業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度の経済状況は、国内では新型コロナウイルスワクチン接種の進展により、徐々に経済活動が正常化に向かい、設備投資や輸出に持ち直しの動きが続いたことから回復基調にありました。海外では、米国や欧州では感染症による影響が緩和され、個人消費や設備投資が増加したことから景気の回復がみられ、中国は内需の増加により景気は持ち直しつつありました。しかしながら、先行きについては、ウクライナ情勢など不透明感が増す中で、原油、原材料価格の上昇や半導体の供給不足による影響等が懸念されています。

こうした経済環境の下、第11次中期経営計画の最終年度である当期においては、「成長性と収益性の向上」、「投資(M&A、設備、開発)の加速」、「ESG(環境・社会・企業統治)への取組み」を経営課題として、以下の4つの基本戦略を掲げて事業を推進しました。また、新型コロナウイルス感染症の拡大による大きな事業環境の変化に対応するために加えた「選択と集中の加速」を最優先事項として、開発・製造から販売までを通して分析し、採算性の良い事業や商品群に経営資源を集中して、成長性と収益性を向上させるための事業体制の整備を推進しました。

 

ⅰ)競争力のある新商品・新技術開発の促進

自動車の電動化や高速移動体通信用の電子部品の需要拡大に対応すべく、工業機材事業、セラミック・マテリアル事業、エンジニアリング事業において、新商品の開発と新用途の開拓に取り組み、市場へ投入しました。

ⅱ)海外生産拠点の増強と海外市場開拓の推進

工業機材事業において、中国蘇州工場で大型砥石を増産するための新ラインを稼働させました。また、タイ工場では製造ラインを増強しました。

ⅲ)国内販売体制、製造体制の再整備

工業機材事業では、営業効率の向上と物流コスト低減のため、グループ会社を含めた営業・物流拠点の統合・再編を行いました。また、セラミック・マテリアル事業では、中長期的な需要拡大に対応するため、積層セラミックコンデンサ等の電子部品材料の生産能力を増強しました。

ⅳ)ものづくり強化活動、環境活動、安全衛生活動、働き方改革と事業活動の一体化

全社横断組織を設け、各活動と事業活動の一体化に取り組むとともに、定期的な活動報告会などを通して情報を共有しました。Web会議等を活用することで、コロナ禍においても、これら諸活動を推進しました。

 

その結果、当連結会計年度の売上高は1,276億41百万円(前期比19.3%増加)、営業利益は93億53百万円(前期比265.7%増加)、経常利益は125億9百万円(前期比179.2%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は90億68百万円(前期比223.1%増加)となりました。

なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご覧ください。

 

セグメントごとの経営成績は以下のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、連結子会社1社の帰属セグメントを変更しており、以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメントに組み替えた数値で比較分析しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご覧ください。

(工業機材)

国内では、主要顧客である自動車、鉄鋼、ベアリング、電子部品関連において、顧客の生産が回復したことから、売上げは増加しました。海外では、北米で自動車業界に回復がみられ、中国は自動車、鉄鋼業界が堅調に推移し、東南アジアでも市況が回復したことから、売上げが増加しました。オフセット砥石などの汎用砥石は国内が堅調で、海外は大幅に伸長し、売上げが増加しました。研磨布紙は、国内外共に好調で売上げが増加しました。その結果、工業機材事業の売上高は、573億46百万円(前期比21.1%増加)、営業利益は30億55百万円(前年同期は12億26百万円の営業損失)となりました。

(セラミック・マテリアル)

電子ペーストは、高速移動体通信用及びパソコン用電子部品の需要が堅調に推移したことにより、売上げは大きく増加しました。電子部品材料は、通信分野及び自動車向けが堅調に推移し、売上げは伸長しました。厚膜回路基板は、一部製品の価格改定等により、売上げは増加しました。石膏は、東南アジア及びアフリカ向けが好調で、売上げは大きく増加しました。セラミックコアは、顧客の生産調整の影響を受け減少しました。蛍光表示管は海外向けが好調で、増加しました。セラミック原料は国内外共に好調で、大きく増加しました。その結果、セラミック・マテリアル事業の売上高は、407億49百万円(前期比24.3%増加)、営業利益は54億23百万円(前期比75.0%増加)となりました。

 

(エンジニアリング)

主力の乾燥炉及び焼成炉は、リチウムイオン電池及び電子部品分野が堅調に推移したことにより、売上げは大きく増加しました。混合攪拌装置は、設備投資抑制の影響が大きく、売上げは減少しました。濾過装置は、ベアリング向けの受注が回復し、海外向けは増加しましたが、国内向けは低調に推移し、売上げは減少しました。超硬丸鋸切断機は、主に海外の鋼材加工用が好調で、売上げは大きく増加しました。その結果、エンジニアリング事業の売上高は、235億85百万円(前期比10.0%増加)、営業利益は20億54百万円(前期比2.8%増加)となりました。

(食器)

国内市場は、オンライン販売、直営店で売上げが伸びたものの、百貨店、ホテル、エアライン向けは、依然としてコロナ禍の影響が強く、売上げは減少しました。海外市場は、米国では、主要顧客向けの販売が回復基調にあり、売上げは増加しました。アジア地域では、中国・インド向けの販売が伸長し、売上げは増加しました。その他の国・地域でも、オンライン販売が堅調で、海外全体では、売上げは増加しました。その結果、食器事業の売上高は、59億60百万円(前期比10.3%増加)、11億79百万円の営業損失となりました。

 

総資産は、前連結会計年度末に比べ86億56百万円(5.6%)増加し1,635億62百万円、負債合計は、前連結会計年度末に比べ38億44百万円(9.4%)増加し447億62百万円、純資産合計は、前連結会計年度末に比べ48億11百万円(4.2%)増加し1,188億0百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べ19億92百万円増加し、117億33百万円となりました。また、当連結会計年度におけるフリー・キャッシュ・フローは70億11百万円の増加となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動により得られた資金は128億35百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益を114億85百万円計上したことに加え、仕入債務が32億58百万円増加したことによるものです。

前連結会計年度との比較では、69億31百万円の収入増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動に使用した資金は58億23百万円となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得により48億21百万円支出したことに加え、投資有価証券の取得により7億40百万円支出したことによるものです。

前連結会計年度との比較では、17億78百万円の支出減少となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動に使用した資金は53億89百万円となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得により24億83百万円支出したことに加え、配当金の支払額が14億64百万円あったことによるものです。

前連結会計年度との比較では、69億86百万円の支出増加となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

建設・土木業向け産業機械、ダイヤモンド工具を販売する連結子会社の日本フレキ産業株式会社は、産業機械の販売比率が高いことから経営管理区分を変更したことに伴い、当連結会計年度より、帰属する報告セグメントを工業機材からエンジニアリングに変更しております。

なお、前年同期比は、変更後の報告セグメントに基づき作成したものを開示しております。

 

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

生産高(百万円)

前年同期比(%)

工業機材

47,862

111.5

セラミック・マテリアル

32,820

133.2

エンジニアリング

5,348

76.9

食器

3,282

125.3

合計

89,314

115.8

(注)1 金額は、販売価格によっております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

工業機材

58,933

127.7

7,977

124.8

セラミック・マテリアル

41,316

126.1

4,151

115.8

エンジニアリング

27,462

122.1

17,215

129.1

食器

5,966

113.5

350

101.7

合計

133,679

125.3

29,695

125.5

(注)1 金額は、販売価格によっております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

売上高

(百万円)

前年同期比

(%)

内、海外売上高

(百万円)

前年同期比

(%)

海外売上割合

(%)

工業機材

57,346

121.1

19,407

135.8

33.8

セラミック・マテリアル

40,749

124.3

22,079

128.6

54.2

エンジニアリング

23,585

110.0

11,771

134.0

49.9

食器

5,960

110.3

3,455

124.9

58.0

合計

127,641

119.3

56,713

131.9

44.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態)

ⅰ)総資産

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ86億56百万円(5.6%)増加し、1,635億62百万円となりました。うち、流動資産が86億2百万円増加の736億60百万円、固定資産が54百万円増加の899億2百万円であります。これは主に保有株式の株価下落に伴い投資有価証券の時価総額が減少したものの、現金及び預金並びに受取手形及び売掛金が増加したことによるものです。

ⅱ)負債

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ38億44百万円(9.4%)増加し、447億62百万円となりました。これは主に支払手形及び買掛金並びに電子記録債務が増加したことによるものです。

ⅲ)純資産

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ48億11百万円(4.2%)増加し、1,188億0百万円となりました。これは主にその他有価証券評価差額金が減少したものの、利益剰余金が増加したことによるものです。

この結果、1株当たり純資産額は、前連結会計年度に比べ498円88銭増加して8,183円66銭となり、自己資本比率は前連結会計年度末の71.6%から72.2%に増加しました。

(経営成績)

ⅰ)売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ206億41百万円(19.3%)増加の1,276億41百万円となりました。なお、販売活動の概況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

ⅱ)経常利益

当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度に比べ80億29百万円(179.2%)増加の125億9百万円となりました。主な要因としては、売上高の増加によるものであります。

ⅲ)特別利益・特別損失

当連結会計年度の特別利益は1億39百万円であり、主なものは投資有価証券売却益1億23百万円であります。また、当連結会計年度の特別損失は11億64百万円であり、主なものは固定資産処分損8億69百万円であります。

ⅳ)親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、114億85百万円の税金等調整前当期純利益となり、法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び非支配株主に帰属する当期純利益を加減した親会社株主に帰属する当期純利益は90億68百万円となりました。

1株当たり当期純利益は628円27銭となり、自己資本利益率は前連結会計年度の2.7%から7.9%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フロー)

「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループは、現在、運転資金及び設備投資資金につきましては、自己資金、金融機関からの借入れ又は社債の発行により資金調達することとしております。

運転資金につきましては、期限が一年以内の短期借入金で資金調達を行っております。国内におきましては、キャッシュ・マネジメント・システムにより当社が一括して資金を調達して各連結子会社に必要資金を分配し、海外におきましては、各々の連結子会社が運転資金として使用する現地通貨にて調達することを基本としております。2022年3月31日現在の短期借入金の残高は56億0百万円であります。

設備投資等の長期資金につきましては、自己資金を原則とし、一部を長期借入金により調達することとしております。長期借入金の残高は9億円であります。

2022年3月31日現在の現預金残高は141億69百万円で、当社グループとして十分な水準の手元資金を確保していると考えております。

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況に基づく仮定により、様々な見積りを行っており、連結財務諸表に与える影響が大きいと考えられる項目・事象は以下のとおりです。

なお、会計上の見積りに対する新型コロナウイルス感染症による影響については、第5 経理の状況 1連結財務諸表 注記事項の(追加情報)「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積り」に記載の仮定に基づき会計上の見積りを行っておりますが、現時点では不確実性が高く、翌連結会計年度の当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

ⅰ)繰延税金資産

繰延税金資産について定期的に回収可能性を検討し、回収が不確実と考えられる部分は、評価性引当額としています。回収可能性の判断においては、将来の課税所得見込額と実行可能なタックス・プランニングを考慮して、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると考えられる範囲で繰延税金資産を計上しています。

なお、課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収可能額の見直しを行い、繰延税金資産の修正を行うため、当期純利益額が変動する可能性があります。

ⅱ)退職給付債務及び退職給付費用

退職給付債務及び退職給付費用は、主に数理計算で設定される退職給付債務の割引率、年金資産の期待運用収益率に基づいて計算しています。割引率は、従業員の平均残存勤務期間に対応する期間の安全性の高い債券の利回りを基礎として決定し、また、年金資産の期待運用収益率は、過去の運用実績及び将来見通し等を基礎として設定しています。割引率及び期待運用収益率の変動は、将来の退職給付費用に影響を与える可能性があります。

ⅲ)固定資産の減損

固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、資産のグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しています。

固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しているため、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施し、損益を悪化させる可能性があります。

 

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