研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、コンクリートを通して、お客さまに感動を与える技術を保持し、安心・安全で、快適で豊かな都市空間づくりにより社会の発展に貢献することを使命としております。そのため技術開発部門を中心に各分野のテーマを選定し、外部組織とも共同して各種コンクリート新製品・新技術の研究開発、それら製品を用いた新たな施工法や周辺技術の開発に取り組んでおります。今後、国土強靭化計画、大阪万博開催に向けた交通インフラや大型設備投資、リニア新幹線建設、原発以外のエネルギー調達、自然災害への復旧対応、低炭素化社会に対応した環境負荷低減に向けた取り組み等々、慢性的な建設労働力不足から働き方改革や国土交通省が提唱するi-Construction(アイ・コンストラクション)や施工管理のICT化を念頭に、プレキャストコンクリート製品のニーズ及び建設現場の生産性向上をビジネスチャンスに繋げることを意識して取り組んでまいります。

 

(1) 基礎研究分野

コンクリートに新素材・新材料を利用して長寿命・超高強度化など新たな価値を付与するための調査と応用研究、低炭素型材料の応用研究、プレキャスト製品へのリサイクル材の改良活用や補修材料研究の他、既存の各種コンクリート製品の改良及びクレームに対する技術対応や知的財産取得に向け注力してまいります。

 

(2) 基礎事業分野

既製コンクリート杭の分野では、営業・施工・技術・工場が一体となり顧客密着型の新製品開発に迅速に対応することが求められております。これを受け、顧客ニーズに合わせたRSCP・エスタス等のオリジナル製品の拡充、大地震への対応として高曲げ耐力・高靱性杭の研究、現状の高支持力工法に対応した各種杭の改良・開発や従来製品の改良、自社製品であるエコタンカル他を用いた環境負荷低減型パイル(G(グリーン)-ONAパイル)の開発、製造工程の効率化により製造コスト低減を図るための製品設計・使用材料の最適化、工場生産ライン改善や製造能力の向上及び工場・工事のFコスト(失敗コスト)低減に向けた方策の実施を行っております。さらに、施工管理装置と連携したタブレットでの管理を行うことで、より確実な施工管理及び施工記録の取得・現場管理者の業務負担低減を進めております。施工品質においては、根固め球根の出来型を間接的に確認できる手法の開発も進めております。また、脱リン材(PAdeCS)由来の掘削残土の固化材利用拡充や近年再開発等で既存建造物跡地の課題にもなっている残置杭抜き孔の改良技術評価を取得して展開を図っているところです。今後は、開発・施工ノウハウを更に蓄積することで各種工法の品質向上を図るとともに、この技術力を当社グループ会社や海外事業へ展開するため施工技術指導にも注力してまいります。

 

(3) ポール関連事業分野

コンクリートポールの分野では、高耐久・耐塩性ポールの開発、施工性を改善した新たな分割式ポール(COP:Cap On Pole)の建築基準法への適合性評価の取得(任意評定取得)と品揃え拡充、フランジ継手式ハイポールの多分割化・長尺化・高荷重化等顧客要求に沿った製品の開発に注力すること、ポールでのアセットマネジメントの考えを導入し効率的なポールの維持管理を提案すること、既柱の耐震補強、擬木等のデザイン柱、LED照明柱など環境調和や防災無線柱など災害への備えをキーワードとした製品開発などを含め、グループ社とも連携を図り、全国展開活動をしてまいります。また、グループ社とともにコンクリートポール診断士制度を構築し、ポールの維持管理技術のさらなる信頼向上を目指してまいります。

 

(4) 土木製品事業分野

土木構造物のプレキャスト製品(シールドセグメント、PC-壁体、親杭パネル、超高強度繊維補強コンクリート(UFC)等)では、顧客課題を解決する高付加機能を具備した改良に注力し、他社との差別化を図り、収益性を高めた製品・工法開発に取り組んでおります。主な取り組みとして、PC-壁体において、高機能製品(高耐久仕様-塩害対策仕様)の改良並びに適用範囲の拡充(主に狭隘地)を目的とした新たな施工方法の開発を進めております。また、超高強度繊維補強コンクリートにおいて、施工条件の厳しい老朽化した水路トンネルの補修工事をターゲットとしたUFCパネルの新たな設置方法を開発しております。今後も、政府が進める国土強靭化、防災・減災、及びi-Construction(アイ・コンストラクション)政策への取り組みを通じて、皆様のお役に立てるような土木構造物のプレキャスト化に注力してまいります。

 

(5) 環境事業分野

ポール製造時に発生するコンクリートスラッジをリサイクルすることで、環境に貢献する開発・取り組みを進めております。上記スラッジから炭酸カルシウム(エコタンカル)を生成することで工場から排出される二酸化炭素(CO2)の削減に寄与し、炭酸カルシウム(エコタンカル)は、カーボンネガティブコンクリート用の混和材として、そのニーズが高まり、注目を集めております。また、その副産物として生成される脱リン材(PAdeCS)は主に食品工場廃水に含まれるリンの除去、ヒ素等の有害物質の除去、廃鉱山抗廃水の中和、河川の水質浄化としての用途に使用されております。最近では杭基礎工事から発生する掘削残土の固化材代替や畜産資材として使用され、近年引き合いが増えております。今後も循環型社会の構築に取り組み、環境保護・地域貢献等により社会的責任を果たしてまいります。

なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は520百万円であり、基礎事業に関わる研究開発費は292百万円、コンクリート二次製品事業に関わる研究開発費は227百万円であります。

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