業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2021年1月1日~2021年12月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に対するワクチン普及により行動制限の緩和が進む欧米諸国、中国では経済活動が回復する一方、ワクチン接種が遅れたアセアン地域では、変異株による新型コロナ感染が拡大し、行動制限の継続を余儀なくされました。このような経済回復のひずみにより、半導体不足、原材料の高騰、物流網にも混乱が引き起こされ、生産活動は不安定なものとなりました。 現在、新型コロナ下で実施された金融政策の緩和や、半導体等部品のサプライチェーンの見直しが世界的な課題となっています。

 

 米国においては、感染力の強い新型コロナの変異株の流行による一時的な景気停滞があったものの、ワクチン普及と政府による手厚い補償により個人消費は持続し、内需中心に景気は回復しました。一方で、アセアン地域からの半導体等部品の供給不足、自宅待機による人手不足、物流網の混乱により、自動車産業を中心に影響を受けることとなりました。今後は、政府による金融政策の見直しや人手不足解消に向けた取り組みに注目が集まっています。

 欧州においては、主要国で実施された行動制限によりマイナス成長となった3月以前から一転し、4月以降はワクチン普及に伴い、変異株による感染再拡大の状況下においても経済活動を再開する動きにより経済は堅調に推移しましたが、世界的な半導体不足を受けた生産活動の停滞やエネルギー価格の上昇などが景気減速の懸念となっています。

 中国においては、年初から新型コロナに対し政府による強力な感染対策とワクチン接種の加速により経済活動の正常化が進み、世界的なリモート需要を背景にハイテク産業で生産活動が活発化し輸出も堅調に推移しました。一方で原材料の高騰や深刻な電力不足、不動産投資への警戒感が重なり、経済は緩やかに減速しました。また、人権問題を理由とした欧米諸国による中国デカップリングの動きが進行しつつあり、今後の政策運営が注視されています。

 アジアにおいては、景気回復の進む中国、米国向けの輸出拡大や世界的なリモート需要により、製造業を中心に経済活動は回復に向かいました。しかし、4~7月にかけては新型コロナの変異株による大規模感染により、インドおよびアセアン各国においてロックダウンや厳しい行動制限が実施されました。特に、アセアン地域で生産される半導体等部品の供給不足が、域内だけでなく世界的に自動車メーカーの減産をもたらしました。

 日本経済は、新型コロナによる対面型サービス業などの個人消費の低迷が続くなか、海外経済の回復による輸出を背景に製造業は堅調に推移しました。8月以降、遅れていたワクチン接種が進み、感染者の減少が顕著になった一方で、アセアン地域からの半導体等部品の供給不足により自動車メーカーの減産が拡大し景気回復の足かせとなりました。今後は、感染対策と経済活動の両立による個人消費の回復が期待されています。

 

 当社グループの主要事業分野である日本自動車業界に関する状況は、次のとおりであります。

 新型コロナによる市場の落ち込みは、予想より早く収束しましたが、一方で、リモート需要による世界的な半導体不足が継続しており、夏以降、主要な完成車メーカーにおいて生産台数削減が拡大しました。この問題に対応すべく、関係国との取り組みが行われていますが、半導体不足の解消時期は不透明な状況にあります。

 この結果、当連結会計年度における国内乗用車メーカー8社の国内四輪車販売台数は、前年比3.4%減の402万台、四輪車輸出台数は、前年比0.6%減の357万台となり、国内四輪車生産台数は、前年比4.2%減の739万台となりました。また、海外生産台数は、前年比7.0%増の1,616万台となりました。

 このような環境のなか、当連結会計年度の売上高は58,260百万円(前連結会計年度51,505百万円)、営業利益は6,841百万円(前連結会計年度4,311百万円)、経常利益は7,531百万円(前連結会計年度4,453百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,781百万円(前連結会計年度2,380百万円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

日本

国内販売、海外子会社向け販売とも、半導体不足による影響を受けたものの、新型コロナ禍における大幅な生産縮小の影響を受けた前年と比べると改善し、売上高は30,545百万円(前連結会計年度26,258百万円)、営業利益は1,873百万円(前連結会計年度891百万円)となりました。

 

北米

北米市場は、年始にて寒波による顧客の生産停止、また半導体不足による顧客の減産の影響が拡大しつつも、新型コロナの影響を大きく受けた前年と比べると改善し、売上高は9,587百万円(前連結会計年度8,815百万円)、一方でコンテナ不足による物流費の増加がありましたが、営業利益は346百万円(前連結会計年度195百万円)となりました。

 

中国

新型コロナ禍からいち早く脱却した中国経済は安定した成長が続き、新エネルギー車市場の拡大などにより前年比で乗用車の販売は好調に推移しましたが、6月以降は世界的な半導体不足の長期化や深刻な電力不足により顧客の減産が顕著になりました。しかしながら、顧客にて大規模な生産停止が実施された前年に比べ業績は大幅に改善し、売上高は11,995百万円(前連結会計年度10,613百万円)、営業利益は1,905百万円(前連結会計年度865百万円)となりました。

 

アジア

各国国内では、新型コロナの感染拡大が続いているものの、域内における二輪用ブレーキホースが堅調に推移したことに加え、北米、欧州向け販売が回復傾向にあったため、売上高は17,026百万円(前連結会計年度13,484百万円)、営業利益は3,092百万円(前連結会計年度2,547百万円)となりました。

 

欧州

欧州市場では、カーメーカーは半導体不足の影響による生産抑制を余儀なくされ、また物流費の高騰などのコスト高の影響を受けながらも、新型コロナの影響を受けた前年に比べ業績は回復傾向にあり、売上高は5,104百万円(前連結会計年度4,854百万円)、ブルガリアの請負工場を利用した採算性向上やグループ会社からの最適調達により、営業損失は11百万円(前連結会計年度は営業損失323百万円)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は42,160百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,392百万円増加しました。これは主に、現金及び預金4,303百万円の増加、受取手形及び売掛金1,195百万円の減少、商品及び製品1,310百万円の増加、仕掛品1,040百万円の増加、原材料及び貯蔵品680百万円の増加によるものであります。固定資産は25,799百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,450百万円増加いたしました。これは、建物及び構築物が340百万円増加、機械装置及び運搬具が263百万円増加、土地が564百万円減少、投資有価証券が810百万円増加したものであります。この結果、総資産は、67,960百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,843百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は13,743百万円となり、前連結会計年度末に比べ488百万円増加いたしました。これは主に、支払手形及び買掛金が1,047百万円減少、未払法人税等が989百万円増加、その他のうち未払金が312百万円増加したことによるものであります。固定負債は6,941百万円となり、前連結会計年度末に比べ335百万円増加いたしました。これは主に長期借入金が139百万円減少、リース債務が289百万円増加したことによるものであります。この結果、負債合計は、20,685百万円となり、前連結会計年度末に比べ823百万円増加いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は47,275百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,019百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が4,213百万円増加し、為替換算調整勘定が2,225百万円増加、非支配株主持分が1,220百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は59.9%(前連結会計年度末は58.1%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4,088百万円増加し、当連結会計年度末は15,289百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシユ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は6,352百万円の増加(前連結会計年度は2,857百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益8,868百万円(資金の増加)および、減価償却費2,294百万円(資金の増加)、固定資産売却損益1,426百万円(資金の減少)、売上債権の減少1,852百万円(資金の増加)、たな卸資産の増加2,307百万円(資金の減少)、仕入債務の減少1,348百万円(資金の減少)、法人税等の支払額1,761百万円(資金の減少)等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は591百万円の減少(前連結会計年度は1,956百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,640百万円、有形固定資産の売却による収入1,835百万円、投資有価証券の取得による支出1,043百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は2,602百万円の減少(前連結会計年度は983百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入れによる収入600百万円、長期借入金の返済による支出761百万円、配当金の支払額969百万円、非支配株主への配当金の支払額735百万円等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年 1月 1日

至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

日本 (百万円)

18,376

109.6

北米 (百万円)

9,893

114.4

中国 (百万円)

11,635

122.8

アジア(百万円)

15,040

133.9

欧州 (百万円)

5,152

106.7

合計 (百万円)

60,098

117.9

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b.受注実績

 当社グループの主要製品である自動車用ホースは、基本的には販売先からの受注による受注生産であり、必要なものを必要な時に納入する「ジャスト・イン・タイム」の定時・定量納入方式を特徴としております。

 しかし、販売先より提示を受ける納入内示と実際の納入は、時期、数量が異なるとともに確定受注から納期までは極めて短い期間であります。従って、現実的には販売先からの四半期および翌月の生産計画の内示を基に、過去の実績・当社の生産能力を勘案した見込生産的な生産形態を採っております。

 このような理由により、受注高および受注残高を算出することが困難でありますので、その記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年 1月 1日

至 2021年12月31日)

前年同期比(%)

日本 (百万円)

18,161

107.9

北米 (百万円)

9,574

108.8

中国 (百万円)

11,080

114.2

アジア(百万円)

14,513

125.6

欧州 (百万円)

4,930

106.7

合計 (百万円)

58,260

113.1

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の経済への影響が長期化する中、当期は2021年を初年度とする中期経営計画(NICHIRIN New Sustainable Development Plan)に取り組み、原材料・物流コストの増加、人員不足と人件費の上昇が続く中、円安傾向にある為替の動向も踏まえ、グループ生産拠点の見直し変更により、最適調達とアジア拠点のロックダウン下での顧客への供給責任を果たすべく対応を行ってまいりました。

 このような環境下、当期の経営成績は、新型コロナ前の水準までは届かないものの、前期比で全セグメントにおいて業績は回復致しました。なお、今後も依然として新型コロナの影響は続く懸念があり、また自動車業界の急速なEV化、CO2排出削減、人権への取組などビジネス環境の変化にタイムリーに対応すべく経営数値目標の見直しを行っております。

 

 当連結会計年度の売上高は58,260百万円、営業利益は6,841百万円、経常利益は7,531百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は4,781百万円となりました。

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標および当連結会計年度の達成・進捗状況は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

指標

2021年度(計画)

2021年度(実績)

2021年度(計画比)

売上高

57,500

58,260

+760

+1.3%

営業利益

6,200

6,841

+641

+10.3%

経常利益

6,700

7,531

+831

+12.4%

親会社株主に帰属する当期純利益

4,000

4,781

+781

19.5%

 

 

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

 

経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、自動車業界の動向、顧客企業の業績や調達方針の変更などにより、経営成績に重要な影響を受ける可能性があります。

 その他の要因につきましては、「第2 事業の状況」の「2.事業等のリスク」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度末の現金及び預金は17,060百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,303百万円増加いたしました。これは営業活動の結果獲得した資金が6,352百万円と前連結会計年度に比べ3,494百万円増加し、投資活動の結果使用した資金が591百万円と前連結会計年度に比べ1,365百万円減少し、財務活動の結果使用した資金が2,602百万円と前連結会計年度に比べ1,619百万円増加したことによります。

 

 上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金および金融機関からの借入金にて賄われております。

 当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,542百万円となっております。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は15,289百万円となっております。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表の作成においては、資産・負債および収益・費用の適正な開示を行うため、貸倒引当金、退職給付に係る負債、賞与引当金などに関する引当については、過去の実績や当該事象の状況に照らし合理的と考えられる見積りおよび判断を行い、また価値の下落した投資有価証券の評価や繰延税金資産の計上については、将来の回復可能性や回収可能性などを考慮して計上しております。但し、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、見積りと異なる場合があります。
 当社グループが採用しております会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」および「重要な会計方針」に記載のとおりであります。

 

 なお、今後の新型コロナの当社グループへの影響は、地域によって程度が異なるものの、当連結会計年度末から1年程度継続すると仮定し、会計上の見積りを行っております。

 新型コロナの収束時期及び経営環境への影響が変化した場合には、上記の見積りの結果に影響し、翌連結会計年度以降の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

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