国内農業は、農業生産者の減少及び高齢化が進んでいる一方で、大規模生産者や農業法人の増加など農業生産構造の変化が現れてきております。また、局地的豪雨や大雪等が農業へ大きな被害をもたらしており、その影響を残している国内農業は厳しい環境にあります。このような中、国内農薬業界におきましては、改正農薬取締法(2018年12月施行)により一層の農薬の安全性の向上が要求されており、国内の既登録農薬についても最近の科学的知見に基づいた安全性等の再評価が必要となっております。また、世界農薬市場におきましては、国内に先行し農薬登録制度の見直しが行われており、農薬使用時や残留農薬の安全性評価に留まらず生態系に対する環境影響評価が強化され、多くの既存薬剤の登録の失効・淘汰が進んでいます。加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大による農薬の生産・物流・消費等に対する影響を注視していく必要があります。
このような情勢の中で当社グループは、経営理念である「我が信条」(お客様のため、社員のため、社会のため、株主のためという4か条)ならびに「どこまでも農家とともに」をモットーとして研究開発・技術普及・生産・販売を展開しております。当社グループは、創業以来の経営理念を堅持しつつ100年企業を目指すために、「Lead The Way 2025」をスローガンとした長期事業計画とともに、新中期事業計画(2022年-2025年)を策定し、企業価値の向上に努めております。また、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために、当社グループは安全性や衛生管理に配慮した業務運営に取り組んでおります。
研究開発部門では、創薬のための研究開発を継続するために組織力の増強と研究レベルの向上を図り、ポートフォリオの充実と拡大に努めております。またポートフォリオ拡充への取組みの結果、米国Gowan社との間でダニ剤「ダニエモンフロアブル」、「エコマイト顆粒水和剤」の日本における取扱いについて合意され、当社では現販売会社のバイエル クロップサイエンス株式会社の地位を継承し、2021年7月から両剤の販売を開始しております。
生産部門では、東京電力福島第一原子力発電所事故による福島工場の操業停止から11年となる中、山口工場はその代替工場として2018年11月に建設され、2021年2月にISO9001の認証を取得しました。茨城工場・直江津工場と併せて自社生産体制の向上により、製品の安定供給とコスト削減に取り組むとともに、品質保証と顧客満足の向上に努めております。また、山口工場は西日本の物流拠点としての機能を備えており、東日本の物流拠点である所沢物流倉庫と併せた効率的な運用による一層のサービス向上に努めてまいります。
なお、2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故による営業損害につきましては、東京電力ホールディングス株式会社に対し損害賠償訴訟を係属中であります。
営業技術普及部門では、農業生産者への適切な技術情報の提供に加えて、土壌分析室を活用し、農業の根幹となる土づくり、土壌のセンチュウ対策、病害虫診断の支援活動を拡大しています。さらに、グローバルGAP認証取得支援ならびに地域の農業・栽培問題解決のための研究実践農場(カネショウファーム)の運営も全国6か所に拡大し、これらのサービス提供により地域農業や農業生産者への貢献に努めております。また、新型コロナウイルス感染拡大に伴い営業・技術普及活動の一部自粛や制限がある中、「お客様相談窓口」の強化を継続し、能動的に製品の技術情報などお客様のお問合わせに対応しております。
海外事業部門では、主力製品「カネマイトフロアブル」の登録が世界50か国で認可され、更に6か国で開発を進めております。また、アセキノシル新製剤である「Veto 30SC」は、2021年10月に米国カリフォルニア州で登録が認可され本年より米国での本格販売を計画しており、今後も全世界的に開発を進めてまいります。「ネマキック粒剤・液剤」については現在9か国で登録が認可され今後も登録国の拡大に取り組んでまいります。また、海外子会社を通じて全世界で「バスアミド微粒剤」、「D-D」の登録維持・拡大・販売活動を整備し、韓国においては現地販売会社・小売店・農家に対する直接的な支援を強化してまいります。
当連結会計年度においては、主要剤であるダニ剤「カネマイトフロアブル」の売上が海外で前連結会計年度を上回りましたが、同じく主要剤の土壌消毒剤は前連結会計年度の売上を下回り、売上高は前連結会計年度を下回りました。販売費及び一般管理費は前連結会計年度に対し、販売促進費、研究開発費関連が減少し、営業利益が前連結会計年度に対し増加しております。経常利益も前連結会計年度比で増加しておりますが、当社の連結子会社である株式会社KANESHO CHPに関する特別損失(減損損失)6億6千7百万円を計上いたしました。これは同社の保有する「ダーズバン」の主要製剤の海外製剤加工会社からの生産中止の通告を受け、代替としての国内製造での著しいコスト上昇ならびに今後発生する登録維持費用の著しい増加が見込まれることから、全ての製剤の販売継続を断念いたしました。このため、のれんの回収可能性について検討し、減損処理を行ったものです。
この結果、当連結会計年度の売上高は151億5百万円(前連結会計年度比9千8百万円の減少、前連結会計年度比0.6%減)、営業利益は12億3千3百万円(前連結会計年度比1億9千5百万円の増加、前連結会計年度比18.8%増)、経常利益は12億8千2百万円(前連結会計年度比1億5百万円の増加、前連結会計年度比8.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は3億6千5百万円(前連結会計年度比1億2千4百万円の減少、前連結会計年度比25.4%減)となりました。
海外では主に「カネマイトフロアブル」が欧州向け販売は前連結会計年度を下回りましたが、北米では前連結会計年度を上回り、全体で前連結会計年度を上回りました。国内では「カネマイトフロアブル」、「チューンアップ顆粒水和剤」、「バイスロイドEW」「アルバリン粉剤」が前連結会計年度を下回りましたが、「ペンタック水和剤」、「サムコルフロアブル」、「ペイオフME」が前連結会計年度を上回り、害虫防除剤全体で前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は42億3千4百万円(前連結会計年度比2億8千3百万円の増加、前連結会計年度比7.2%増)となりました。
「兼商クプロシールド」、「モレスタン水和剤」が前連結会計年度を上回りましたが、「キノンドー水和剤」、「キノンドーフロアブル」などの「キノンドー剤」と「ストライド顆粒水和剤」、「アフェットフロアブル」、「フルーツセイバー」が前連結会計年度を下回ったため、病害防除剤全体で前連結会計年度を下回りました。この結果、売上高は8億9千3百万円(前連結会計年度比9千万円の減少、前連結会計年度比9.2%減)となりました。
国内では「D-D」が前連結会計年度を上回りましたが、「バスアミド微粒剤」、「ネマキック粒剤」が前連結会計年度を下回りました。海外では「ネマキック粒剤」が前連結会計年度を上回りましたが、「D-D」が欧州、その他地域で減少、「バスアミド微粒剤」も前連結会計年度を下回り、土壌消毒剤全体で前連結会計年度を下回りました。この結果、売上高は72億5千万円(前連結会計年度比3億1千4百万円の減少、前連結会計年度比4.2%減)となりました。
「モゲトン粒剤」が前連結会計年度を下回りましたが、「カソロン剤」、「アークエース1キロ粒剤」が前連結会計年度を上回り、除草剤全体で前連結会計年度上回りました。この結果、売上高は15億8千7百万円(前連結会計年度比2千1百万円の増加、前連結会計年度比1.4%増)となりました。
展着剤、園芸用品、植調剤が前連結会計年度を上回り、その他全体でほぼ前連結会計年度並みとなりました。この結果、売上高は11億3千8百万円(前連結会計年度比1百万円の増加、前連結会計年度比0.1%増)となりました。
当連結会計年度における生産実績は、次のとおりです。なお、当社グループは単一セグメントのため、製品の種類別に記載しています。
(注)1 金額は正味販売価格により算出しております。
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
前連結会計年度(自 2020年1月1日 至 2020年12月31日)及び当連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)
当社グループ製品は見込生産を主体としており、総販売高に占める受注生産の割合は僅少のため受注状況の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績は、次のとおりです。なお、当社グループは単一セグメントのため、製品の種類別に記載しています。
(注)1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。
連結会計年度の総資産266億1千万円は、前連結会計年度の289億7千7百万円に比べ、23億6千7百万円の減少となりました。これは主に受取手形及び売掛金が4億2千8百万円増加する一方、主に海外連結子会社Kanesho Soil Treatment SRL/BVから非支配子会社への配当の支払い及び資本の払戻しにより、現金及び預金が17億8千1百万円、減価償却及びのれんの減損損失等により固定資産が10億8千4百万円減少したことによるものであります。
当連結会計年度の負債67億1千2百万円は、前連結会計年度の76億7百万円に比べ、8億9千5百万円の減少となりました。これは主に流動負債のその他が4億1千万円、借入金の返済で長期借入金が3億9千万円減少したことによるものであります。
純資産は198億9千7百万円となり、前連結会計年度に比べ14億7千2百万円の減少となりました。これは主に非支配株主持分が17億4千1百万円減少したことによるものです。その結果、自己資本比率は71.8%、1株当たり純資産額は1,542円33銭となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、資金という。)は101億7千7百万円(前連結会計年度比17億8千1百万円の減少、前連結会計年度比14.9%減)となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果得られた資金は 7億4千8百万円(前連結会計年度は13億1千9百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益(5億9千6百万円)、減価償却費の計上(6億5千9百万円)、のれんの減損損失(6億6千7百万円)による増加があったものの、売上債権の増加(3億9千2百万円)により減少したものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果支出した資金は 2億2千9百万円(前連結会計年度は1億2千9百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産(1億3千5百万円)及び無形固定資産(1億4百万円)の取得により減少したものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果支出した資金は 25億3千5百万円(前連結会計年度は18億6千5百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済(3億9千百万円)、配当金の支払(2億7千4百万円)、非支配株主への配当金の支払額(8億2千4百万円)非支配株主への払戻による支出(10億3千1百万円)により減少したものであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
(売上高)
売上高は151億5百万円(前連結会計年度比9千8百万円の減少、前連結会計年度比0.6%減)となりました。 製品の種類別の売上高につきましては、(1) 経営成績等の状況の概要に記載のとおりです。
(営業利益)
営業利益は12億3千3百万円(前連結会計年度比1億9千5百万円の増加、前連結会計年度比18.8%増)となりました。これは主に、研究開発に関する費用の減少等により販売費及び一般管理費が減少したためです。
(経常利益)
経常利益は12億8千2百万円(前連結会計年度比1億5百万円の増加、前連結会計年度比8.9%増)となりました。前連結会計年度は、情報提供料収入、受取保険金、支払手数料返戻金、企業誘致奨励金等の計上がありましたが、当連結会計年度は企業誘致奨励金等の計上で前連結会計年度を下回る営業外収益でしたが、為替差損の減少等で営業外費用が抑えられ、経常利益では前連結会計年度に対し増加となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は3億6千5百万円(前連結会計年度比1億2千4百万円の減少、前連結会計年度比25.4%減)となりました。前連結会計年度は補助金収入で特別利益が計上され、特別損失としてたな卸資産廃棄損が計上されましたが、当連結会計年度は固定資産除却損、減損損失の特別損失が計上されました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益では前連結会計年度を下回る結果となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、原材料調達価格の動向、市場動向、為替動向、国内外の法令及び政治・経済動向等があります。
資材調達につきましては、重要な供給元とは関係強化を図るとともに、複数のソースを起用することと、生産と販売のバランスの調整、物流体制の見直しや最適化に努め、為替の影響によるリスクヘッジを含めた安定的な調達を進めております。
市場の変化に対しましては、国内販売部門において、マーケティング戦略に基づいた選択と集中を実践し、TCA活動を通して農家への推進を行い、自社剤の拡販に取り組んでまいります。また新規害虫防除剤「兼商ヨーバルフロアブル」が上市したことにより、更に売上拡大を進めていきます。海外販売部門においては、ダニ剤「カネマイトフロアブル」、「ネマキック粒剤」の販売国、適用作物の拡大を最重要課題として取り組んでおります。研究開発部門では引き続き、新剤の開発に取り組んでおります。
国内外の法令や政治・経済動向等につきましては、海外事業部、法務文書室等を中心とし、情報を入手するとともに、海外子会社及び関係会社と連携・情報共有を図ることで対応を行っております。
なお、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスクにつきましては、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主として営業活動によるキャッシュ・フロー及び金融機関からの借入を資金の源泉としております。また、設備投資等の長期資金需要につきましては、自己資金はもとより、金融機関からの借入等、金利コストの最小化を図れるように資金調達を行っております。
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