当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発令・解除とともに一進一退の動きが続き、昨年夏場の落ち込み以降に持ち直しの動きが見られたものの、年度末にかけて感染再拡大の影響により弱含みの状況となりました。加えて海外諸情勢やエネルギー価格の高騰等、今後の景気に及ぼす大きな懸念材料も加わり、先行きの不透明感がますます拭えない状況が続いております。
住宅市場におきましては、2019年秋の消費税増税後に直面した新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、新設住宅着工戸数は2021年2月まで20ヶ月連続で前年同月水準を下回った後は、2021年3月以降2022年3月まで13ヶ月連続増加に転じており、2021年度の新設住宅着工戸数は865千戸(前年度比6.6%増)とコロナ禍の活動自粛の反動で3年ぶりの増加となりました。
石膏ボード業界におきましては、住宅市場の回復に伴い、2021年度の製品出荷量は455百万㎡(前年度比1.9%増)と依然として勢いは欠くものの若干の増加に転じて推移しております。
当社グループにおきましては、2020年1月のクナウフ・グループとの資本業務提携強化を踏まえ、『競争力の回復』をキーワードに掲げ、厳しい環境に直面しようとも安定した収益確保が可能な企業基盤の再構築を目的に、諸課題の改善を進めてきており、着実にその効果が表れ始めています。2021年12月からは、足元の原材料価格等のコスト増を吸収するため、製品価格の値上げをお客様にお願いしているところであり、合理化・効率化の徹底と併せ企業体質の改革をより一層進めてまいります。
この結果、当社グループにおける業績は、売上高は256億2百万円(前年同期比1.6%増)となりました。また、営業利益は8億6百万円(前年同期比85.2%増)、経常利益は10億63百万円(前年同期比46.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は8億23百万円(前年同期比24.6%増)となりました。
当社グループは、単一セグメントであるため、セグメントの業績は記載を省略しております。
また、事業部門等の区分による記載は「石膏ボード」と「その他」の区分により記載しており、業務区分については記載が困難なため記載を省略しております。
財政状態の状況
資産合計は、320億35百万円(前年同期比1億86百万円増)となりました。
流動資産の増加(前年同期比3億83百万円増)は、電子記録債権の増加(前年同期比4億79百万円増)が主な要因であります。
固定資産の減少(前年同期比1億89百万円減)は、当期償却実施等による建物及び構築物の減少(前年同期比2億27百万円減)、並びに機械設置及び運搬具の減少(前年同期比2億41百万円減)が主な要因であります。
負債合計は、174億99百万円(前年同期比6億61百万円減)となりました。
流動負債の増加(前年同期比15億2百万円増)は、短期借入金の増加(前年同期比4億14百万円増)、一年内償還予定の社債の増加(前年同期比4億円増)、未払金の増加(前年同期比2億16百万円増)が主な要因であります。
固定負債の減少(前年同期比21億64百万円減)は、社債の減少(前年同期比7億30百万円減)、長期借入金の減少(前年同期比14億8百万円減)が主な要因であります。
純資産合計は、145億35百万円(前年同期比8億48百万円増)となりました。
これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加(前年同期比8億23百万円増)が主な要因であります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、24億48百万円と前連結会計年度末に比べ40百万円の減少となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な増減要因は次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローにつきましては、売上債権の増加(4億49百万円)等の資金支出がありましたものの、税金等調整前当期純利益(10億14百万円)、減価償却費の計上(9億56百万円)等の資金収入により17億5百万円の収入(前連結会計年度は2億64百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローにつきましては、有形固定資産の取得による支出(3億50百万円)等の資金支出により2億93百万円の支出(前連結会計年度は3億30百万円の支出)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローにつきましては、長期借入金の返済による支出(15億42百万円)等の資金支出により14億53百万円の支出(前連結会計年度は10億5百万円の収入)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(注) 1.最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
2021年度において、石膏ボードの出荷動向に影響を及ばす新設住宅着工戸数は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け大きく落ち込んだ後、2021年3月以降2022年3月まで13ヶ月連続で前年同月水準を上回り、緩やかな回復基調となりました。しかしながら、コロナ禍を起因とする住設建材のサプライチェーンの目詰まりや、年度末近くに発生したウクライナ情勢による木材不足から、住宅建設費用が高騰しており、住宅取得予定者のマインドを慎重にさせる不安要因が増してきていることが窺われます。2022年4月も新設住宅着工戸数は前年同月対比で上回り、結果として14ヶ月連続で全体としては増加ペースを維持していますが、持ち家は21年12月から5ヶ月連続で前年同月水準を下回り、新設住宅着工戸数の内容を区分別に検証すると厳しい経済情勢が住宅市場にも反映し始めているように見受けられます。
こうした厳しい事業環境にあっても、当社グループは石膏ボードの製造をコア事業に位置付け、財務体質の改善に取り組んできました。2020年度以降、赤字体質からの業績立て直しが喫緊の課題であり、これまで着手してこなかった特殊配送費用の徴収や原材料の直接仕入への変更等、諸課題に対し経営が確実な成果に向けて徹底した体質改善を議論し進めてきた結果、トップラインはコロナ禍の影響で伸び悩んだものの、経費削減・製造原価低減を着実に推進することができました。結果として2年連続で収益力は回復し、営業活動によるキャッシュ・フローも大幅に改善することができました。
2022年度は、2021年12月から石膏ボードの値上げを発表しており、価格改定を順次進めることでトップラインの引き上げとともに、収益力の更なる改善を進め、コア事業である石膏ボード事業のより安定化を進められるよう、工場の設備投資やIT投資に注力していくことを計画しています。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、当社グループが採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項」の「追加情報」に記載しております。
当社グループは、2015年3月に当社が第三者割当増資を実施の際、財務の標準的な安全性分析指標のうち、改善を急ぐべき項目として流動比率、固定長期適合率並びに有利子負債の圧縮を重点課題にあげ、その推移を取締役会で確認しながら取り組んでいます。
最近の動向としましては、2020年1月に、当社はクナウフ・グループとのより一層強固な提携関係を構築することを目的に、筆頭株主であるKnauf International GmbHを引受先とする第三者割当増資を実施し、増資金約25億円を全額借入金の返済に充当し、財務基盤の強化を図りました。この結果2020年3月期末において、流動比率(標準値として100%超が望ましい)、固定長期適合率(標準値として100%未満が望ましい)が目標とする標準値を達成するところまで改善が進み、連結ベースの有利子負債額は100億円を下回りました。
また2020年度においては、新型コロナウイルス感染症という未知の経験に年度初めより直面し、事業に及ぼす影響が全く予想がつかない中、短期借入枠は不測の事態に備えて利用を抑制し、まずは手元余裕資金の確保を目的に、新規に低利固定の長期借入を前倒しで進めました。これは資金確保の狙いがありましたが、固定資金を調達することは銀行との約定上、容易に返済することが困難な借入を手当てすることになり、有利子負債の水準が一定期間高止まりすることに繋がるとの判断も当然ありましたが、安定した手元流動性預金を確保しておくことが、新型コロナウイルス感染症拡大という不透明な局面にあって、緊急対応としてやむを得ない措置であると考えました。
一方で2021年度は、新型コロナウイルス感染症の経済に及ぼす影響について、一定程度の見通しが可能となり、2020年度において手元資金確保のため長期資金の調達を前倒しで進めた反動や、フリーキャッシュ・フローに余裕が生じたことも踏まえ、新規借入を抑制し有利子負債の削減を徹底して進めました。
当面は国内の金融市場において低金利政策が継続される見通しではあるものの、今後予期せぬ金利引き上げ等に備える意味で、有利子負債の水準を継続して抑制する予定です。
2014年3月期末の貸借対照表(連結)で流動比率が68.3%、固定長期適合率が127.0%と調達資金のアンバランスが生じており、これは市場金利連動型の短期資金を低利で借入可能なことを背景に、本来長期性資金で調達すべきところを金利の低い短期借入で賄ってきたことが要因の一つでした。
2015年3月の当社第三者割当増資により調達した資金約10億円を短期借入返済に充当した後も、資金需要の要因や投資計画のキャッシュー・フローを検討しながら調達資金の長短アンバランスの是正に取り組んできました。その結果、2019年3月期末の貸借対照表(連結)で、流動比率が88.9%、固定長期適合率が106.1%まで徐々にではありますが改善してきました。
そして2020年1月の増資資金約25億円を全額当社の短期借入の返済に充当した結果、2020年3月期末の貸借対照表(連結)で、流動比率112.2%、固定長期適合率95.2%とまずは当面目標としてきた標準値を達成するところまで改善を果たすことができました。
一方、2022年3月期末(連結)では、前年度の反動で長期資金の調達を抑制し、返済を徹底して進めた結果、流動比率は118.7%、固定長期適合率は92.2%と改善度合いは緩やかに落ち着きましたが、数年にわたる改善効果が表れたと考えています。今後はコロナ後に備えて積極的に製造部門の効率化を目的とする設備投資を予定しており、個別の投資効果を慎重に検討の上、その効果の発現期間を考慮した適切な資金調達と財務指標の改善に引き続き留意します。
有利子負債の総額は、2014年3月期末(連結)において147億円であり、この圧縮に向けた取り組みも課題に挙げていました。必要な設備投資を適切に執行しつつ、事業収入によるキャッシュ・フローを高めながら、有利子負債の抑制に向けたコントロールに努めてきた結果、2019年3月期末(連結)の有利子負債の総額は130億円となりました。
そして2020年3月期末(連結)では、増資資金の借入返済実行により98億円となり、2020年3月期末までの6年間で約50億円の有利子負債を削減することができました。
一方で想定外であった新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、前倒しで借入を実施した結果、2021年3月期末(連結)では、111億円と前期末対比で約12億円増加しましたが、手元預金も同期比で約9億円余り増加しており、ネットベースで算定する有利子負債は前期末とほぼ同水準で推移しました。
続く2022年3月期末(連結)は、コロナ禍の状況を一定程度見通すことが可能となり、不測の事態に備えて長期借入を前倒しで進めた2020年度の反動で、借入の返済を徹底して進めた結果、手元預金の水準をほぼ減らすことなく、有利子負債額を97億円まで減少させることができました。これは新型コロナウイルス感染症やウッドショック等、取り巻く事業環境が厳しい状況にあっても、経費削減を徹底して取り組むことで収益改善を図り、営業活動によるキャッシュ・フローが2期連続で大幅に改善した結果です。
当連結会計年度の業績は、売上高はコロナ禍で落ち込んだ前年度と同水準の256億2百万円(前年同期比1.6%増)となりましたが、営業利益は8億6百万円(前年同期比85.2%増)、経常利益は10億63百万円(前年同期比46.6%増)と、2020年3月期に約18億67百万円の固定資産の減損損失を計上し多額の赤字を計上した後、コロナ禍でトップラインが頭打ちとなる中にあっても、2期連続で収益改善を進めることができました。
2020年1月にクナウフ社と資本業務提携契約を締結し、同年3月にクナウフ・グループ在籍員が取締役の半数を占める経営体制に移行と同時期に、コロナ禍に直面しましたが、売上高に対するEBITDA比率(EBITDAマージン)10%超の達成を経営判断の明確な指針に位置付け、徹底した経費削減・業務改善に取り組みました。コロナ禍という危機対応も重なりましたが、具体的には、外部への委託業務をグループ内の人員配置見直しを通じて削減を図り、不採算地区の販売体制の縮小と合わせて賃借していた倉庫の集約・解約や、主要原料の調達ルートを直接仕入れに変更する等、これまで課題として認識しながらもなかなか着手ができなかった構造的なテーマに徹底的に取り組みました。また退職者が発生しても新規採用を可能な限り抑制し、人員の効率的な配置を見極めつつ人件費の削減も進めました。加えて、石膏ボード事業がコア事業であることを再確認し、コア事業にリソースを集中するとの方針のもと、石膏ボード事業にシナジー効果が見込み難い子会社の整理も進めました。
このような複数の経営課題を、2020年4月よりスタートした経営委員会で共有し、対策方法を明確にした上で、ほぼ毎週進捗状況をフォローすることで成果のスピードアップを図ってきた結果、2020年3月期(連結)には約3%まで低下したEBITDAマージンは、2022年3月期(連結)には6.7%まで改善しました。
メーカーとしてメンテナンスも含め継続的な設備更新が発生する為、キャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローをプラスに維持することを前提に、投資活動によるキャッシュ・フローをその範囲内とすることに留意し、その両方を足し込んだフリーキャッシュ・フローのプラスとすることを経営課題に位置付けております。基本的には年間の減価償却費の推移に大きな変動はないため、その範囲内で設備投資を実施することを毎期計画にて策定しています。
当連結会計年度は、経費削減・原価低減に伴う収益改善効果を主因に、営業活動によるキャッシュ・フローの水準は大幅に改善しており、フリーキャッシュ・フローも同様にプラスに転じています。
当社グループとして、EBITDA比率10%の達成に向けて、将来のキャッシュ獲得に繋がる適切な投資計画遂行が必要と考えており、ここ最近不透明な事業環境が続いたことで、投資にやや慎重な姿勢で情勢を見極めてきましたが、今後は老朽化した製造設備の更新や新規IT投資の推進により、事業活動の合理化・効率化をより進めて行くことを予定しています。
資金調達については、有利子負債の圧縮を進めて行くことで財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスを予定していますが、必要な設備投資については、投資効果を十分計画の上、金融市場の金利動向等を勘案し、金融機関からの機動的に借入を実施しつつ、有利子負債額をしっかりとコントロールしてまいります。
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