課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループの経営方針は、「地球環境と生活空間の創造」を図っていくために、石膏ボードを中心に環境、防災など豊かな住環境を支える建築資材を提供し続けることであり、それをより一層意識して取り組み続けていくことを目的に、2021年度より新たな基本理念を策定のうえスタートしました。

新たな基本理念では、私たちが現在取り組んでいる「MISSION」と、将来へ視点を向けた「VISION」を定め、MISSIONとVISIONを支える「VALUES(私たちらしさ、パートナーシップ、エンゲージメント、起業家精神)」により構成されています。特に「MISSION」で定めた、『最高の品質と独自技術で、安全・快適な生活空間を届ける』ことは、従前の基本理念から変わらずに引き継ぐ中核に位置づけられるものであり、品質面でたゆまずレベルアップを図りながら、建築資材の専門メーカーとして常に独自の商品開発力(Unique Technology)を強化し、社会に支持される高機能・高付加価値製品の開発と市場への提供を目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、厳しい経営環境に直面しようとも必要な設備投資を継続し、収益力の向上を図っていくことを目指しており、事業活動から生じるキャッシュ(EBITDA)を把握し、売上高に対する比率(EBITDAマージン)を経営指標として採用しております。

EBITDAは営業利益に減価償却費を足し戻すことで容易に算定(注1)でき、設備投資によって変動が生じる減価償却費の影響を排除し、売上高に対する比率(EBITDAマージン)を経年で比較することにより企業の収益性を把握することが可能となります。

資本業務提携関係にあるクナウフ・グループ(注2)は、世界各地で事業会社を展開し、各国の会計処理の影響に左右されない把握可能な指標としてEBITDAマージンを採用していることから、当社グループでも経営指標として採用することが適当であると判断しております。現在の水準からは依然として高い目標ではありますが、EBITDAマージン10%超の達成を目指して取り組んでまいります。

(注)1.EBITDA(利払い前、税引き前、償却前利益)≒営業利益+減価償却費

2.資本業務提携関係にあるKnauf International GmbHが所属するグループをクナウフ・グループと表記します。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループを取り巻く事業環境は、人口減少を起因とする国内の住宅市場縮小に伴い、大手シンクタンク各社が予想する通り、新設住宅着工戸数が中長期的に減少し、石膏ボードの使用量も連動して減ることが予想されています。

日本国内の石膏ボード製造は2社の寡占状況のもと、競合他社が圧倒的な市場シェアを占めており、財務面やリソースの点で劣位にある当社グループは、将来にわたって安定した収益を稼ぎつつ事業を継続して行くことに懸念を有していたことを受け、2020年1月にKnauf International GmbH(以下、クナウフ社と表記)との間であらためて下記を主要目的とする資本業務提携契約を締結し、同年3月より新たな経営体制(取締役会の半数にクナウフ・グループ在籍員が就任)に移行し、改善策を進めてまいりました。

<資本業務提携の主な目的>

①財務基盤の改善

・合理化効率化による収益力改善

・有利子負債の圧縮

②石膏ボード(コア事業)への投資推進

・本業である主力石膏ボード事業に注力(コア事業とシナジー効果が見込めない子会社整理)

・クナウフ・グループが取扱う製品群から国内上市が可能な製品を見極めるマーケティング力を強化

・IT投資を核に業務プロセスの効率化推進

③提携強化による事業継続対策

・海外に天然石膏鉱山を保有するクナウフ・グループからの安定した調達も視野に入れた原料調達

・震災等、工場被災時の顧客への供給体制構築

 

一方、2022年4月25日に、クナウフ社は当社株式の公開買付け(以下、本取引と表記)を公表し、当社は本取引に賛同の意見を表明しました。クナウフ社は、2020年1月の資本業務提携以降、当社の経営に積極的に参画し、経営基盤の安定性向上及び事業収益性の改善に向けて、様々な施策を立案し、実行の支援をしてきたと表明しています。しかしながら、当社がクナウフ社の子会社ですらない限定的な資本関係においては、当社の事業の成長によりクナウフ・グループが得られる利益も限定的であるため、クナウフ・グループの事業戦略として、同グループの経営資源を当社に対して効率的かつ積極的に投入したり、クナウフ・グループと当社の間での経営資源の相互利用及び人材交流等を促進することを優先することが難しい状況が存在したと、提携関係の限界を表明していました。

そこでクナウフ社は本取引を実施することで、クナウフ・グループがグローバルで展開する石膏ボード事業と完全に一体運営することができるようになり、下記のような中期的な視点に立った施策を実行することで、更なる当社の企業価値向上が可能になるとの見解を表明しています。

①クナウフ・グループが有する技術及び研究開発力の活用による、製造技術及び商品開発力の向上。

②クナウフ・グループが有する生産及び専門サービスの活用による、製品供給及び技術サポート面における顧客サービスの品質向上。

③クナウフ・グループが備蓄している世界的規模の石膏原料の活用を通じた、原料調達及び製造の両面におけるコスト削減。

④断熱材やテクニカルボード(耐火・耐力・耐水・遮音性能等の機能を有する石膏ボード)等、周辺領域の製品の拡販。

当社は、クナウフ社からの本取引に対し賛同の意見を表明しましたが、クナウフ社からの提案を受け、下記のように判断しました。

今後ますます事業環境は厳しくなり不透明感が増す諸情勢に鑑みると、当社は、当社株式を非公開化を図り当社とクナウフ・グループの石膏ボード事業と一体運営ができるようにし、

①価格競争力の強化

②人材の獲得・教育や評価体制の充実

③会社横断的な業務プロセス改革

④ノウハウ・特許等の知的財産権の強化

⑤安定した財務基盤の確立の推進

に取り組むことで、国内石膏ボード業界におけるシェアの一層の拡大や、石膏ボードの新たなニーズ発掘に加え隣接市場の開拓を図ることによる新たな成長機会を探ることが、中長期的な観点から当社の企業価値の最大化を目指していくうえで不可欠であるとの判断に至りました。

更に、近年の資本市場に対する規制の強化等により、社外役員の招致や内部統制体制の充実・強化のための管理人員の増員等に伴うコストをはじめ、上場を維持するために必要な諸経費は増加しています。特に東京証券取引所の市場区分見直しによりスタンダード市場を選択しましたが、上場維持基準の一つである流通株式比率を満たすことは当社株式の売買出来高からすると達成は容易ではなく、上場を維持するためには流通株式比率の対策(法人株主に対する株式売却の要請、個人投資家向け情報発信の充実等)に一定のコストを要することが予想されるところであり、非公開化のうえ、これら上場を維持するためのコストを上記施策の実行に集中的に振り向けることで、当社の中長期的な成長をより迅速に実現することが可能になると考えました。

 

(4) 会社の対処すべき課題

今後のわが国の経済見通しは、新型コロナウイルス感染状況の落ち着きや行動制限の解除を前提として回復基調に向けた成長が期待されていますが、感染動向とその対応策については依然として不確実性が高く、加えてウクライナ情勢の深刻化により世界経済が急減速する可能性を抱えています。

住宅市場におきましては、2019年秋の消費税率引き上げとその後に起きた新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、新設住宅着工戸数は、2019年(暦年)に90万戸台を割り込み、2020年(暦年)は81万戸まで落ち込んだ後、新たなライフスタイルを模索する動きとともに2021年(暦年)は85万戸へと回復しました。このような状況下、主要なハウスメーカーは2022年の着工予測を約85万戸(各社平均値)とほぼ横ばいでの推移を見込んでいますが、コロナ禍の先行き不透明感に加え、政治経済情勢の変化に伴う木材・住設建材のサプライチェーンの目詰まりによる下振れリスクを強く懸念しています。

このような情勢のもと当社グループにおきましては、安定した収益確保ができる強靭な企業基盤の再構築を目的に、諸課題の改善に徹底した取り組みを進めてきており、トップラインは頭打ちする中にあっても2020年度より2期連続で収益改善を図ることができました。

なお、当社グループにおける業務に対するプライオリティは、昨年より「お守りプロジェクト」を展開している通り、第一に社員の安全・安心、健康への配慮であり、その次に製品の品質改善、そして最後に収益改善という順であります。安全・安心な職場環境の整備は、コストではなく前向きな投資であり、社員の満足度だけにとどまらず、品質の向上を通じて結果的に顧客満足度の向上にも繋がるとの認識のもと、経営が率先して継続して取り組んでまいります。

 

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得