本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきまして、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。
(1)事業環境等に関するリスク
①業界及び顧客の動向に関するリスク
当社は不動産業界に特化したプラットフォーム事業及びデジタルマーケティング事業等を行っており、当社顧客は不動産業界に集中している状況にあります。不動産業界の中でも新築マンションデベロップ事業者、新築戸建て事業者及び不動産仲介事業者等に向けたサービスを創業以来提供しておりますが、不動産業界全般の景気や、不動産業界におけるシステム投資の状況によって、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、今後において、不動産業界に対する規制環境の変化や業界各社の対応に何らかの変化が生じた場合、同様に当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としましては、新築マンション業界と中古マンション流通業界の両方をターゲットとしてリスク分散を図ること及びより利便性の高い新規サービスを提供することにより、上記のリスクへの対応を図って参ります。
②インターネット広告商品の変化について
当社がデジタルマーケティング事業で取り組んでいるインターネット広告は、その手法が日々進化しておりますので、当社の取り扱うリスティング広告及びディスプレイ広告等のインターネット広告商品の相対的価値が低下することで、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、当社ではスマートフォンなどの新たなデバイス向けの広告商品やFacebook広告やYouTube広告等のSNS広告の取扱いもスタートして、顧客ニーズをいち早く捉えるべく新規広告商材への取り組みを進めるなど対応を図っております。しかしながら、これらの広告商品への対応が著しく遅れてしまった場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③新型コロナウイルスの影響について
新型コロナウイルスの感染再拡大により、経済活動が規制されたり停滞したりすることが懸念されております。当社は、主として不動産会社向けにオンラインによるデータ提供サービスを行っていることから新型コロナウイルスの影響を受けにくいと考えておりますが、想定を超える感染拡大が発生した場合には当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④技術革新について
当社のサービス提供にはインターネット環境が不可欠ですが、インターネット業界は技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が激しく、新しいサービスが逐次産み出されている中、当社も積極的に最新の情報の蓄積、分析及びサービスへの新技術の導入に取り組んでおります。その一例として、従来はクライアントサーバ型システムにより運営していたサマリネットのマンションサマリを、SaaS型システムにて提供できるようシステム開発を行っております。この変更に伴い、顧客がテレワーク環境においても当社サービスを利用できるようになり、利便性を高めております。
しかしながら、当社が予期しない技術革新等によりインターネット環境に急激な変化があり、そうした変化への対応が遅れた場合には、当社のサービスの陳腐化や競争力の低下を引き起こし、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤システムリスクについて
当社の事業はインターネット環境において行われており、サービスの安定供給のために当社として適切と考える以下のセキュリティ対策を施しております。
イ.ISO27001情報セキュリティマネジメントシステムの認証取得による情報管理体制の整備
ロ.各サービスの運用サーバ及びネットワーク等の冗長化
ハ.ウイルスやアタックを防止するファイアウォールの設置
ニ.SSL(Secure Socket Layer)等を用いた外部との通信の暗号化
ホ.継続的な脆弱性診断の実施
ヘ.セキュリティの担保された通信を実施するためのVPN設置
ト.セキュリティリスクに対応したソフトウエア及び機器の定期的なアップデート
チ.メール誤送信防止ソフトの導入
リ.ウイルス対策ソフトの導入
ヌ.大規模クラウドサービスプラットフォーム AWS(Amazon Web Service)環境におけるサービス運用
こうした対策にもかかわらず、ハードウェア・ソフトウエアの不具合、人為的なミス、コンピュータウィルス、第三者によるサーバやシステムへのサイバー攻撃、自然災害等の予期せぬ事象の発生によって、当社の想定しないシステム障害等が発生した場合は、当社の事業活動に支障が生じ、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥自然災害・不測の事故等について
当社は東京本社のほか大阪及び名古屋に支社を置き営業活動を行っておりますが、リモートワーク環境を構築してこれら営業拠点に依存しない業務遂行体制を整備しております。しかしながら、当該エリアにおいて地震、火災、津波、大型台風等の自然災害が発生して営業活動や情報収集活動等が制約を受ける場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容等に関するリスク
①新規サービスについて
当社は、事業規模の拡大の収益源の多様化を実現するために、新規サービスの拡充への取り組みを進めていく方針であります。新規サービスの拡充にあたっては、当社の不動産業界における顧客基盤や当社の保有データ・技術等を踏まえて確度の高いサービス開発に取り組んで参りますが、新規サービスが安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。
また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当初の計画どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としましては、顧客とのヒアリング及びリサーチを実施することによりサービスに対する顧客ニーズを明確に把握し、優先順位づけを適切に行うことで本リスクを軽減させていく方針です。
②パンフレット画像の利用に係る契約について
当社のデジタルマーケティング事業におけるデータベースにおいては、新築マンション販売時のパンフレット画像等を契約に基づき収集しておりますが、当該契約の解消または変更等により当該パンフレット画像等が利用できなくなった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、新築マンションのパンフレット画像等の提供元である新築マンションデベロッパーの顧客満足度向上に努め、関係維持を図ることにより本リスクを軽減させていくこととしております。
③インターネット広告収入への依存について
当社のデジタルマーケティング事業では、一部インターネット広告代行により収入を得ております。当社顧客の不動産事業者は今後もマーケティング投資全体におけるインターネット広告の比率を高めていくと推察され、当社の売上高も安定的に推移するものと考えております。
しかしながら、経済情勢等の変化により顧客企業のマーケティング活動が縮小した場合、デジタルマーケティング事業の売上高が減少して当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
④解約について
当社がプラットフォーム事業において主に提供している不動産マーケティング情報は月額課金制となっており、安定的な収益を実現しております。その一方で、顧客企業の利用状況の低迷や不動産事業からの撤退等の経営方針の変化などの理由により、サマリネットやリアナビなどの月額課金制サービスにおいて2022年2月期には0.7%の解約が発生しております。当社の予算及び経営計画には、実績を基に一定の解約を見込んでおりますが、競合他社に対する競争力の低下や、トラブル等の何らかの要因により当社の想定を超える解約が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
顧客が不動産事業から撤退する場合には解約を防ぐことが困難ですが、競合他社に対する当社サービスの競争力の低下を防ぐために情報の正確性・網羅性及び即時性を高く保ち顧客満足度を高めることで継続利用を促進しております。
⑤契約不適合責任について
当社では当社が受託したリフォーム工事に対し、民法の規定に基づく契約不適合責任を負っております。当社においては、リフォーム工事が完工した際には必ず独自のチェックリストを用いてリフォーム完了チェックを行い、そのうえで施主の完工確認を実施して契約不適合が生じないよう品質管理を行っております。しかし、万が一、当社のリフォーム工事が契約の内容に適合しないと判断された場合には、追加工事費用の負担、損害賠償等により、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥提供する情報の正確性について
当社のプラットフォーム事業では、三大都市圏における新築分譲マンションの情報を主軸に不動産に関する様々な情報を収集し、独自のノウハウで正確性の高いビッグデータとして提供しております。これらの情報は用地仕入れの意思決定には不可欠の情報であることから、高い正確性のほか網羅性と即時性が求められております。当社においては組織的な情報管理体制を整備することにより、正確性、網羅性及び即時性の担保に努めております。具体的には、正確性については専用のデータ入力システムを開発し複数の担当者による確認を実施し、網羅性については公開義務のある公的な情報に基づき網羅的な情報収集活動を実施し、また即時性については情報取得後から約2営業日でシステム反映を行い顧客が最新のデータを閲覧できる状態を保っております。
しかしながら、当社が提供している情報に誤りが含まれていたこと等に起因して顧客に対して不正確な情報を提供する場合や、不正確な情報を提供していると誤認される場合には、当社の契約件数の減少、ブランドイメージや社会的信用力の低下、サービス価格の減額等により、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社においては情報収集・登録業務を仕組化していることに加えて、データマネジメントシステムの採用等により管理精度を高く保つべく努めておりますので、本リスクの発生可能性は低いと考えております。
(3)組織体制等に関するリスク
①人材の確保及び育成について
当社は、事業の拡大に伴い、継続的な人材の確保が必要となるため、優秀な人材を適切に確保するとともに、人材の育成に努めて参ります。しかしながら、人材の確保及び育成が計画通りに進まなかった場合は、当社の事業展開に支障が生じ、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
②コンプライアンス体制について
当社は、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのためコンプライアンスに関する社内規程として「コンプライアンス規程」、「リスク・コンプライアンス管理委員会規程」、「内部通報規程」、「インサイダー取引防止規程」、「広告・広報等管理規程」及び「知的財産管理規程」等を策定するとともに四半期に一度コンプライアンス研修を実施し、社内規程の周知徹底とコンプライアンス意識の醸成を図っております。
しかしながら、これらの取り組みにもかかわらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の事業及び業績や社会的信用に影響を与える可能性があります。
③特定の経営者への依存について
当社は、代表取締役社長である陣隆浩に当社の経営の重要な部分を依存しております。現在、当社では同氏に過度に依存しないよう、内部管理体制の整備、人材の育成を行う等体制の整備に努めておりますが、何らかの理由により同氏による当社業務の遂行が困難となった場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
④大株主について
当社代表取締役社長である陣隆浩の本書提出日現在での議決権所有割合は、直接所有分として37.6%であります。また、同氏の資産管理会社である株式会社JINXの議決権を合算した所有割合は58.0%となっております。同氏及び株式会社JINXは引続き当社の株式を保有する見通しでありますが、議決権の行使に当たっては、株主共同利益を追求するとともに少数株主の利益にも配慮する方針であります。
しかしながら、何らかの事情によって、同氏または当該資産管理会社が当社株式をやむを得ず売却することとなった場合、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑤小規模組織であることについて
当社は小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び業務内容の多様化に対応するため、人員の増強及び内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(4)事業に関する法的規制等に関するリスク
①知的財産権におけるリスクについて
当社ではサービス提供にあたり、契約に基づきパンフレット等の情報収集を行っております。当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、当社の事業、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
②個人情報の保護について
当社は、当社の提供するサービスを通じて、利用者本人を識別することができる個人情報を一部保有しております。当社は、JISQ15001プライバシーマーク認証を取得の上、信頼性の高い外部サーバで当該個人情報を保護するとともに、個人情報保護に関するフローを整備し、個人情報の保護に努めております。
こうした対策にもかかわらず、個人情報が当社の関係者等の故意又は過失により外部に流出した場合には、当社が損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があるほか、当社の運営するサービスの信頼性等が毀損し、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③法的規制について
現時点において、当社事業そのものを規制する法的規制はないものと認識しておりますが、情報サービス業界の変化は激しいことから、今後新たな法令等の整備が行われる可能性は否定できず、当該内容によっては当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、不動産に関わる分野におけるインターネット上の表示項目等が規制の対象になる可能性も否定できず、その場合には当社の事業が制約される可能性があります。
(5)その他リスク
①資金使途について
当社が2022年2月に実施した公募増資による調達資金の使途については、①システム人材の採用費、②不動産マーケティングシステムの開発費用、③不動産仲介事業者(中古領域)向けの新規サービスの開発費用、④社内業務効率化のためのRPA導入費用等に充当する予定でありますが、当社の遂行する業務においては急速に事業環境が変化することも考えられ、環境変化に柔軟に対応することを優先し、現時点における資金計画以外の使途へ充当する可能性があります。
また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定した投資効果が得られない可能性があります。
②ソフトウエアの減損について
当社は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として資産計上しております。このうち、プラットフォーム事業に係るソフトウエアについては、技術革新のスピードの早いインターネットを使ったSaaS型サービスであることを鑑み、見込利用可能期間を3年と保守的に設定しております。このソフトウエアについて、クライアントニーズへの適切な対応を実施することにより減損を発生させないよう努める方針ですが、重大な将来計画、使用状況等の変更やサービスの陳腐化等により、収益獲得又は費用削減効果が大幅に損なわれ、ソフトウエアの減損が必要となった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③繰延税金資産について
繰延税金資産の計算は、将来の課税所得など様々な予測・仮定に基づいており、経営状況の悪化や税務調査の結果等により、実際の結果が予測・仮定とは異なる可能性があります。従って、将来の課税所得の予測・仮定に基づいて繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額され、その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社では、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、2022年2月末における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は8.9%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
⑤訴訟について
当社では、コンプライアンスの徹底と社会的信用の向上を図ることを目的に、コンプライアンス規程を整備し従業員へ周知することで、法令違反などの発生リスクの低減に努めております。なお、本書提出日現在において業績に影響を及ぼす訴訟や係争は生じておりません。
⑥配当政策について
当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する配当による利益還元は重要な経営課題として認識しております。しかし、当社は現在成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当の実施時期については未定であります。
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