業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境は、新型コロナウイルスに関しては新たな変異株のまん延で依然として世界経済に影響を与えており、国際情勢に関しては予てから悪化していた米中関係に2月からのロシア・ウクライナ情勢が加わり国際社会の分断は一層深まりました。これらを背景にした、資源・エネルギー価格の高騰による物価上昇圧力の強まり、世界的な物流混乱はますます進行し、世界経済の不透明感は強まりました。

 一方、世界半導体市場は、サプライチェーンの混乱が見られたものの、5G、データセンター、自動車や産業機器向けなど、半導体デバイスの旺盛な需要が継続し、市況は堅調に推移しました。

 こうした状況下、当連結会計年度の業績は、半導体の旺盛な需要に支えられた結果、売上高51,731百万円(前期比23.3%増)、営業利益12,059百万円(前期比57.9%増)、経常利益12,490百万円(前期比62.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益9,156百万円(前期比63.3%増)となりました。

 なお、2022年2月20日に、当社及び当社の子会社であるFUJIMI TAIWAN LIMITEDが受けたサイバー攻撃により、お取引先、株主・投資家の皆様をはじめとする関係者の皆様には、多大なるご迷惑とご心配をおかけしましたことをあらためて深くお詫び申し上げます。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 日本につきましては、最先端半導体デバイス向けCMP製品及びシリコンウェハー向け製品の販売が増加したことにより、売上高は31,884百万円(前期比28.7%増)、セグメント利益(営業利益)は売上増加に加え製品構成の良化により10,692百万円(前期比45.2%増)となりました。

 北米につきましては、CMP製品及びシリコンウェハー向け製品の販売が増加したことにより、売上高は6,273百万円(前期比11.5%増)となりましたが、セグメント利益(営業利益)は原材料価格及び物流費の上昇等により、364百万円(前期比12.6%減)となりました。

 アジアにつきましては、最先端ロジックデバイス向けCMP製品の販売が好調に推移したことから、売上高は11,845百万円(前期比17.9%増)、セグメント利益(営業利益)は2,709百万円(前期比32.1%増)となりました。

 欧州につきましては、CMP製品の販売増加により、売上高は1,728百万円(前期比15.1%増)、セグメント利益(営業利益)は190百万円(前期比19.4%増)となりました。

 

 主な用途別売上の実績は、次のとおりであります。

 シリコンウェハー向け製品につきましては、半導体業界の高い稼働に支えられ、ラッピング材の売上高は6,249百万円(前期比35.7%増)、ポリシング材の売上高は12,149百万円(前期比26.3%増)となりました。

 CMP向け製品につきましては、ロジック、メモリ向けともに需要は好調に推移し、売上高は24,571百万円(前期比22.6%増)となりました。

 ハードディスク向け製品につきましては、SSD(ソリッドステート・ドライブ)への置き換え及び一部顧客の事業撤退に伴う生産終了の影響もありましたが、売上高は1,725百万円(前期比1.2%増)となりました。

 非半導体関連の一般工業用研磨材につきましては、自動車及び産業機械向け需要の回復もみられ、売上高は4,408百万円(前期比16.7%増)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、34,402百万円となり、前連結会計年度に比べ、4,984百万円増加しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、9,301百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ、558百万円増加しました。これは主に、税金等調整前当期純利益の増加による資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、1,097百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ、1,055百万円増加しました。これは前連結会計年度に投資有価証券の償還による収入があったこと及び有形固定資産の取得による支出が増加したこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、3,825百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ、1,344百万円増加しました。これは主に、配当金の支払いが増加したことによるものであります。

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの必要な運転資金及び設備資金の財源につきましては、自己資金を基本としております。また、当連結会計年度末の流動比率は505.5%であり、十分な流動性を確保しているものと認識しております。

 当社グループは企業価値向上のために、最先端半導体分野での研究開発や新規事業の創出及びM&Aに活用する資金を必要としております。また一方では、株主に対する適正な利益還元を行うことを経営の重要課題と認識しております。当社グループといたしましては、安定的な事業運営と成長のための投資及び積極的な株主還元を勘案し、持続的な企業価値向上に資する現金及び現金同等物の活用を志向してまいります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

日本

(百万円)

34,359

110.8

北米

(百万円)

6,020

108.6

アジア

(百万円)

6,370

115.6

合計

(百万円)

46,750

111.1

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.受注実績

  当社グループは、一部受注生産を行っておりますが、受注生産高の売上高に占める割合の重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

  当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

日本

(百万円)

31,884

128.7

北米

(百万円)

6,273

111.5

アジア

(百万円)

11,845

117.9

欧州

(百万円)

1,728

115.1

合計

(百万円)

51,731

123.3

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

  至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

長瀬産業㈱

11,230

26.8

15,557

30.1

TAIWAN SEMICONDUCTOR MANUFACTURING CO., LTD.

6,483

15.5

7,616

14.7

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 当社グループは、連結財務諸表の作成において使用される以下の重要な会計方針が特に当社グループの重要な判断と見積りに大きな影響を与えると考えております。

 

a.貸倒引当金

当社グループは、お客様の支払不能時に発生する損失の見積額について、貸倒引当金を計上しておりますが、お客様の支払能力が低下した場合には追加引当が必要となる可能性があります。

 

b.棚卸資産

当社グループは、棚卸資産の将来需要及び市場状況に基づく時価の見積額と原価との間に差額が生じた場合、評価減を実施しております。

 

c.固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。この適用に当たり、合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて将来のキャッシュ・フロー等の見積りを行っておりますが、その仮定及び予測に変動が生じた場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。使用価値の算定に使用される将来キャッシュ・フローは、経営者により承認された経営計画を基礎とし、貨幣の時間的価値及び当該資産の固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて見積もっております。

 

d.投資の減損

当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定のお客様及び金融機関の株式を所有しております。これらの株式の投資価値が下落した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。この減損処理は、時価が取得原価に対して50%以上下落した場合、加えて30%~50%程度下落した場合で、回復の見込がないと判断される場合に行います。また、将来の市況悪化や投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる可能性があります。

なお、当社グループにおいて回復の見込みがないとは次のいずれかの要件に当てはまる場合をいいます。
イ.株価が過去2年間継続的に30%以上下落し一度も回復傾向のない状態にある
ロ.株式の発行会社が債務超過の状態にある
ハ.株式の発行会社が2期連続で損失を計上しており、翌期も損失計上が予想される

 

e.繰延税金資産の回収可能性

繰延税金資産の回収可能性は、過去の納税状況や将来の事業計画等、現状入手可能な情報を用いて判断しております。当社グループは、回収可能と見込めないと判断した部分を除いて繰延税金資産を計上しておりますが、経営成績の悪化等により将来の課税所得の見積額が減少した場合や法定税率の変更等により繰延税金資産が取崩された場合に、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

f.退職給付債務等

当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出しております。しかしながら、運用環境の悪化等により、実際の結果がこれらの前提条件と異なった場合、あるいは前提条件の変更が必要になった場合には、退職給付費用や債務が増加し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、詳細につきましては、第5「経理の状況」1「連結財務諸表等」(1)連結財務諸表「注記事項」(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)(4)退職給付に係る会計処理の方法及び(退職給付関係)をご参照下さい。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループは、持続的な企業価値増大を目指しており、その取組みの概要については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)課題に対する取組み ②企業価値向上のための取組み」に記載のとおりであります。また、2016年11月に策定し2022年3月をもって終了した中長期経営計画では、連結売上高、連結営業利益率、連結新規事業売上高構成比を特に重要な経営指標と捉え、その実現に向けた取組みを進めてまいりました。当連結会計年度につきましては、収益性の高い先端半導体向けの製品売上高が想定を大きく超えたことから連結営業利益率は23.3%と目標を上回ったものの、新規事業分野においては半導体関連の売り上げが伸長したことに加え、加工プロセス変更による研磨ニーズの縮小、その他新規開発分野においても開発品の採用に時間を要したこと等により狙った売上拡大を果たせず、連結売上高は517億円及び連結新規事業売上高比率は1.8%と目標未達となりました。

 

2022年3月期

中長期経営計画

2022年3月期

実績

連結売上高(億円)

600

517

連結営業利益率(%)

15.0以上

23.3

連結新規事業売上構成比(%)

25.0以上

1.8

 当社グループといたしましては、持続的な企業価値向上のためには、新規事業売上構成を高める必要があると考えており、引き続き上記の取組みを進めてまいります。

 

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