課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社は、「報恩」を合言葉に「喜びや成長の糧となる環境を人々から与えられている事に感謝し、不撓不屈の精神で価値ある未来の創造に挑戦し続ける」ことを経営理念として掲げ、「不動産IT革命により不動産取引に関わる全ての人の満足を創造する」ことを事業理念としております。

当社は20年以上にわたって三大都市圏における新築マンションに関するパンフレット等の資料を収集し不動産データベースとして蓄積することで、新築マンションデベロッパー、不動産仲介事業者、不動産販売事業者、戸建て業者等の不動産に関わる事業者様に不動産マーケティングシステムを提供しております。一物四価と言われ価値の測定が困難な性質を持つ不動産に対して、顧客が不動産取引を行う上で、正確な不動産価値分析により選択に確信を持っていただけるよう、正確な裏付けのある不動産データベースを整備し長年にわたりご活用いただいております。

また、当社は新築マンションのデータベースを日々更新・蓄積しており、保有する不動産データベースは、データ棟数62,478棟、住戸数2,659,147戸、パンフレット数40,321通、間取り数619,659件(2022年2月28日現在)となっております。当社では、この不動産データベースとAI(人工知能)や画像解析等のテクノロジーを活用し、不動産業界に変化を起こすイノベーターを目指し今後も新たな付加価値の創造に向けたチャレンジを続けて参ります。

 

(2)目標とする経営指標等

当社は持続的な成長と企業価値向上を目指しており、全社的な主要な指標として売上高及び営業利益を重視しております。

また、当社は主力事業と位置付けるプラットフォーム事業において目標とする経営指標を設定しております。主に新築マンション事業者向けに提供している月額課金制サービス(サマリネット及びリアナビ)においては平均顧客単価、平均顧客数、ARR及び解約率を、不動産仲介事業者(中古領域)向けのデータダウンロードサービスにおいては平均顧客単価及び平均顧客数を事業運営上重視する経営指標としております。

サマリネット及びリアナビは月額課金制サービスの比率が94.2%(2022年2月期実績)と高いことから、ARRを伸長させることが営業利益確保のために重要であると考えております。従ってARRを目標とする経営指標に設定するとともに、ARRの構成要素として平均顧客単価、平均顧客数及び解約率を目標とする経営指標に含めております。平均顧客単価を上げるためには、顧客の利便性の高いサービスを追加するとともに、SaaS型サービスへ移行していない賃貸サマリ、売買サマリ、統計サマリ等のSaaS型サービスへの移行を推進することで顧客単価向上を図って参ります。

データダウンロードサービスは従量課金制でありますが、売上高の構成要素として平均顧客単価と平均顧客数を目標とする経営指標に設定しております。当サービスにおいては、現在はパンフレット画像を中心に提供を行っておりますが、今後は顧客が求めるコンテンツをサービスに追加することで利用頻度を高めて一顧客当たりの単価の向上を狙っていく方針であるため、利用頻度を測定する意味で平均顧客単価を目標とする経営指標としております。

(注)サマリネット・リアナビ及びデータダウンロードサービスの経営指標の算定方法は以下のとおりです。

 

サービス名

経営指標

算定方法

サマリネット・リアナビ

平均顧客単価

(サマリネット)

各月の顧客単価(売上高 ÷ 顧客数)の平均値

平均顧客数

(サマリネット)

各月の顧客数の平均値

ARR(サマリネット・リアナビ)

月額課金制サービスの契約額の年間合計額

解約率(サマリネット・リアナビ)

期中解約金額 ÷ 前期のARR × 100

データダウンロード

サービス

平均顧客単価

各月の顧客単価(売上高 ÷ 顧客数)の平均値

平均顧客数

各月の顧客数の平均値

 

 

(3)経営環境

当社は、不動産マーケティングソリューション事業を行っており、当社の主要な顧客は新築マンションデベロッパー、不動産仲介事業者、不動産販売事業者、戸建て業者等であり、その大半が不動産業に関わっております。不動産業は、国民生活や経済活動の基礎となる住宅・オフィス・商業施設等の開発・流通・管理等を通じ我が国の豊かな国民生活経済成長等を支える重要な基幹産業であり、その産業規模は2017年度では売上高43.4兆円、法人数約33万社、従業者数134万人、国内総生産61.8兆円であります。(出典:不動産業ビジョン2030、国土交通省 社会資本整備審議会産業分科会不動産部会)

居住用不動産を取り巻く環境として、昨今少子高齢化に伴う人口減少及びそれに伴う空き家問題などが将来的な懸念として社会問題化しておりますが、政府が閣議決定した「住生活基本計画」(2021年3月)において「新たな日常」やDXの進展等に対応した新しい住まい方の実現や脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成等の目標が掲げられ、住宅の供給の在り方の大きな転換点を迎えております。

足元では、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により景気の後退懸念や先行き不透明感が増しておりますが、低金利環境の継続と建築資材や人件費の高騰を受けて新築マンションの平均価格は2018年度5,786万円、2019年度5,955万円、2020年度6,039万円、2021年度6,517万円(首都圏の各年度に発売された新築マンションが対象、当社調べ)と堅調な推移を見せております。新築マンションの価格高騰により、中古マンション業界も活況を呈しており、首都圏の中古マンションの価格は、2010年度を100とする不動産価格指数において2018年度136.4、2019年度141.6、2020年度147.2、2021年度159.1(南関東圏におけるマンションが対象、出典:国土交通省)と値上がりが続いております。

また、金融政策においては日銀の物価上昇見通しは緩やかであり金融緩和政策が継続される(日本銀行『経済・物価情勢の展望』)と想定されており、引き続き既存住宅流通の拡大が後押しされる環境にあると認識しております。

かかる環境を踏まえ、当社ではプラットフォーム事業において新築マンション事業者(新築マンション領域)向けのサービスと不動産仲介事業者(中古マンション領域)向けの両方において売上高及び営業利益の向上を目指して参ります。

 

(4)経営戦略等

上記の経営環境を踏まえたそれぞれの領域における具体的な経営戦略は以下のとおりであります。

新築マンション領域においては、不動産マーケティングシステムとしてサマリネット及びリアナビを提供しておりますが、これらのサービスは主に用地仕入れや企画・マーケティング部門においてご活用いただいております。用地仕入れ時の事業計画策定、市場調査レポートの作成、競合物件調査等を短時間で行うことができる利便性の高いシステムであることから、新築マンションの年間供給戸数ランキング(2020年度、当社調べ)における上位50社中48社に導入いただいております。

 

2021年2月期より、従来クライアントサーバ型システムにて提供しておりました不動産マーケティングシステムの主力サービスである「マンションサマリ」のSaaS型サービスへの移行を進めており、顧客が場所や端末を選ぶことなく業務を行うことができる環境を整備いたしました。コロナ禍にあって当社の顧客企業においてもリモートワーク等のオフィス以外で業務を行うニーズが急速に高まっておりますが、そうしたニーズへの対応として当社のサービスのSaaS型へのリプレイスが進んでおります。このSaaS型サービスへのリプレイスにより、月額課金制サービスの年間売上高(ARR)の増加を見込んでおります。今後は、「マンションサマリ」以外のサービスについても順次SaaS型サービスへのリプレイスを進めて参りますが、SaaS化により当社サービスの利用者(利用アカウント)の増加を図ることによってクロスセルの機会として活用し、平均顧客単価の向上を推進して参ります。

中古マンション領域においては、当社が長年収集してきた新築マンションの販売時のパンフレットを仲介業者向けにデータとして提供しているもので、売上高は2021年2月期には前期比185%、2022年2月期には178%と成長しております。当社は新築マンション分譲時のコンセプトブックと図面集を含むパンフレット画像を提供しており、不動産仲介事業者様には物件チラシや需要事項説明書の作成、顧客への営業資料作成、広告出稿用の間取り作成、物件査定等にご活用いただいております。類似サービスを提供している競合企業が1社ございますが、サービスのコンセプトが若干異なること及びそれぞれが従量課金制のサービスを提供していることから、共存可能な状況あると認識しております。また、独自性の高いサービスであることから、競合企業の新規参入は想定しておりません。

中古マンション領域における今後の成長戦略としては、①契約社数の増加、②提供コンテンツの増加の二つの軸での成長を見込んでおります。

 

①契約社数の増加について

現在2,162社(2022年2月28日現在)のサービス契約社数を引き上げることにより、データダウンロードサービスの売上拡大を図って参ります。当サービスを共同運営している株式会社ワンノブアカインドと協力しながら、三大都市圏でのサービス認知度を高めて利用を促進していく方針です。三大都市圏における宅地建物取引業者数は約73,000業者(注1)ございますが、中古マンションの仲介事業を積極的に行っている約36,000業者(注2)をターゲットとして想定しております。

 

②提供コンテンツの増加について

データダウンロードサービスの契約社数を増やす活動と並行して、ご利用いただけるコンテンツを追加することにより顧客単価の向上を図って参ります。当社が保有しているデータベースを元に、仲介事業者様が広告作成用の素材として利用可能なコンテンツの追加を計画しております。現時点では顧客の広告用の図面作成業務を不要とする間取り図面や広告・資料等に利用できる物件の外観写真等の追加を予定しておりますが、将来的には仲介事業者様の業務効率向上に貢献するコンテンツを提供するためのプラットフォームとして発展させていく方針です。

 

(注)1.一般財団法人不動産適正取引推進機構の公表データから埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県の宅地建物取引業者数を集計しております。

2.三大都市圏にて中古マンションの仲介事業を行っている事業者を、当社独自に抽出・集計しております。

 

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 安定的な収益基盤の強化

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響により景気の先行き不明感が増す中で、既存サービス品質の維持及び機能強化を図ると同時に、顧客のニーズにあった新たなサービスの開発を行うことで、継続的な収益を確保しつつ、今後の持続的な成長実現のための、安定的な収益基盤の確保と強化が必須であると考えております。

今後、特に注力していくのは、当社の中核事業であり今後も高い成長が期待されるプラットフォーム事業でありますが、新築マンション領域と中古マンション領域のそれぞれにおいて収益拡大を進めて参ります。

 

② 優秀な人材の確保及び教育研修の実施

当社は、今後より一層の事業拡大のために優秀な人材の採用、育成が重要な課題であると認識しております。当社はこれまで、少人数での効率的な組織運営を優先し人材採用を積極的には実施してきませんでしたが、リモートワーク可の勤務形態への転換及び四半期毎の人事評価制度の導入等、従業員が主体的に勤務できる魅力ある職場づくりを推進してきました。

今後、プラットフォーム事業における業容拡大が見込まれることから、中途採用を積極的に実施していく方針であります。特に重点を置いているのがシステム開発部門の技術職の採用であり、システム開発要員の増員を通じてサービス開発力を一層強化していきたいと考えております。また、新たに入社した社員に対しての研修・教育制度を整備することで、短期間で成長し活躍できるような体制づくりを行って参ります。

 

③ 内部管理体制の強化

当社は、今後より一層の事業拡大を見込む成長段階にあり、事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性確保のためにコーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築・運用を通じて、企業価値の最大化に努めて参ります。

 

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