(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和されつつありますが、持ち直しの動きに弱さが見られます。
景気の先行きについては、各種政策の効果や海外経済の改善もあって、持ち直していくことが期待されますが、供給面での制約や原材料価格の動向による下振れリスクに十分注意する必要があるほか、新型コロナウイルス感染症の変異株による内外経済への影響を注視する必要があるなど、不透明な状況が続いております。
国内農業では、農業従事者の高年齢化や後継者不足、耕作面積の減少や耕作放棄地の増加など依然として厳しい状況の中、政府は、ロボット技術やICT等の先端技術を活用した「スマート農業」の取り組みを進めるなど、農業の成長産業化に向けた検討を進めております。また、合わせて食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現させるため、中長期的な観点から戦略的に取り組む政策方針として「みどりの食料システム戦略」を策定しております。一方、海外では、世界的な人口の増加や新興国経済の成長による農作物需要の拡大基調が今後も続くと予想されます。
ファインケミカル業界は、コロナ禍により低迷した自動車業界の急速な回復やテレワークや巣ごもり需要の拡大、次世代高速通信(5G)の本格始動等に伴う半導体の需要の急拡大により、フォトレジスト分野等を中心に、国内外において堅調な動きを見せております。一方、中国における政策的な電力の供給制限による工場の減産や、原材料価格の高騰などの下振れリスクに注意する必要があります。
繊維業界では、リサイクル繊維や植物由来繊維など環境負荷低減に資する素材へのニーズが急速に高まるとともに、グローバルなトレーサビリティの確立が強く求められるようになりました。さらにサプライチェーンの混乱に起因して、生産拠点や生産体制見直しの検討に加え、業界内の協業・連携の動きが進んでおります。これらは今後さらに大きな流れとなることが見込まれます。
このような状況のもと、当社グループにおきましては、「収益構造改革」、「造り方改革」、「働き方改革」の三つの改革を柱とした5ヵ年経営計画「HOKKO Value Up Plan 2030 1st Stage for Creation」(2021年11月期~2025年11月期)の経営目標達成に向けて、新製品の普及や新規受託品の受注活動に注力しております。また、企業理念に基づき「SDGsへの取り組み方針」を定め、その達成を目指しております。
当連結会計年度における当社グループの売上高は、農薬事業における販売が減少したものの、ファインケミカル事業における販売が増加したことから40,287百万円となり前連結会計年度比647百万円(1.6%)の増加となりました。
利益面では、売上高の増加に加え、返品調整引当金の繰入額が減少したことや、販売費及び一般管理費の抑制に努めたことにより、営業利益は2,865百万円となり前連結会計年度比578百万円(25.3%)の増加となりました。経常利益は、当社が株式を保有する海外企業からの配当金が減少(前連結会計年度比383百万円の減少)したものの、円安の進展による為替差益の計上等により、3,843百万円となり前連結会計年度比585百万円(18.0%)の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、2,927百万円となり前連結会計年度比527百万円(22.0%)の増加となりました。
事業別の状況は以下のとおりです。
〔農薬事業〕
農薬製品の売上高は、海外販売におけるアジア向けの増加があったものの、国内販売において、本事業年度向け水稲用育苗箱剤の原材料の入荷遅延などにより、前連結会計年度比で減収となりました。この結果、本セグメントの売上高は24,121百万円となり前連結会計年度比800百万円(3.2%)の減少となりました。本事業年度は、返品調整引当金の繰入額が減少し、販売費及び一般管理費の抑制に努めましたが、営業損失は、214百万円となり前連結会計年度比57百万円の減少となりました。
〔ファインケミカル事業〕
ファインケミカル製品の売上高は、主要3分野(医農薬、電子材料および樹脂)の販売が好調に推移したことから、前連結会計年度比で増収となりました。この結果、本セグメントの売上高は14,659百万円となり前連結会計年度比1,445百万円(10.9%)の増加となりました。営業利益は、3,044百万円となり前連結会計年度比499百万円(19.6%)の増加となりました。
〔繊維資材事業〕
繊維資材の売上高は、産業用繊維資材分野では、主に欧米市場の家具向け需要が堅調に推移したものの、衣料品分野では、新たな需要の取り込みに注力する中で、消費回復の遅れ等の影響もあり、ほぼ前連結会計年度並みとなりました。この結果、本セグメントの売上高は、1,489百万円となり前連結会計年度比3百万円(0.2%)の増加となりました。営業利益は、販売費及び一般管理費の抑制に努めたことにより、38百万円となり、前連結会計年度比21百万円(120.3%)の増加となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産の残高は51,987百万円となり、前連結会計年度比3,786百万円の増加となりました。内訳として、商品及び製品、建設仮勘定、投資有価証券が増加しております。
負債の残高は17,767百万円となり、前連結会計年度比71百万円の減少となりました。内訳として、支払手形及び買掛金、未払法人税等、繰延税金負債が増加した一方、短期借入金、未払金、未払消費税等、退職給付に係る負債が減少しております。
純資産の残高は34,220百万円となり、前連結会計年度比3,857百万円の増加となりました。
以上の結果、自己資本比率は65.8%となり、前連結会計年度の63.0%から2.8ポイント増加しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、法人税等の支払、有形固定資産の取得による支出等の要因により一部相殺されたものの、税金等調整前当期純利益3,939百万円等の増加により、前連結会計年度末に比べ364百万円増加し、当連結会計年度末は4,321百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の増加は、2,940百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,939百万円、減価償却費の計上1,351百万円の増加があった一方、たな卸資産の減少額1,086百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の減少は、1,689百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得1,689百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の減少は、965百万円となりました。これは主に、長期借入金の純減250百万円、短期借入金の純減227百万円、配当金の支払487百万円の減少によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬事業 |
13,915 |
102.2% |
ファインケミカル事業 |
8,516 |
103.9% |
合計 |
22,431 |
102.8% |
(注)1.金額は、製品製造原価で表示しております。
2.繊維資材事業及びその他につきましては、生産実績がないため記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2)商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬事業 |
5,037 |
108.5% |
ファインケミカル事業 |
1,216 |
88.4% |
繊維資材事業 |
1,314 |
122.4% |
その他 |
11 |
86.7% |
合計 |
7,578 |
106.7% |
(注)1.金額は、実際仕入額で表示しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3)受注実績
当社グループは、受注生産の規模は小さいため、受注実績は記載しておりません。
4)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) (百万円) |
前年同期比(%) |
農薬事業 |
24,121 |
96.8% |
ファインケミカル事業 |
14,659 |
110.9% |
繊維資材事業 |
1,489 |
100.2% |
その他 |
19 |
97.5% |
合計 |
40,287 |
101.6% |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2019年12月1日 至 2020年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2020年12月1日 至 2021年11月30日) |
||
金額 (百万円) |
割合(%) |
金額 (百万円) |
割合(%) |
|
全国農業協同組合連合会 |
18,897 |
47.7 |
17,869 |
44.4 |
信越化学工業株式会社 |
5,463 |
13.8 |
5,501 |
13.7 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度における当社グループの売上高は、農薬事業における販売が減少したものの、
ファインケミカル事業における販売が増加したことから40,287百万円となり前連結会計年度比
647百万円(1.6%)の増加となりました。
利益面では、売上高の増加に加え、返品調整引当金の繰入額が減少したことや、販売費及び一般管理費の抑制に努めたことにより、営業利益は2,865百万円となり前連結会計年度比578百万円(25.3%)の増加となりました。経常利益は、当社が株式を保有する海外企業からの配当金が減少(前連結会計年度比383百万円の減少)したものの、円安の進展による為替差益の計上等により、3,843百万円となり前連結会計年度比585百万円(18.0%)の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、2,927百万円となり前連結会計年度比527百万円(22.0%)の増加となりました。
事業別の状況は以下のとおりです。
〔農薬事業〕
農薬製品の国内販売は海外からの殺虫殺菌剤用の原材料入荷遅延や水稲用除草剤の防除暦変更による影響により減少しました。なお現在,原材料の調達は正常化しております。
農薬製品の海外販売は主にインド、ベトナム等アジア向け販売が好調で増加し、農薬事業における輸出割合は国内販売減少の影響もあり11.3%に上昇しております。(前連結会計年度の輸出割合は9.5%)
この結果、本セグメントの売上高は24,121百万円となり前連結会計年度比800百万円(3.2%)の減少となりました。本事業年度は、返品調整引当金の繰入額が減少し、販売費及び一般管理費の抑制に努めましたが、営業損失は、214百万円となり前連結会計年度比57百万円の減少となりました。
〔ファインケミカル事業〕
ファインケミカル製品の売上高は主要3分野(医農薬、電子材料および樹脂)の販売が好調に推移したことから増加となりました。営業利益率も20.8%と前連結会計年度比1.5%向上しております。
この結果、本セグメントの売上高は14,659百万円となり前連結会計年度比1,445百万円(10.9%)の増加となりました。営業利益は3,044百万円となり、前連結会計年度比499百万円(19.6%)の増加となりました。
<ファインケミカル製品の主な用途>
〇医農薬分野
・医薬、農薬原料および中間体
〇電子材料分野
・半導体封止剤用の硬化促進剤(CPU、メモリー 等)
・フォトレジスト用のモノマー原料(KrFが中心)
・有機EL 等
〇樹脂分野
・樹脂用原料(塗料、コーティング剤 等)
〇その他
・食品飼料、化粧品、エネルギー 等
〔繊維資材事業〕
繊維資材の売上高は,産業用繊維資材分野で主に欧米市場の家具向け需要が堅調に推移したものの、衣料品分野では、新たな需要の取り込みに注力する中で、消費回復の遅れ等の影響もあり、ほぼ前連結会計年度並みとなりました。この結果、本セグメントの売上高は、1,489百万円となり前連結会計年度比3百万円(0.2%)の増加となりました。営業利益は、販売費及び一般管理費の抑制に努めたことにより、38百万円となり、前連結会計年度比21百万円(120.3%)の増加となりました。
②当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因としては、原材料調達や価格の動向、市場
動向、為替動向、国内外の法令及び政治・経済動向等があります。
資材調達につきましては、調達ルートの多様化、調達方法の高度化を推進しております。
市場動向、顧客ニーズの変化につきましては以下のとおりです。
農薬事業においては、国内生産者の高齢化による耕作地減少や新興国を中心とした購買力増大
による海外市場拡大等を踏まえ、付加価値の高い製品開発とラインナップの強化、グローバル化
に対応した新原体の創製に取り組んでまいります。
ファインケミカル事業においては、顧客要求の高度化・多様化やファブレス化の進展に伴う受
託機会の増加傾向等を踏まえ、コア技術のさらなる進化と独自製品の開発、アライアンス等によ
る新規ビジネス創出に取り組んでまいります。
国内外の法令や政治・経済動向等につきましては、企画部を中心に、情報を入手するととも
に、海外子会社及び関係会社と連携・情報共有を図ることで対応を行っております。
なお、当社グループの経営成績及び財政状態に重要な影響を与える主要なリスクにつきまして
は、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりです。
③財政状態の状況
財政状態の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
④キャッシュ・フローの状況
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要のうち主なものは、新剤開発・登録等にかかる研究開発費や生産設備の増強及び生産効率化に係る設備投資であり、これらは主に自己資金並びに金融機関からの借入金により調達しております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,321百万円であり、資金の流動性を確保しております。
⑥重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成にあたって、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
⑦経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、売上高、経常利益、売上高経常利益率、ROE、自己資本比率を重要な経
営指標と認識し、目標を設定しています。
当該数値目標については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営計画〔中期経営計画 「HOKKO Value Up Plan 2030 1st Stage for Creation」〕 ②経営目標」に記載のとおりです。
当連結会計年度の売上高は40,287百万円、経常利益は3,843百万円、売上高経常利益率は
9.5%、ROEは9.1%、自己資本比率は65.8%となりました。
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