研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループは、多様化する顧客ニーズに対応していくため、また、新たな事業創出のため積極的に研究開発活動に取り組んでおり、原材料の精製・合成・変性・配合による高機能付与および顧客要求条件に合致した製品特性の評価技術を基盤に、特殊潤滑油、合成潤滑油、ホットメルト接着剤および新規事業開発の各部門で研究開発を進めております。研究開発拠点は日本に置き、中国・東南アジア・米国には技術者を日本から派遣し、セグメント間の連携を図りながら現地に根ざした製品開発を行っております。

主として当社の本社・研究センターに、事業部門に関連した開発部および新規事業開発を担う研究開発部を置き、環境関連、情報関連、エネルギーデバイス関連、ライフサイエンス関連の各分野での新技術開発・新製品開発および既存製品の改良開発を推進しております。研究開発スタッフは108名であり、これは従業員全体の13.7%に当たっております。

当連結会計年度における各セグメント別の研究開発の主要課題、研究開発成果および研究開発費は次のとおりであります。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,359百万円となっております。

(1) 日本

(特殊潤滑油部門)

主に、機能材事業部内に設置している各分野の開発課において、ダイカスト用油剤、難燃性作動液、熱間鍛造潤滑剤、また、金属加工油事業部内に設置している開発課において、金属加工油等の研究開発を行っております。

持続可能社会の実現に向けた環境負荷低減や省資源化・リサイクル化に貢献できる新製品開発を始め、IoT・AIやセンサーを用いた基盤技術構築、更に油剤長寿命化や使用量削減が可能な周辺装置開発にも注力しております

ダイカスト用油剤では、少量塗布使用による工場内環境改善、品質・生産性向上を実現する製品開発を成功させましたので、各自動車メーカーのEV化・軽量化に貢献するべく新製品開発の展開を推進します。また効率的な少量塗布を実現するための塗布シミュレーション技術の開発なども進めております。

難燃性作動液では、国内No.1水グリコール系作動液メーカーとして環境への取り組みを加速し、劣化作動液から主成分を回収利用するリサイクルシステムのブラッシュアップに併せ、作動液の長寿命化を実現するための自動モニタリングシステムの開発により廃棄物低減による環境負荷の低減への貢献も進めています。

熱間鍛造潤滑剤では、黒鉛代替可能で環境改善可能な白色系潤滑剤の開発を進め、特にサイクルタイムの早い加工を行う工程に用いる潤滑剤の製品開発を成功させました、引き続き自動車軽量化で適用が期待されるアルミ鍛造分野への取り組みを推進しております。

金属加工油では、環境改善や生産性向上に貢献できる水溶性切削油のコア技術の更なる深耕を進めると共に、加工油剤の長寿命化を実現するための自動モニタリングシステムの開発を行い、加工性能の安定化や廃棄物低減による環境負荷の低減への貢献を進めています。

(合成潤滑油部門)

合成潤滑油開発部において、ハードディスク表面潤滑剤、ハードディスクドライブ内部品・半導体製造装置用の特殊油剤等の研究開発を行っております。独自の構造設計と合成・精製ノウハウによりオンリーワン製品の開発に注力しております。

ハードディスク表面潤滑剤では、さらなる記録密度向上のために必要とされる低浮上性(低すきま性)を実現する新規化合物が主要ディスクメーカーで採用され始めております。品質安定化のための製造基盤技術強化を進めるとともに、次世代ハードディスクの要求特性に対応した新規化合物の分子設計に注力しております。更には、大容量磁気記録技術として期待されている、MAMR(マイクロウェーブアシスト磁気記録)やHAMR(熱アシスト磁気記録)などに要求される耐久性・耐熱性に優れた新しい潤滑剤の開発も続けております。

ハードディスクディスクドライブ内部品や半導体製造装置用の特殊油剤では、アウトガス発生の原因となる低揮発成分を徹底的に除去した高度精製油剤の開発を行っており、市場評価も進んでおります。

また、新しい事業構築を目標として、バイオマス材料を用いた材料開発や添加剤合成の分野への挑戦も開始し、潤滑性や導電性、サスティナブル社会への貢献といった市場動向の流れに沿って、独自性の高い高機能添加剤の開発を目指すとともに、合成技術を活かし他部門やグループ会社との協業による市販原材料とは異なる機能を有した新たな原材料設計・添加剤設計・製品開発に引き続き注力しております。

(ホットメルト接着剤部門)

ホットメルト事業部内に設置しているホットメルト開発部において、人や環境に配慮した低臭気・無揮発成分(VOC)の接着剤の開発にあわせ、省エネルギーを実現しうる低温塗工タイプの新製品やホットメルトの弱点である耐熱性不足を克服しうる新製品等の開発を行っております。

主要市場のひとつである衛生材料業界向けには、顧客の海外進出に追随し、現地調達可能な材料を用いた新製品開発とともに現地生産拠点への技術支援に引き続き取り組んでおります。また紙おむつなどの衛生材料市場の製品について、低臭気化のニーズにあわせたホットメルトの低臭気化技術や、接着界面の分析・解析技術の向上により、少ない塗布量でも十分な接着力を発揮できる低塗布量対応型ホットメルトなどを開発し、ユーザーの安心感向上に貢献できる新製品開発に注力しております。

さらに近年、環境問題に対する意識が世界的に高まっており、資源の有効活用や循環型社会の形成に有効と考えられる「バイオマス」の利活用が盛んに検討される中、カーボンニュートラルに貢献し、機能面でも特長のある製品を増やし、お客様の多様性に伴ったラインナップを準備致しました。また自動車内装用向けの反応型ホットメルトの性能向上に成功し新たな自動車メーカーでご採用頂きました。ホットメルトはもともと有機溶剤を含まず、人体や環境に優しい粘接着剤ですが、単なる環境対応だけではなく、バイオマス由来原料の特長を活かした粘接着剤の開発に取り組んでいきたいと考えています。

(新規事業開発部門)

環境関連、情報関連、エネルギーデバイス関連、ライフサイエンス関連などの分野をキーワードとし、引き続き新規事業創出を目指した種々の研究開発を行っております。

エネルギーデバイス関連分野に関しては、有機ELデバイスの封止材を主軸とする製品開発と販売に取り組んでおります。次世代有機デバイスとして期待されているフレキシブルタイプ向けや、マイクロLED向けの封止部材についても開発に注力しており、顧客評価が進んでいます。さらに、フレキシブルタイプに使用するフィルム等のガス・水蒸気透過度測定装置について販売および受託分析を継続しており、国内を中心として実績が拡大しております。更には水素透過率を測定できる新装置の開発も進んでいます。

有機薄膜太陽電池(OPV)については海外メーカーとの協業も取り入れながら販売を開始しております。

ライフサイエンス関連部門では複数の大学や研究機関と連携し、重篤なアレルギー疾患の治療薬や、加齢に伴い低下し各種生活習慣病とも関係すると考えられているオートファジーという細胞内現象の活性化薬に関する創薬研究を進めるとともに、薬物の吸収性を飛躍的に高めることができるナノエマルジョン技術を手始めに化粧品原料に応用し、実用化に向けた研究開発を進めております。その他の新規事業開発においては、長期経営計画をベースに、上記の開発テーマ以外にも、さまざまな調査活動や情報解析活動にも取り組んでおり、新たなプロジェクトの継続的な孵卵を進めております。

日本セグメントに係る研究開発費の金額は1,260百万円であります。

 

(2) 中国、東南/南アジアおよび北米

主としてダイカスト用油剤および金属加工油に関して、現地のニーズに合致した製品開発に注力し、研究開発要員が駐在し、現地開発体制の強化を進めております。ダイカスト用油剤においては、リーディングカンパニーとしての開発ノウハウを共有化し、現地ニーズに対応した製品開発をタイムリーに行うことにより、ローカルユーザーを含めた市場シェアアップに努めております。金属加工油では、日本で培った水溶性切削油開発におけるコア技術の共有化を図り、現地ニーズに合致した新製品開発を進めています。中国、東南/南アジアおよび北米セグメントに係る研究開発費の金額は99百万円であります。

 

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