文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、緊急事態宣言の発出と解除が繰り返された結果、個人消費が停滞し非常に厳しい状況が続きました。さらに年末にかけて変異ウイルス「オミクロン株」が世界中に流行するなど、依然として景気の先行き不透明な状況が続いております。
一方で世界経済におきましても、米国や欧州を中心として経済・社会活動の正常化が進んだため需要が急回復し、その反動による原材料の供給制約や労働力不足、エネルギー価格の高騰などを要因とする不安定な物価動向が見られ、国内経済と同様に先行き不透明な状況が続いております。
国内農業を取り巻く環境としましては、国内外において「持続可能な開発目標(SDGs)」や環境への対応が重要となっている中で、2021年5月に農林水産省が、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため、新しい政策方針として「みどりの食料システム戦略」を策定し、公表いたしました。この新しい政策方針は、当社グループが提唱する食糧増産技術(アグリテクノロジー)を普及させることと一致しております。また、アグリテクノロジーを普及させることが、SDGsの貢献目標である「環境保全」、「資源効率の改善」、「飢餓撲滅」に繋がるものと考えております。
このような環境の中、当社グループでは、2021年2月に「新中期経営計画(2021-2023年)」を策定し、「人や環境に優しい」持続可能な農業をより広く普及させるため、経営理念である『食料増産技術(アグリテクノロジー)と真心で世界の人々に貢献します』を実践し、重点施策の取り組みを進めてまいりました。
当社グループでは、引き続き市場が求める安心、安全な製品を供給するための販売体制の強化や生産体制の効率化、積極的かつ持続的な研究開発投資などを図り、世界の農業が抱える課題解決に引き続き取り組んでまいります。
以上の事業活動の結果、当連結会計年度の売上高は226億57百万円(前連結会計年度比23億69百万円増加、同11.7%増)、営業利益19億82百万円(前連結会計年度比4億69百万円増加、同31.0%増)、経常利益19億69百万円(前連結会計年度比6億23百万円増加、同46.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益14億43百万円(前連結会計年度比6億5百万円増加、同72.3%増)となりました。
当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントでありますが、各分野の状況は次のとおりであります。
農薬分野では、国内においては、殺菌剤「ショウチノスケ」、グリーンプロダクツ(注1)「サフオイル」などが積極的な営業活動の結果、昨年と比較して出荷が好調に推移しましたが、殺虫剤「オンコル」、「ハチハチ」や水稲除草剤の出荷が昨年比で減少しました。一方海外においては、殺ダニ剤「ダニサラバ」、殺虫剤「オンコル」の出荷が好調に推移し売上高を拡大することができましたが、殺菌剤「ガッテン」は、販売先の在庫調整の影響を受けて出荷は昨年比で減少しました。これらの結果、農薬分野の売上高は95億39百万円(前連結会計年度比82百万円減少、同0.9%減)となりました。
肥料・バイオスティミュラント(注2)分野では、国内においては、ハウス肥料や養液土耕栽培用肥料の出荷が増加しました。一方海外においては、オランダのクリザール社(Blue Wave Holding B.V.)の花卉資材やバイオスティミュラント剤「アトニック」の出荷が昨年比で増加しました。これらの結果、肥料・バイオスティミュラント分野の売上高は131億18百万円(前連結会計年度比24億51百万円増加、同23.0%増)となりました。
(注1)グリーンプロダクツ:農薬登録を有する天然・食品添加物由来又は有機JAS適合農薬など使用回数に制限のない安心安全な環境にも優しい防除資材
(注2)バイオスティミュラント:植物が本来持つ能力や機能を高め、耐寒性、耐暑性、病害虫耐性及び成長促進を促す物質や技術の総称
一方、販売管理費において給料賞与、研究開発費が昨年比で増加した影響もあり、営業利益は19億82百万円(前連結会計年度比4億69百万円増加、同31.0%増)となりました。
また、水稲除草剤「ベンゾフェナップ・ベンフレセート原体及び含有製剤」に関する事業の事業譲渡益などにより、親会社株主に帰属する当期純利益は14億43百万円(前連結会計年度比6億5百万円増加、同72.3%増)となりました。
(2)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度の生産実績は以下のとおりであります。なお、当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
アグリテクノ事業 |
11,404 |
119.8 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
②商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績は以下のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
アグリテクノ事業 |
941 |
101.1 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
③受注実績
当社グループは主として見込み生産を行っているため、記載を省略しております。
④販売実績
当連結会計年度の販売実績は以下のとおりであります。なお、当社グループはアグリテクノ事業の単一セグメントのため分野別に記載しております。
分野別の名称 |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬 |
9,539 |
99.1 |
肥料・バイオスティミュラント |
13,118 |
123.0 |
合計 |
22,657 |
111.7 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年1月1日 至 2020年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年1月1日 至 2021年12月31日) |
||
金額 (百万円) |
割合(%) |
金額 (百万円) |
割合(%) |
|
丸善薬品産業株式会社 |
1,971 |
9.7 |
4,593 |
20.3 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)財政状態の分析
① 資産の部
当連結会計年度末の総資産は283億21百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億26百万円減少しました。その内訳は、流動資産が56百万円増加、固定資産が5億83百万円減少したことによるものであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は144億98百万円となり、前連結会計年度末に比べ56百万円増加しました。その主な要因は、現金及び預金が84百万円減少、受取手形及び売掛金が1億36百万円減少、商品及び製品が39百万円増加、原材料及び貯蔵品が2億12百万円増加、仕掛品が2億50百万円増加したことによるものであります。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産は138億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億83百万円減少しました。その主な要因は、建物及び構築物が72百万円減少、のれんが4億12百万円減少、顧客関係資産が1億28百万円減少したことによるものであります。
② 負債の部
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は103億40百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億67百万円減少しました。その主な要因は、支払手形及び買掛金が10億45百万円増加、未払法人税等が2億73百万円増加、短期借入金が18億29百万円減少したことによるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債は88億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億48百万円減少しました。その主な要因は、長期借入金が12億72百万円減少、長期預り金が1億64百万円減少したことによるものであります。
③ 純資産の部
当連結会計年度末における純資産の部は91億22百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億89百万円増加しました。その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上14億43百万円、剰余金の配当2億16百万円、自己株式の取得2億99百万円、為替換算調整勘定3億85百万円増加したことによるものであります。
(4)キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ12百万円減少し、当連結会計年度末には35億14百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、獲得した資金は36億3百万円(前連結会計年度は19億37百万円の収入)となりました。これは主として収入面では、税金等調整前当期純利益22億49百万円、減価償却費8億25百万円、のれん償却額5億91百万円、仕入債務の増加額9億96百万円、売上債権の減少額2億9百万円等に対して、支出面では、たな卸資産の増加額4億29百万円、法人税等の支払額5億70百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、獲得した資金は2億21百万円(前連結会計年度は2億58百万円の支出)となりました。これは主として収入面では、投資有価証券の売却による収入2億88百万円、事業譲渡による収入2億34百万円等に対して、支出面では、有形固定資産の取得による支出2億59百万円、無形固定資産の取得による支出1億46百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、支出した資金は39億36百万円(前連結会計年度は13億39百万円の支出)となりました。これは主として、支出面では、短期借入金の減少額18億1百万円、長期借入金の返済による支出14億16百万円、配当金の支払額2億15百万円、自己株式の取得による支出2億99百万円等によるものであります。
(5)資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び商品の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式の取得によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は126億52百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は35億14百万円となっております。
(6)経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標に照らした分析、検討内容
当社グループの経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における取り組みとして、農薬分野では、国内においては、オンコル関連剤、殺菌剤「ショウチノスケ」、グリーンプロダクツ「サフオイル」を中心に積極的な営業活動を展開してまいりました。一方で海外においては、殺ダニ剤「ダニサラバ」、殺虫剤「オンコル」を中心に米州、アジア地域で積極的な営業活動を展開してまいりました。肥料・バイオスティミュラント分野においては、バイオスティミュラント剤「アトニック」、養液土耕栽培システム及びその肥料、「ハウス肥料」、「OK-Fシリーズ」などの既存製品に積極的な営業活動を展開してまいりました。またオランダのクリザール社(Blue Wave Holding B.V.)においては、花卉資材の販売が好調となり当社連結グループの売上高に大きく貢献しました。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は19億82百万円(前連結会計年度比4億69百万円増加、同31.0%増)、売上高営業利益率は8.7%(前連結会計年度比1.3%増)、連結ROEは19.0%(前連結会計年度比6.1%増)となりました。
当社グループが目標とする経営指標である営業利益、売上高営業利益率、連結ROEにつきましては、すべて前連結会計年度を上回る結果となりました。その要因としましては、海外への出荷が好調であったことと、クリザール社(Blue Wave Holding B.V.)の花卉資材の出荷が計画を上回る結果となったことによるものであります。
当社グループが主に事業を展開する農業業界においては、国内販売におきましては、農業生産額の減少などにともない市場は縮小傾向にあり、事業環境としてはやや厳しい状況が続くものと考えられます。また、海外販売におきましては、食料の安定供給や作物生産技術の高度化や高品質化など、中長期的には拡大傾向で推移するものと予想しております。
このような中、当社グループは、「新中期経営計画 2022-2024年」に基づいた重要課題に取り組み、2024年12月期には売上高254億90百万円(当連結会計年度比12.5%増)、営業利益28億90百万円(当連結会計年度比45.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益19億1百万円(当連結会計年度比31.7%増)、連結ROE16.6%を達成し、持続的成長軌道に乗せるよう目指してまいります。
過去5年間の経営指標の推移
|
2017年 12月期 |
2018年 12月期 |
2019年 12月期 |
2020年 12月期 |
2021年 12月期 |
営業利益(百万円) |
1,882 |
1,743 |
1,077 |
1,512 |
1,982 |
売上高営業利益率(%) |
13.3 |
11.4 |
4.9 |
7.5 |
8.7 |
連結ROE(%) |
25.3 |
19.9 |
0.1 |
12.9 |
19.0 |
(7)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成にあたっては、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要としますが、これらの見積りには不確実性が伴うため、実際の結果と異なる場合があります。
会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
(のれんの減損)
当社グループは、のれんについて、主として発生日以降5~15年間で均等償却しております。その資産性について子会社の業績や事業計画等を基に検討しており、将来において当初予想していた収益が見込めなくなった場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、減損処理が必要となる可能性があります。
(たな卸資産の評価)
当社グループは、販売目的で保有するたな卸資産は収益性の低下等により期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。正味売却価額の算定に当たっては、直近の販売価額、市場環境等を勘案しておりますが、これらの前提条件や仮定に変更が生じ、正味売却価額が減少することになった場合には、評価損計上の処理が追加で必要となる可能性があります。
(繰延税金資産)
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保できることや、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
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