課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社は、パウダー&サーフェス分野で世界最高技術を提供し、私たちが理想とする「エクセレントカンパニー」を目指します。

企業理念としては以下を掲げ、創業以来一貫して製品の高品質化と安定供給に努めております。

 

1.企業使命

・高度産業社会の期待に新技術で応え、地球に優しく、人々が快適に暮らせる未来の創造に貢献します。

2.経営姿勢

・お客様の視点に立って独自のソリューションを提案します。

・一人ひとりが「働きがい」と「働きやすさ」を実感できる会社を目指します。

・経営環境の変化に対応するため、何事にも積極果敢にチャレンジし、変革し続けます。

・技術と経営の質を高め、法令を遵守し、ステークホルダーの信頼に応えます。

3.行動規範

・お客様の満足を常に考え行動します。

・問題の本質を追求し、迅速かつ確実に解決します。

・夢の実現に向け、熱意、誠意、創意を持ってチャレンジします。

・一人ひとりのアイデアを尊重し、それをカタチにします。

・良き市民・良き国際人として高い倫理観をもって行動します。

 

ますます多様化するお客様のニーズや技術水準の高度化に対して、当社は迅速かつ的確に対応し「お客様目線の実践」に取組むことにより、企業価値を高めてまいります。

 

(2) 経営戦略

 当社は、パウダー&サーフェス分野で、お客様のニーズにより早くより正しく対応するために、周辺技術を取り込んだ先進技術と最高の品質を継続的に提供し、お客様から真っ先に依頼がくる信頼関係をつくり上げ、ニッチ市場におけるトップシェアを獲得します。

 

(3) 経営環境

 当社が主たる事業領域としている半導体市場は、これまでシリコンサイクルと呼ばれる構造的な景気循環が見られましたが、昨今の技術革新に伴い新製品や新たなサービスが広がっていることからも、半導体の需要は所謂スーパーサイクルに転じ、需要の拡大が継続すると見込まれています。当社のお客様であるシリコンウェハーメーカー及び半導体デバイスメーカーの多くは、旺盛な半導体需要に応えるべく積極的に大規模な設備投資計画を公表・実施しております。また、半導体の技術革新の進展に伴い、当社に対する次世代製品開発や品質保証に関するお客様からの要求水準も高まっております。一方で、近年、激甚化・頻発化する自然災害や情報セキュリティインシデント(情報セキュリティにおける事件や事故)についても、経営環境の変化の中で看過できないものであると認識しております。

 

(4) 企業価値向上のための課題

 半導体市場において将来的に更なる需要増加が見込まれることを鑑み、当社は供給責任を果たすべく、国内外で段階的に設備投資を進めるべく体制を整備していくこと、次世代製品開発や品質保証に関するお客様の高まる要求水準を満たすべく研究開発や品質保証のレベルアップを図ること、また、緊急事態に備える事業継続力を強化することが、当社の企業価値向上のための課題であると認識しております。特に、事業継続力の強化については、2022年2月に受けたサイバー攻撃を教訓として事業継続計画を拡充し、より強靭な供給体制を整えるべく、全社一丸となって取り組んでまいります。

 一方で、中長期的な企業価値向上の観点からは、半導体市場に過度に依存しない売上の安定化と更なる拡大を目指し、事業領域を拡大する必要があると認識しております。このため、中長期視点での研究開発と新規事業の探索・育成による事業領域の拡大に努めるとともに、非半導体領域及び非研磨分野での用途拡大を進めていくことも当社の企業価値向上のための課題であると認識しております。

 

 

(5) 課題に対する取組み

① 当社の企業価値の源泉について

当社の創業以来蓄積されたノウハウと研究開発力から生まれた当社製品の数々は、シリコンウェハーに代表される半導体基板の鏡面研磨、半導体チップの多層配線に必要なCMP(化学的機械的平坦化)、ハードディスクの研磨等、高精度な表面加工が求められる先端産業に欠かせぬものとなっております。なかでも、主力事業分野である半導体基板向け超精密研磨材では世界ナンバーワンのマーケットシェアを維持しており、超精密研磨のリーディングカンパニーとして、市場優位性を維持しております。

当社は、超精密研磨分野において長年にわたってお客様の要求に応え続けるとともに、開発・製造技術の向上・蓄積に努めてまいりました。その過程において、お客様との信頼関係を築き上げ、柱となる3つのコア技術「ろ過・分級・精製技術」「パウダー技術」「ケミカル技術」を確立しました。「ろ過・分級・精製技術」は、砥粒の粒度分布を制御し、研磨対象物の品質に悪影響を及ぼす粗大粒子や不純物を除去する技術、「パウダー技術」は、粒子の形状を制御し、異なる粒子を均一に混ぜ合わせ造粒する技術、「ケミカル技術」は、研磨材の性能向上に寄与する分散・溶解・表面保護作用を発現させる添加剤を適切に選定する技術です。

 当社のコーポレートスローガン「技術を磨き、心をつなぐ」には、先端技術を通してより良い製品づくりに貢献し、人々の心をつなぎ、生活を豊かにするという意味が込められており、人を尊重し地球環境に配慮した製品づくりが当社の「ものづくり」の根底に流れております。当社はこうした「ものづくりの精神」と従業員一人ひとりが変化に果敢に挑戦するという企業風土により、企業競争力を高めてまいりました。

 当社の企業価値の源泉は、こうした製造現場と一体となった高い技術力・開発力、長い歴史のなかで培われたお客様との信頼関係、労使間の健全かつ一体感のある企業風土にあると考えております。今後の技術革新をリードし業績の拡大を目指していくためにも、お客様の信頼度の更なる向上、従業員の士気向上を図っていくことが重要と考えており、当社はこうした方針のもと、引き続き企業価値の向上にグループを挙げ取組んでまいります。

 

② 企業価値向上のための取組み(中長期経営計画)

2016年11月に策定し2022年3月をもって終了した中長期経営計画では、企業文化ビジョンである「強く、やさしく、面白い」会社に向かうべく、中長期企業ビジョンとして「私たちは一人ひとりの前向きなアイデアとチャレンジを応援します」を据え、活動を推進してまいりました。

定量目標として連結売上高600億円、連結営業利益率15%、連結新規事業売上構成比25%を掲げましたが、収益性の高い先端半導体向けの製品売上高が想定を大きく超えたことから連結営業利益率は23.3%と目標を上回りました。半導体関連の売上は伸長しましたが、新規事業分野においては、加工プロセス変更による研磨ニーズの縮小、その他新規開発分野においても開発品の採用に時間を要したこと等により狙った売上拡大を果たせず、連結売上高は517億円及び連結新規事業売上構成比は1.8%と目標未達となりました。

当社が主たる事業領域としている半導体市場は、これまでシリコンサイクルと呼ばれる構造的な景気循環が見られましたが、昨今の技術革新に伴い新製品や新たなサービスが広がり、半導体の需要が急増していることから、拡大を続けるスーパーサイクルに転じたとも言われています。当社のお客様であるシリコンウェハーメーカー及び半導体デバイスメーカーの多くは、旺盛な半導体需要に応えるべく積極的に大規模な設備投資計画を公表・実施しております。

このような状況下で、将来的に更なる需要増加が見込まれることを鑑み、当社は供給責任を果たすべく、国内外で段階的に設備投資を進めるべく体制を整備しております。

国内では、当社の開発・生産拠点が集積する各務原地区において、既に取得済の用地に新たな開発拠点、試作施設の建設を計画中であることに加え、昨年12月に取得契約締結済の用地に数年以内の稼働を目指してCMP、シリコンウェハー向け製品の新工場建設計画に着手しております。また、国外では、同じく数年以内の稼働を目標に、半導体受託生産世界シェアトップの台湾においては需要増加を見越して既に増築済みの建屋に生産ラインを拡充し、半導体産業の復権に向けて動き出した米国においては敷地内に建屋の新設・設備の導入を予定しております。

一方で新規事業分野については、当社ではこれまで成長の方向性として目指す事業ドメインとして定めた「パウダー&サーフェス」に関し、新規事業本部の新設、先端技術研究所の設置、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ファンドの設立等、さまざまな取り組みを進めてまいりました。

具体的な成果としては、新規事業本部では高い加工速度と良好な仕上がり表面を両立した自動車外装向けコンパウンドの販売開始、先端技術研究所では軽量かつ高い耐熱性を備えた航空産業向けセラミックス複合材料や高白色度でアスペクト比が制御された化粧品向け等の利用が期待される酸化チタン材料の開発、CVCファンドでは次世代パワー半導体ベンチャー企業への投資を行っております。

また、本年4月には、事業目的・環境に応じた事業推進体制の更なる強化を目的として「研磨ソリューションフィールド」「先端パウダーフィールド」「半導体フィールド」を新設しました。あわせて、パウダー&サーフェス分野での開発成果をより機動的に事業化すべく、機能材事業本部と先端技術研究所を統合し「先端技術・機能材料本部」に、機能材事業本部下の研磨関連業務等を新規事業本部に移管し「研磨ソリューション本部」とする等、事業(研究所)組織を再編しました。

環境課題・社会課題への対応については、近年、持続可能な社会の構築に向けたグローバルな取り組みが進む中、社会からの期待・要請が高まっております。当社ではかねてより、両立支援、女性活躍推進等に力を注いでまいりましたが、昨年度より、製品の生産活動において地下水を大量に使用していることから、使用した水を自然に返す意味を込めて「Water Offset」をテーマに、水を育む森づくり、水源地区の環境保護と森林再生活動に着手しました。また、本年4月にはESG関連課題への対応/社会貢献活動等の更なる推進を図るべく、「ESG推進部」を新設いたしました。

成長分野及び新規事業、ESGへの投資と合わせ、株主の皆様への還元についても、従前から目標に掲げる連結配当性向50%以上を維持するとともに安定配当にも留意し、持続的な企業価値増大に取り組んでまいります。

 

 具体的な各事業等の施策は以下のとおりであります。

[シリコン事業]

半導体基板となるシリコンウェハーを高精度に平坦・鏡面化する研磨工程で用いられる研磨材を研究開発し製造販売する事業です。切断から仕上げ研磨までトータルソリューションを可能とする高品質な製品・サービスを揃えております。益々高度化するお客様の要求に応えるべく、引き続き新技術に支えられた独自性の高い新製品を提供し、「最も信頼されるパートナー」を目指してまいります。また、近年、電気自動車、ハイブリッド自動車の普及が進む中で、注目度が高まっているパワーデバイス基板向け製品開発にも注力し、一部上市しております。

[CMP事業]

半導体デバイスの製造工程で用いられる研磨材を研究開発し製造販売する事業です。半導体デバイスの高性能化、高密度化、高集積化に伴い、研磨対象となる膜種とCMPが適用される工程は増加傾向にあります。お客様の製造・開発拠点に近い、日本、米国、台湾に製造・開発拠点を設け、お客様とより密接な関係を構築し、お客様のロードマップに沿った新製品を開発しております。

[ディスク事業]

デジタルデータの記録媒体であるハードディスクドライブ用ディスク基板の製造工程に用いられる研磨材を研究開発し製造販売する事業です。お客様の生産拠点が集中するマレーシアに製造拠点を置くとともに技術スタッフを配置し、技術サポートを実施することでお客様との信頼関係を構築しております。クラウドサービスや5Gにより送受信されるデータ容量の増加が見込まれており、データセンター向けのハードディスク需要が高まっている中で、次世代ディスク基板への要求を早期に入手し具現化するため基礎開発の拡充も図り、お客様の要求に合った新製品をタイムリーに提供してまいります。

[溶射材事業]

半導体装置、航空機及び鉄鋼等様々な業界の機械部材の長寿命化、高機能化を実現するために、環境に優しい表面処理として使用される溶射用途向けに、主にサーメット、セラミックス等の溶射材を研究開発し製造販売する事業です。独自の粉末造粒技術を一層強化し、タイムリーなソリューション提案を行うとともに、新規市場として期待される3Dプリンター用超硬材料等の開発にも注力し、売上拡大を目指してまいります。

[研磨ソリューション事業]

様々な用途で用いられる、多種多様な材料(金属、樹脂、セラミック、複合材料等)や形状(2次元、3次元形状)に対応した研磨材等の研究開発及び製造販売を行う事業です。旧新規事業を改称の上、旧機能材事業から分離独立した研磨関連事業を統合し、一体運営を図っております。

世界の様々な業界のお客様から寄せられる、新たな表面創成のご要望に、研磨材の供給のみに留まらず、用途に応じた様々な研磨方法を提案し、周辺消耗材や装置、加工プロセスまでを含めたトータルソリューションでお応えしてまいります。

[先端技術・機能材料]

パウダー領域・非研磨事業の拡充を更に推進することを目的として発足した「先端技術・機能材料本部」傘下において、パウダー分野におけるフジミ基幹技術の研究開発を進めると同時に、非研磨分野における新規事業の「創出」と「事業化」を強力に推進してまいります。

また、これまで機能材事業や先端技術研究所で養ってきた粒子形状・粒度分布制御及び造粒技術を始めとする当社基幹技術を一体化させ、さらにマーケティング力を強化し、新規用途・お客様層の拡大に一層注力してまいります。

 

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