業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社は「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、遡及適用後の数値で前年同期との比較分析を行っております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態および経営成績の状況

当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の長期化により個人消費の下振れが続き、また感染者・濃厚接触者の急増が企業の生産活動を抑制するなど、景気の回復スピードは鈍化した状況となりました。さらに本年2月にはウクライナ情勢が悪化するなど、先行きが不透明な状況で推移しました。

このような経営状況の中、当社グループの関連業界では、住宅業界においては、景気の回復や在宅ニーズの高まりによる住環境の見直しといった需要に伴い、新設住宅着工戸数は緩やかに回復しました。自動車業界においては、半導体や部品の供給不足、世界的な物流網の混乱等を受け減産傾向となったものの、車載用半導体・電子部品市場は自動車のEV化が進み好調に推移しました。土木建設工事業界においては、建築物の補修・改修工事の需要および道路、鉄道などのインフラ整備並びに維持修繕の需要は堅調に推移しました。

その結果、当連結会計年度の財政状態および経営成績は以下のとおりとなりました。

 

(財政状態)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ53億47百万円増加し、1,191億48百万円となりました。

 

a. 資産

流動資産は、売掛金が28億28百万円減少したものの、電子記録債権が60億48百万円、現金及び預金が22億92百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ62億76百万円増の822億66百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の土地が6億22百万円増加したものの、有形固定資産の建設仮勘定が5億31百万円、建物及び構築物が4億95百万円、投資その他の資産の投資有価証券が3億77百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ9億29百万円減の368億82百万円となりました。

 

b. 負債

流動負債は、未払法人税等が3億79百万円減少したものの、支払手形及び買掛金が22億11百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ17億62百万円増の411億95百万円となりました。固定負債は、退職給付に係る負債が2億23百万円、長期借入金が1億84百万円減少したこと等により、前連結会計年度末に比べ5億26百万円減の50億55百万円となりました。

 

c. 純資産

純資産は、利益剰余金が35億67百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ41億12百万円増の728億97百万円となりました。

 

(経営成績)

当連結会計年度における当社グループの経営成績は、売上高1,136億71百万円(前年同期比5.5%増)、営業利益72億98百万円(前年同期比3.1%増)、経常利益78億22百万円(前年同期比5.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益51億35百万円(前年同期比4.1%増)となりました。

 

セグメントの概況は次のとおりであります。

なお、当社グループは「ボンド」、「土木建設」、「化成品」を事業セグメントとしておりましたが、当連結会計年度より「土木建設」に含めておりました土木建設分野に使用される接着剤・補修材・シーリング材の事業を「ボンド」に移管し、事業セグメントを「ボンド」、「化成品」、「工事事業」として再編いたしました。

これは、2021年4月より、社会インフラ、建築ストック市場の補修・改修・補強などの工事請負事業を、より一層強化するために経営体制の変更を行ったことによるものであります。

以下の前年同期比較については、変更後のセグメント区分に基づき作成した数値で比較しております。

 

a. ボンド

一般家庭用分野においては、昨年の巣ごもり特需による反動減もあり売上は減少しました。住関連分野においては、新設住宅着工戸数の回復に伴い、内装工事用や内装建材用接着剤の売上は増加し、産業資材分野においても、紙関連用途向けの水性接着剤や自動車・電子部品等に使用される弾性接着剤などが好調に推移し売上は増加しました。また、土木建築分野においても、土木、建築補修用に使用する材料や建築用シーリング材の売上が増加するなど売上は全体的に回復し、好調に推移しました。しかしながら、接着剤やシーリング材に使用される原材料の価格が、第3四半期以降大きく高騰しており、製品価格改定は実施しているものの、利益は減少となりました。

以上の結果、売上高は636億13百万円(前年同期比9.1%増)、営業利益は46億6百万円(前年同期比5.0%減)となりました。

 

b. 化成品

化学工業分野においては、エタノール関連商材の売上が昨年の特需による反動で減少したものの、樹脂原料の販売は好調に推移し、売上は大きく増加しました。自動車分野においては、車載電子部品に使用される商材の売上は大きく増加しました。また、電子電機分野における放熱封止材用の商材、塗料分野における商材においても、売上は増加しました。丸安産業㈱は、半導体製造に使用される商材およびコンデンサ用商材が好調に推移したことにより、売上は大きく増加しました。

以上の結果、売上高は318億44百万円(前年同期比13.1%増)、営業利益は9億89百万円(前年同期比57.8%増)となりました。

 

c. 工事事業

工事事業においては、昨期に大型工事案件があったため売上は減少しましたが、計画どおりに推移しました。また、公共事業を中心としたインフラおよびストック市場の補修・改修・補強工事の受注は、好調に推移しました。

以上の結果、売上高は180億20百万円(前年同期比14.4%減)、営業利益は16億74百万円(前年同期比19.1%増)となりました。

 

d. その他

その他は不動産賃貸業等となります。売上高は1億93百万円(前年同期比23.5%減)、営業利益は17百万円(前年同期比91.0%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の増加額は17億92百万円(前年同期比8億83百万円増)となりました。これは、営業活動によるキャッシュ・フローの増加額が61億98百万円(前年同期比5億67百万円減)、投資活動によるキャッシュ・フローの減少額が26億74百万円(前年同期比16百万円減)、財務活動によるキャッシュ・フローの減少額が18億23百万円(前年同期比12億9百万円減)となったことによるものです。

この結果、当連結会計年度の資金の期末残高は、前連結会計年度に比べ17億92百万円増加し、255億14百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、61億98百万円(前年同期比5億67百万円減)となりました。

これは、法人税等の支払額が29億87百万円、売上債権及び契約資産の増加額が22億42百万円あったものの、税金等調整前当期純利益が79億80百万円、仕入債務の増加額が23億85百万円、減価償却費が22億66百万円あったこと等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、26億74百万円(前年同期比16百万円減)となりました。

これは、定期預金の払戻による収入が11億55百万円あったものの、有形固定資産の取得による支出が28億82百万円、定期預金の預入による支出が16億55百万円あったこと等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、18億23百万円(前年同期比12億9百万円減)となりました。

これは、配当金の支払額が15億64百万円あったこと等によるものです。

 

 

(2) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

生産実績(t)

前年同期比(%)

ボンド

146,455

14.6

化成品

工事事業

その他

合計

146,455

14.6

(注)1 化成品はその品種が多種多様に亘り、その数量の表示が困難であるため記載しておりません。

2 工事事業およびその他については、生産実績を定義することが困難であるため記載しておりません。

 

② 受注実績

 当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

 当連結会計年度末

(2022年3月31日)

 

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

ボンド

化成品

工事事業

20,014

1.0

14,567

14.6

その他

合計

20,014

1.0

14,567

14.6

(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 当社グループでは、「工事事業」セグメントの土木建設工事以外は受注生産を行っておりません。

 

③ 販売実績

 当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

ボンド

63,613

9.1

化成品

31,844

13.1

工事事業

18,020

△14.4

その他

193

△23.5

合計

113,671

5.5

(注)1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

 前連結会計年度

(自  2020年4月1日

 至  2021年3月31日)

 当連結会計年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社デンソー

13,116

12.2

15,042

13.2

 

 

(3) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等

(財政状態)

 当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」をご参照ください。

 

(経営成績)

 当社グループの経営成績は、当連結会計年度において売上高1,136億71百万円(前年同期比5.5%増)、営業利益72億98百万円(前年同期比3.1%増)、経常利益78億22百万円(前年同期比5.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益51億35百万円(前年同期比4.1%増)となりました。

 以下に、連結損益計算書に重要な影響を与えた要因について分析いたします。

 

a. 売上高および営業利益の分析

 当連結会計年度の売上高は前連結会計年度より59億21百万円増加し1,136億71百万円、営業利益は前連結会計年度より2億16百万円増加し72億98百万円となりました。

 なお、当社グループでは、研究開発費を売上原価および販売費及び一般管理費として処理しております。当連結会計年度の研究開発費は16億13百万円であり、前連結会計年度と比較して2.9%減少しました。

 セグメント別の詳しい内容については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態および経営成績の状況」をご参照ください。

 

b. 営業外損益の分析

 当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度より1億24百万円増加し5億77百万円となりました。主な要因は、為替差益が64百万円、受取配当金が14百万円増加したこと等によるものです。

 また、営業外費用は、前連結会計年度より56百万円減少し53百万円となりました。主な要因は、その他が46百万円減少したこと等によるものです。

 

c. 特別損益の分析

 当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度より2億32百万円減少し1億97百万円となりました。主な要因は、固定資産売却益が2億9百万円、投資有価証券売却益が22百万円減少したこと等によるものです。

 また、特別損失は、前連結会計年度より6百万円増加し40百万円となりました。主な要因は、固定資産処分損が10百万円増加したこと等によるものです。

 

d. 中期経営計画および達成状況

 当社グループは、合成接着剤「ボンド」などを製造・販売するメーカーとしてのボンド事業、化学品を扱う専門商社としての化成品事業、社会インフラおよび建築ストック市場の維持・補修・改修を目的とした工事事業を主力の3事業として、「つなげる」ことを理念とし、事業展開を図っております。そのような中、当社グループは、2023年3月期から当社設立100周年を迎える2025年3月期を最終年度とする3ヵ年の中期経営計画の策定を進めて参りました。しかしながら、接着剤、シーリング材に使用する原材料価格が想定以上に高騰しており、さらにウクライナ情勢悪化等の影響による更なる資源価格高騰や供給網混乱などが懸念されている状況において、先行きが非常に不透明であることから、中期経営計画の策定を延期しております。なお、中期経営計画につきましては原材料市況の動向を踏まえ、公表時期を決定する予定です。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

b. 資金需要

 当社グループの運転資金需要は、製品製造のための原材料仕入や商品仕入の他、荷造運搬費、人件費等の販売費及び一般管理費が主なものであります。また、設備資金需要については生産効率の向上、物流体制の構築のための設備投資が主なものであります。今後、事業拡大、グループ経営の相乗効果の最大化に寄与するM&A投資を積極的に行っていく予定であります。

 

c. 財務政策

 当社グループは、事業活動のための適切な資金の調達、および適切な流動性を安定的に確保することを基本方針としております。短期的な運転資金の需要に対しては主に自己資金により、また長期的な運転資金の需要に対しては必要に応じて金融機関からの長期借入を行っております。また、当社および国内連結子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・サービス)を導入し、当社グループ内の余剰資金を当社へ集中し、資金の有効活用を図っております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

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