつ効率的な経営を遂行し、事業基盤の強化に努めてまいります。

 

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