研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、事業を取り巻く環境がダイナミックに変化する中、将来に向けて持続的に成長・発展するために新事業の創出が不可欠であることから、当社グループのコア技術である高分子材料技術と総合評価技術をベースに外部技術との融合・協業を促進し、スピーディーな新技術の創出とタイムリーな商品開発を目指しています。

研究開発にあたっては、新機能・高品質の材料設計開発を担う材料技術統括部と、当社グループのコア技術の深化、データサイエンス、シミュレーション技術開発を担う基盤材料開発研究所、そして材料の分析や試作試験を担当する評価試験部で進めています。

また各事業部門では、「自動車(モビリティ)」「エレクトロニクス」「インフラ・住環境」「ヘルスケア」に該当する新製品・改良品の研究開発を実施しているほか、2020年4月には品種別に分かれていた開発センターなどを統合した、「新商品開発センター」を設置しました。開発テーマの選択と集中を実施しつつ、開発のスピードアップと早期事業化を図ります。

さらに、新製品の開発と市場開拓を急ぐ中で、親会社である住友電気工業株式会社との連携を強化し、シナジーを創出できるよう進めていきます。

なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費の総額は 14,302百万円であります。

 

セグメント別の研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

① 自動車用品

自動車(モビリティ)分野においては、CASEといった技術革新への迅速な対応にとどまらず、環境問題をはじめとする社会課題解決への積極的な関与が求められています。「防振」「自動車用ホース」「ウレタン」の3事業本部とファインエラストマー事業部では、顧客ニーズに対応した製品やCASEに関する技術などについて、研究開発・技術確立を進めています。 

新商品開発センターでは、圧力の検知により、呼吸や心拍などの生体情報(バイタルデータ)を測定することが可能な当社独自開発の「スマートラバー(SR)センサ」を応用し、SRセンサを座席に設置する「モニライフ・モビリティ(ドライバーモニタリングシステム)」を開発中です。上市を見据え、国立研究開発法人 産業技術総合研究所(産総研)と「住友理工-産総研 先進高分子デバイス連携研究室」を2020年10月に設立し、実証実験を継続しています。2021年10月には、産総研と共同でテストコース(茨城県つくば市)を整備し、両者の知見を生かしながら、新たな技術・製品の開発を加速させていきます。また、電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)向けの基幹部品についても、次世代車種を見据えた研究開発を継続実施しております。EVで注目される熱マネジメントへの対応製品においては、車室内の断熱効果を高める薄膜高断熱材「ファインシュライト®」を2020年9月に発売。省エネや環境負荷低減に貢献できる製品で、さらなる技術開発を進めています。他にも、EV用の電池やモーターをはじめとする部品の熱マネジメントへの対応として、冷却系ホースや電池用断熱材などの開発にも着手しています。

親会社の住友電気工業㈱とは、同社の主力製品であるワイヤーハーネスと、当社の制遮音品や内装品、ホースなどの製品とを組み合わせたシステムの提案に向けて、さらなる協業体制の構築を目指していきます。

当連結会計年度における自動車用品に係る研究開発費は、 12,911百万円であります。

 

② 一般産業用品

エレクトロニクス分野においては、環境面で注目される水現像フレキソ版材や、高機能、高精度部品の材料開発を積極的に進めています。インフラ・住環境分野では、鉄道車両用防振ゴム・高圧ホース等のコア技術の強化・再構築を図るとともに、住宅市場でのさらなる事業展開を継続し、事業体質の強化・新規事業の創出を図っています。ヘルスケア分野では、SRセンサを応用した「モニライフシリーズ」の展開を進めています。ホテル宿泊者の睡眠状態を「見える化」するとともに、ルームマネジメントシステムと連携させて、照明や空調の自動制御を行い、質の高い睡眠環境の提供や効率的な客室運用に活用する実証実験などに参画しています。

また、2015年12月に九州大学および糸島市(福岡県)との間で3者協定を締結し、フレイル予防に関する研究を進めてきました。この成果をもとに、小牧本社・製作所がある愛知県小牧市においても、小牧市と協定を締結のうえ、フレイル予防を推進しています。医療機関や研究開発機関、介護施設や企業などへの当社製品・サービスの提供を通じて、ヘルスケア分野での新たな製品開発につなげ、人々の暮らしへのさらなる貢献を目指していきます。一方、「ファインシュライト®」は、その断熱性能が認められ、自動車に先んじてフードデリバリー専用の温熱シートやコロナワクチンの定温輸送用ボックスにも採用されており、その他用途でも協業できるように展開・拡販を進めています。

当連結会計年度における一般産業用品に係る研究開発費は、 1,391百万円であります。

※「フレイル」とは、加齢とともに身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態のこと。

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