課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針・経営戦略等

当社グループは、2022年度を最終年度とする中期経営ビジョン「2022年 住友理工グループVision」に基づき「自動車(モビリティ)」「インフラ・住環境」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」の4分野に注力し、また、「事業環境が大きな変革期を迎える中で、着実な成長と体質強化を目指す」をVisionのテーマとして、以下の内容を遂行していきます。

<経営戦略>
 「新事業・新規顧客創出」
   ① 新事業創出
   ② グローバル拡販
 「モノづくり革新」
   ① 競争を勝ち抜く強い現場づくり(SRIM 22 Act)
   ② 技術革新(環境技術)・世界No.1品質
 「グローバル経営基盤強化」
   ① グローバル人材力強化
   ② グローバルインフラ強化

 

これらの取り組みにより、「人・社会・地球の安全・快適・環境に貢献する企業」を目指すべき姿として“Global Excellent Manufacturing Company”の実現を追求し続けます。

 

〔成長投資管理と事業採算性管理について〕

当社は、成長投資管理の仕組みとして投資採算基準を設定し、事業戦略との両輪で意思決定しています。投資採算基準には、回収年限法とディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法を併用しています。割引率には、加重平均資本コスト(WACC)に国別のカントリー・リスクとWACCスプレッドを上乗せしたハードルレートを用いることにより、中長期的にWACCを上回る成果の確保を目指しています。

また、投資意思決定時の計画に対して未達となっている案件については、戦略的に事業構造改革計画を策定しています。事業環境変化による採算悪化リスクを最小限に抑制し、より高い成長を見込める事業に経営資源を再配分することで、グループ全体の投資効率を高めています。成長投資管理と並行して、赤字拠点を中心に事業採算性を定期的にチェックし、将来の事業性を検討しています。

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

当社グループを取り巻く環境は、脱炭素・カーボンニュートラルに向けた世界的な潮流や「CASE」といった自動車業界の大変革に加え、足元ではウクライナ情勢や新型コロナウイルス感染症の拡大、原油・原材料価格高騰、サプライチェーンの混乱といった影響により、先行きが依然不透明です。

このような中、当社グループは、中期経営ビジョン「2022年住友理工グループVision」(2022V)のもと、「新事業・新規顧客創出」「モノづくり革新」「グローバル経営基盤強化」を経営戦略の柱として、企業価値向上に取り組んでいます。次期ビジョンの策定を前に、近年の収益力低下を踏まえ、国内外拠点の再編を通じた事業構造の再構築を実施しています。さらに、新製品の開発と市場開拓を急ぐ中で、親会社である住友電気工業株式会社との連携を強化し、これまで以上にシナジーを創出できるように進めていきます。

 

 

〔自動車用品部門〕

自動車業界においては、全世界的な部品不足による自動車メーカーの減産、原材料価格や輸送費の高騰が見込まれるなど、先行きが不透明な状況が続いています。

このような中にあっても技術革新の波は進行し、企業はこれらへの迅速な対応にとどまらず、カーボンニュートラルに象徴されるような社会課題解決への積極的な関与が求められています。

当社グループにおいては、創業以来培ってきたコアコンピタンス「高分子材料技術」「総合評価技術」をもとに、これからの自動車(モビリティ)に新たな価値を提供する製品の創出と開発を進めています。

現在、新商品開発センターが主体となって、CASEにおける「A:Autonomous(自動運転)」「E:Electric(電動化)」2領域の新製品開発に注力しています。圧力分布を検知する「スマートラバー(SR)センサ」は、自動車のステアリングやシートに装着することで、体動に基づくバイタルデータを取得することができます。すでに自動運転対応車の安全性向上に貢献する「ステアリングタッチセンサー」として実用化されています。シートに設置するタイプの「モニライフ・モビリティ™」は開発を継続中で、危険回避や安全確保を的確に行うシステム構築をサポートするなど、自動運転時代を勝ち抜くための新たな製品群の準備を進めています。

また、地球環境保全の機運がますます高まる中、各国の環境規制に対応した、ガソリン蒸散の低減に寄与する高性能な燃料ホースは依然好調で、拡販を継続しています。一方で、車の電動化が加速する中、電気自動車(EV)用の電池やモーターをはじめとする部品の熱マネジメントのニーズが高まっており、当社の流体搬送技術を生かした冷却系ホースなどの開発に注力しています。加えて、EVのネックとされる電費・航続距離問題のソリューションとして、熱マネジメントに寄与する薄膜高断熱材「ファインシュライト®」を拡販中で、来たるEV時代における省エネや環境負荷軽減、安全性の向上に貢献すると考えています。また、水素社会の実現に向けては、燃料電池自動車(FCV)向けの基幹部品を供給しており、トヨタ自動車株式会社の新型MIRAIにも当社製品が継続採用されています。

当社グループにおける、米州の業績低迷については、早急に対処すべき経営課題として認識しています。中でも米国拠点では、グローバル競争の激化や人手不足から生産性が低下してきました。ローカル人材の育成や工程改善によるロス低減に継続して取り組みつつ、米国拠点からメキシコへの生産移管なども含め、収益性の改善を目指します。

物流については、事業横断的に見直しを進め、グローバルでのサプライチェーンの強靭化を目指すとともに、原材料価格や物流コストの低減活動を実施中です。

依然として新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない厳しい局面ですが、経費削減を継続するとともに、収束後の需要回復期にも対応できるよう、より一層最適な生産体制の構築に取り組んでまいります。

 

〔一般産業用品部門・新規事業部門〕

当社グループは、主力事業の「自動車(モビリティ)」分野に加えて、「インフラ・住環境」「エレクトロニクス」「ヘルスケア」といった、社会環境基盤の構築に不可欠な分野へも事業展開しています。これらはSDGs(持続可能な開発目標)にも掲げられる「住み続けられるまちづくり」に貢献する製品群と認識しています。

一般産業用品部門のうち、インフラ分野では、グローバルでの需要回復を背景に高圧ホースの売上が好調で、需要を見極めながら投資を実施していきます。また、エレクトロニクス分野では、成熟市場の伸び悩みやコロナ禍における働き方の変化による、事務機器の需要減少の影響を最小限にとどめる一方で、規模に応じた生産性を維持するための取り組みを実施します。すでに富士裾野製作所(静岡県裾野市)での事業再構築を図り、防振事業および化成品事業において、グループ全体でより高い収益を生み出すため、設備移管および最適な人員配置へと改善が進んでいます。

 

新規事業部門では、社会の要請に応えられるよう投資すべき重点事業分野を見極め、事業基盤の強化を図っていきます。

複数の生体情報を同時に計測できる「モニライフ・ウェルネス」は、宿泊施設などを対象に実証実験が進んでいます。睡眠時の睡眠の質や呼吸状態を判定することで、人々の健康のサポートに貢献できると考えています。さらに、「ファインシュライト®」は、その高いレベルでの保温・保冷機能から、食品やコロナワクチンの定温輸送に活用されており、その他用途でも協業先を探していきます。また、「ファインシュライト®」を工場設備に取り付けることで、熱効率が向上し省エネにつながったという実験結果も得られています。カーボンニュートラルを目指す社会に対して、当社製品がより貢献できることが分かってきました。

 

私たちはこれまで、モノづくり企業として90年以上にわたって培ってきたコアコンピタンスを軸に、住友事業精神が謳う「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」を忠実に守りながら、「安全・環境・コンプライアンス・品質(S.E.C.Q.)」の取り組みを積み重ねてきました。これからも世界中で必要とされる“Global Excellent Manufacturing Company”、すなわち「人・社会・地球の安全・快適・環境に貢献する企業」への成長を目指して、創立100周年に向け、着実な歩みを続けていきます。

 

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