(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における連結売上高は、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業、ライフサイエンス事業、電子材料事業等で売上を伸ばしたことにより2,525,773百万円(前年度比15.2%増)となりました。営業利益は、229,702百万円(前年度比38.8%増)となりました。税金等調整前当期純利益は260,446百万円(前年度比10.4%増)、当社株主帰属当期純利益は211,180百万円(前年度比16.5%増)となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
(事業セグメント別の連結売上高)
セグメント |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
ヘルスケア |
579,351 |
801,743 |
222,392 |
38.4 |
マテリアルズ |
566,226 |
627,118 |
60,892 |
10.8 |
ビジネスイノベーション |
761,706 |
763,549 |
1,843 |
0.2 |
イメージング |
285,236 |
333,363 |
48,127 |
16.9 |
連結合計 |
2,192,519 |
2,525,773 |
333,254 |
15.2 |
ヘルスケア部門の連結売上高は、前年度の579,351百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより222,392百万円増加し、801,743百万円となりました。マテリアルズ部門の連結売上高は、前年度の566,226百万円に対し、電子材料事業、グラフィックコミュニケーション事業等で売上を伸ばしたことにより60,892百万円増加し、627,118百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の連結売上高は、前年度の761,706百万円に対し、ビジネスソリューション事業で売上を伸ばしたことにより1,843百万円増加し、763,549百万円となりました。イメージング部門の連結売上高は、前年度の285,236百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより48,127百万円増加し、333,363百万円となりました。
(事業セグメント別の営業利益)
セグメント |
前連結会計年度 (百万円) |
当連結会計年度 (百万円) |
増減額 (百万円) |
増減率 (%) |
ヘルスケア |
56,361 |
100,536 |
44,175 |
78.4 |
マテリアルズ |
51,344 |
68,386 |
17,042 |
33.2 |
ビジネスイノベーション |
73,086 |
57,914 |
△15,172 |
△20.8 |
イメージング |
15,591 |
36,977 |
21,386 |
137.2 |
全社費用及び セグメント間取引消去 |
△30,909 |
△34,111 |
△3,202 |
- |
連結合計 |
165,473 |
229,702 |
64,229 |
38.8 |
ヘルスケア部門の営業利益は、前年度の56,361百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより44,175百万円増加し、100,536百万円となりました。マテリアルズ部門の営業利益は、前年度の51,344百万円に対し、電子材料事業等で売上を伸ばしたことにより17,042百万円増加し、68,386百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の営業利益は、前年度の73,086百万円に対し、海外生産拠点でのロックダウンによる稼働停止や、部材費高騰等の影響により15,172百万円減少し、57,914百万円となりました。イメージング部門の営業利益は、前年度の15,591百万円に対し、コンシューマーイメージング分野、プロフェッショナルイメージング分野で売上を伸ばしたことにより21,386百万円増加し、36,977百万円となりました。
当連結会計年度末では、総資産は現金及び現金同等物の増加等により、406,077百万円増加し3,955,280百万円(前年度末比11.4%増)となりました。負債は社債及び短期借入金の増加等により103,294百万円増加し、1,430,340百万円(前年度末比7.8%増)となりました。純資産は当社株主帰属当期純利益等により302,783百万円増加し、2,524,940百万円(前年度末比13.6%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末より91,533百万円増加し、当連結会計年度末において486,328百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により得られた資金は323,934百万円となり、前連結会計年度と比較して96,927百万円減少(△23.0%)しておりますが、これは前払費用及びその他の流動資産が増加したこと等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に使用した資金は153,542百万円となり、前連結会計年度と比較して125,839百万円減少(△45.0%)しておりますが、これは事業の買収による支出の減少等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に使用した資金は105,184百万円となり、前連結会計年度と比較して57,909百万円減少(△35.5%)しておりますが、これは短期債務の返済額の減少等によるものです。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、また、受注生産形態は基本的にとっておらず、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。
販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
① 資本の財源及び資金の流動性
ⅰ)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(連結キャッシュ・フロー指標)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
株主資本比率(%) |
62.1 |
63.3 |
時価ベースの株主資本比率(%) |
74.0 |
76.0 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
1.2 |
1.4 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
163.3 |
139.9 |
(注)株主資本比率 |
:株主資本/総資産 |
時価ベースの株主資本比率 |
:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産 *自己株式を除く |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 |
:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フロー |
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息) |
ⅱ)財務政策
当社グループの資金需要には、運転資金需要及び投資を目的とした資金需要、株主還元のための資金需要が含まれます。
運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費、研究開発費等の営業費用によるものであり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収を含む投融資等によるものであります。また、株主還元の方針は次のとおりであります。
(株主還元方針)
配当につきましては、連結業績を反映させるとともに、成長事業のさらなる拡大に向けたM&A、設備投資、研究開発投資等、将来にわたって企業価値を向上させていくために必要となる資金の水準等も考慮した上で決定いたします。また、その時々のキャッシュ・フローを勘案し、株価推移に応じて自己株式の取得も機動的に実施していきます。株主還元方針については、配当を重視し、配当性向30%以上を目標としております。
これらの資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じ金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。
なお、当連結会計年度末における短期の社債及び借入金の残高は200,095百万円、長期の社債及び借入金の残高は247,101百万円であります。
② 経営成績
ⅰ)売上高、営業費用及び営業利益
当連結会計年度の売上高は、前年度の2,192,519百万円に対し、333,254百万円増加し、2,525,773百万円(前年度比15.2%増)となりました。国内売上高は991,885百万円(前年度比6.9%増)、海外売上高は1,533,888百万円(前年度比21.3%増)となりました。実績為替レートは113円/米ドル(前年度比7円安)、131円/ユーロ(前年度比7円安)となりました。
販売費及び一般管理費は、前年度の552,068百万円に対し、100,927百万円増加し、652,995百万円(前年度比18.3%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は25.8%となりました。
研究開発費は、前年度の152,150百万円に対し、1,623百万円減少し、150,527百万円(前年度比1.1%減)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は6.0%となりました。
事業セグメント別の業績は次のとおりであります。
「ヘルスケア部門」
本部門の連結売上高は、801,743百万円(前年度比38.4%増)となりました。営業利益は、100,536百万円(前年度比78.4%増)となりました。
メディカルシステム事業では、COVID-19関連の検査に有用な製品の需要拡大や、医療IT、内視鏡、体外診断(IVD)等の分野で販売が伸長したことにより、売上が大幅に増加しました。また、2021年3月31日に㈱日立製作所の画像診断関連事業を承継し、新しいグループ会社としてスタートした「富士フイルムヘルスケア㈱」とのグループシナジーも順調に進捗しており、当事業の好調な業績に寄与しています。X線画像診断分野では、日本でCOVID-19関連の需要増を取り込んだことに加え、検診需要の回復を見せるマンモDRの販売が好調に推移しました。また、新興国を中心にX線画像診断システム「FCR(Fuji Computed Radiography)」の販売が伸長し、売上が増加しました。超音波診断分野では、POC(Point of Care)向け超音波診断装置「Sonosite PX」や据置型超音波診断装置「ARIETTA 750」の販売が米国、欧州を中心に増加しました。2022年2月には、米国と豪州において、POC向けの最上位機種「Sonosite LX」を発売しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」や3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を中心としたシステム・サービス販売が日本や中国、欧州を中心に好調に推移しました。また、AI技術を活用した診断支援機能の拡充を進め、2021年8月には、胸部単純X線画像の肺がん・肺炎・気胸診断を支援する胸部X線画像病変検出ソフトウェア「CXR-AID」を発売しました。内視鏡分野では、特殊光観察が可能な「7000システム」等の販売が米国、欧州を中心に大幅に伸長しました。体外診断(IVD)分野では、血液生化学検査「富士ドライケム」機器・スライドや、富士フイルム和光純薬㈱の生化学試薬及びCOVID-19関連の検査機器・試薬の販売が好調に推移し、売上が大幅に増加しました。CT・MRI分野では、新たに製品ラインアップに加わった富士フイルムヘルスケア㈱の製品を、富士フイルム㈱の販路を活用して拡販したことや、COVID-19関連の需要増等により、売上が増加しました。
バイオCDMO事業では、バイオ医薬品のプロセス開発受託及び製造受託が欧米各拠点で好調に推移し、売上が大幅に増加しました。事業成長を一段と加速させるため、総額約900億円を投じ、米国拠点における遺伝子治療薬及びワクチンの原薬製造設備や、英国拠点の抗体医薬品及び遺伝子治療薬の原薬製造設備について増強を行うことを2021年6月に決定しました。当増強設備の稼働は、2023年後半を予定しています。
ライフサイエンス事業では、FUJIFILM Irvine Scientific, Inc.(米国)が展開するバイオ医薬品製造向けの培地等の販売が好調に推移し、売上が大幅に増加しました。2021年12月に、培地の生産能力を増強するため、オランダで新工場を稼働させ、日米欧3拠点で顧客の創薬・医薬品製造をより強力にサポートするグローバル生産体制が整いました。2022年3月には、細胞の増殖・分化・機能発現を促進するサイトカインの開発・製造・販売を行う米国バイオテック企業Shenandoah Biotechnology, Inc.を買収しました。この買収により、当社は、培地とサイトカイン等を組み合わせた細胞培養関連製品の研究開発と顧客提案力をさらに強化し、市場が急伸する細胞治療薬の研究開発・製造支援ビジネスを拡大していきます。
医薬品事業では、抗菌剤市場の需要減等により、売上が減少しました。2022年3月28日に、ライフサイエンス領域の事業ポートフォリオ最適化の一環として、富士フイルム富山化学㈱の放射性医薬品事業をペプチドリーム㈱へ譲渡しました。今後は、現行パイプラインの開発を進めるとともに、ペニシリン等の抗菌剤の製造・販売、製造受託に加え、核酸医薬品や次世代の新型コロナワクチン候補も含むmRNAワクチンのプロセス開発・製造受託等の受託ビジネスに注力していきます。
コンシューマーヘルスケア事業では、「メタバリアEX」等サプリメントの販売が伸長したことに加え、化粧品でもシンプルなステップで効果的なスキンケアを実現する新製品「アスタリフト オプミー」の販売が好調に推移し、売上が増加しました。2022年2月には、機能性表示食品「メタバリア葛の花イソフラボンEX」を、同年3月には「アスタリフト」ブランドのインナーケアシリーズの機能性表示食品「アスタリフト サプリメント ホワイトシールド」をリニューアル発売しました。また、乾燥肌や敏感肌をケアする若年層向けのスキンケアブランド「cresc. by ASTALIFT(クレスク バイ アスタリフト)」を新たに展開し、同年3月に新製品を発売しました。今後も顧客のニーズを捉えた独自性の高い製品を提供し、人々の美容と健康に貢献していきます。
「マテリアルズ部門」
本部門の連結売上高は、627,118百万円(前年度比10.8%増)となりました。営業利益は、68,386百万円(前年度比33.2%増)となりました。
電子材料事業では、旺盛な半導体需要を背景に、フォトレジストやCMPスラリー、ポストCMPクリーナー、ポリイミド等幅広い製品群で販売を伸ばし、売上が大幅に増加しました。今後も5Gや自動運転等に使用される最先端半導体向けをはじめとして、半導体の微細化・高集積化に対応した幅広い製品を提供することで、成長を加速させていきます。
ディスプレイ材料事業では、「WVフィルム」は需要減の影響を受け減収となりましたが、前年度から続く在宅需要を背景としたTV、IT関連向けの製品販売が好調に推移し、売上は前年同期並みを維持しました。
産業機材事業では、非破壊検査用機器・材料で、COVID-19流行拡大の影響を受けていた欧米の航空業界向けの販売が回復したことにより、売上が増加しました。
ファインケミカル事業では、大学や企業等での研究活動の再開により試薬の販売が回復してきたことや、重合材料等の化成品の販売が伸長したことで、売上が増加しました。
記録メディア事業では、COVID-19流行拡大の影響を受けていたデータアーカイブ用のテープ需要が回復傾向にあり、売上が増加しました。2021年9月には、大容量データのバックアップやアーカイブに最適な磁気テープストレージメディア規格「LTO Ultrium」の第9世代に対応した「FUJIFILM LTO Ultrium9 データカートリッジ」を発売しました。磁気テープは、大容量データを低コストで安全に長期保管できることに加え、ハードディスクドライブに比べてデータ保管における消費電力により発生するCO2の排出量を95%削減でき※1、環境負荷を大幅に低減する製品として注目されています。今後も顧客ニーズに対応する高性能・高品質のメディアやサービスの開発・提供を通じて、さらなる事業成長を図るとともに、社会課題の解決に取り組んでいきます。
※1:100PB(ペタバイト)のデータを10年間HDDに保管した場合と磁気テープに保管した場合を比較し、保管で発生するCO2の排出量を95%(約2,400トン)削減できます。(出典:Brad Johns Consulting, LLC “Improving Information Technology Sustainability with Modern Tape Storage”)
グラフィックコミュニケーション事業では、COVID-19流行拡大の影響を受けていた印刷需要が経済活動の再開により回復に向かう中、刷版材料分野、デジタル印刷分野で販売を伸ばし、売上が増加しました。刷版材料分野では、有処理CTPプレート同等の性能を実現した現像薬品が不要な無処理CTPプレート「ZX」を2021年9月より海外で発売しました。デジタル印刷分野では、B2枚葉型インクジェット印刷機で世界最速※2の毎時5,400枚の印刷スピードを実現した「Jet Press 750S High Speed Model」を2021年11月に発売しました。プロダクション関連分野では、新たなブランド「Revoria(レヴォリア)」のハイエンドプロダクションカラープリンター「Revoria Press PC1120」を2021年7月より販売を開始しました。今後もこのような独自の先進技術を用いた画期的な製品を開発・提供することで、事業成長を図っていきます。
※2:2022年3月時点。当社調べ。
インクジェット事業では、産業用インクジェットヘッドの販売が、欧州、中国の建材印刷市場での需要増により好調に推移しました。インクの販売は、ホーム&オフィス市場向け染料インクを中心に販売を伸ばし、全体で売上が増加しました。また、2022年3月には、インクジェット印刷需要の拡大を見据え、水性顔料インクジェットインク用色材の生産工場を米国で増設することを発表しました。今後もインクジェット市場のニーズにあわせたグローバルな生産体制を構築し、事業成長を一段と加速させていきます。
「ビジネスイノベーション部門」
本部門の連結売上高は、763,549百万円(前年度比0.2%増)となりました。営業利益は、57,914百万円(前年度比20.8%減)となりました。
オフィスソリューション事業では、中国工場でのロックダウンによる一部稼働停止や、半導体等の部品供給の逼迫及び物流混乱を背景とした機器の供給・設置遅延等の影響を受けましたが、前年のCOVID-19流行拡大影響からの機器本体以外の「ノンハード」の回復や為替影響等により、売上は前年同期並みを維持しました。2021年4月には、「FUJIFILM」ブランドとしてデザインを一新し、セキュリティ機能を強化したデジタルカラー複合機及びプリンター「Apeos」の新製品を発売しました。2022年2月には、その製品ラインアップを拡充させています。グローバル展開においては、富士フイルム㈱の海外拠点や有望な代理店の活用も進めており、第3四半期には、新たな市場でオフィス向け製品の販売を開始しました。今後も新規のOEM供給を含め、グローバル展開を拡大させていきます。
ビジネスソリューション事業では、国内で自治体向けのビジネスが増加したことや、海外を中心にBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業が堅調に推移したこと等により、売上が増加しました。2022年1月には、買収が完了したHOYAデジタルソリューションズ㈱が「富士フイルムデジタルソリューションズ㈱」として新たに事業活動を開始しました。同社が提供する基幹システムの販売及び導入支援を含め、今後も、お客様のDXに資するソリューション・サービスメニューを順次提供し、ビジネスソリューション事業のさらなる成長を加速させていきます。
「イメージング部門」
本部門の連結売上高は、333,363百万円(前年度比16.9%増)となりました。営業利益は、36,977百万円(前年度比137.2%増)となりました。
コンシューマーイメージング分野では、インスタントフォトシステム、カラーペーパー、ドライプリント機器及び材料の販売が好調に推移し、売上が増加しました。インスタントフォトシステムでは、デバイス・フィルムともに販売が好調に推移しました。2021年10月には、スマートフォンで撮影した画像を、通常のカードサイズであるミニフォーマットフィルムの2倍の大きさとなるワイドフォーマットフィルムにプリントができるスマートフォン用プリンター“チェキ”「instax Link WIDE(インスタックス リンク ワイド)」を発売しました。音声・テキストメッセージ、位置情報、WEBページのURLをその場でQRコード化し撮影画像に組み込んでプリントできる機能を加えたことで、個人用途だけではなく、ビジネス用途でも活用できると高い評価を受けています。また、2021年12月にはinstaxシリーズの最上位機種として、ミニフォーマットフィルム対応のハイブリッドインスタントカメラ“チェキ”「instax mini Evo(インスタックス ミニ エヴォ)」を発売し、クラシックなカメラデザインと100通りの撮影エフェクトが好評で、好調に販売台数を伸ばしました。今後も多様化する顧客のニーズに応え、便利で付加価値の高い製品・サービスを提供するとともに、「撮る、残す、飾る、そして贈る」という写真本来の価値を世界中で伝え続けていきます。
プロフェッショナルイメージング分野では、デジタルカメラ及び放送・シネマ用レンズの販売が好調に推移し、売上が増加しました。デジタルカメラでは、約1億2百万画素の高画質を実現したラージフォーマットミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX100S」の販売が伸長しました。加えて、2021年9月に「GFXシリーズ」の最新モデルとして約5,140万画素のラージフォーマットミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM GFX50S Ⅱ」を発売し、「GFX」ユーザー層を拡大しました。2021年11月には、高画質と小型軽量を両立させた「Xシリーズ」最新モデル、ミラーレスデジタルカメラ「FUJIFILM X-T30 Ⅱ」を発売しました。今後も「GFXシリーズ」では高画質を、「Xシリーズ」では画質とサイズのベストバランスを実現し、魅力的な製品を提供していきます。また、放送・シネマ用レンズでは、COVID-19流行拡大による需要減から回復基調にあり、前年を上回る売上となりました。
ⅱ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益
営業外収益及び費用は、前年度70,397百万円の営業外収益に対し39,653百万円減少し、30,744百万円の営業外収益となりました。
税金等調整前当期純利益は、前年度の235,870百万円に対し24,576百万円増加し、260,446百万円となりました。
ⅲ)法人税等
法人税等は、前年度の55,611百万円に対し1,518百万円増加し、57,129百万円となりました。
ⅳ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益
持分法による投資損益は、前年度3,198百万円の利益に対し9,930百万円増加し、13,128百万円の利益となりました。
非支配持分帰属損益は、前年度の2,252百万円に対し3,013百万円増加し、5,265百万円となりました。
ⅴ)当社株主帰属当期純利益
当社株主帰属当期純利益は、前年度の181,205百万円に対し29,975百万円増加し、211,180百万円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の453.28円に対し、527.33円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の451.75円に対し、526.11円となりました。
③ 次期の見通し
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(単位:億円) |
|
2022年度 (次期の見通し) |
2021年度 (実績) |
増減率・増減額 |
売上高 |
26,500 |
25,258 |
4.9% |
営業利益 |
2,450 |
2,297 |
6.7% |
税金等調整前当期純利益 |
2,550 |
2,604 |
△2.1% |
当社株主帰属当期純利益 |
1,920 |
2,112 |
△9.1% |
ROE(%) |
7.6 |
9.0 |
△1.4% |
ROIC(%) |
5.7 |
5.6 |
0.1% |
為替レート(円/米ドル) |
120円 |
113円 |
7円 |
為替レート(円/ユーロ) |
132円 |
131円 |
1円 |
2022年度業績は、連結売上高は2兆6,500億円(前年度比4.9%増)、営業利益は2,450億円(前年度比6.7%増)、税金等調整前当期純利益は2,550億円(前年度比2.1%減)、当社株主帰属当期純利益は1,920億円(前年度比9.1%減)を予想しております。
通期での対米ドル円為替レートを120円、対ユーロ円為替レートを132円で想定しております。
④ 重要な会計上の見積り
当社の連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす見積り及び仮定を行う必要があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。
COVID-19の影響については、依然として収束の時期は見通せず、今後の当社への影響を予測することは極めて困難であります。最善な見積りを行う上での一定の仮定として、一部事業においては一定期間にわたり当該影響が継続する可能性があるとの前提で、会計上の見積りを行っております。
なお、COVID-19による経済活動への影響は不確実性が高いため、上記仮定に変化が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に少なからず影響を及ぼす可能性があります。
ⅰ)企業結合
企業結合は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての資産及び引き受けた全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
企業結合の処理における公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化に伴い公正価値が修正され、取得した資産の将来における減損損失の計上、引き受けた負債の増加につながる可能性があります。
なお、当事業年度に実施した事業買収については、連結財務諸表注記「22 事業買収及び事業売却」に記載しております。
ⅱ)営業権の減損
営業権は償却せず、毎年1月1日時点で減損の有無を検討しております。営業権の減損テストは、当社の報告単位毎に見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値に基づいて行われており、使用される割引率は、報告単位のWACC(加重平均資本コスト)に基づいて算出しております。また、客観的事実や状況の変化により当該資産の公正価値が帳簿価額を下回る可能性がある場合には、その都度減損の有無を検討しております。
見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値の算定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。
営業権の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において営業権の減損損失を認識することになる可能性があります。
なお、事業セグメント毎の営業権の残高については、連結財務諸表注記「8 営業権及びその他の無形固定資産」に記載しております。
ⅲ)長期性資産の減損
営業権及び耐用年数を確定できないその他の無形固定資産を除く、保有及び使用予定の長期性資産について、客観的事実や状況の変化により当該資産の帳簿価額の回収可能性に疑いのある場合には、減損の有無を検討しております。減損の兆候があると判断されるときは、その資産に関連する見積割引前将来キャッシュ・フローとその資産の帳簿価額を比較し、帳簿価額の減額が必要かどうかを検討しております。この結果、帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを超過すると判断される場合は、当該資産の帳簿価額を見積公正価値へ減額処理しております。公正価値を決定するにあたり、当社は市場取引価格又はその他の評価方法を使用しております。市場取引価格を利用できない場合には、主に資産の使用や最終的な処分から生じる見積将来キャッシュ・フローに基づく割引現在価値法、ロイヤルティ免除法又は超過収益法を使用しております。
これらの手法は、将来見積利益又はキャッシュ・フローの予測及び割引率等の、重要な見積りを伴います。
長期性資産の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において長期性資産の減損損失を認識することになる可能性があります。
ⅳ)退職給付引当金及び退職給付費用
当社の一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しており、当該制度に係る退職給付引当金及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待収益率、予想再評価率、退職率、死亡率等が含まれております。
数理計算上の仮定は、最善の見積りにより決定しておりますが、見直しが必要となった場合には、退職給付引当金及び退職給付費用が増加する可能性があります。
なお、数理計算上の仮定については連結財務諸表注記「10 退職給付制度」に記載しております。
ⅴ)貸倒引当金
営業債権、リース債権及びその他の債権に対する貸倒引当金は、過去の貸倒実績、延滞状況及び問題が生じている取引先の財政状態に基づき決定しております。裁判所による決定等によって、回収不能であることが明らかになった場合は、その時点で帳簿価額を直接減額しております。
貸倒引当金は、過去の実績や評価時点で利用可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で見積りを行っていますが、相手先の財政状態が悪化した場合等見積りの根拠となる仮定又は条件等が変化した場合には、貸倒引当金を積み増すことになる可能性があります。
なお、貸倒引当金の残高については、連結財務諸表注記「20 金融債権の状況」に記載しております。
ⅵ)繰延税金資産
資産及び負債の財務会計上の金額と税務上の金額の差異に基づいて繰延税金資産及び負債を認識しており、その算出にあたっては差異が解消される年度に適用される税率及び税法を適用しております。また、繰延税金資産のうち回収されない可能性が高い部分については、評価性引当金を計上しております。
回収可能性の検討にあたっては、評価時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っておりますが、見積りの前提とした仮定や条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。
なお、繰延税金資産の残高については、連結財務諸表注記「11 法人税等」に記載しております。
ⅶ)棚卸資産
棚卸資産については、原則として移動平均法による低価法により評価しております。また、当社は定期的に陳腐化、滞留、又は過剰在庫の有無を検討し、該当する場合には正味実現可能価額まで評価減しております。
評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績や評価時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、市場環境が予測より悪化して正味実現可能価額が下落する場合には、追加の評価損計上が必要となる可能性があります。
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