文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当事業年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染対策としてワクチン接種の促進や治療薬の確保、医療提供体
制の強化等が通年行われ、感染動向に注視しながら各種政策に万全を期し、経済社会活動の正常化が図られてまいり
ましたが、厳しい状況が続きました。今年に入ってからは、海外情勢等による金融資本市場の変動、原油価格及び原材料価格の上昇や供給面での制約等、不透明感は増してきております。
当化粧品業界におきましては、海外からの入国制限によりインバウンド需要がほぼ消失し、令和3年の年間化粧品
販売金額は前年比9%減(出典:経産省生産動態統計)の推移となりましたが、百貨店などの商業施設の営業状況が
改善され、ワクチン接種が開始されたことから外出機会も増加しており、新しい生活様式へ順応しながら化粧品市場
も徐々に回復に向かいました。オンラインでの販路拡大、顧客コミュニケーションの強化、デジタルカウンセリング
の導入・定着、ライフスタイル提案型商品の訴求などコロナ禍に対応した施策や、“おうち美容"への関心の高まり
によりスキンケアステップを見直す消費者が増え、美容液などのスペシャルケアの提案などにより需要も回復しまし
た。前年は市場が伸び悩んだ美白訴求商品は、外出機会の増加に伴い需要回復が見込めることから市場拡大が期待さ
れています。また、マスクの着用が定着したことから目元を明るくするポイントメークアイテムやマスクに色移りし
にくいファンデーションの需要も高まりました。
訪問販売化粧品市場では、チャネルを横断した展開が拡大・加速し、企業間競争は激しさを増しております。人を
介したサービスを機軸にする訪問販売業界では、生活様式の変化に伴う販売活動の変化や離客などにより市場は縮小
傾向となっています。また、中・高年齢層を中心とした需要へとシフトが進むなか、若年層の新規顧客・販売員の獲
得、インターネットを用いた情報収集によって気軽に購入するという消費者ニーズの変化に対応することも重要な成
長課題となっております。各社の強みを活かしながら「職業としての販売員の魅力」や、「活動意欲を高める教育制
度の点検・見直し・充実」を推進し、新たな顧客との接点拡大と愛用者獲得に向け取り組んでいます。物質的な豊か
さより精神的な豊かさが求められる昨今の消費スタイルや多様化する消費者層に対応するため、Webも活用した積
極的なコミュニケーション、オンラインカウンセリング等で身近な存在であり続け、柔軟性のある販売・サービス体
制の構築・提供はもとより、訪問販売だからこそできる価値、すなわち誠実・信頼を顧客に提供し続けることが求め
られています。
このような状況のもとで、当社は企業理念「愛と美と豊かさの実践と追求」に基づき、コア事業である訪問販売領
域の販売組織満足を獲得するとともに、すべてのステークホルダーの満足度向上を目指し、企業活動に邁進してまい
りました。
創立45周年を迎えた当事業年度は、「私はアイビー」という当社の訪問販売にかかわる方が、当社の目指す志や生
き方を自身の生き方と捉えて誇りと喜びをもち、「日本の女性の肌を常に美しくし続けること」を全国の販売組織と
ともに改めて共有し、取り組んでまいりました。また、変えてはいけない当社の強みである「理念」、「チャレンジ
基盤」、「独自価値」は残しつつ、ウィズコロナ時代の新しい生活様式へ順応しながら変化に対応して変えていく必
要があるものは磨き直し、多くの方が自己の夢に向かって挑戦できる環境づくり、出会った誰もが成長できる会社に
取り組んでまいりました。創業からの強みである「人間力」を武器に、45周年をともに過ごす仲間と目指す姿を語り
ながら、お互いに良い影響を与え合う“リアルコミュニケーション”に転換しながら“同じ志を持つ仲間づくり”
“真の愛用者づくり”を推進してまいりました。
当事業年度においては、シワ改善医薬部外品「アイビーコスモス Ⅱ ナイトリンクルガード」(シワ改善有効成分
ナイアシンアミド配合)を含む新スキンケアシリーズ「アイビーコスモス Ⅱ」、メーク製品「アイビー メークアッ
プコレクション フォーチュントゥインクル」、健康食品「インナークリスタル」を発売し、顧客拡大、並びに顧客
満足向上に努めてまいりました。
経営基盤強化につきましては、「経営の意思決定」、「財務基盤強化のための資金調達」、「有効戦略の選択と集
中」、「特定製品の在庫対策」、「スピーディな成長支援」、「コーポレートガバナンス体制の強化」等の重要経営
課題に対して、「取締役会」、「経営会議」、「戦略統合会議」、「専任チームによる特命プロジェクト」等からな
る迅速解決に向けた社内体制の中で審議・決裁及び実行してまいりました。実務面においても機動的な資本政策、新
規基剤の開発及び製品開発の推進、AI画像認識を活用した肌解析システムの導入、製造原価の継続的低減活動、売
上債権回収の促進、予実管理の徹底及び固定費の圧縮、コンプライアンスの継続強化、ISO品質マネジメントシス
テムの運用推進、ウィズコロナに適応可能な労務関連対応、社内決裁手続きのWeb化促進にも継続して取り組んで
まいりました。
売上面におきましては、美容液やスキンケア新製品を中心に、販売会社が販売組織づくりの推進、稼働率の向上を
通して販売会社のビジョンを実現できるよう販売促進策を充実させ販売しやすい環境、及び仲間づくり、愛用者づく
りの支援に取り組んでまいりました。対面教育機会の回復や、販売活動においてもリアルコミュニケーションが戻っ
てきたとはいえ、当社の強みである“当社の志や周年年度の意義を目の前の人に共感してもらえるようなかかわり方
や機会、場面が当初計画と乖離し、美容液及びスキンケア新製品は想定売上に至りませんでした。
一方、利益面におきましては、当期は原価率が高めの仕入商品が少なく生産数が平常水準に回復していることによ
り原価率は前期比6.04ポイント減となり、売上総利益は前期比13.1%増となりましたが、美容液及びスキンケア新製
品の売上目標との乖離が大きくインパクトし、収益ともに想定を下回る結果となりました。
諸経費につきましては、新製品拡販の販売促進費や営業活動の回復等により、販売費及び一般管理費は前期比
10.5%増となりましたが、経費使用方針に基づく予実管理を継続徹底した結果、管理指標範囲内に抑えることができ
ました。また、新株予約権の発行による資本性資金の調達により、経営安定化推進を図ってまいりました。
以上の結果、当事業年度の売上高は3,534,133千円(前事業年度比3.1%増)、営業利益は83,280千円(前事業年度
24,822千円)、経常利益は81,713千円(前事業年度6,703千円)、当期純利益は税金費用を41,338千円(うち法人税
等調整額18,340千円)計上した結果、40,375千円(前事業年度△23,228千円)の増収増益となりました。
部門別の販売実績につきましては、次のとおりであります。
[化粧品部門]
イ. スキンケア
“美しくなろうとする力”をもう一度見つめ直すことで、さらなる美を追求した新スキンケアシリーズ「アイビー
コスモス Ⅱ」を令和3年9月に発売しました。うるおいを与え、乾燥による小ジワを目立たなくする※「アイビー
コスモス Ⅱ エンリッチ ローション」、「アイビーコスモス Ⅱ Wエマルション クリーム」、シワ改善医薬部外品
「アイビーコスモス Ⅱ ナイトリンクルガード」(シワ改善有効成分ナイアシンアミド配合)は年間通してセット換
算で105,000セット超を出荷しました。また、美容液の販売強化にも力を入れて同じ志をもつ販売員及び愛用者づく
り、顧客満足向上に努めてまいりました。スキンケア全体の売上高は2,554,946千円(同43.2%増)となりました。
※ 効能評価試験済み
ロ. メークアップ
令和3年12月に、「アイビー メークアップコレクション フォーチュントゥインクル」を発売し、顧客満足向上に
努めました。メークアップ全体の売上高は229,642千円(同42.0%減)となりました。
ハ. ヘアケア
新製品の発売はなく、売上高は166,641千円(同26.9%減)となりました。
ニ. その他化粧品
新製品の発売はなく、売上高は30,294千円(同20.6%減)となりました。
以上、化粧品部門の売上高は2,981,524千円(同21.9%増)となりました。
[美容補助商品]
メリッサエキスや当社新規採用成分である黒人参粉末を配合した栄養機能食品(ビタミンC、ビタミンE)で、透
きとおるようにいきいきと輝く毎日をサポートする「インナークリスタル」を令和4年2月に発売し、顧客満足の向
上、健康需要及び健康食品市場の拡販に努めてまいりました。美容補助商品全体の売上高は524,000千円(同44.7%
減)となりました。
[化粧雑貨品等]
新製品の発売はなく、売上高は28,607千円(同14.3%減)となりました。
②財政状態の状況
(流動資産)
当事業年度末における流動資産の残高は2,555,815千円(前事業年度末は2,850,291千円)となり、前事業年度
末に比べ294,475千円減少しました。これは主に、売掛金が100,928千円、未収入金が109,994千円、商品及び製品が103,053千円減少したことによるものです。
(固定資産)
当事業年度末における固定資産の残高は1,796,624千円(同1,865,168千円)となり、前事業年度末に比べ
68,544千円減少しました。これは主に、減価償却費を86,421千円計上したこと、前払年金費用が27,971千円、繰延税金資産が18,340千円減少したことによるものであります。
(繰延資産)
当事業年度末における繰延資産の残高はなくなりました。これは、社債発行費を289千円償却したことによります。
(流動負債)
当事業年度末における流動負債の残高は1,454,161千円(同2,237,325千円)となり、前事業年度末に比べ
783,163千円減少しました。これは主に、支払手形64,188千円、買掛金が186,209千円、短期借入金が96,396千円、一年内償還予定の社債が140,000千円、未払法人税等が28,258千円、その他が144,536千円減少したことによるものであります。
(固定負債)
当事業年度末における固定負債の残高は630,908千円(同965,125千円)となり、前事業年度末に比べ334,216
千円減少しました。これは主に、定時返済などで社債が136,000千円、長期借入金が206,672千円減少したことに よるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は2,267,369千円(同1,513,299千円)となり、前事業年度末に比べ754,069
千円増加しました。これは主に当期純利益を40,375千円計上したこと、新株予約権の行使が656,551千円あったこと、従業員に対する株式給付制度に基づき株式給付を行ったことにより、自己株式が1,685,443千円減少したことによるものです。この結果、自己資本比率は、51.9%(同32.0%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、社債の償還による支出、仕入債務の減少、長期借入金の返済による支出等があるものの、新株予約権行使に伴う自己株式の処分による収入、棚卸資産の減少、投資不動産の売却による収入等により、前事業年度末に比べ15,954千円増加し、当事業年度末には129,384千円となりました。
また当事業年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果使用した資金は107,064千円(前年同期は427,020千円の獲得)となりました。
これは主に棚卸資産の減少額129,892千円、売上債権の減少額100,928千円、株式給付引当金増加額91,774千円等があるものの、仕入債務の減少額250,397千円、預り金の減少額143,498千円、未払金の減少額51,342千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動の結果得られた資金は63,303千円(前年同期比267,066千円減)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出36,909千円、無形固定資産の取得による支出16,605千円等があるものの、投資不動産の売却による収入111,938千円、貸付金の回収による収入6,159千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動の結果得られた資金は59,710千円(前年同期は693,392千円の使用)となりました。
これは主に社債の償還による支出276,000千円、長期借入金の返済による支出230,008千円、短期借入金の純減額96,396千円等があるものの、新株予約権行使に伴う自己株式の処分による収入656,551千円、新株予約権の発行による収入7,513千円があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は化粧品の専門メーカーとして、同一セグメントに属する化粧品の製造、販売を行っているため、生産実績のセグメント情報の記載は省略しております。
当事業年度の生産実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別
|
当事業年度 (自 令和3年4月1日 至 令和4年3月31日) |
前年同期比(%)
|
金額(千円) |
||
スキンケア |
2,810,254 |
144.2 |
メークアップ |
225,215 |
37.6 |
ヘアケア |
178,746 |
76.8 |
その他 |
39,829 |
107.2 |
合計 |
3,254,045 |
115.5 |
(注) 1.金額は、販売価格で表示しております。
b.商品仕入実績
当社は化粧品の専門メーカーとして、同一セグメントに属する化粧品の製造、販売を行っているため、商品仕入実績のセグメント情報の記載は省略しております。
当事業年度の商品仕入実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別
|
当事業年度 (自 令和3年4月1日 至 令和4年3月31日) |
前年同期比(%)
|
金額(千円) |
||
美容補助商品 |
216,747 |
34.0 |
化粧雑貨品等 |
22,760 |
101.0 |
合計 |
239,507 |
36.3 |
(注) 1.金額は、仕入価格で表示しております。
2.当事業年度において、商品仕入実績に著しい変動がありました。これは、前事業年度の美容補助商品は「アイビー ビューティ パートナー」等の新製品の仕入額が大きかったことによります。
c.受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
d.販売実績
当社は化粧品の専門メーカーとして、同一セグメントに属する化粧品の製造、販売を行っているため、販売実績のセグメント情報の記載は省略しております。
当事業年度の販売実績を品目別に示すと、次のとおりであります。
品目別
|
当事業年度 (自 令和3年4月1日 至 令和4年3月31日) |
前年同期比(%)
|
|
金額(千円) |
|||
|
スキンケア |
2,554,946 |
143.2 |
メークアップ |
229,642 |
58.0 |
|
ヘアケア |
166,641 |
73.1 |
|
その他 |
30,294 |
79.4 |
|
化粧品合計 |
2,981,524 |
121.9 |
|
美容補助商品 |
524,000 |
55.3 |
|
化粧雑貨品等 |
28,607 |
85.7 |
|
合計 |
3,534,133 |
103.1 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度の経営成績等は、上記記載のとおりですが、経営者が判断している重要な指標等につきまして、補足いたします。
a.上代売上(小売価格ベース)と下代売上(会計上の売上)の関連性について
当社は、売上に対する利益のレバレッジが高いという特徴を持っているため、目標売上高の達成を最重要視しております。当社は、販売会社と小売価格ベースである上代売上で目標を共有化しております。通常、上代売上に対する商品売上(下代売上)の平均掛率は36~40%です。この掛率は、販売契約で定めておりますので、大きく変動することは少ないですが、総じて上代売上高の好調な時は低く、上代売上高が不調な時は高くなる傾向があります。また、通常掛率を適用しないエイド品のF場合には、製品ごとに下代価格を定めており、エイド品の売上比率が高い場合には、上代売上金額に対する下代売上金額は高くなる傾向かあります。さらに、会計上の売上は、商品売上(下代売上)から売上割戻額「販社リファンド」を引いて算出いたします。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を、当事業年度期首から適用しており、当期より従前経費項目であった「経営指導料」「販促助成金」「(売上連動キャッシュバック)販売促進費」を売上割戻項目としております。また、従前販社の保有する在庫の交換に要する費用として、製品の原価相当額を「返品廃棄損失引当金」として見積り計上し、売上原価に反映しておりましたが、当事業年度より、返金負債を売上のマイナス項目として見積り計上しております。
当事業年度における上代売上高は、当初110億円を目指しておりましたが、結果は100億円(前期は87億円)で目標未達であるものの増収という結果でした。当社としては、上代売上目標を販売組織とともに達成することを最重要視しております。
b.経営重要指標(KPI;Key Performance Indicator)について
経営重要指標(KPI)として、棚卸資産回転期間、自己資本比率、売上高経常利益率を経営状況のバランスを測る指標としております。
棚卸資産回転期間については、11.4ケ月となりました。前期比で若干回転率が高まったものの、これは当事業年度における売上原価が低減されたため、棚卸期間が高まってしまったことによるものです。引き続き、正常な水準(目標6.0ケ月)に戻せるように取り組んでまいります。
自己資本比率につきましては、51.9%(前期32.0%)と改善しました。これは、主に当期純利益を4,037万5千円計上したこと、新株予約権の行使が6億5,655万1千円あったこと、従業員に対する株式給付制度に基づき株式給付を行ったことにより、自己株式が16億8,544万3千円減少したことによるものです。
引き続き、正常な水準(目標60.0%)に戻せるように取り組んでまいります。
売上高経常利益率につきましても、2.3%(前期は0.9%)と改善いたしました。これは、経常利益81百万円を計上したことによるものです。今後については、引き続きKPIの数値を正常な水準(目標15.0%)に戻せるように取り組んでまいります。
c.研修動員数
当社の経営成績に重要な影響を与える要因の一つとして、販売組織における研修動員数が重要であると考えております。当事業年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の流行により、多くの研修が中止・延期を余儀なくされましたが、様々な感染対策等により、前期比で動員が若干回復した結果となりました。
理念研修としての「SA研修」の新規動員は853名(前期は649名)、美容研修としての「美容教室」の新規動員2,986名(前期は2,378名)と増加しました。今後については、新型コロナウイルスに対する感染防止対策を行いながら、新型コロナウイルス感染症の収束にともない、動員数の回復を図ってまいります。
d.流通在庫
当社の経営成績に重要な影響を与えるもう一つの要因としては、販売会社の経営状態が重要であると考えております。販売組織における流通在庫は、ヒアリングにより大まかな把握を行っております。当事業年度におきましては、令和4年3月末時点で、令和3年3月末よりも流通在庫は減少していると推定しております。各種データからも一部過剰な販売会社や製品はあるものの、流通在庫はほぼ適正水準に収れんしており、ここ近年続いていた在庫調整はほぼ終わったと考えております。一方、販売組織の実売状況は、当社からの仕入(当社売上)を上回って推移しており、売上回復に向けた一定水準の顧客は維持していると考えております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の判断しているキャッシュフローの状況につきまして、補足いたします。
a.キャッシュフロー分析
当事業年度において、営業キャッシュ・フローがマイナスで投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フローがプラスとなり、当事業年度末の現預金残高は129百万円(前事業年度末比113百万円増)となりました。今後については、売上高を上げるとともに、仕入及び経費支出を抑え、手元流動資金を積み増す方針でございます。当社といたしましては、引き続き財務内容の改善に全力で取り組んでまいります。
b.資本の財源について
当社の資本の財源については、資本金、資本剰余金及び利益準備金等によって構成されております。当事業年度におきましては、当期純利益を40百万円計上したこと、株式報酬制度の交付により自己株式が減少したこと、新株予約権の行使がされたことにより、当事業年度末の純資産は2,267百万円となりました。配当政策については、将来のビジネス環境の変動にもそなえるため、内部留保を優先し、今後については、収益の状況を勘案しながら、利益還元を行う方針です。
c.資金の流動性について
当社は、運転資金及び設備資金につきましては、内部資金又は借入(社債含む)により資金調達することとしております。当社の運転資金は季節変動が大きく、9月頃に手元流動性が低くなる傾向があります。この時期に必要な現預金を運転資金として保持できるように努めてまいります。また、当事業年度末においてまだ在庫が多い状態と認識しており、売上を上げるとともに、仕入及び経費支出を抑制することにより手元資金を生み出し、内部留保した利益と合わせて、負債の削減を行う予定です。
また、令和2年11月に発行した新株予約権につきましては全額行使することができましたが、令和4年2月に発行した新株予約権につきましては、その行使は株価の動きに左右されるため、業績を上げるように努めてまいります。
平成30年12月に発行したA種優先株式1,000百万円については、当社の財務数値が健全化されるまでは、取得条項を行使しない予定です。
(注)「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を、当事業年度の期首から適用しており、当事業年度に係る各数値については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成しております。財務諸表の作成にあたり、当社は期末日における資産及び負債、当事業年度における収益及び費用に影響を及ぼすような見積りを行う場合があります。これらの見積りについて、当社は過去の実績やその時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、見積り根拠となる仮定又は条件等の変化により、見積り内容が実際の結果と異なる可能性があります。なお、見積りにあたっては、保守主義の原則にそって判断をするようにしております。
イ.売上割戻し(販社リファンド等)
当社の取引先である販売会社とは、独自の販売システムに基づく販売契約を締結しております。販売システムにおいて、「販売会社が販売会社を産んで育てる」という育成の仕組みを具現化しております。子販社を産んだ親販社に対しまして、親販社自身の仕入実績に係る当社への入金金額に対し、販売契約で定めた掛率を掛けてキャッシュバックを行っております。
「販社リファンド」は、支払対象の販社の仕入が大きい時に多く、支払対象の販社の仕入が小さい時には少なくなるため、月次及び年度による金額は大きく変動いたします。また、当該キャッシュバックの予定金額については、売上割戻として売上高より控除しておりますが、入金額等の条件等の変化により、見積り金額が実際の結果と異なる可能性があります。
ロ.経営指導料
当社は、子販社を産んだ親販社に対しまして、子販社等の仕入実績に対する入金金額に対し、「経営指導料」として、販売契約で定めた掛率を掛けてキャッシュバックを行っております。当該キャッシュバックの予定金額については、販売促進費として経費計上しておりますが、子販社等の入金額等の条件等の変化により、見積り金額が実際の結果と異なる可能性があります。
ハ.売上控除
当社は引渡基準を採用しております。一方、当社の取引先である販売会社は財務基盤が脆弱なところも少なからず存在します。当社が販売会社の仕入代金に係る財務支援を行った場合に、当該販売会社に対する売上の一部について、引渡基準で計上した売上を控除し、入金基準により、売上に計上する場合がございます。一方、控除した売上高に対応した売掛金が入金された場合には、当該売掛金入金額を売上高に計上しております。
ニ.棚卸資産評価損
当社は、製品及び原料・資材の廃棄を極小になるように、生産会議等で仕入・生産のコントロールを行っております。ただし、売上予測に基づく見込み生産のため、実際の販売数と生産数の相違が出る可能性があります。製商品の消費期限を規程で定めており、四半期毎に洗い替えを行い、期限切れの原料や製品については、評価損を原価計上しております。また、過去の出荷実績やその時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で、生産見込みあるいは出荷見込みがないと判断した数量の原料・資材及び製品の原価相当額を、当事業年度に評価損として、原価に見積り計上しております。評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績やその時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、見積り金額が実際の結果と異なる可能性があります。
棚卸資産の計上額は、在庫原価から「評価損」を(収益性の低下に伴う簿価切下)差し引いた金額です。また翌事業年度以降の数年間における出荷予測数と棚卸資産の品質期限とを照らし合わせて、出荷見込みの低い棚卸資産の金額を「評価損」として算出しており、「評価損」の金額は売上原価に含まれております。
当社の取引先である販売会社については、全販売会社から決算報告書を入手しており、その売上原価合計は50億円を超えておりますが、当社の近年における売上高との差異は流通在庫調整によるものです。また、販売会社の在庫状況についても、各種データやヒアリングにより確認しており、その在庫状況は一部の販売会社を除き、適正水準に収れんしたと推測しております。製品ごとの出荷予測数値は、過去数年の出荷数と上記流通在庫の状況を考慮し、今後も販売会社の売上高が過去のトレンドで推移すると仮定し、算出しております。
当社は、現状の在庫評価基準に基づく「評価損」を差し引い棚卸資産計上額が適正であると考えておりますが、化粧品市場におけるマーケットの変化や経済情勢の変化等により、棚卸資産の「評価損」と将来における廃棄金額が相違する可能性があります。
ホ.販売促進費(キャンペーン等)、交際接待費
当社は、販売会社や販売組織に対し、様々なキャンペーンを行っておりますが、事業年度の売上等に起因する
販促費等については、過去の実績やその時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮
した上で、見積り費用計上しております。実際に支出される金額は、見積り根拠となる仮定又は条件等の変化に
より、見積り金額が実際の結果と異なる可能性があります。
ヘ.賞与支給引当金
当社は、従業員に対する賞与支給に充てるため、当事業年度の業績を鑑み、支給見込額を算出しておりますが、実際の支給額が引当金と相違する可能性があります。
ト.株式給付引当金、役員株式給付引当金
当社は、第42期定時株主総会において承認されましたESOP制度(業績連動型株式報酬制度)に基づき、株主総会で承認されました計算式及び取締役会において定めた規程に基づき、株式給付引当金を計算しております。なお、計算式のもとになる金額は、本制度導入のために設定された信託口が取得した単価に、事業年度の業績によって計算される株数を掛けて算出しておりますが、実際に交付する株数は規程に基づき決定するため、前提となる受益者の人数が減少した場合等は、引当金を計算した株数と相違する可能性があります。
チ.返金負債
当社は、引渡基準で売上高を計上し、原則返品等を行っておりません。ただし、製品リニューアルや諸般の事情により、販売会社に対し、製品交換という形での支援を行う場合があります。そのため、製品交換実績やその時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で、返金負債を売上のマイナス項目として見積り計上しておりますが、見積り金額が実際の結果と異なる可能性があります。
リ.退職給付引当金
当社は、退職給付債務の算定にあたり、簡便法を採用しております。そのため、運用資産の運用成果が財務諸表に反映する経費処理をしております。運用資産の運用成績は日々変動するため、退職給付引当金は実際の退職給付費用とは相違する可能性があります。
ヌ.貸倒引当金
当社の取引先である販売会社は財務基盤が脆弱なところも少なからず存在します。貸倒引当金については、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、各取引先の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しております。当社は全販売会社に決算書の提出を求めており、各販売会社の決算数字及び研修動員などの活動状況及び各販売会社からの入金実績や経営状況のヒアリングを通じて与信ランクを作成しており、そのデータに基づき算出しております。
当社は、現状の貸倒引当金計上額で、当社が認識しうる信用リスクから発生する可能性のある損失を適切に見積もっていると考えておりますが、貸倒引当金の見積りは基本的に過去のデータにより計算しているため、将来見込等の要素も加えているものの急激な経済金融情勢の変化等により、実際の貸倒損失が引当金計上額と相違する可能性があります。
ル.繰延税金資産
税務会計と金融商品取引法下での企業会計との差異は次第に大きくなっております。当社は、課税所得の計算上の資産・負債と、貸借対照表上の資産・負債の計上額との一時差異に関して、法定実効税率を用いて繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しております。
当事業年度の財務諸表に計上した金額の算出方法については、繰延税金資産の回収可能性を、将来の企業の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づいて判断することとしております。当事業年度においては、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針における課税所得見通しの分類4に該当致しますが、将来においておおむね3年から5年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることを合理的な根拠をもって説明することが出来ますので、分類3の基準で計上しております。
前事業年度末においては、『新型コロナウイルスの変異により、向こう数年間は新型コロナウイルスの影響は避けられない』との前提に基づき、具体的な影響として、各種研修の開催や動員に制約が続き、新規販売員及び新規顧客の獲得に苦戦すると想定し、翌5年間の課税所得見通し合計額を見積もりましたが、当事業年度においても前事業年度と同様の前提と具体的影響の想定に基づき、翌5年間の課税所得見通し合計額を見積もっております。
なお、上記課税所得見通しについては、保守的に算出しており、当社の売上利益計画とは異なります。
将来において当社の経営成績が大きく変動する場合、当社の税区分が変更される場合、税制が変更される場合、あるいは繰延税金資産についての会計規則等が変更される場合には、将来における一時差異の解消金額や繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。
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